第117話 風呂場でのいがみ合い
「姫路さん、あなたでしたか。何の用ですか?」
と、さっきまで穏やかだった唯の表情が一変する。
「知り合いなの?」
穂乃果が訊く。
「ええ、大変不甲斐ないのですが……」
唯は、穂乃果の質問にそう答えた。
「それにしても、あなたがここにいるなんて、珍しいのね。どうかしたのかしら? もしかして、寝るところ、追い出されたの? それならそれで、面白いのだけれど」
笑いをこらえながら言う姫路に、イラっと来る唯。
「別にそんな事は、どうでもよくないですか? たまたま、お風呂が開いていなかったから、ここに来ただけです。あなたが想像しているようなことはありませんよ」
「あらそう。でも、相変わらず、そのイラっと来る態度、変わらないので」
「そうですか? あなたも相変わらず、嫌味しか言わないその性格、変わらないんですね」
二人の言い争いは、蚊帳の外である穂乃果にとって、何か始まった、にしか見えなかった。
「二人は、仲がいいんだね」
「どこがですか!」
「どこがよ!」
と、同時に穂乃果の言葉に反応する。
「あ、うん。そうだね……」
二人の圧に圧倒された穂乃果は、返す言葉がない。
二人のいがみ合いは、まだまだ続いた。