14話 早食い、消化に悪い、コレ常識
カチャ・・・
それは、四条優美が、お昼ご飯を食べ終え
箸箱に箸をしまう音であった
「そんなに、急いで食べて?消化に悪いよ?」
それは、教室の中で机を合わせ
一緒に食べていた優美の友人達の1人である、三千風鈴が
いつもなら、ゆっくり食べる優美が
急いで食べたことに驚き発した言葉だった
そして、一緒に食べていた、小早川夏目も
優美の行動に驚き
「何か用事でもあるのですか?」
「先の休み時間に、旧校舎の場所を確認しましたので
今日こそ、紫音君を捕まえに、いえ、話を聞きに行こうかと
私も土曜日に、一緒に買い物に行けたなら
その場で、紫音君を捕まえれたはずなのに・・・
いえいえ、それは過ぎたことですから
今日こそは!」
「わわっあ!! (わかった!!)
わわひもふひひく (わたしもいく)」
「かんな、食べながら話さない」
ごっくん
夏目に怒られ
急いで口の中の物を飲み込む、山代かんな
そして、口元を緩め
「大切な事だから、もう一度言うよ
私も行く!!当然、夏目も、りんも、桜もね!」
「え?皆さんも行くのですか?」
「当然です!そんな面白そうなこと」
何を?今更と、夏目は笑いながら答えるのだった
その陰で、小さく口ずさむ鈴
「・・・行たくない・・・・・」
「見てください、鈴も、こんなに、嬉しそうではないですか!」
「だから、行たくない」
とても、イヤそうな顔で
目を細くして笑う夏目に、再度意思表示をする鈴
「照れ隠しですか?でも鈴に拒否権は無いのですよ
私達に、紫音君との接点は殆ど無いから
鈴が居ないと困るの、これも優美ちゃんと
私の為だと思って、きてね
ついでに、宮守君に昨日のお礼もしなければなりませんし」
可愛い顔で、鈴に微笑む、夏目であったが
みんなの為?どうせ、面白そうだから、連れて行きたいだけでしょ
大体、学校での、カッコ悪い紫音に、会いたくない・・・
でも、多分連れて行かれる・・・
そして、てっちゃんは、ついでなのね
大きくため息と共に諦め、夏目の申し出に
首を小さく縦に振る鈴であった
そして、口いっぱいに、昼ご飯を貯め
ほっぺたを膨らました、桜・C・ティオーノは
自分も行くと、言葉無く
椅子に座ったまま、全身を前後に揺らし、頷いていた
そして、5人全員が、お昼ご飯を終え
今、紫音の待つ、クズクラス・・2-Jクラスへ向かうのだった
*****
中等部校舎を抜け、学科等に入り
そこをも抜けると、築100年以上は経とうと言う建物が見えてくる
建ってから100年以上は時を刻んだ校舎だが
その、昔ながらの、校舎風の建物は
半ドーム状の中等部校舎より、頑丈な作りであり
その建物は、各所に魔法陣が組み込まれており
建物全体が、大きく魔法耐性と物理耐性を有しており
100年にも及ぶ
クズクラスと呼ばれる、Jクラスの、騒ぎに耐えれるほどであった
そして、古い建物であるがため、教室の向きが逆である
そう、学科棟から、旧校舎に入ると、廊下に対し
左手に教室があり、教室の前後に出入り口がある
本当なら、学科棟に近い方が、教室の前となるはずが
後ろとなっていた
*****
そして学科等を抜けると
桜が、リズムを取りながら、一足先に旧校舎に入っていく
桜にしてみれば、何度も来たことのある旧校舎でもある
鈴の静止も聞かず、楽しそうに行ってしまうのだ
桜の向かった場所は、3ーJのクラスであった
旧校舎に入り、3年の教室の後ろの扉から顔をだす桜だった
「こんにちわぁ~~おにいちゃんいるぅ~~?」
「桜か?行き違いだったな、蓮さっきでていったぞ」
「お!さくらちゃん、今日はどうした?」
「蓮か?食堂に行ってるぞ」
そう、廊下から、3-Jのクラスに顔を覗き込んだ桜に
数人の蓮の友人達が、桜の問に答えるのだった
ちょくちょく、遊びに来る桜は、すでに蓮の友人達にとって
かわいい妹でもあったのだが
丁度その時
桜の居るドアに背をむけて友人と話していた少女がいた
その少女は、クラスメイトの【桜】の言葉に反応する
そして勢いよく振り向くと
大きな声で、桜の名前を呼びながら
そのセミロングの茶髪を揺らし
桜に駆け寄り、飛びつくのだった
そして桜の胸に飛びついた少女は
桜の大きな胸に顔を埋めるのだ
桜にしろ、少女にしろ、2人にしてみれば
いつものスキンシップなのだが
それを、初めて見た、3-Jのクラスメイトや
丁度、旧校舎に入ってきて、桜に飛びつく少女を目の辺りにした
優美・かんな・夏目は、その光景に驚くのだった
そう、それは
可愛らしい少女に
可愛らしい少女が
可愛く胸に飛び込んで
愛らしく、ハグする
とか!?
