第115話 侮れない
「なるほど、そういう事だったのですね」
「他の奴らには言うなよ」
「ええ、それは分かっていますよ。こう見えても、口は堅い方ですから……」
「それはどうだか……」
「信じていませんね」
「当たり前だろ。お前は一年の中で、得体のしれない奴だからだ」
「そうでしたか。それは、それは……」
二人は湯に浸かって、十五分くらい経とうとしていた。
「そう言えば、お前の他にこの件を知っている人物がいると言っていたが、誰なんだ?」
疑問に思っていた敦也は、拓にその疑問を訊く。
「あれ? 気づいておられるかと思ったのですが、どうやら、その様子ではお分かりではないようですね」
「どういう意味だ?」
「簡単な事です」
「昨日、あなたは川で疲れを取っている間、誰と話をしていましたか?」
「唯と松田さんだな」
「それでは、唯さんと、現在、部屋で共に過ごしているのは?」
「松田さんだな。——って、もしかして……」
「はい。そのもしかして、ですよ」
「まさか、松田さんがこの件を知っていると?」
「そうですね。彼女もまた、顔には出さないタイプでもありますから、確率的には七十パーセントと言ったところでしょうか」
「その確率、高くないか?」
「いえいえ、僕の見立てでは、ほぼ確実なので、一応、心には止めておいてください」
「分かったよ。そうしておく」
敦也は、頭に載せていたタオルを目元に置き、天井を見上げた。