9話 DT卒!!!おめ!!!
静岡県のとあるマンションの一室
紫音は、リルから回復魔法を受け体力を回復させたのだったが
マリアに精神力を根こそぎ、吸い取られた紫音は
体と頭は元気なのだが、それに、精神力がついてこない状況である
その為か、動きは鈍く、紫音に生気は無い・・・
・・・・・・・・・
さほど、いつもと変わらない紫音がそこにいた
ベットの淵に座り、老人介護を受けるかのように
マリアに服を着せられる紫音は、その間に
ベットの横で、背筋を伸ばして静かに床に座り佇む
裸にロングコート姿の【リル】と
80cmほどの姿の【ギン】の2人に
風呂場から空間転移していってから
今までの経緯を簡単に聞く
その内容は、常識人なら、信じられないと頭を抱えるだろう
だが、それは現実に起きた事実であるのだが
紫音は、2人の仕出かした事を咎めはしない
ただ、どうにか動く、腕を動かし
かすれた声で、命令するのだった
「き・・・きん・しん・・・みっか・・・・!」
「な・・・なんでですか!!!」
「こーーーーーーーん」
「・・・・俺の・・・・平穏を・・・・かえせ・・・」
「「・・・・・・・」」
紫音は望む、後数年、ただ平穏に、おもしろ楽しく過ごせればいいと
そこに、過度のスパイスは要らない
ましてや、十士族?国際問題?国家権力?元魔王?そんなものは論外である
自分が楽しむため、多少の【おちゃめ?】や【イタズラ?】はするが
今の紫音は、基本的には平和主義者である
ただ、元魔王の【ギャルコレル】にした、イタズラで
数百人死のうが、それはソレ、これはコレである
涙を浮かべ、抗議するリルとギンだが、紫音は態度を変えない
そうして、2人は自宅謹慎3日を受け入れるしかなくなったのだった
普段なら、家に居たと嘘を付いて
別次元から紫音の後を付いてくるリルだが
ギンも同じく自宅謹慎となると
2人して謹慎と同時に、相手の監視役となる
リルがギンを買収しようにも
元々ソリの合わない2人の関係性では
それは、考えるだけ無駄であるのだ
そう、2人は、これから互を監視することで
部屋から出れなくなったのである
その事で喜ぶ人間もいた、そうマリアである
リルとギンが三日間の自宅謹慎を言いつけられたので
普段の紫音の世話もマリアがする事になったのだった
そして、紫音の自宅への帰りの空間転移はマリアが行う事になり
外出着に着替えた?いや、先程まで裸だったのだ
外出着を着た、と言うのが正解だろう
そう、外出着を着、準備を整えたマリアは
コンコン!と
高いピンヒールのパンプスの履き具合を確かめる
その姿は、紫音の手作りの、黒のスラックスに、高いピンヒール
男性っぽい雰囲気を醸しだすのだが
その上半身は、マリアの胸が強調されるように
紫音が仕立て直した、レディースのカッターシャツ
そして、ノーブラのマリアのスイカ級の胸を受け止めるために
ブラジャー替わりのカップ入り黒のベスト
胸元まで開けられたシャツからは
溢れそうなマリアの胸が、どうだと言わんばかりに存在していた
ミィーティアの、パンツスーツ姿は、出来る美人秘書風だが
マリアの姿は、宝塚から抜け出してきたかのような
男装女子、カッコイイ系である
そんな、マリアは、紫音を軽く持ち上げ
お姫様抱っこをし
「行ってくるっす!帰りは三日後!」
リルとギンは瞬時にその言葉の意味を理解するのだった
「ダメです!紫音様を毎日連れて帰ってください」
「コン!コココココン!!!!!」
「ムリっす!コチラに帰ると、謹慎の意味が無くなるっすから
帰らないっすよーーーーーーーー」
「そんな事を言って、本当は紫音様を独占したいだけでしょ!!」
「あたりまえっすよ!今まで、お嬢が独占してきたっすから
これからは、全てあたいのターーーーーーーーーーーーン!!
