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第120話 訪問者
「敦也君、すみません。僕、先に川の方に行っていますね」
「ん? そんな時間なのか? それにしても時間的に早いような気がするが……」
スマホの画面を見ると、まだ、午後六時前。
「それでは、先に行ってますね」
「あ、おい!」
そう言い残したまま、拓は部屋を出て行ってしまった。
「——ったく……。これじゃあ、もっと暇になるじゃねぇーか……」
敦也が独り言を言っていると、ドアをノックする音がする。
「誰?」
「私」
「ん?」
「入るよ」
敦也の返事もなしに、その人物は部屋に入ってきた。
それは、半袖長ズボンのラフな格好をした里菜だった。
「里菜姉……」