そんな可愛いものではなかったのだから
そう、桜に飛びついた少女
彼女は【鼓道場】に通う生徒である
そこは、実戦を想定した、武道を教えてはいるのだが
この道場に、決まった型などはない
空手だろうと、柔術だろうと、剣道だろうと、魔法であろうと
なんでも有りという、かわった道場であり
ここに通う、人間も、子供から大人
はたまた、一流の武道家までいる始末である
だからこそ、ここでの、練習や組手は、学校で行われる
スポーツや、部活と言われる、生易しい物ではない
そう、この道場に通う人間は、一段階上の力を有していた
そして、この道場に通う、蓮の同級生は3人いる
その内の紅一点である彼女の名前は
【岩羽彩七 (いわはねあやな)】である
5人兄弟の4番目で、次女である
彩七の兄達が、先に鼓道場に通っていたため
小学生に成る頃には、鼓道場に通いだし、すでに8年近くなる
クラスメイトの3人の内では、一番長く道場に通っている彼女は
同じく、道場に通っていた歳の近い桜や、その友人の姉的存在でもあった
そう、彩七は、桜を確認すると、蓮が居ない事を思いだし
今なら桜を独り占めできると
まるで、ここが鼓道場であるかのごとき・・・勢いで・・
彩七は叫ぶ
「さぁぁぁぁあああーーーー」
そして、デバイスを起動させ魔法を使う
【スピードシフト・オン】
彩七の兄が改良した、速度強化魔法である
約2.5倍まで、強化された速度で地面蹴り上げる彩七
「くぅぅぅぅぅうう」
そして次の足を地面に付けるまでに
次の魔法を展開させる
【ポインティング・グラビティー】
これも、彩七の兄が改良した、物質保存系魔法である
彩七が、地面に足を付けると、その場所に展開され
次の瞬間には七色の光の粒を残し、魔法はハジケ飛ぶ
ただ、光が出るのは、兄が趣味で付け足した彩七専用の物であるのだが・・
その魔法は、一瞬だけの位置固定魔法、それにより彩七の足は地面に固定され
その摩擦係数は跳ね上がり、どれだけの力を掛けようと、滑る事はない
それにより、全ての力を地面に伝え蹴りだす事ができるのだ
彩七は、スピードシフトで強化された、スピードを殺す事無く
次の足を踏み出せ、驚く程速く走れるのだ
これこそ、紫音が目指していた、肉体加速3倍以上で
砂漠の上を自在に動ける魔法に近いものであった
そう、彩七は、砂漠の上であっても、速度強化のまま
最大値の速さで走れるのである、そして、その走り抜けた後には
七色の光の粒が、その速度で巻き上げられながら消えていくと言う
彩七の兄が、趣味で付けた、おちゃめ機能つきである
「らぁぁぁぁぁあああーーー」
そして、最後に大きく床を蹴って
桜に飛び込むのだが
【シフトチェンジ・ハードシフト】
そう、今まで使っていた、速度強化に似た魔法から
硬化魔法に似た魔法に切り替える
これにより、彩七は筋肉を硬化させ
桜に突っ込むのだ
距離が近かったため、数歩での加速である為
そこまで速度は出ていなかったが
時速40キロ近いの速度の筋肉の塊が桜に突っ込むのだ
軽い交通事故では、終わらないレベルである
桜も避けようと思えば、避けるのだが
今まで一度として、彩七の抱擁を避けたことはない
そう桜も桜で、自分に飛び込んでくる彩七を視界に入れると
すかさず、右足を半歩引き、自身に肉体強化魔法を掛ける
つい先日朱莉親衛隊、隊長と名乗る【児玉三郎】相手ですら
何一つの強化魔法を使わなかった桜だが
彩七の、抱擁を強化魔法無しで受け止めるほど、バカではない
桜は強化魔法を使い、素早く息を吐き丹田に力を貯める
そして、彩七を受け止める腹部に気を貯め、完全防御姿勢で
両手を広げ、抱擁の準備をするのだった
そこに七色の光を撒き散らし、満面の笑顔で飛び込む彩七
桜は、心良く彼女を受け止めるのだった
そこまでした桜であっても、その体は50cmほど後ろに持って行かれた