うひゃひゃひゃひゃひゃぁぁ!!!」
マリアは、リルとギンの言葉も聞かず
高笑いとともに、転移していくのだった
平日の火曜日の朝
鈴からの、メールで、今日は、家に鈴の父親が居るらしいのだ
シオンが紫音と1つになってから数年経つが
未だに、その事を知らない父親である
紫音にとっては、すでに説明するのもメンドくさく
なぁなぁで、、、流しているのだった
紫音が父親と顔を合わすのは、夕食の時か朝食の時だけである
それも、朝、夕、合わせても、週に6回ほどなのだ
普通に会話はするが、父親は娘激ラブなのだ
終始、鈴と話す父親の、話を割って入るほど紫音は子供ではない・・子供だが・・
だが、その為に、紫音は直接自身の部屋に転移できず
家の近くに空間転移し歩いて家に行き、玄関から家に入る事になるのだった
静岡の部屋から、家の近くに転移する、マリアと紫音
その刹那の時間だろうと、意思加速の使える2人には長い時間でもある
リル、マリア、ミーティア、ミカ、クラスの実力者なら
意思加速し、空間転移の出現地点の状況や周りの確認などは無意識にしている
そして今、マリアは、出現位置近くに居る1人の人間の気配と
1人の懐かしい、ある人間に近い生き物の気配を感じるのだった
全くの知らない人間なら、出現位置を変えるのだが
懐かしい感覚に、その2人の前に出現するのだった
突然目の前に現れた、死体を抱っこしたカッコイイ女性に驚き
少年は声をだした「うわ!・・・・・わぁ??」
もう一人の女性は、その転移してきた存在が誰なのか気づき
「お?マリアっち、おひさぁぁーーーーー」
両手を上げ、転移してきた人物に、ハイタッチを促すと
マリアも、久々にあう友人に応えるように両手をあげ、ハイタッチをするのだった
「ミカやん、おひさぁーーーーーー」
そして、二人は、キャッキャ!と
繋いだ両手を振りながら
久方ぶりの再会を楽しむのだった
だが、当然の如く、ハイタッチと同時に
地面に落とされた紫音の死骸がそこにあり
そのゾンビを化した、男のすがたに
乱れたリーゼントの男は、やっぱりお前かと、納得するのだが
今の鉄雄には、そんな事は、どうでもいい!
「紫音!あれだれ?おい起きろ、聞いてんのか?
おい紫音!起きろって、ッチ!殺すぞ!」
「て・・・・テツ・・い、、、、いっそ、、、ひと思いに・・・」
「生きてるじゃねえかよ、あのオッパイは?ちがった、あれは誰だ?」
「おおっと!そこの少年まったっすよ」
紫音より、先に反応したのは、マリアであった
そして、まるで歌舞伎役者のような口ぶりで
片手を前にだし、もう片方の手を頭の後ろに持っていく
足を一歩踏み出し、言葉を続けるのだった
「あっ!おっぱいと呼ばれてー、名乗らぬは、女の恥っす!
あたいの名前は【マリア】シオンさんに拾われ幾年月
今では立派な!シオンさん専用肉便器っす!」
啖呵を切ったマリアに、ミカは「おぉ~~」と拍手をするが
マリアの最後の言葉に、驚く鉄雄は
さっき、マリアが一歩踏み出した時に踏まれた紫音に向かって
「紫音!どういうことだ?」
「きに、、するな、、、脳みそ、、腐った、、、ビッチだから・・・」
「そんなに、ほめられても~~」
照れるマリアは、紫音を踏む足に力を込めて、グリグリと踏みつけるのだった
「こんな、おっきぃおっぱ・・・いや、かっこいい女性が?
紫音とヤッタ?紫音!本当に、このマリアさんと、やったのか????」
「・・・・・・・こいつは、ドSで、どっちかと言えば俺が被害者だ・・・
それよか、この時間まで、ミカとデートって、てつ・・・お前も?・・・」
「え・・・・・・・・・ぁ・・・・・」
紫音の言葉に、瞬間的に返せない鉄雄に助け舟に入る
それは、鉄雄の隣にいたミカだったが
その言葉は、助け舟に爆弾を投下する様なものであった
「テツっちの童貞もらっちゃいました、美味しかったです!」
その瞬間、鉄雄は顔を真っ赤にして、紫音から視線を外した
昨日の学校帰り、鉄雄はミカとデートをすると学校を後にした
そして、日が昇ろうとする朝早くに
ミカの車で、家の側まで送ってもらった、朝帰りの鉄雄
これはもう、言い訳できないレベルである
そして、ミカは基本、口が軽い
紫音の意味することを感じ取って、鉄雄の心情など関係なしに
食べちゃったぜ!と言わんばかりに答えるのだった
その衝撃的事実に
紫音は、ミカの元の悪魔の姿を想像し
てつに、あの姿は見せられないなと
ミカの悪魔だった姿を心に封印し
右手の親指を立てて
「おめ!」
それは、めでたいと、マリアは拍手しながら
「DT卒!おめでとうっす!
