11話 それからの 3人娘
「それじゃぁ、アキバいくぞーーーー」
元気いっぱいの、かんなの声に、否定的な少女がいた
「えーーーその前に、お腹減らない?」
声の主は鈴であり、それに賛同する夏目のすがたが、そこにあった
「なら、先に食べていきます?」
「だねぇ、かんなのオススメの所ってある?」
「なら、鈴ちゃんが、あまり外食しないらしいから
新宿あたりの、オシャレな店いってみる?」
その言葉に目を輝かせる鈴
そして、3人は、新宿に繰り出すのだった
楽しく、女子トークを広げながら、かんなに付いていく2人
何時しか、通りに面した、オシャレなお店につく
お店の名前は【TonTocoTon (トントコトン)】
その、ガラス張りのお店は、外からも、中の様子が見て取れた
オシャレな店ではあったが、中に居るお客は
若いOLから、女子大学生、高校生や、カップルが見て取れた
男性客もいるには、居たが1割ほどであった
鈴は、見た目の、高級感とオシャレな店構えから
お金持ちが来るような高級店だと、一瞬びっくりしたが
かんなが言うには、学生向けの、リーズナブルなお店らしいのだ
かんなと夏目は、普段から、色々な店に食べに行っているらしいが
鈴は、こんな都会のオシャレな店に入るのは初めてである
鈴が普段一番良く行くお店は、古ぼけたお食事亭【鈴蘭】か
年に数度、祖母である【三千風棗】に
連れて行ってもらう、一般客お断りの高級料理店ばかりである
そこでは、緊張もしない鈴だが
なぜか、今は緊張で、お店に入るその足は震えていた
3人は、ちょうど空いた、窓際の席へと通された
テーブルを挟んで、2対2で座れる4人掛けの席
鈴が先に座ると、その隣に飛び込むように、かんなが座る
そして、テーブルを挟んだ反対側に夏目が座るのだった
今日は、かんなの奢りであり
好きなものを食べていいよの一言で
3人は、メニューを見ながら
キャッキャッ、と楽しそうに、選ぶのだった
全て、横文字で書かれたメニュー
それを、和訳しても、商品と関係性がまったく分からない鈴は
小声で、その思いを口にする
「世の中は、生まれ変わった!!ここは、私の知らない世界!!」
そんな事はないと、かんなは言い放つ
「名前なんて、飾りだ、美味ければそれでいいんだ」と
鈴は笑いながら、メニュー表にのっている
美味しそうなパンケーキと、アイスティーに決めた
ちなみに、名前は覚えてさえいない
かんなは、手を上げて、店員さんを呼ぶ
席に案内してくれたのは女性だったが
注文を取りに来たのは、お店の制服だろう
黒と白の清潔感溢れるオシャレな洋服を着た、20歳前後の男性である
軽くお辞儀をすると、まるで執事の様に
「お嬢様方、ご注文はお決まりでしょうか?」
かんなと夏目は、少し頬を染めて、注文をするのだった
ちなみに、私の分も、かんなが注文してくれた
「あの人格好良くない?」
「うん、モデルみたい」
「・・・・・ふーーん・・・」
分からない?今の人カッコイイだろうか?
「ん?鈴ちゃん、あの人格好良いと思わない?」
「どうなんだろう?普通?」
「鈴のタイプってどんな人?顔のタイプとかある?」
「タイプ?・・タイプかぁ・・・・」
「マッチョとか?痩せてるとか?強い人に守ってもらいたいとか?
知的な人?金持ち?芸能人とか?お父さんとか?」
「なんだろう?それでも、カッコイイ方がいいけど・・・
しいて言うなら、紫音より、まともな人?」
「・・・・・それって・・・」
「鈴ちゃん・・・・・気分悪くなったら、ゴメンだけど
レベル低くない?」
「・・・・・・・・・・低い・・・よね・・・やっぱり」
まぁ、学校でのあの姿を見る限り、最低クラスなんだろうな・・・
「ごめんね、でも、いい噂きかないし、クズクラスだし・・・」
「あ! 気にしてないよ、だって、あんなんだしね」
でも、2人が、シャキっとしてる紫音を見たらドウナルンダロウ?
