第108話 深夜の魔法も
敦也はポケットの中からスマホを取り出して、時間を確認した。
時刻は、深夜零時前になっていた。
疲れてしまったのか、唯は敦也の隣で寝ている。
(さすがに帰るか……。明日も早いし、もう、寝ないとな……)
敦也は、右手で唯の頬を触る。
「唯姉、起きてくれ。外で寝ると風邪ひくから、帰るよ……」
何度か、唯の頬を触りながら、寝ている唯を起こす。
「ふぇ……。あれ? 私……」
と、眠たそうな目をしながら起きた唯は、少し寝ぼけている。
「大丈夫か? 立てるか?」
「あ、はい……」
ふらつく体で立ち上がると、足の力が抜け、唯はその場に倒れようとしてしまう。
「おっと……本当に大丈夫なんだろうな?」
唯の体を支えた敦也が、ゆっくりと立ち上がらせる。
「すみません。ちょっと、気が抜けてしまいました……」
力の抜けた足の感覚は、少しずつ戻っている。
「仕方ないから、部屋まで送ってやるよ。ほら、乗れ」
敦也は、膝を曲げ、背中を下ろす。
「え……?」
動揺する唯。
「いいから、乗れって……」
「ありがとうございます……」
唯は、敦也の背中に体を預けた。
「それじゃあ、帰るか」
「はい」
二人は、ログハウスへと戻った。