第103話 ちょっとした事
「ん~。気になる」
と、夏海は、ずっと唯の事が気になって、部屋に戻っても考え事をしていた。
「どうしたの? 夏海」
「あ、うん……。唯ちゃんの事よ」
「唯がどうかしたの?」
里菜は布団を敷きながら、寝る準備をしていた。
「あ、それ。私も思った」
と、テレビを見ながら横になっている松川留依が言った。
「普通に食べたら、あんなに遅くはならないのに、それもカレーをお代わりしないなんて、気になるのよね」
「いや、カレーをお代わりする前提は、あんただけよ、夏海。普通は、食べ終わってからどうするか、考えるわよ」
「でもー、明らかに唯ちゃんの様子がおかしかったのは確かよね。ある意味、何か、意識だけ、他のところに行っているかのようだった」
「あー、それそれ。留依の言う通り、そうなんだよね」
夏海は、うんうん、と頷きながら、納得する。
「それよりも……。里菜って、唯や咲弥、敦也君と似ていないのに、どうやったら、普通の姉弟のように仲良くできるのか不思議なのね」
留依は、疑問を投げかける。
「別に不思議じゃないわよ。もう、十年も一緒にいれば、自然と家族になっているものよ」
里菜は、布団を敷き終わり、荷物の中から歯磨きセットを取り出す。
「ふーん、自然と家族になるもんなのかねぇ……」
留依は、里菜の答えに、そういうものなのか、と不思議に思った。
「私、ちょっと、歯を磨いてくるから」
「はい、はーい」
振り返らず、テレビを見たまま、右手を挙げて、手を振った。