10話 いつもの日常
紫音は、目を覚す
見慣れた天井、身体に馴染むベットと布団
そして、オタク丸出しの部屋の風景
丸いアナログ時計は、そろそろ8時になろうとしている
そう、そこは紫音の部屋である
ただ、紫音の寝るベットの横で
薄い本を熟読する女性だけは
普段の風景とは違っていた
「あれ?シオンさん起きたっすか?」
「あぁ、おはよ・・・・・・・・そうだった・・・7:3メガネのやつの・・・」
紫音は、自身の精神を追い込んだ・・・
いや、すでにボロボロだったが、それにトドメを刺した井門に感心する
どんなことが有っても、完全に意識を失なわない自信はあった紫音だが
1時間程度だろうか?完全に意識を失っていたのだ
それも、リルや、マリアの様に、肉体的、精力的を削る訳でもなく
蘭さんや、鈴の様に、幼き紫音に刻まれた
トラウマや、威圧的プレッシャーで精神を潰す訳でもない
ただの言葉責めだけで、紫音の精神を削ったのだ
そんな事は、紫音の今までの記憶の中でも無かった事であり
その時は、その時で対処できなかったが、終わってみれば
それは、紫音にとって賞賛するべき事であったのだが
同じ目に合わしてやると、心に誓うのだったのだが・・・・・
井門と出逢った頃、紫音は何かにつけて井門をからかって遊んでいた
からかいすぎたのか、最近は多少の事では動じなくなった井門
今では、片腕を切り落とそうが、ため息混じりに
「紫音さん暇だからって
私の腕を切り取って火を付けて線香花火とか言って遊ばないでください
リルさん、申し訳ないですが回復おねがします」とか言いそうである
まったくもって、イタズラしがいの無い、7:3メガネである
学校は鈴の計らいで、仮病にて休みになったらしい
・・・いいのかそれで!クズクラスだから、いいのか!?
そして、思い出したように井門に電話をし
何時もの提示連絡と面白そうな話を聞くのだった
電話の後も、ゴソゴソと何時ものように過ごす紫音だったが
「暇だな・・・・マリア、ミカの所にでも遊びに行くか?」
「いいっすね!コレ持って行っていいっすか?」
そう言って紫音に見せたのは
紫音秘蔵のRー18同人誌の数々である
鈴に見つからないように隠していたのに
マリアは造作もなく見つけ出していた
「まて、それは【フランシーヌ・アカネ】先生のトッテオキのコレクションじゃぁねえかよ」
「男の癖に女々しいっすね、そんなに女の裸が見たければ
あたいの裸でも見てればいいじゃないっすか!!」
「お前には分からないのかよ、2次元の良さが
3次元の女にはない魅力が!!」
「よく言うっすよ!
パソコンの中には、3Dアニメのエロ動画もいっぱいあるじゃないっすか!」
「見んなよ!それに、画面は2次元だから、3D映像でも2次元なんじゃい!」
「ほう・・ならば、これは何なんすか?」
「フッ!よく見つけたな!
それは、元々3D映像を画像処理し
手の平サイズの立体映像を実現する代物だが
俺の魔改造を施したソレは
10視点からの交差投影映像方を使った
3D映像映写の他に、TV画面に移るリアルの人間ですら
自動で予測画像処理し、その人間の過去の映像から
全身像を作り出し、ほぼ実物大の大きさで
360度の立体映像を実現しうる代物!
そして、モーションキャプチャにより
その解像度と滑らかさと、ぬるぬる動く3D立体映像は
本物の人間がそこに居るかと思えるほどだぞ!
1億を超える金を掛けて作り上げた自信作だ!!」
「さすが変態!それを使ってエロ映像を立体映像で再現するんすね」
「ハッハッハハ!変態に不可能はねぇ!!」
「それはもう、3Dでもなく、ただの触れないリアルじゃぁないっすか!?」
「・・・・・・・・
映像には、リアル女に無い良さがあるだ!!」
「へぇ~?あたいの裸が、たかが映像に負けるって言うっすか!!」
その言葉と同時に、マリアは裸となる
空間転移・・・・自分はそのままに
自身が着ている服だけを転移させ一瞬して裸となる、マリアの得意技である
そして、それはベットに腰を下ろしていた紫音も巻き込まれる事となり
紫音は自分で服を脱ぐことなく、マリアに裸にさせられる
「さぁ見るっす!!この完成された肉体を!!」
体を大の字にし、紫音に見せつけるマリア
そこには、恥じらいも情緒も雰囲気も何もない!
