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第102話 放心状態
夕食の時間になると、大きな建物の大食堂で、学校ごとに集まり、食事をとる。
「ん?」
と、夏海はカレーを食べながら、難しい顔をしていた。
「ねぇ、唯ちゃん。ずっと思っていたんだけどさぁ……。さっきからどうしたの? 食事進んでいないよ」
「え? そうですか?」
ぼーっとしていた唯が、愛想笑いをして、夏海に言った。
「だって、食べ始めて十分も経っているのに、全然進んでいないんだもん」
夏海は、唯が食べているカレー皿の上を指摘する。
まだ、三分の一も食べ終えていない。
「あはは……。どうしてなんでしょうね。ちょっと、食欲がなくて……」
唯はそう言いながら、少しずつ食べる。
その隣で見ていた穂乃果は、小さなため息をした。
あれからずっと、唯の意識が戻ってこず、ようやく戻ってきたと思ったら、この状態であるため、その幼き頃の恥ずかしい思い出を聞かされた穂乃果は、唯がこういう状態になっていることを知っている。
(やれやれ、どうしたものやら……)
穂乃果が少し悩んでいる一方で、敦也は何事もなかったかのよう、普通に食事をしていた。