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2話 突入開始

 



「わっはっははははっはーーーーーーーー」


雨は上がったが、未だに黒い雲が空を覆い

星おろか月の明かりすら見えない空を

上空500mを超える高さから

笑いながら落ちてくる男が1人


黒い仮面をかぶり、攻撃的なほど立たせた髪は赤く

右手には木刀、黄色いカーゴパンツ

背中に雷神の刺繍がはいったスカジャンが

風を浴びながら空を飛ぶ、いや嬉しそうに落ちていく


場所は千葉県、元造船所であった会社の建物の上空である

海に面した造船ドックは陸上の400mトラックほど有り

地上高40mはあるアーチ場の建物は、メインの造船工場である

それに沿うように建てられた、造船会社の建物

1階に展示場も兼ね、7階建ての大きな施設である

その屋上に今黒い仮面をした

【蓮・ティオーノ】が今降り立とうとしていた


時速100キロを超える速度で落ちてきた蓮は

ミーティアの魔法でまるで、バンジージャンプで、ゴムが伸びきるように

一気に速度を落とし、音もなく屋上にある貯水タンクの上に降り立つ


周りを確認した連は、ニヤリと笑い

半分以上、カラとなっていた足元の貯水タンクを

力強く蹴飛ばした


ガツーーーーーーーーーーーーン・・・・・・・・


それは、雨上がりの湿気った空気のため、深く静まり返っていた

建物に大きく響くほどの音である



そして、屋上にいた人間達は突如現れた人物に気が付くのだ




「テ・・・テキシューーーーーー」


屋上からの侵入は無いと踏んでいた

その為は屋上には、スナイパーチームが1組6人が

いきなり現れた人影に叫びを上げ、その銃口をむけ

引き金を引くのだった


「ブルー・チームからオールカラーへ

 敵襲ーー

 なんだ・・あれは・・・

 バカな・・」


屋上にいた、ライフルを構える男が

口元のマイクに向かって叫ぶ


この男、屋上に居た6人の中で

貯水タンクくら一番離れていた為

屋上で起きた出来事を最後まで見ることとなる


貯水タンクの上に、いきなり現れた人影

その人影は、貯水タンクを飛び降り近くにいた

男と同じスナイパーチームの3人を瞬殺した


いや仲間達も反撃はしたのだ

いきなり屋上に敵が現れるなど想像もしていなかったのだ

それでも、仲間は手持ちのライフルやハンドガンで

現れた人影を狙い撃ったんだが

虚しくも、その場に崩れていく


そして、3人を倒した人影は

腕を上げ、何かしらの魔法を使い

少し離れていた仲間の1人を倒した

その魔法は発動時に微かに光る

そう、男は人影を狙うスコープの先に、その人影の顔を見た

いや、顔ではない、顔を隠す黒い仮面を

そして、また1人、侵入者の魔法で仲間が倒れた


男はライフルの引き金を弾きながら叫ぶ


「ブ・・・・ ブラックマスクです、ターゲットB!ブラックマスクです

 うわぁぁあああああああ」 



そして、男の意識はそこで終わった



ブラックマスクと聞いて

椅子に座っていた体格のいい男は

立ち上がり、イヤホンマイクに手をやり


「ホワイトだ!おい!ブルーチーム状況を報告しろ、ブルーチーム

 くそ、ブラウン今どこにいる?」


「こちら、ブラウン・ビショプ、今7階西だ」


「ブラウンは、屋上にブルーの援護・状況確認にいけ」


「ブラウン・チーム了解」


その頃、建物正面の中庭に姿を隠す、グリーンチームの1人が

手持ちのデジタルスコープを使い屋上を確認する


「こちら、フィールドの、グリーン・シューター

 屋上に侵入者らしき人影を確認

 あれが、ブラックマスクか?」


「ホワイトだ、どうかは、わからんが確認をいそげ」


「グリーン・シューターだが、あいつ屋上から飛び降りる気か?

 うわ、おちたぞ!!」


「「「「「「「!!!!」」」」」」」」



屋上で、スナイパー6人を倒した蓮

普段なら狙撃など気にもしないのだが

今日、一緒に暴れるのは、いつものシオンではない

宮守と鎧女であるのだ


宮守とは先日軽い手合わせをしたが、なかなか強い

制限をかけていたとは言え俺に勝ったのだからな

だが、幾つか、引っかかる事もあるが・・・まぁ今はいい

とりあえず、あの2人がライフルの銃弾を防げるとは思えんから

いや!あの鎧女の装甲は硬そうだったから撃たれても大丈夫か?