だが、完成されたプロポーションには変わりはない
どんなグラビアより、美人と言われる芸能人より美しく
美の女神アフロディーデですら、嫉妬するかのような体に
10代の若き紫音の下半身が反応しないわけがないのだ
「・・・・・・・・・」
「ふ・・・シオンさん、下半身は正直っすね」
自身の下半身で元気に立ち上がった物を見つめ
「くそ、昨日死にそうになったのに
まだ元気なのかよ・・・・」
「では、いただきますっす!!」
「くそがぁぁぁぁぁぁあああああ
こうなったら、本気で行くぞ!
マリアかくごしやがれぇぇぇ!!!」
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
それは、さておき、紫音と井門の電話の内容である
紫音が再度井門に電話をかけたのは
賞賛する為ではない、ただ、電話の途中で意識を失ったから
井門の用事を聞きそびれたのだった
そして、井門に話を聞くのだが
朝一で入った情報も踏まえて井門は
詳細は後で書面で渡すといって、簡単に話していく
紫音は、幾つかの話を聞くのだったが
その1つの内容は
後に紫音が蘭に怒られるだろう内容でもあったから
紫音も頭を抱えるのだった
順序立て話していく井門、その話しは簡単で
大山の消滅と、人工衛星の消滅
これは国では同じ事件の可能性が高いと判断され
国と十士族が、行った緊急ヴァーチャル会議では
何かの新魔法の実験?の可能性が一番高いのではないかと結論をだす
それ以外にも幾つか原因と思われる話しはでたのだが
現実的に考えて、いや、先日のアメリカの件も合わせ
何かの攻撃ではと考えられたが、国家的被害が少ないため
会議では、情報を集めると同時に、現場調査を重点的にする事に決まる
その結果、すでに動いている自衛隊
国民発表は、事故処理、調査と言われているが
その陰では、十士族の部隊が動き出していると
そして、その情報は、紫音の母親である、蘭からの情報
そして、何故?蘭からの情報提供かというと
アメリカで起きた事件に対し
科学魔法の世界的有名である【三千風蘭 (みちかぜらん)】に対し
アマリカの警察、CIA他、各組織から調査依頼があり
蘭も行き詰った、現在研究中の事柄よりも
数キロに及ぶ、魔力の残骸に興味があり
乗り気で準備していた所での、日本でのこの事件
そして、早朝にも関わらず
十士族の魔術研究チームから、調査協力を打診される
いや、正確には、三千風蘭の学友である
十士族、八知家当主の娘【八知百希 (やちゆき)】
蘭の数少ない友人の1人でもあり
蘭が認める天才学者の1人でもある
いつもなら、百希個人が笑いながら手伝ってくれと言うのだが
今回は、自身の【八知】の名を使って蘭に協力を打診してきたのだ
それは国家レベルであり、十士族の魔法研究チームの調査と言う事であるのだ
それは日本最大レベルの研究チームに参加できるという話しでもある
蘭にしてみれば、自身の知識は日本レベルではなく
世界レベルである自負もある、それも世界十指に入る自信もあるが
蘭の知識欲は底なしである
そう、どこに蘭の知らない知識が転がっているか分からないと
十士族魔法研究チームが持つ未知の知識に
蘭は期待を膨らますのだった
その事は、百希も納得の事実でもあるし
百希にしてみれば、十士族の魔法研究チーム
それは、極秘ながら異世界の魔法研究や
異世界に通じるゲートの研究をしている
十士族の、三と六と八の名を持つ士族
【三成 (みつなり)】【六道 (ろくどう)】【八知 (やち)】
その3つの士族に、世界レベルの友人のお披露目する為でもある
そして、うまくいけば、自信達の魔法研究に引き込もうと画策してもいた
蘭は既に、魔法の後だと思われる湖のクレーターの調査を依頼されていたが
2つの出来事を、天秤にかけると
アメリカでの湖の調査も多少興味も惹かれるが
それは、すでに水が溜まり、採取できる情報は少ないと判断し
昔の学友から依頼があった、大山の調査を受ける事にしたのだ
そして、この日、井門は形だけの裏契約の為、蘭と合う約束があり
その約束の確認の電話でしたとき聞いたのだ
国家機密に近い事を、笑いながら話してくれたと井門は言ったが
それを平然と聞き出す井門の人間性は紫音にとっても謎であり
それは、笑いながら話したと言う、蘭さんも蘭さんであると・・・
後で、蘭さんに電話しよう・・・あれは、リルとギンがやったと・・・
怒られるよなぁぁ・・・・・
それは、朝一に入った情報であるが
井門にしてみれば、どう考えても
そんなバカな事をする人間は、紫音達位しか思い当たらなく
それを確認する為にも急ぎで連絡を入れたと言う事だ
そして、その他にも数個
紫音と言う人間が喜びそうな情報を井門は口にする
そう今回の面白そうな情報は・・・
ある人間達が企てる殺人計画
