第119話 風呂上り
「ようやく出てきましたか」
唯と穂乃果が、女湯から出てくるのを敦也と拓が待っていた。
「唯姉、結構長かったな」
「ええ……。ちょっと、湯船でぼーっとしていたものでして、おそらく、それが原因だと思います!」
唯は誤魔化そうと、適当に言った。
「そうなのですか?」
それを聞いていた拓が、穂乃果に訊いた。
「そうね。ちょっと、ゆっくりしたい気分だったから、別に待ってなくても良かったのよ」
と、穂乃果は、唯の援護をする。
拓は、少しばかし穂乃果の表情を窺うも、何事もなく話を続けた。
「そうですか。ま、そういう事にしておきましょう」
ホッとする穂乃果。
「では、帰りましょうか。バーベキューの時間まで、まだ時間があると思いますよ」
拓は、廊下の壁にある時計を見ながら言った。
四人は、その場を後にして、建物の一階に降り、靴箱に入れておいた自分の靴とスリッパを履き替える。
「唯姉、何かあった?」
気になっていた敦也は唯に小声で話しかける。
「何もないですよ。ただ、長い事、湯に浸かっていたからそう見えるだけですよ」
「それならいいけど……」
敦也は、それ以降、唯に何も聞かなかった。