まぁいい、とりあえず、屋上のスナイパーを潰しとくか


そんな軽い気持ちで、屋上にいた男達を潰すと

屋上を移動し、建物の正面入口の真上に移動し

下を確認すると、無造作に飛び降りた

そう、7階の建物の屋上からである

壁を沿うように真っ直ぐ落ちていく蓮

その勢いも加速されていくなか

3階に差し掛かろうという時、蓮は動き出す


雷帝と言われていた、元魔王の蓮

異世界でのその力は、カミナリであり、この世界では電気である

そう、シオンと同じく、蓮もこの世界で

その雷の使い方を大きく成長させていた

その1つが磁力である


今、連は自身に磁力を纏

建物に使われている鉄筋に自分の体を引き寄せさせる

それによって、蓮の体は真下に落ちていた軌道を変え

落下速度そのままで建物に引き寄せられていく

建物の壁に近づくと、体制を変え壁を蹴飛ばし建物から離れようとするが

磁力を帯び、建物の鉄骨に引き寄せられる蓮の体は反発しあうように

不安定の中で、安定し空中で動きを止める

それは地面から2メートルほど離れた場所であり

蓮はスキルで作り上げた磁力を切ると

何事もなかったかのように地面に軽やかに降り立ったのだった


そう、井門が持ってきた、この建物の見取り図で

蓮が示した侵入ルートは

一番に屋上であり、そして正面玄関を指差していたのだった

そして今、蓮の視線の先には

まるで、入って来いと言わないばかりに開け広げられた

建物の入口があった


「普通に着地したぞ?何かの魔法か?」


「グリーン・ファイター、人影視認、情報にあった仮面だな

 ブラック・マスクに間違いないだろう」


「グリーン・ランサー、あぁたぶん間違いないな」


「ホワイトだ!こちらからも確認できた、ほぼ間違いないだろう

 俺が奴を見間違うわけがない

 作戦通りに奴を1階エントランスに引き込む

 作戦【鳥籠】始動だ!」


「グリーン・シューター、了解、では作戦通りに

 グリーンチームは、このまま待機」


蓮は周りに潜む人間の事は気がついていた

だが、襲ってこない事を考えると、何かの作戦なのだと考える

それもその筈

目の前には、手招きして待ち構える罠があるのだから

だが、罠だからこそ、足を踏み入れるのが蓮という漢 (おとこ)である

そう、その先にある快楽を求めて、蓮は歩き出すのだった



***********



転移してきた、鉄雄とアリス

行動開始は20時であり、今まさに20時を越えようとしていた

だが、鉄雄は動かない

うんこ座りをし、おおきくアクビをする

その傍らで、地面に片膝を落とし

鎧が音を立てないようにと静かに佇むアリスだったが

緊張の心拍音と焦りで、微かに音を立て続けるアリスに

鉄雄は緊張感もなく


「まぁ、今更急いでも、どうにもならんだろ

 ゆっくり行こうぜ」


「テツ・・・何なのよ、これって

 元米軍?そして傭兵って?いったい相手はどんな組織なのよ」


「知らねえよ」


「し・・・知らないで、こんな所まできたの?

 テツ・・・あなた・・(頭の中)・・大丈夫?」


「ああ、情報収集は俺の分野じゃぁないしな

 そんなに必要か?相手の情報とか?」


「当たり前でしょ!昔から

 彼を知り己を知れば百戦殆うからずって言うでしょ?」


「いや、そのへんはアリスの言うように

 聞いただろ?元軍人の傭兵が100人だとか?

 だいたい、あの7:3メガネは女に甘いんだよ」


「は?それだけでしょ?

 それに、女に甘いってどういう事よ」


「俺が初めて、巻き込まれたときは

 遊びに行かないか?って誘われて

 中国系マフィア百人以上相手にドンパチだぜ!