少年と呼んで悪かったっす
いっぱしの男だね、テツっち!」
そういうと、鉄雄の肩を、バシ!っと叩くマリア
ニコニコとしながら、ミカが
「マリアっちも、今度一緒にどう?」
「いやぁ~あたいは、シオンさん一筋っすから
それに、あたいの、エナジードレイン耐えれるのシオンさんだけっすからね
普通の人間では1分も持たないっしょ
一晩で数百回は死ねるレベルっすよ!」
「それほど・・・・一口ちょうだい・・・・」
「いいすよ!今なら、めんどくさい、お嬢も居ないし、ガブっと!!」
なんて恐ろしい話をしてるんだ、この2人は
てつを見ろ、顔を真っ赤にして、顔をあげて空を直視してるぞ・・・
よっぽど恥ずかしかったのか?
こんなてつは、レアもんだ!後でからかおう・・・
それに、マリア!
ミカは一口って言ってるが、軽く腕一本食べる気だぞ!
「ミカ待て!蓮にいいつけるぞ・・・」
「・・・・・・・・・・・・ケチ」
すでに、俺の左手を口元まで、運んでおいて
ケチは無いだろう!ってか、本気で食べる気だったのかよ!!!
クスクスと少しわらい、ミカは
「それでは、かえるねー」
「あいよ」
「後で遊びにいくっすね」
「あ・・・・ミカさん・・・・また・・・・」
「うん、テツっち、またホテル行こうね」
軽い挨拶を終えると、ミカは車に乗り込み、帰っていった
「てつ・・・・・おめ・・・・・」
シオンが、再度、お祝いの言葉を掛けると
鉄雄は顔を真っ赤にして、返事を返さず自身の家に向かって走り出した
その背中を、見送る紫音の心中は
やばい、カレラと、アリスの事伝え忘れた!!
まぁいいか・・・きにしない、きにしない!
さっきまで天国を体験してたんだ
学校に行けば、地獄が待ってるぞ、てつ
ん・・・・なんだ?・・てつの奴【モテ期】か!
このあいだも、高峰さんや蓮と戦った後
桜さんに、付きまとわれてた、みたいだったが・・・
だけど横から、かっさらって行った、ミカが勝者か?
まぁ、アレは蓮の物だし除外するにしても
DT卒で、一皮向けた鉄雄の今後の動きに期待だな
ハハハ、今後の楽しみが増える一方だな
紫音が、鉄雄の今後の事を考えてる間に
紫音は再び、マリアにお姫様抱っこされ
三千風家の玄関まで来ると
待ってましたかの様に、ドアが開き
そこには、鬼の形相の長い青い髪の小さな少女が立っていた
「おかえり紫音、それと、お久しぶりだねマリアさん」
マリアは、彼女の姿を見ると
紫音を横に投げだし、地面に膝をつき頭を垂れるのだった
「お久しぶりです、鈴様」
「お前ら、しりあい?」
マリアは、その腕で、横に転がる紫音の頭を地面に擦りつけ
「頭が高いっす、この方は、あたいの主人の妹君っすよ
礼儀くらいわきまえてくださいっすよ!」
「ああ・・・知ってるさ、お前の主人は俺で、鈴は俺の妹だからな・・・・
で、お前の主人に対する礼儀は、一体どうなんだ?」
「じょうだんは、顔だけにしてくださいっすよ
こんなのが、あたいの主人だなんて
あ!ホントだ、シオンさんだ!」
「こんなのって、なんやねん!!」
「わすれてたっす!シオンさん、あたいの主人だったっす!
いやぁ、なんかシオンさんの顔が非常食に見えてきて」
「人ですらねえじゃねえかよ!!!」
「こう、小腹が空いた時に、首元にカプっと噛み付いて
濃厚な生気を!!!!想像しただけで、お腹が・・
シオンさん、すこし食べもいいっすか?」
「これ以上すわれたら、マジで死んじまうわ!!」
ほっぺたを引っ張り合いしながら言い合う、紫音とマリアを見て鈴は
毒気を抜かれたのか、諦めたのかは、定かではないが
大きく息を吐き
「お父さんは、もう出かけたから
2人共、中入れば、マリアさんも朝食食べていく?」
「ほい、たべるっすよ!!
