第104話 それはどうなのか
「あっ……」
洗面所に行くと、唯が歯を磨いていた。
「ん?」
と、歯を磨いていた唯が里菜の方を振り向いた。
口を濯いで、里菜に場所を明け渡す。
「里菜でしたか。どうしたのですか? 私の顔に何かついていますでしょうか?」
「え? ああ、うん……。何かあったのかなぁーと思って……」
里菜は歯ブラシに、歯磨き粉をつける。
「そうですね。里菜には関係ない事ですので、大丈夫ですよ。心配してくださりありがとうございます」
と、きれいに洗った歯ブラシをケースの中にしまう。
「私に関係はないけど、他の誰かと関係あったりするの?」
「さて、それはどうでしょうか? 私にも一つや二つ、あなたに隠し事くらいありますよ」
そう言い残して、唯は洗面所を後にした。
「ふーん、あ、そう……」
里菜は、歯を磨き始めた。
(確かに唯が、私に隠し事をするくらい、おかしくもないし、一つや二つくらいあるっていうのは分かっているわよ。姉妹なんだし……。でも、唯の隠し事って、そのほとんど、敦也が絡んでいたりするのよね。たまに外れる事もあるけど……)
自分の顔が映る鏡を見ながら思った。
(今日は、早く寝よ……)
水を出して、口の中をきれいにした。