 大概にしろって言うんだよ

 それも、小等部5年の時にだぜ

 拳銃やマシンガンを持った大人10数人に囲まれた時は

 本気で死ぬと思ったよ

 あの時に比べたら、今回は相手の人数もだいたい把握できてるし

 その装備も、元米軍の傭兵ってだけで、予想はできるし

 敷地の見取り図まで有るんだぜ

 アリスが、どれだけ特別扱いされてるかって話だ」


鉄雄は呆れ顔で説明する

それでも、紫音と連絡が取れない今

あの7:3メガネも、何かの思惑があって

俺と、あの先輩や、ミカさんミーティアさんを呼んだのだろう?

それに、アリスの事も断わると思ってたんだが

ある意味、アリスが来ることにOKをだした奴の考えが一番読めないと

鉄雄は7:3メガネの陰口を叩く


「そ・・そうなの?」


小5で、中国マフィアと銃撃戦?

意味不明なんだけど?

中二病?とか・・・・って・・

数時間前までなら、バカにしてた所だけど

現状では、納得するしかないよね

だって今まさに、あの建物から拳銃らしき音が・・・・

いったい何が起こってるの・・・


そんな銃撃戦らしき音も、10秒ほどで聞こえなくなり

それに気がついた鉄雄は


「おっと、終わったみたいだな

 そろそろ行くか」


アリスに促すと

両手にはめた指ぬきの手袋のような篭手を付ける


アリスは鉄雄の言葉で、音を立てないように

細心の注意をし立ち上がり

ジャージのフードで、フルフェイスの兜を覆うのだった


鉄雄は蓮が示した、侵入経路を目にし

その意図を汲み取っていた

そう、まず蓮が先行し屋上のライフル持ちを一掃し

その後正面から突入する事を

それは、初めて作戦を共にする、自分やアリスの事を思ってだと

そして、正面からの侵入は、自分達が侵入しやすいように揺動でもあるのだと

いや、そこはただ単に面白そうだからとも言える

鉄雄も、蓮に先に正面入口を取られ

やられた!俺も正面が良かったとか思っていたからだ

だが、アリスと一緒にいくなら安全策をと

鉄雄は裏口からの侵入し、建物の西側にある外階段で屋上まで上がり

作戦どうり救出すべき人間を探し

屋上から下の階層に向けて、しらみつぶしに探していく手段を選ぶ


「テ・・テツ・・・」


「ん?」


「そ・・そんな、堂々と歩いて侵入するき?」


「?何言ってんだ?侵入するのに、なんでコソコソする必要がある?」


意味が分からない?隠れながら侵入するのがセオリーでしょ?

なんでわざわざ見つかるような真似をするのよ


それでも、アリスは鉄雄の横を歩き

心拍数を上げながら、周りに視線を送り周囲を警戒しながら進む




*****



蓮が屋上で暴れまわったことで

元造船所で待ち受ける人間達に一報が入る


今夜、ターゲットである、黒い仮面を付けた男が来ることは分かっていた

その為の布陣も敷いていたが

屋上のスナイパー達、ブルー・チームが真っ先に落とされたことは

驚きはしたが、今回の参謀である、白髪の老人、ホワイト・ヘアは

その事も確率は低いが、ありえるだろうと、気にもしない

元々、屋上のブルー・チームは索敵・監視・警戒と

戦力として余り考えていなかっったからである


そして、仮面の男が1階に飛び降りた事で

当初の作戦【鳥籠】を決行する


だが、屋上からの監視が無くなった為

各階の目が利く人間、各色のスナイパーやアーチャーに周囲の警戒を命令する


4階の廊下、壁に背中を付け暇そうに

ステック状のお菓子を、ボリボリ食べる

元アメリカ軍人だった男が一番に気が付く


「こちら、グレー・アーチャー

 裏門に人影が2つ、警戒もせずに堂々と入ってくる所を見ると一般人か?