それから、何度も言ってますが、マリアと呼び捨てでいいっすよ」
鈴は、一度マリアの姿を上から下まで、ゆっくりと視線を動かすと
その完成されたプロポーションに、脳内で泣き叫びながら・・
「ムリ・・・・
後、朝食前に、紫音に説明して欲しいことがあるんだけど」
「ん、なに?」
3人は、リビングまで入り、鈴は無造作にテレビの電源を入れると
そこでは、一瞬デジャブに陥りそうな映像が流れる
緊急速報のニュース・・・・
その画面の上の見出しには
【消えた、鳥取県大山の頂上
そして消滅した、人工衛星機の行方は!!】
「これって、紫音でしょ!
よく考えれば、昨日のアメリカであった、湖にクレーター出来たのも
紫音が何かしたんでしょ!」
するどい!!だが、俺は一切手を下していない!
「ちょっとまて、俺は何もしてない!
そんな力はないって」
「ギンが居れば、あれくらいできるでしょ
それに、あれほどの力を持っている人間なんて
私の知る限り、数人しかいないんだから」
まったくその通りだ、ギンの魔力提供があれば、あれくらいは簡単だが
「よく考えても見ろ、あんなこと俺がする必要があるか?
蓮だって、やろうと思えば、あれくらいできるだろ?」
「蓮さんは、怖いけど良い人よ、あんなことする訳がないでしょ」
あっさり否定された、蓮・・・お前、良い人らしいぞ・・・
前の世界の蓮の姿である【魔王・雷帝・レイ】の姿を鈴に見せてやりたい
「こないだ、来たユーリもあれくらいできるぞ」
「あんな、か弱そうな人が、するわけ無いでしょ」
そのとうり、着ている服は奇抜だが
何時もギャル子の尻拭いをしている、かわいそうなユーリ
鈴は少ししか、ユーリと話してないはずだが、さすがに見抜いたのか・・
「他にも出来る人間はいるだろうに」
「うん・・・・
蘭さんは、研究所だろうし、実験でも、あんなに遠くまで行くはずがない
リルが、あんな馬鹿な事するわけないし」
腕を組んで、考え出す鈴・・・・・
蘭さん・・・あなたは、実の娘から人外だと認識されてますよ
大山を引き飛ばす程の力をもった人外だと・・・・
まぁ事実、合体集合魔法の実験とか言って意味不明な魔法で吹き飛ばしそうだが
鈴も分かってるから、遠出が嫌いな蘭さんが
遠いい中国地方の鳥取県まで行くハズがないと思ってるわけで・・?
近場だったら、蘭さんの仕業だと思うってことか?・・・
まぁ、いいや、鈴の中で、蘭さんは世界最強だからな・・・
あと、リルは・・
数秒の空白に耐えれなくなったのか、マリアが口を開く
「シオンさんは、やってないっすよ、ずっと、あたいと一緒だったすから」
おお、さすが、我がメイド、フォローしてくれるのか!
