105/139
第105話 自然の夜
(眠れん……)
敦也は、目を開けたまま、天井を見上げていた。
窓から差し込む月の光は、敦也が寝ている部屋を照らしている。
充電しているスマホの画面を見ると、午後十一時を過ぎていた。
隣では、拓が眠っている。
(ちょっと、外に出て、涼んでくるか……)
敦也は、静かに立ち上がって、部屋を出る。
夜の合宿所の敷地内は、静かだった。街の方だと、建物の光や乗り物の音などが聞こえてくるのに対して、ここは、月の光、虫の音、心地よい風が吹いている。
辺りも暗く、この道は外灯頼りに歩く。
少し歩くと、小さな広場が見える。
そこには、噴水があり、この時間帯は誰もいない。
「~♪ ~♪ ~♪」
と、噴水の方から鼻歌が聞こえる。
月の光に当てられて、誰なのかは分からないが、そこに誰かがいる。
もう少し近づくと、その姿は見覚えのある人物だった。
「唯姉……」