第125話 取ってくる
「何しているんだ? 咲弥姉」
「ああ、あっくん」
敦也が話しかけたのは、咲弥だった。
「これ、どうにかしてくれない? お肉取れない……」
と、困り顔をしている咲弥。
「そういう事ね。咲弥姉は、アウトドア派というよりは、インドア派だからな」
「そう。だから、普通のご飯の方がマシ。もっと言うなら、バイキングの方がいい」
「あ、そう……」
その言葉に敦也は、返す言葉がない。
「じゃあ、俺が取ってやろうか。もしくは、唯姉達のところに行くのも手だけど……」
「でも、一応、マネージャーだし、仕事はしないと……」
「ああ、いい、いい。食べれる時に食べておかないと、後で何も残らないからな。ちょっと待ってろ!」
そう言って、敦也は、肉を取り合っている集団の中に飛び込んだ。
そして、五分後——
敦也は、少し山のように積んだ野菜と肉を持って、咲弥の元へ帰って来る。
「結構、傷だらけになって帰ってきたね」
「ま、まぁーな。取り合いに夢中になっていたらそうなった」
敦也は、咲弥の皿に肉や野菜を自分の皿から移す。
「あ、ありがとう……」
「お、おう……」
二人は、蚊帳の外の方で、生徒達の取り合いを見ながら食べた。