「そうなの・・・・・・・疑ってゴメン」
「わかりゃーいいさ、きにするな」
「でも、山を吹き飛ばしたのは、ギンで
衛生って奴を吹き飛ばしたのは、リルっすよ!」
「マリアァァアーーーーーーーーーーーー」
「しおんーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
時間は遡る・・・
風呂場で対峙する4人
紫音・ギン vs リル・マリア
そんな、タッグマッチが行われていたが
リルの転移で、ギンとリルの戦いの場は
鳥取県の鳥取砂丘にその場を移すこととなった
もともと、ここは、紫音の実験の場として今でも、たまに来ている事から
リルが転移先に何気なく選んだだけであったが
この日は、生憎曇り空で、月も星も眺める事は出来ない
薄暗い雰囲気の、砂丘だったのだが観光に来ている訳でもない2人
そんな暗き夜空の空中に転移してきた
80cm程の九尾の銀狐
先程まで風呂場にいた為か、裸のリルだったが
今は裸の上にロングコートを羽織っていた
それは、多少の恥じらいが有るのか?ただ単に物理防御を上げるためか
紫音の超振動の物理防御がそなわったロングコートである
少しの沈黙のあと、2人はその闇に紛れて戦いを始めるのだった
先に動いたのは、ギン
幾つもの魔力弾を展開させ
リルに向けて打ち出していくが
リルは高速で飛び、それを躱していく
リルにとって、ギンは戦いにくい相手でもある
ギンの最大の特性は、魔力吸収である
その為、魔力弾の様な魔力に偏った攻撃は全て吸収されるのだ
ギンにダメージを与えるには、物理に近い魔法攻撃か
単純に物理攻撃、または魔法の掛かった武器での攻撃が効果的である
リルは、右手を上空に掲げ、12本の、あるのもを展開させる
もしもの時【ギン】や【コハク】と同じような敵と戦うことを予想して
紫音が、あの世界の鍛冶屋に作らせていた物がある
それを改良して、リルが自分専用に作らした、クナイ
いや、クナイらしき物である
ミスリル金属で作られた、その長さは30cm
持ち手はなく、その9割を両刃の刀身とし
ケツの部分には、丸い穴が空いている
これが無ければ、大きささえ違えど弓矢の矢尻に近い形である
そして、その刀身には幾つもの魔術印が刻印されている
それは、紫音にさえ教えていない、リルの専用武器
名を【シオン様がたまに見せる突き刺さるような視線クナイ】である
リルは高速で飛びながら、右手をギンに向けると
その12本の、シオン様がたまに見せる突き刺さるような視線クナイは
不規則な機動を描き勢いよくギンに襲いかかるのだった
リルとギン、2人並びつつ、暗雲の中を高速で飛び続ける
たまに、音速を超え、ソニックウエーブを引き起こしながら
襲いかかる、クナイを魔法障壁で防御しながら
魔力弾を誘導させ、連続でリルを攻撃するギン
その攻撃を、機動力と、空間転移で避け続け
12本の、シオン様がたまに見せる突き刺さるような視線クナイを
匠に操作し、ギンを攻撃するリル
そんな、力の測り合いの様な、小競り合いは続いていく
リルにしてみれば、ギンを倒さないと、マリアにシオン様を喰われると
ギンも、早くリルを倒して、シオンを助けないと、と・・・
止め時も分からず、そんな小競り合いは、いつしか数時間を超える
暗雲立ち込める、曇り空だったが、ギンの魔法が炸裂するたびに
空は大きく光る、それが数時間も続けば、誰しもが気が付くと言うものだが
暗雲のおかげで、空に浮かぶ衛生からも、地上から見上げる人間にも
2人の姿が写ることはない
そんな時、2人の距離が開き、念話で
『ギン、そろそろ決着をつけましょう
シオン様が心配です』
『コン!』
同意し頷くギン
それを見た、リルは
人間の少女の姿から、15センチ程の妖精の様な姿に戻る
ギンはそれを見ると
体を震わせ、体長4メートルとなる、美しき銀狐の姿になる
先に動くはギン
大きくなった九尾を振るい、さっきとは違う魔力の塊を生む
桁外れに圧縮された魔力
1つの尾に対して、1つの属性を与えられた魔力の塊は
8種の輝きと1つの何かとして存在する
その1つ、1つが必殺の威力であるのは、リルも分かっている
すかさず、飛ぶ速度をあげるリル
追いかけるギン、誘導を掛け、1つの魔力弾を放つ
それは、水色に光る、水属性の魔力弾
それが、今小さなリルに襲いかかる!