そして桜の大きな胸に顔を埋めその感触を楽しむ彩七
「桜ちゃーーん、おひさぁーー
知らない間に、すごく強くなったねぇぇ
最近クラスにも、道場にも、遊びに来てくれないから
会えなくて寂しかったよーー」
「あやねぇちゃん~おひさぁ~~」
彩七は、そのバカげた抱擁とハグで、桜の体をさすりながら
桜の強さを感じていたのだった
そして桜に縋り付くように抱きついたまま
桜の胸から顔をあげて
「蓮に用事でもあったの?」
「無いぃぃぃ~隣にようじぃ~~」
「そう?2ーJに?姫に用事?」
「うんとねぇ~」
2人の話している間に、3-Jの女子生徒達が集まりだした
そして、みるみるうちに、桜は教室のドアの所で10人ちかい女子に囲まれていく
いつもなら、桜は蓮の側に行き、男子生徒に囲まれるのだが
今日は、その蓮がいないのだ、ココぞとばかりに、集まる女子生徒達だった
桜は
「ともだちぃ~のぉ~ともだちぃ~~がぁぁ~~・・・・」と
隣のクラスに遊びきた友人の付き添いの付き添いだと説明しようとしていると
半分教室に連れ込まれた、桜の後ろを通る
この校舎に不釣り合いな人物が居た
それは、学園でも指折りの有名人である、女子生徒
そう、十士族1つ、四条家の長女、四条優美である
彼女は、桜に群がる、3年の女子生徒に向かって、軽く会釈をすると
2年の教室を目指すのだった
その洗礼された華麗な姿に、3-Jのクラスは一瞬動きを止めるほどである
そして、どこともなくから聞こえて来る声があった
「桜、先に行っとくからね」
「はぁ~~いぃ~」
それは、廊下側にある窓
それは床からの高さが1メートルほどの場所から上に取り付けられており
その開けられた窓からは、顔の半分から上と、青い髪と大きなリボンだけを覗かせた
声の主であろう人物が、廊下を歩いて行くのだった
その少女も、一部では有名人であり
その身長と髪型とリボンだけで、それが誰かは解ると言うものであった
いや、桜と優美とくれば、もう一人の有名人が居て当たり前なのだ
そう、1人1人でも、有名でもあるが
その3人が、一緒に居る事で、その知名度はより絶大でもあった
3年の教室では
四条優美が、旧校舎に来た事を驚き
口々に、思いを口にだし、ざわめいていた
その会話は、優美や鈴の耳にも、微かに届くのだが
等の本人の、四条優美にとって
他人の目や、他人の会話など眼中にない
3年に対して、会釈をしたのも
友人である桜の知り合いだからこそであり
もしも桜が、そこに居なければ、3年に・・・
いや優美は、関わりのない人間達に会釈などする事など無かっただろう
だが、内心は、桜に抱きついていた女性に驚いていた
それは、かんなと夏目も同じである
それは、桜が強化魔法を使ったことだ
シミュレーションでは、魔法を使うが
デゥエルや対人戦に置いて、桜が魔法を使ったところを見たことがないのだ
そう、それは、桜が魔法を使わないと対応できないほどの相手
それまでの過程を見てはいないが
強化魔法を使った桜は、50cm程ではあるが押し負けたのだ
そう、そんな人物を3人は知りえないのだ
3人の中で、桜は中等部最強クラスだと確信があるのだ
接近戦において中等部最強と言われる、生徒会副会長【草壁大樹】
その草壁と同じ強さを誇る、児玉三郎に強化魔法なしで戦える桜なのだ
その桜が、強化魔法を使ってまで相手をしないといけない人物が
3-Jの・・・学年最下位クラスにいるなど・・・
信じられない事であった
だが、夏目だけは、違うことに考えていた
桜の兄、蓮さんも、Jクラス・・・
確か【拳聖・鼓仁】の孫にあたる・・・鼓道場か
たしか、3-Jにも、鼓道場に通う人間がいたはず
彼女が?その1人?
それに、クズクラスが変わったのは
蓮さんが中等部に上がった頃?
何かの関係が?
もう少し調べる必要がありますね・・・・
そして、桜を抜いた、4人は、2-Jのクラスに足を進めるのだった




