第118話 湯から出る
「で、私に絡んできたのは、どういう事なんですか?」
ついさっきまでいがみ合っていた二人が隣同士に座っている。
(この二人、本当の本当は、仲がいいんじゃないの?)
穂乃果は、言葉にはしなかったが、話を聞いていて、再びそう思った。
「別にたまたま、お風呂に入りに来たと思ったら、あなたが先に来ていただけよ」
「あなたみたいな人が、川よりもお風呂を優先させるなんて、明日は雨でも降りそうですね」
「言ってなさいよ。さすがの私でも今日の汗の量からして、先にお風呂を優先するわよ」
「そうなんですね」
「ええ、そうよ」
話を終えると、再び沈黙が続く。
(さて、そろそろ時間ですから、上がりますか……。あっちゃんも出てくる時間でしょうから……)
唯は、ゆっくりと立ち上がる。
「唯ちゃん、もう上がるの?」
「はい。ゆっくりできましたから、そろそろ上がろうと思います」
「だったら、私も上がるわ」
と、穂乃果も立ち上がって、唯の後を追う。
「それでは、先に上がらせてもらいますね」
唯は、未だ、湯に浸かっている姫路に言った。
「勝手にしなさいよ」
と、そっぽ向く。
二人は、その場から立ち去ってしまった。