だが、ギンは知らない、妖精の様な姿のリルは
精霊と対話出来ることを、各属性の上位精霊と対話できるリルにとって
魔法で作られた、属性攻撃はリルの前では無意味である
ただ、無敵と思われるリルであるが
より上位の精霊と契約している魔法には勝てない
蓮の雷属性の攻撃とかである
そして、リルが対話できる属性は、7属性だけである
ギンの発動させた9種の属性魔法
光・闇・火・水・風・土・雷・木、そして、、、もう一つ
この中で、リルが対話出来ない属性精霊は
闇と、予想は付くが、もう一つの属性
この攻撃は、リルでも無効化できないのである
そのために最大警戒を怠らない
一瞬にして、水魔法が無力化されたギンは警戒を強める
雷・土と連続して放つが、同じく無力化され
そして、正解である1つの過程にたどり着く
我よりも上位属性相手との契約
そして同時に、気が付く
リルの妖精の姿、その属性は光、ならば闇属性の上位精霊とは契約は結べない
そして、我の切り札である、アレは精霊や契約とは関係ない魔法
この2つなら、リルを倒せる可能性があると
最終局面に向けて計算しだすのだった
そしてリルは、15cmの小さな姿になったおかげで
精霊と対話でき、精霊魔法を使うことが出来るようになる
魔力での攻撃ではない、精霊の攻撃
それは、ギンでは吸収出来ないものも有る
リルは音速で飛びながらも
シオン様がたまに見せる突き刺さるような視線クナイを操り
ギンを攻撃しながら
「シルフ」と、小さく呟く
その瞬間、ギンの右前足が切断される
風精霊の力を使った、カマイタチ
出現場所は何処でも指定できる、ただの風の刃だが
半透明なソレは、地味で視認しずらいが、そこに有るだけで
十分な威力発揮する精霊魔法である
足を削られたギンは、その傷から、蓄積魔力が流れ出す
だが、短期決戦を迎えた今、魔力で前足を再構築するより
流れ出す魔力の消費の方が少ないと判断し、傷を直さず
何食わぬ表情で、リルを攻撃していく
だが、またも突然現れた、風の刃で、今度は木を司る尾を切断された
苦しそうな表情を浮かべるギン
その表情にリルは動きを緩め、両手をギンに向けて
シオン様がたまに見せる突き刺さるような視線クナイで
一斉攻撃に移るが
ギンは痛みを感じることはない、その表情は演技である
切り札の1つに、魔力を込めリルの背後に転移し
その魔力を至近距離で解き放つ
回避不能の攻撃と思われた、ソレは
リルの小さな体をすり抜け、飛んでいくのだった
それは、リルの絶対領域であり、無敵であり
紫音に、チートと言われるリルの性能である
目の前に居る、リルの姿は見えるが
その存在は別の次元に存在するのだ
そう、この小さな妖精の様な存在のリルに攻撃を与えることは
同じ次元に存在できないと、ムリなのだ
そして、リル自体は、別の次元からも、この世界に対し攻撃できるのだから
それは、チートと言われても仕方がない事でもある
ギンの切り札であった魔法の1つは
リルをすり抜けたのではない
元々、初めから存在しないリルに、当たるはずは無いのだ
だが、リルに当たらず、飛んでいった魔法は歩みを止めない
そう、その魔力の塊は、暗雲の中を突き抜け
暗雲掛かる、中国地方最大の山、鳥取県の大山の山頂に衝突するのだった
その塊に込められた魔力の属性は【無 (む)】
属性が無い、無属性ではない
全てを無に返す、無の属性の攻撃魔法である
ブラックホールの様な全てを飲み込む、闇属性ではない
ただ、無に返す魔法である、そこに精霊も契約もない
ただただ、存在しないのだ、これは、紫音やリルですら使えない
ギンが作り上げた固有魔法と言っても良いだろう、魔法でもある
そして、無の力は、大山の頂上付近を飲み込み
音も衝撃も無く、それを無と返したのだ
ギンが解き放った、無属性の魔力の塊が、リルをすり抜けた時
リルはギンに向けて両手を突き出していた
『さすがですね、もし人間の状態だったら、肉体は消滅してたでしょう
ですが、これで御終いです』
その言葉が終わる前に
リルの両手から全てを包み込むかのような光が暗雲の上の夜空を包み込む
リルの拡散系光精霊魔法、暗雲ですら浄化され
その後には光り輝く星空しか残らないはずであった
それはその筈、ギンが吸収できる魔力の攻撃ではない
全てを光の力で浄化する精霊魔法、そのうえ逃げられないように広範囲魔法