その為、人集めをしていると言う話しだ
そして、その話しは数日前に、井門まで来たらしい
肩書きは、いち会社員であるのが
井門は情報屋としても、交渉人としても裏世界では有名である
そう、その組織は、井門に戦える人間、それも平然と人が殺せる
そう、女・子供であっても、殺せる傭兵を仲介してくれないかと話を持ちかけたと
だが井門は、丁寧に断ったらしい
そして、宮城県のある小学生が、ある生物を捕まえたと言って
ネットにその映像をアップし、2日で再生回数1000万回を超え
密かに話題となった話しである
そして、その生物とは【カッパ】だと少年は言ったのだが
誰の目にも、その生物は【カッパ】ではなかった
そう、どう見ても、地球外生命体??だと見て取れた
そのカッパの話題性は、今週1位だと思われたが
アメリカの湖の件や、大山・人工衛星消滅の、2大大事件に
影を潜めた、可哀想な話として井門は口にする
そう、たった、それだけの話しであった
それでも、紫音は、世界を揺るがすような重大な話しより
そんなクズ情報の方が好きである
クスクスと笑い、悪巧みを始め
ネットを開き、カッパ動画の再生回数を1回増やすのだった
そして電話を切った後
一糸纏わない姿となった2人
肉体と肉体の、ぶつかり合いを始めて
すでに30分ほど経とうとしていた
「ハァ・・・・ハァハァハァ・・・・」
紫音の激しい息遣い・・・
「ふふふ・・・
シオンさん、あたいを満足させる程の1発まで、まだまだですよ」
嬉しそうに笑うマリア
「くそがぁぁぁ!!!!」
紫音は叫び用に腰に力をいれ全身を捻るように
左の掌打からの裏拳2連打
それを弾くマリアの腕をかい潜り滑り込むように肘打ちを繰り出す
「その動きは先程見ましたっすよ」
その言葉と同時に紫音は、マリアに肘と肩を掴まれ
紫音の勢いを殺さずより加速させ投げ飛ばす
真っ裸の紫音は背中から空間に作られた壁に叩きつけられた
紫音の部屋には、マリアによって立体空間が作られており
どれだけ暴れようと部屋には被害が出ないようになっているのだ
その為気兼ねなく、暴れる2人だったが
紫音はマリアに1発も入れれないまま
何十回と投げられていたのだった
「ハァハァハァ・・・・勝てる気がしねえ・・・・・が!」
不敵な笑みを浮かべ、一歩踏み出す
右足中段前蹴りからの左後ろ回し蹴り
笑いながら躱すマリア
紫音は体をコマの様に回転させ右足の回し蹴りを繰り出す
「その技の変化は3度目、やはり全般的に左足での攻撃が苦手みたいっすね」
「うるせえ!元々俺の得意なのは魔法戦だ!」
「ププ!魔力の無いシオンさんが、魔法戦が得意とか
あたいを笑わすなんて、なかなかやるっすね!」
マリアは紫音の右足首を掴み、笑いながら床に叩きつけるのだった
その反動で起き上がりながら右足での三連撃だがマリアは右手で全てを弾く
紫音は前のめりに体制を崩し、地面に手を付けて
「見え見えっすよ」
紫音の右手を足で払うマリア
本当なら右手を軸にケリを撃つはずだった
この連携は先日、鉄雄が高峰相手に見せた技の劣化版でもある
高峰が刹那の時間だが動きを鈍らせた技ならと、やってみた紫音だったが
「なぜわかった!」
「こける前から手を付く場所を確認してるっすから
そのあと何か有るだろう事は、誰でもわかるっす
だいたい、シオンさんは、殺気というか気配や覇気がダダ漏れっすからね
工夫なくして、あたいに1発入れるなんてムリっすよ」
「くそう!!!俺様の完璧な演技が!!!」
実は微妙な事を根に持つ紫音だった
「そろそろ、1発入れないと、約束の時間まで後少しっす
もし出来なければ今晩もあたいに付き合ってもらいますっすよ」
紫音は、マリアに押し倒されそうになった所で反撃に出たのだが
相手は、あの世界でシオンと肩を並べて戦って来たマリアである
今の紫音が勝てる訳もなく、それに乗じてマリアが
30分以内に1発入れなかったら
昨晩と同じく今晩も朝までコースの約束を取り付けていたのだ
紫音にしてみれば、何時ものノリでつい承諾してしまい
後悔の真っ最中の中その視線を、部屋のアナログ時計に目をやる
「そろそろ時間か、なら最終奥義を使うしかないな」
「最終奥義っすか!!地球儀っすか?臼と杵っすか?ギターすか?」
「分身の術だ!これからお前は、俺と俺の息子、2人を相手にすることになる!」
マリアは何を想像したのか、口元が緩み、軽く唇を舐め
「ならば、その息子は、あたいの下半身が相手するっすよ!!」
その言葉に目を閉じて軽く笑う紫音
目を開けると同時にマリアに向けて飛ぶ
まるで、アイススケーターの様に、トリプルアクセルを決める様に
体の芯で回転する紫音の息子はその遠心力で外側に引っ張られ
綺麗な軌道を描く
「奥義!輪廻中足亀頭振動脚 (まわしチンコ攻撃)」
「そうきたっすか!ならば!