 姿からいって、近くの不良どもか?まぁいい、セントラルに映像を送る」


「セントラル、ホワイト・ヘア

 映像きたぞ、ほほう、今時古風な不良だな

 リーゼントにサングラスの男は武器無しか

 もう一人は、フードを深く被ってる為顔が見えんな

 性別不明な派手なジャージと

 背中の盾と腰の剣は気になるな

 もしかしてだが・・・可能性が無いとも言い切れん

 それに、通報されるのも面倒だ

 グレー・アーチャー、始末しろ」


「グレー・アーチャー、OK」


グレー・アーチャーと名乗った男は笑う

暇つぶしが出来たと

それに、鳥籠が成功すれば、自分は何する事もなく終わってしまうと


そして半身を壁で隠し、愛用のライフルで、裏口から入ってくる

リーゼントの男の頭、いや言い換えればリーゼント其のものを狙い撃つ


実弾も魔法弾も撃てるハイブリッドのアメリカ軍の払い下げライフル

米軍で多く使われる実弾専用のM-16と比べると弾速は落ちるものの

代わりに魔法弾であるなら、ほぼ無音で撃てるしろもの

それは消音の魔法刻印の二重ガケの恩恵が有ってこそだが

そして、スコープの先には、黒光したリーゼント、距離は50メートルもない

外すわけがない、そして、引き金を引くまで

男の心拍数は平常運転である

プロである彼、人を殺す事に対し無関心

いや、人を撃てる喜びに踊る心を押し殺し

その瞬間まで冷静さを忘れない

そして今、音もなく弾丸は発射された


鉄雄は見えていた

【目】だけは良い鉄雄は視界にある全てを理解していた

建物の窓から自分達を狙う人影の人数すら

その中の4階にいる一人が鉄雄に向けてライフルを向ける

そして必然的に鉄雄の意識は最大値13倍まで加速される

それによって、鉄雄はその弾道、射線、タイミングをその目に移す


絶妙なタイミングで数センチ単位で体をズラシ、首を揺らし

何もなかったかのように、ライフル弾をよける



「Why!・・・・」


ライフルを撃った男だけは

その弾丸の軌道が見えていた

いや見えてはいない、長年培ってきた経験で

それを感じ取っていたのだ、その弾丸は確実に当たっていたはずである

だが、狙撃対象は何もなかったかのように歩いているのだ

そこに彼の喜びはなかった


彼は目には、鉄雄の妙技とも言える動きは見えていた

人間の目の性能とは今の科学では計り知れないほどであり

超が付くほどの高性能ハイスピードカメラより優れているのだ

そして、それを処理する脳も科学では計り知れない潜在能力を有している

神の御技と言えば、それまでだが

愚かなる人間は、その目や脳の能力の大半を使いきれていない

その動きは早すぎた早すぎた為に

彼の脳はその出来事を理解できず処理しないのだった


ただ、彼の心は、プライドは深く傷つく

周りの仲間から笑われ

無警戒に歩くタダの一般人相手に外したからだ

そしてもう一度、リーゼントを狙った、ヘッドショット

だがリーゼントの男は倒れない

作戦中だと言うのに、無線で笑われる彼は

リーゼントより、的が大きい体の中心に向けて照準を合わせ

静かに引き金を引くが、リーゼントの男は変わらず足を進める


背中に寒気を感じながら、もう一度引き金を引く

彼は、仲間に笑われる中、顔を青くして気が付く

自分は相手にしてはイケない存在を相手にしているのではと

この時、元アメリカ軍人の男は

十士族の戦闘部隊にいる、元アメリカ軍人の友人に

日本の恐ろしい御伽話とも思える忠告を思い出した


日本には手出し無用の存在が居ると

それは世界に有る国や組織が知る

十士族や、日本に数人いる【聖人】の事ではない

日本の闇に潜む存在の事を

【白兎 (ホワイトラビット)】

【西の虎】

【喋る道外師 (どうげし)】

まだ居るが、これらと対峙する事があるなら

命推しくば、無様であろうと逃げろと

だが、奴等以上に危険な都市伝説的存在がいる

十士族の戦闘部隊や情報網ですら、その存在が把握できない組織

彼等に会う前に逃げろ、存在を感知されたら最後

命は無いものと思え、全てを捨ててでも逃げ出せと言われた存在

【ひょっとこ男】【おかめ女】【カミカゼリーゼンント】

男は顔面蒼白となっていく

そう、目の前にいるのは間違いなく

【カミカゼリーゼント】だと云う事に気がついたのだ


勝てない、それ以前に、まだ死にたくない・・・


早くなる鼓動を抑え、震える声を整え小さく溢す


「グレー・アーチャーだ・・・すなない・・少し調子が悪い変わってくれ」


その言葉で、おおくの人間は大笑いだ

だが彼はもう気にしない、チームにトイレに行くといって

数分後には、仲間の監視の目を抜け建物から逃げ出すように、消えていった

そう、建物から離れ、敷地から出た瞬間に

ミーティアの手によって、その姿をけしたのだった


グレー・アーチャーに変わって、ライフルを構えたのは

3階にいた、ネイビー・アーチャーだった




*******



カン! ハシャ!