対、ギン&コハク相手の、リルの隠し玉の魔法である
だが、そこには黒い球体の中に、体をボロボロにしながら
3本の足で凛と立つ、ギンの姿があった
拡散系の広範囲光精霊魔法
それは、ギンの逃げ場を潰していた
どこに逃げようと、リルに感知され、その魔法は追ってくる
長距離転移で逃げる事もできるが
それは、ギンのプライドが許さない
瞬時にそれを理解すると
もう1つの切り札である、闇魔法に魔力を込める
大きくなった塊に、ギンは何の躊躇も無く飛び込み
闇魔法ごと防御結界を張り
リルの魔法を正面から受けてたったのだ
相反する属性を身にまとうことで
光魔法を防御したギンであったが
魔力の塊に飛び込むことで、自身もダメージは食らうのだったが
リルの攻撃を受けるより、ダメージは少ないと考えたのだ
そして、それは生き残るための数少ない方法の1つであった
そして、拡散系の為、一部に掛かる力は小さいと言っても
妖精型リルの、とっておき魔法である
そのパワーは、遥か遠く、地球の周りを回っている
人工衛生を跡形もなく消滅させるほどだ
そんな魔法を平気で使うリルも常識外れでもあるが
それを、至近距離で受けて存在している方も規格外でもある
『あれを受けても、存在しますか、さすがシオン様の使い魔ですね
ですが、魔力もそろそろ底を付くでしょう
もう降参したほうが良いと思われますが?』
『・・・・・・コン・・・・』
『え?』
ギンの言葉など分からないリル
ギンは戦闘解除し、その視線を
大山だったと思われる大地と、綺麗さっぱりとなった空に向ける
その意味を悟ったリル
そして、数分、静かに見合う2人だった・・・・・・
その後、2人は静岡のマンションに戻ると
何もなかったかの様に、ベットの上で
マリアのオモチャとなった紫音の言葉を待つ
紫音にしてみれば、帰ってきた瞬間
この状況に混ざると思っていたリルが大人しい事から
何があったか問いただすと
リルはそのままの事実を伝えるのだった
そして、時間は戻り
「どういうこと?」
「リルと、ギンが喧嘩してだな・・・
山が吹っ飛んだ、おまけで人工衛星もふっとんだと」
正座をさせられた紫音は簡単に説明するが
何故喧嘩に成ったかは言わない・・
立ちくらみで、倒れそうになる鈴・・・
視線をテレビに移し
【消えた山頂、行方不明者100人超え】
その文字に、何かを諦めたかのように
「はぁ・・・・まぁ、いいわ
それを知ってる人間は?」
「俺達以外は誰も知らないはず」
「もしかして、アメリカのアレも?」
「あれは、ユーリ達の主人の、ギャル子がやったらしい」
もういいやと、暴露する紫音
だが、鈴はユーリ達との別れ際を思い出し
「紫音、ユーリさんに何か渡してたよね?
アレが原因でしょ」
ジト目で紫音を見下す鈴の視線に
その通りと言わんばかりの、ドヤ顔を決める紫音がそこにいた
「ほんと・・・バカ!
それで、リルとギンは?」
「シオンさんに怒られて、自宅謹慎っすよ」
「そう・・・・・もう紫音が怒ったんなら、それでいいや
でも、もし私の知り合いが死んでいたら、地獄を見せるからね」
やばい・・・カレラやアリスの、プレッシャーなんて比較にならねねえええええ
「よく、言って聞かせますデス」
「はい、この話しは終わり、朝ごはんにするよ」
鈴は紫音に背を向けて台所に向かうのだった
あの状態の大山、行方不明=死者だろうけど
鈴も自分に関係なければ、さほど気にしないって事かよ!
人の事は言わないけどねと
この場に、リルとギンが居なくて良かったと思う紫音だった
そう、鈴の説教に巻き込まれるのは、勘弁願いたいと・・・
「やっぱ鈴さんのご飯は格別っす!!」
そんな言葉に、紫音は先程感じた疑問を投げかける
鈴とマリアが言うには、マリアが初めてこの世界に来た時には
リルの案内で挨拶にきたらしく、それから、何度か合っているらしい
まぁ、マリアに関しては、人型であり年齢と言う時間の概念がないので
好きなように、こっちの世界に来てもいいと、リルには伝えていたが
マリアが来ると、リルが俺といる時間が少なくなると言って
普段は用事がない限り、マリアを連れてこないだけである
その事を伝えると、マリアもリルと同じく
毎日、あの世界とこの世界を行き来すると言い出したが
まぁ、好きにすればいい!