優美ちゃんと、桜が見た紫音は
全裸コートだったし、髪型もセットしてなかったし
中途半端だったけど・・
・・・・・・・・どうしよう・・・・
カッコイイ紫音の姿を、みんなに見せたくない
いや・・・レベル低いって言われるのも、釈然としないから
半分ほど、カッコイイ紫音なら見せたい・・・・・・ん?
イヤ、違うって、紫音が、カッコイイのを自慢したいんじゃなくて
イヤ、自慢したいんだけど・・・なんか・・・・こう・・・
あぁぁぁああああ・・・釈然としない・・・・
うん、紫音がカッコイイ事を知ってるのは、私と、くーちゃんだけでいい
うん、誰が何と言おうと、紫音はカッコイイんだから
ん?違う違う
だから、紫音は、カッコヨクないって
ちょこっと、人より強くて
ちょこっと、なんでも出来て
ちょこっと、頼りになるだけだもん
あんな、適当な変人、カッコイイわけないもん
うん、うん
「鈴ちゃん?何一人で、首を縦に振ったり横に振ったり、百面相しているの?」
かんなの声で現実にもどされ
何故だか分からないが、焦って・・
「え?・・・何でもない、何でもないって」
そんな会話をしていると
カッコイイ店員さんが、美味しそうな食事を運んできた
かんなも夏目も、照れくさそうに受け取り
3人は、別々の物を注文していて、シュアしながら、楽しく食べるのだった
カッコイイ (?)店員さんが居て、オシャレで食べ物も美味しい
流石、天下の新宿のお店だね~
そんな事を思いながら
鈴の頭の中には、今食べた食べ物のレシピが高速で描かれていた
食べ終えた後、楽しく喋っていた、かんなの動きが止まる
きになった、鈴と夏目は、その、かんなの視線の先に目を向ける
そこには、なぜ?と、今まで気がつかなかったと言わないばかりの
大きなポスターが在ったのだ
「超絶人気シンガーソングライター【IA(イア)】が絶賛オススメする
期間限定【ベリーベリーベリープリンパフェ】」
それは【IA】がパフェを美味しそうに食べる
サイン入りポスターであった
昨年の夏に、デビューした、女性シンガー
今もっとも有名な、歌い手であり
彼女のラブソングは男女問わず、10代から30代に絶大の人気を誇っていた
その中でも、有名な曲は、デビュー前に動画サイトに上げた
片思いの少女の切ない想いを唄った
【Yours ever】
動画サイトで徐々に人気の出た、この歌は
瞬く間に、5千万再生を超え
彼女は、高校を卒業後、メジャーデビューをする事になった
かんなも、夏目も例外でなく、IAの大ファンでもあった
「イアが、進めるなら、食べなければ!!」
「ですね!」
「ぷっ!まだ食べるの?」
「スィーツは別腹ですよ、鈴」
真顔で答える夏目
かんなは、手を上げて
先ほどのカッコイイ店員を呼び
またも、照れくさそうに
「ベリベリベリープリンパフェ3つ!!」
てか、私も食べるのかよ・・・・
店員は、ニコリと、かんなに微笑むと、奥に消えていった
数分後、それは運ばれてきた
バニラアイスの土台に大きめの自家製プリン
その上に散りばめられた宝石は
ブルーベリー、ストロベリー、ラズベリー
そしてホイップクリームで飾られた、美味しそうなパフェであった
かんなは、逸る気持ちを抑えながら
スプーンでプリンとブルーベリーを掬うとと口に入れる
「ん~~~~~~おいしぃい~~~」
それに続くように、夏目も鈴も、パフェにスプーンを入れるのだった
楽しそうにパフェを食べてた、3人の前に突如現れた
黒く・デカく・図太い物体!