奥義返し!中足亀頭口内包み (フェ・・オ)」
マリアは口を大きく開け、紫音の攻撃を迎え撃つ
紫音の奥義が、マリアの奥義返しの餌食になる瞬間
「息子覚醒!!」
紫音の叫びと共に、紫音の息子は遠心力を無視し
紫音の鍛え抜かれた腹筋に当たろうかと思われる位に勃起する
それにより、マリアは何もない空間を噛みちぎり
憂いを帯びたその瞳は、目の前を通り過ぎる紫音の息子を追いかけた瞬間
紫音が突き出した左膝がマリアの左頬にくい込むのだった
「ゲ!」
「にゃぁー」
「やりぃーーー」
紫音は両手を天井に突き上げ、倒れるように転がる
マリアも反対側から、頭を並べるように倒れこみ
「やられたっすーーーーーーーーーーーー・・・・・
やるっすね、目先に快楽を提示し釣れる瞬間に、おあずけし
意識を他に向けてからの意識外からの攻撃
免許皆伝っすね!シオンさん」
「何が免許皆伝だよ、マリアが、スケベなだけだろ
あんな技に引っかかるのは、マリアとリルだけだ!」
一部始終を見ていたコハクは
トコトコと歩いてピョコっと紫音のお腹の上に乗る
「にゃぁ~」
「コハクも言ってるっすよ
自分も引っかかるって!」
「コハク!ホモに目覚めたか!!!!!!
ボロボロになって動けない俺を襲う気か!!!!!」
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃぁぁあぁぁああーーーーーーー」
「「冗談の通じない奴だな」っすね」
「「ハッハハハハハハハハ」」
「さてと、コハク少し魔力もらうぞ」
紫音の使い魔
西表山猫をモデルに作り上げた【琥珀】
その基本性能は、マジックドレインによる魔力の蓄積である
そして今、紫音はその魔力を借り
マリアとの組手でボロボロになった体を治すのだった
これは回復ではない、部分的な肉体治療促進
この世界の紫音とあの世界のシオンが作り出した
現代の西洋医学と異世界の治療魔法を融合させた
オリジナル魔法の1つである
そう、紫音は魔法が使えないわけではない
魔法を使う為の魔力量(MP)が無いのだ
そして、光精霊の加護がない紫音にとって
この魔法を使うだけでも、莫大な魔力消費を余儀なくさせる
それでも、コハクの蓄積魔力の0.1%にもみたないのだが
普段なら回復など他人任せな紫音が、回復魔法を使った理由
一番の理由が、回復魔法を使える、リルとギンが居ない事だ
コハクは回復魔法を使えない
マリアは回復魔法を使えない
仕方なくである
そしてここに、この世界の人間が居ないので
紫音がどんな魔法を使おうが外にバレることはないからである
魔力量さえあれば、回復魔法も使える紫音だが
回復魔法では、肉体的経験値までも、それ以前の状態まで戻してしまう為
紫音は回復魔法を嫌う、自然治癒強化魔法も、完治まで時間が掛かると
作り上げたのが、部分的な肉体治療促進、それは回復ではなく治療である
自然治癒に近いが、この世界の紫音の無駄知識の1つ医療知識
その医療の知識と異世界の回復と治癒魔法を駆使し
作り上げた魔法である、失った肉体の回復はできないが
刃物等で綺麗に切断された肉体くらいなら、繋げる事位はできる
だがそれは、魔力量があればである
紫音は体の感覚を取り戻しながら起き上がる
時計の針は、お昼にはまだ早いと言わないばかりに主張するが
激しい動きをした、紫音とマリアは、リビングに足を向け
鈴が作り置きしてくれた
サンドイッチと、今日の弁当のオカズであった
卵焼きや、スパゲティーに箸を伸ばす
そして2人は、ミカに会いに転移していくのだった
そして、楽しく過ごす3人
ミカの手元には、紫音の秘蔵コレクションが握られていた
その頃、学園では、何者かから隠れ姿を隠す鉄雄の姿があった
朝一で、鈴から紫音が休みなのを聞くと
鉄雄は、なぜか裏切られたと思ったが
今、紫音と顔を合わせたくない気分でもある
学園前に到着した送迎バスを
眠たい目を擦りながら降りる鉄雄だが
そこに立っていたのは、漆黒の全身鎧を纏うアリスの姿である
「てつ、昨日用事があって (嘘である)
放課後探したんだけど、急いでどこいったの?
