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第121話 里菜の疑念
「ちょっと、時間大丈夫?」
「別に大丈夫だけど、どうしたの?」
「そ、その……何というか……」
もじもじしながら話をする里菜。
壁に背中を預け、座っている敦也は、里菜の話に耳を傾ける。
「隣で座ってもいい?」
「別にいいけど……」
すると、里菜は敦也の隣に座る。
「それで、何の用?」
「あ、そうそう。敦也、唯と何かあった?」
「え?」
いきなり訊かれて、敦也は少し動揺する。
「やっぱり、何かあったんだぁ~!」
里菜は敦也に迫ってくる。
「べ、別に何もねぇーよ。ただ、昔の話をしてただけで……」
「昔の話?」
「そう、昔の話。里菜姉や咲弥姉が知らない話」
敦也がそう言うと、里菜は、ジト目で敦也を見る。
「本当?」
「本当、本当。ただ、それだけだって」
「それで、唯とあんなに親密になるんだぁ……」
「どういう事だよ」
「ん? 女の勘」
里菜はそう言って、敦也に覆いかぶさる。
「里菜姉、これはどういう?」
「今から敦也を襲う?」
「なぜ疑問形?」
「なんとなく」
里菜は舌なめずりしながら、敦也の顔をまじまじと見た。