第107話 二人っきりで
「それにしても、あっちゃんが、ずっと優しくしてくれるのはなぜですか?」
と、唯は敦也の肩に頭を載せながら訊く。
「さぁーな。俺にも分からねぇーよ。唯姉と、初めて会った時は、正直言って、家族は父さん一人で十分だと思っていたからな。でも、唯姉は、唯姉だからな。あの時、なんとなく思ってしまったんだよな。でも、初めて会った時、なんで、唯姉は、俺に対して、あんな事をしたんだ?」
敦也は唯に訊く。
「そうですね。私にも分からないです。初めて、あっちゃんに会った時、もしかすると、一目惚れだったのかもしれないです」
「あんな子供だったのに?」
「私にとっては、あっちゃんは、初めての男の子だったので、あの不愛想な所が好きになったのかもしれませんね。今のあっちゃんも好きですよ」
「はい、はい。それはどうも」
「本気にしていないんですか?」
「さぁ、それはどうだろう。あの頃、唯姉にとっては辛い時期だったのかもしれない。それに…唯姉は……その……俺にとっては、姉として、一人の女の子として、見ているつもりでいる」
敦也は、左腕を唯の左肩まで伸ばし、自分の方へと引き寄せる。
「そうですか。では、それを信じるとしましょう。答えは、まだ、早まらなくでもいいですよ。ゆっくりでいいんです。私達は、まだ、高校生なんですから……」
「そうだな……」
綺麗に晴れた空には、星々がきれいに輝いていた。