俺の平穏を脅かさない限り
リルもマリアも、あの世界の街の連中も好きにすればいい
だが、マリアはリルの謹慎中は、静岡のマンションに帰ると罰にならないと
数日間この家に厄介になりたいと申し出る
笑顔で応える鈴・・・・
「なんでだ!!ことわれよ!!」
と心で叫ぶが、今の鈴を怒らすのは得策ではない・・・と納得する紫音だった
「そうだ、朝一で井門さんから電話あったよ
急いで連絡してくれって」
「あぁ、わすれてた・・・・」
ポケットから携帯電話を取り出して見ると
リルかマリアの仕業か、電源は落とされていた
やっぱり、昨晩のアレは計画的犯行かよと呆れる紫音
そう、ベットでの最中に電話が鳴らない様に電源を切っていたのだった
至って毎度の事でもある
電源を入れると履歴が井門で埋まっていた
「やぁ僕、緯度赤道!お父ちゃんなに?」
「何?では無いですよ!何やってんですか?」
「何?怒ってんの、お父ちゃん」
「昨日の、アメリカのクレーター事件
そして今日の、大山消滅と、衛生消滅
全部あんたが関わってることは分かってんですから!!」
「・・・・・・・・いや・・・あれは・・・」
「もしかしたらと、カマを掛けたらコレだ・・
本当に、なにやってんですか?」
「だまされた、緯度経度の癖に」
「急ぎの用事があって、連絡しても連絡付かないし
そして、この騒ぎ、それだけで確信しましたよ
本当になに世界地図変えてるんですか!」
「おお!俺って世界を変えた!もしかしてすごい!?
名前を出せないのが残念だなぁ~~ハッハッハッハッハ」
「はぁ?あんたは、【普通】の人ですか?」
グサ!!紫音の鋼の心に針が刺さる
「山を吹き飛ばすなんて、山が嫌いな【一般人】ですか?」
グサグサ!
「おまけに人工衛星?空から盗撮されると騒ぐ
小心者の【一般女性】か?」
グサリ!!!
「あれで、どれだけの被害が出たかわかってるんですか?
計算してみてくださいよ【普通の会社員】のように」
グサリ!
「アメリカの湖が大きくなって喜ぶ【その他大勢】ですか?」
ザクザクザク
この後、【普通】とか【一般人】や【その他大勢】と
普通を匂わす【ワード】を絡ませながら
まくし立てる、井門
紫音との付き合いは長く、紫音が苦手とする言葉を・・
いや、ただ単に紫音は
他人に普通と思われる事自体が精神的苦痛であり
普通であったり、一般的であることを嫌う
元々紫音に対し、悪口は褒め言葉でしかない
ならばと、井門は、紫音に対しある言葉を試したところ
紫音の苦手を知る事となったのだ
そしてすでに、その通話相手だった紫音は・・・
残った精神力を、言葉のみで削られていく
一晩中、マリアに生気を吸い取られ
鈴のプレッシャーの中、朝食を取り
そして、最期に、井門の言葉責めでトドメをさされ
紫音は椅子に座ったまま、ダウンしたのだった
マリアは紫音を、自室のベット連れて行く最中
笑いながら、鈴に説明するのだった
マリアは、紫音に久々に会えた喜びで、少しハメを外し
生きているのが不思議なほど、生気を吸い取ってしまったと
今まで、普通に話していた事自体が異常だったと
で、のこった気力は、鈴と電話の相手で無くなり
糸が切れたかのように、倒れたと
鈴とマリアの付き合いは長い、紫音やリルが思っている以上に
そして、違う意味で、マリアの本性を知っているのは
一目見ただけで、マリアの本当の姿を見抜いた鈴だけで在るのかもしれない
そして、この日、紫音は学園に通いだして初めて休む事になるのだった
この日、学園で起きたことを、紫音は知ることはない
それは誰に聞いても、視線を外し、口を開かなかったからだ・・・・・
そう、鉄雄は、この日1日で、いや学園に居た数時間で、5kgは痩せたのだった
紫音は思う、そこには俺が知っていけない【何か?】があったのだと・・・
そして、大山の頂上付近の消滅
行方不明者100人超、消滅に伴い死体すら見つからないのだ
その人数は、120から130人と報道されるが
これは現地の捜索隊に伝えられた最低人数と言われている
数機の人工衛星の消滅
日本で把握出来ているのは、5機であるが
日本以外の国は、その情報を開示しなかった
何かの情報操作が執り行われたと、報道は騒ぐが詳細は不明である
これらは同時に起きたと考えられ
前日にアメリカで起きた事件と共に
全世界で、原因不明の事件として
数日間大きく報道されることになるのだった