電話も出てくれなかったし?」
「・・・ちょっと・・・用事があってな・・・」
逃げるように早足で教室に向かう鉄雄
その鉄雄の背後で、何も言わずプレッシャーをかけまくるアリス
そして、教室まで付いてくる始末
それには、鉄雄も驚いたが
教室では、紫音の席に座る、アライグマの着ぐるみを着る、ニニス
そして、ニニスと楽しく話している鉄雄の席に座る
全身を燃えるような赤い色で統一した服を切る少女、カレラ
「あら、めずらしいわね、同伴出勤ですか?」
「いや、アリスは・・きにするな・・・」
鉄雄は、プレッシャーの中、額に汗を流し返事をするが
それは、アリスのプレッシャーをより強くする羽目になる
カレラは、一度アリスを睨みつけると
「まぁいいわ、それで、貴方に聞きたい事があるのだけど?
さて、昨日は急いで何処へいったの?
用事があって (嘘である)連絡したのだけれど?」
目の前から襲いかかるプレッシャー
それは、赤く燃えるような威圧
背後からは、全てを押しつぶすかのような圧力が襲いかかる
「そうそう、何処へ行っていたのでしょうか?」
鉄雄はカレラの座る自分の席に荷物をほおり投げると
両手で自慢のリーゼントを整えると
「ハハハ・・・それはな・・」と笑い
逃げ出したのだ!!
その行動は、カレラもアリスも予想外である
いや、一部始終を見守っていた、クラスメイトも
鉄雄が逃げるとは思っていなかったのか
一瞬クズクラスの時間が止まり
逃げた事を気がついた、黒い女性と赤い女性は
後を追って走り出したのだった
この一日、鉄雄は息を潜めて隠れ通すのだった
それでも、休憩時間の度に探しに来る2人に鉄雄の休息はない
学園のどこに隠れようとも近づいてくる2人
それは女の第六感がそうさせるのか
確実に鉄雄を見つけ出す
昨日の出来事を口に出せない鉄雄にとって地獄の時間は続く
そもそも、カレラとアリスに昨日の事を聞かれる理由すら
鉄雄には理解できない
そして、何を怒っているのかも理解できないのだ
だが、クラスメイト達は、そんな鉄雄達を暖かく見守る
次の日、やつれた鉄雄を前にして
何が起きたかと聞く紫音にたいして、笑いながら何も語らないクラスメイト
そう、ねんねな紫音に恋愛ごとは早い
お前は、ニニスと、おままごとでもしてろと、言わんばかりに
「しおんには、まだ早い」と
結局、紫音は、まぁいいやと、諦め
カレラと、アリスは、すでにストレス発散させ
表面上は平常運転に戻っていたが
鉄雄の行動を逐一監視していたのだった
だが鉄雄も鉄雄である、2人の監視の冷たい視線も2日目になると
慣れたもんで、完全無視である
元々他人の視線など気にする人間ではないのだった
そして今日も紫音は、自分の教室の自分の席で
マイマクラに顔を埋める
背中には、テナガザルの着ぐるみのニニスの体重を感じ
ハードロックと思われるキラのギター演奏を聞き
鉄雄とカレラの痴話喧嘩を耳にし
机からの振動で、アカネのペン先の動きを感じる
それ以外にも
クラスメイトの何気ない会話や
趣味に没頭する人間達の動きを感じながら
ふと思う
いつもと変わらない日常
それは紫音が願う平穏な日々である
だが、この一週間の間、巻き込まれたと言え
森での戦から初まり
倉庫での戦い
教室での茶番劇
高峰との訓練と
おもしろおかしく過ごしてきた・・・・・
そして紫音は小さく呟く
「平穏とか・・おもしろくも、クソもない・・・・・・」