何度かそんな音が繰り返された時


「・・・・アリス」


「なに?それに今の音は?」


「アリス3階まで、飛べるか?」


「無理よ、飛べるわけないでしょ」


頭悪いの?テツ

人間が空を飛べるわけないでしょ

常識を考えてよ


カン! パシュ



「飛べないのかよ

 背中からロケットでも出して飛んでくれよ本当にもう・・(使えねぇ・・)

 しょうがないか・・

 ミカさん」


「ほぉ~い」


その声の出処に驚くアリス

ミカは姿を消したまま鉄雄達の後ついてきていた


未だに姿は見えないが

鉄雄は、そんな事を気にもせず

建物の3階を指差し


「あそこに居る、ライフル潰してもらえます

 ちょっと、うっとーしくて」


「オッケーーー」


鉄雄の言葉で、アリスも鉄雄の指さした場所に視線を送ると

そこには、微かだがライフルの先端がみえた

その瞬間ライフルの先端が光ったように感じた


・・・・・


な・・何をしてたの私は!

周りを監視し危険をイチ早く察知しよう集中していたはず

だけど、知っていたはずだ、相手の大半は元軍人の傭兵

その装備は、ライフルや銃、そして最先端デバイスや、軍事用攻撃魔法

そんな相手に、私の両手は何も握っていない

ライフルで狙われ、狙撃されたのに・・・


狙撃された事に気がついた瞬間

アリスは自分の愚かさに気が付くのだった


アリスは平凡な日常を嫌い

騎士の信念を曲げてまで、中世ヨーロッパ時代や

ローマ時代の戦争が日常だった世界を夢見ていた

だが、それはこの世界では、どこまで行っても妄想であり

ありえない事でもあった

だからこそ、アリスの頭は、その心さえも

未だに普段の平和な日所が抜けていなかった


そんなアリスの視界に飛び込んできた影

それは鉄雄の篭手、そして小さな火花を上げて

カン!と音をあげ、地面に何か落ちたような音が続く


「な・・なに今の?」


「ん?狙撃されたから、叩き落としただけだけど?」


何?なんて言った?ライフルの銃弾を叩き落とした?