突然の事に、ビックリする、かんなと夏目
パフェを食べる、その手が止まったのだが
鈴にしてみれば、ほぼ毎日見ている、アレであり
驚く程の事はないが、このオシャレな店に不釣り合いなアレであった事は確かである
アレは、軽く揺れると言葉を発した
「よう、鈴!美味しそうな物食べてんな」
「てっちゃんこそ、なんでここに?」
そう、アレとは、宮守鉄雄の、自慢のリーゼントである
「あぁ、こっちに遊びに来たら
美味しそうなパフェ食べてる鈴が見えたからな
俺達も食べたくなって入ってきた訳だ
おっと、小早川に山代、久しぶりだな」
「俺達?」
「宮守君ひさしぶりです」
「小5以来だっけ?よく覚えてたね?」
「そうか?、俺の方は
お前らが鈴と居る所を良く見かけるから忘れはしないさ
あっと鈴、紫音も来てるぞ」
指刺した場所には、すでにテーブルに着いた、風変わりな男の姿があった
そう、このオシャレなお店で、異様な雰囲気を漂わす一角
そこには、テーブルに倒れこみだらけている姿の紫音の姿が有り
店のお客は、嫌そうにその姿を見るものや
完全無視を装おっていた
その姿を見た、鈴は恥ずかしさで、顔を真っ赤にするのだった
誰も何も言わなければ、2人の関係性など分かりはしないのだが
「知りません、あんな人、兄でも家族でもありません」
それは、家族であり、兄である事を暴露しているような物であった
「悪い悪い、他人の振り他人の振りって事で、2人ともまたな」
そういって、鉄雄は3人から離れ、紫音の待つ席へと戻っていった
「鈴ちゃん、さすがに今のは、紫音君傷ついたんじゃない?」
「鈴・・・・」
「いや・・だって・・・紫音がカッコ悪いのが・・・悪いんだもん・・・」
徐々に声が小さくなっていく鈴だった
そして、紫音の念話が届く
『いよ鈴パフェうかいか?』
『そんな事より、シャキっとしてよ
カッコイイ紫音なら、みんなに自慢できるのに
なんで、そんなダメダメなカッコするのよ・・・
私の立場も考えてよ・・・』
『そうか?
この姿も、イケてると思うんだがな
それに、関わるつもりはなかったんだが
鉄雄に無理やり店に入らされてな
鉄雄がそっちの2人と知り合いらしいな
まぁ俺達の事は無視してくれ』
『・・・・こっちこそ、ゴメン・・・言いすぎた』
『きにすんな』
『・・・ごめんね・・・』
そして、かんなと夏目に声を掛ける
「ごめんね、あんなんで、あまり関わりたくないでしょ
早く食べて、アキバに行こうか」
空元気な鈴に、申し訳なさそうに返事をする2人だった
食べ終えた3人は、席を達レジに向かう
レジに居た、女性の店員さんが
「お会計は、あちらの方から、頂いております」
そういって、鉄雄を指さした
それに気づいた鉄雄は、3人に両手を合わせ、謝る仕草をするのだった
そうして、3人はお店を後にし
当初の目的であった、アキバに向かうのだった
「鈴ちゃん、宮守君って、もしかしていい人?」
「どうだろう?」
もしかして?・・・今までどう見ていたんだろう?