いや・・・もう驚かない・・・

そんな常識はずれな出来事よりも

騎士である私が守られていた事が今は一番の問題なのよ


アリスは背負っていた、タワーシールドを左手に持ち

腰にあった騎士剣を右手に握り締め決意表明をするのだ


「テツ、もう私を守らなくてもいいわよ」


鉄雄はアリスとの付き合いも長く

普段より少しだけトーンの低い声を聞いて


こうなった頑固なアリスは、どうしようもないと

そして、アレくらいの小口径の弾ならアリスの装備を抜くことはないだろう

いつものと違って、防御力高そうだからな・・・と


「・・・まぁいいや好きにしろ」


と諦めるが、裏で念話で


『ミカさん、悪いが狙撃だけは潰してもらえるかな?』


『いいよーー』


そして、3階にいた、ネイビー・アーチャーは

ミカの悪魔覇気で膝から崩れていったのだった


ホワイト・ヘアは、報告を受けると確信したのだ

リーゼントの男は、ここ1年影を潜めていた

ひょっとこ男の仲間だと

そして、この男にも遠距離での射撃は無意味と言うことも


それは、アメリカ軍でも開発中でもある

対狙撃自動防御デバイス連動身体操作魔法

高感度カメラで、銃口を感知しその角度距離を測定

そこから射出される弾道を計算し

それが体に当たる場合、デバイスが自動計算し

自動で身体強化、速度強化し身体操作魔法で

その弾丸を躱したり、武器で弾いたりと

某アニメで有名な、銃弾を切り落とす斬鉄剣を

デバイス魔法で作り上げようとしていた

その魔法は骨組みは出来上がっていた

ロボットアームや、デバイスで作られた義手などでは成功していたが

人間の肉体を瞬間的に動かす事ができずにいた

また、単発狙撃での自動防御はできるものの

1秒間隔での狙撃には、誤差が生じてしまうのだ

アメリカ軍の技術をもってしても実践投与レベルまで来てないのだ


だがだ、それに使われる全ての技術は、日本が最先端であるのだ

日本なら作り上げていると思われる

対狙撃自動防御デバイス連動身体操作魔法に近い魔法

いや、それ以上の魔法を作り上げていると、ホワイト・ヘアは考えていた


その証拠に、ターゲットBは至近距離でありながら連続で弾丸を避けた

そして今、ターゲットEは、長距離で狙撃された弾丸を止めたのだ


ならば、ターゲットEを倒す方法も、Bと同じく【鳥籠】が有効であると

ただ、それに引っかかるかかという事でもあるが

リーゼント姿を見る限り、その男も負けず嫌いであろう

ならば罠に掛かる可能性はある

掛からなかった時は、それはそれで、他の作戦も用意していると

裏口からの侵入者に対し狙撃を中止させ

建物に引き込むことを優先させるのだった




狙撃は無くなった



だが、アリスは深く盾を構え足を止めた

そして、建物の人影に警戒を始める

狙撃が無くなった理由すら分からずに


「アリス早く来いよ、置いていくぞ」


「まって、まだ狙撃される可能性があるわ

 テツ私の後ろに来なさいよ、しょうが無いから守ってあげるわよ」


今の今まで鉄雄に守られていた事など無かったかのように

アリスは、自信満々で鉄雄に守ってあげると言い切った


・・・・・ここで無駄に、ツッコンデ殴られるのは紫音の役目なんだが

俺的には、こんなバカっぽいアリスも、かわいくて良いんだけどな


「わるいな、それならありがたく守ってもらうとするかな」


鉄雄は軽く笑いながら、アリスの背後に周り

建物の左手を指して


「7:3メガネの情報では

 あっちに屋上まで通じる外部階段があるはずなんだ

 そこから7階に上がって、救出する人間を探しながら

 下の階に降りていくって事でいいな」


「わかったわ、とりあえず階段まで行くわよ

 離れないように付いて来て」


アリスの左手に持つ大きめの縦長の盾は

タワーシールドと呼ばれる一般的な物であるが

接近戦で相手の攻撃を防御・受け流すという

小刻みに動かし防御するよりも

どしっと構え、中・長距離からの、遠隔攻撃や長物武器に対しての防御に秀でていた

それを体の前面に構え、建物方向から鉄雄を守るように体制を整え

防御姿勢のまま歩き出した


しっかりと防御体制をとるアリスの後ろで

普通に歩いて付いて行く鉄雄は

気丈に振舞うも、微かに震えるアリスの姿を見た


アリスの鎧が小刻みに揺れているな

初めての実戦だろうから、本当は怖いんだろうが

強気に振る舞うなんて、さすが騎士の鏡!マジメだな!

どっかの変態に見習わせたいくらいだな


フフフ・・・守れてる

テツを守れてるわ私、なんでしょう湧き上がる快感を感じるわ

本物の狙撃、生死を賭けるような実戦、そして守るべき彼

こんな身近に、私の求める世界があるなんて

感謝するわテツ、さすが私が好きになった人だわ

フフフ、もっと活躍してテツに

「アリスがいれば、防御は完璧だな

 次の時も、どうか俺を守ってくれ、頼りにしているぞ

 いや、一生俺の事を守ってくれ」

そんな事を言われて抱きつかれたら・・・ああ・・・


アリスは、全身が震えるような快感が湧き上がる

緊張や妄想・興奮・快感に溺れ、冷静な状況判断はできず

陰ながら守られている事にも気づかかない


そう、まだアリスは現実が見えていなかった

これこそが、生死を掛けた戦いであり

時間制限のある、緊急依頼の救出作戦であり

拉致された人間が、どのような状況であるのかも

今、目の前の鉄雄が狙撃され死ぬことが在り得る現実に・・・・


そして

あの惨劇を見るまでは

事の重大さに

目の前に有る物こそが

現実であることに

アリスは気がつかない・・・・・




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