「いや、普通友達だからって
たまたま店で在ったからって奢らないでしょ?」
「う~ん、私が、あんな態度とったから・・・
悪いと思ったんじゃないかな・・・」
「でも、全部で5000円超えてたし、大丈夫かな、悪い事したかな」
「たぶん、気にしてないと思うよ」
たぶん、お金出したのは、紫音だろうし
てっちゃんだったとしても、そんな事、気にする人間じゃないし
あの2人金銭感覚、元々おかしいから・・・
「今日晩、宮守君と合うんでしょ?」
「うん、夕食、食べに来るって言ってたからね」
「お礼いっといてね」
「私の分も、お礼いっといてください」
「うん、伝えとくね」
「鈴・・・・」
「なに?なっちゃん?」
「もしかして、紫音君と仲悪い?」
あぁ、さっきから、言葉少なめだったのは、私の言葉きにしてたんだ
「仲いいよ、見た目あんなんだけど
根暗だけど、正念悪いけど、オタクだけど・・・
そ・・・・それなりに、いいとこも在るんだよ」
「フォローになってないよ、鈴ちゃん」
「だって・・・あんなんだし・・・・だけど・・・ちゃんと仲いいよ」
「そうですね・・・良く良く考えてみれば
紫音君の・・・まぁ、見た目の悪口や噂は、いくつか聞きますが
性格や行 (おこな)いに関しては、悪い噂を聞きませんね
というか、見た目が先行して
中身に関しては、関わりたくないと言うのが本音なんでしょうが
あ・・・ごめんなさい」
「いいよ、紫音に関しては、もう諦めてるしね
あんな変人でも、一応は、自慢の兄だからね
終わり、終わり、この話は終わり
かんなは、何を買いに行くの?」
かんなと夏目の頭の中に
このなんでも出来る鈴が言い放った、自慢の兄?その言葉
自慢・・・?、なんだろう、何か凄いところがあるのだろうか?
何一つ、思い当たらない・・・・が
かんなは、そのへんは夏目が情報集めるだろうから
今は・・・・鈴の問いに答えるのだった
「ああ、MJー165Sっていう、ジャイロを買いに
2年前の新古品が7個も入荷したらしくて
今日来るなら特別特化で安くしてやるって
これはね、今の最新型の原型となったセンサーで
それまでのシャイロ・システムと比べて
性能が約2倍に上がっただけでなくて
一番の特徴が、半分以下までなった、その大きさなの
165ってのが、大きさで
正式名称が、マイクロ・ジャイロ、16.5ミリ、シングル
当時1個、10万はしたんだけど、今なら1個3000円
最新型が、中古でも、1個3万はするから、お買い得なのよね
7個もあれば、あの子達に丁度使えるしね」
「うん、良くわからないけど、いいもんなんだね」
「それはもう、私の作る子達は、全てジャイロを組み込んであるしね
その性能が良くなれば、バランスや、移動から、その全てがスムーズに成るし
その速度は、かなり上がる計算なんだよね」
とても、嬉しそうに語る、かんなだった
夏目は、何時もの事だと、適当に相槌をうつ
鈴は、意味も分からず、へ~~とか ほ~~とか、返事をするが
内心では
やばいな、紫音と趣味が合いそう
2人が居る前で、機械系の話は、タブーとしよう
そう、心に決める鈴であった
そして、アキバの煌びやかな通りをぬけ
裏路地に入っていく、かんな
当たり前の様に、付いていく夏目
だが、鈴は、初めての場所、薄暗い裏路地
恐る恐る付いて行くのだった
そして、かんな達は、とある店にはいる
そこは、かんなの趣味全開の店
部屋全体が、鈴には理解出来ない機械の部品が並んでいた
それは、狭い店内に、積み重なる様に
いったい、いつから有るのか分からないほど
埃をかぶった物まであるしますだ
あぁ、紫音が此処に来たなら、一日中その瞳を輝かして喜んでいそうだね・・
店内を見渡しながら、そんな事を思っている内に
かんなの買い物は終わったらしく、夏目に連れられて来た
店長との長話を、夏目が無理やり中断させたらしい
ほっとくと、何十分でも話こむらしいが、今日は鈴が居るからと
夏目が止めたと、グッジョブである、私は、ここから逃げたい・・・
今まで、私は知らなかった、一切興味の無い場所に
ただ、何もせず居る事が・・・これほど、苦痛だとは・・
そして、よかった、夏目のおかげで
お日様の下に出れる・・・・
無事、買い物を終えた、3人は
鈴の夕食の準備の時間まで、楽しく遊ぶのだった




