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アンタッチャブル・ツインズ ~転生したら双子の妹に魔力もってかれた~  作者: フラック
第2章 中等部模擬戦篇 第1部 きぐるみ幼女なの!
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8話 彼女は柱に張り付く、ただ柱に張り付く



 

その男は、必死に走っていた、そう、その言葉の通り

必死な形相で



天童魔法学園

その敷地は広い、中等部・高等部に通じる正門

そこから見える正面にそびえる本堂と呼ばれる建物がある

そして、その建物を中心とし左右対称に建てられた校舎

左側が中等部校舎であり、右側が高等部校舎となったいる

正面から見るならば、その3つの建物は綺麗なシンンメトリーとなっていた

中等部校舎から更に左にあるのは

大きな体育館であるが、その中身は

地下1階と地上1階の最新機材を使った

シミュレーションルームが入る

そして、地上2階には

観客席が配置されたおおきなドーム状の闘技場がある

ここは、おおきなデュエルや、色々な試合が行われる場所でもある

また、この様な場所は中等部・高等部合わせて幾つか存在する

体育館の裏には、運動場、さらに奥には

その広大な敷地と、その地形をつかった、訓練場や

最大30人vs30人が可能な、巨大模擬戦闘場がある

これらは、6月、7月に行われる、学年別模擬戦の舞台となるが

それは、もう少し後の話である


そして、更に左手には、少しはなれて、小等部の敷地が広がる

逆に高等部の右手の2キロ以上離れた場所に学園の大学院が存在した





そして、本堂と呼ばれる3階建ての建物

ここには、中等部・高等部における職員室や保健室

主要な施設や部屋があり、建物奥には大きな講堂

そう、ここには、中等部の生徒会室も存在していた

そして、今まさに、その部屋を飛び出した男がいた


中等部3年にしては、体格がよく無愛想で怒ったような顔だが

見た目とは違い、普段は博愛主義であり

生徒会にこの人有りと言わせるほど、有名である

それは、そうだ、生徒会会長【柊朱莉】の暴走を止めるのはこの男の役割なのだ

彼がいなかったら、今の生徒会は、その権限を保てず

学園始まって以来の、不名誉な歴史を残しただろう


そして普段なら絶対廊下など走らない、この男だが

一本の電話で、険しい顔となり

携帯を耳に当てたまま、部屋に残る綺麗にセットされた髪型の男に

「あのジャジャ馬が来たなら、部屋から出すな」

と、伝言を残し、手元にあった、自身の装備を手に取り

部屋を飛び出て走り出したのだ

声を掛けられた、線の細い茶髪の男は

男が出て行った後「へぇーい」と軽く返事をするのだった


部屋を出て行った、男の名前は【草壁大樹 (くさかべだいき)】

生徒会副会長であり、魔法格闘部主将である



そして、この草壁に電話を掛けた人物

彼女は中等部2-Bの教室に居た

土曜日で、半日授業の今日、午後から生徒会での集まりがあるため

その準備をしていたのだが

同じ教室であり、彼女と同じく生徒会役員である友人に

一緒に行こうと声を掛けようと、彼女の方向を振り向いた



そこには、5月の優しい風に、薄い水色の長い髪を揺らし

彼女は静かに椅子に座り佇んでいた、まるで一枚の絵画の様に・・・




その美しい絵画に割って入って来た女性は、

椅子に座る彼女の肩を揺すり


「古都 (こと)!起きなさい、生徒会に行くわよ」


静かに目を覚ました女性、細い目をあけると、無表情のまま


「愛樹 (あき)・・・・私眠いんで・・休みで」


愛樹と呼ばれた女性は、赤紫色のオシャレな眼鏡の縁を触りながら


「ダメに決まってるでしょ、急いで用意して」


無表情な表情で


「ほんとにダメ?」


「ダメです」


このやりとりは、2人が2年に進級し同じクラスに成ってから

幾度となく繰り広げた、会話である



古都と呼ばれた女性

生徒会会計【和泉古都 (いずみこと)】

ロングの水色の髪に透き通るほどの白い肌

そして、残念なほどの無表情で

細く切れ長の瞳で見つめられたなら

背筋に冷たい物が走るだろう

そしてその表情からは読み取れる事は少ない



そして、愛樹と呼ばれた女性

2年にして、生徒会副会長【白梅愛樹 (しらうめあき)】

濃い茶色のセミロングに、似合う眼鏡を掛ける

実は子供っぽい童顔を隠すためのダテメガネである

言葉少なめだが、冷静沈着な、その思考、行動には

同じく副会長の草壁も、一目おき

草壁も名前の1字に【樹】の文字を持つ愛樹の事を

常に気にし目をかけていた


そして、眠たそうに生徒会室に行くの準備を行う古都を

静かに待つ愛樹、いや、愛樹以外

古都が眠たそうにしている事など分かりもしない

愛樹すら最近やっと、古都の眠たそうな表情が分かってきのだ

他の人間が、古都の表情を読む事など出来はしなかった


そして、2人より、先に教室から出て行く、5人グループがいた

それは、小学生だと思わせる、背の低い少女、鈴を入れた5人である


愛樹は基本言葉少なめであり、あまり無駄話はしない

そして、古都も、暇さえ有れば寝ているのだ

2人と鈴達5人、彼女達は、クラスメイトとして仲はよかったが

学園の外で一緒に遊ぶほどの仲ではなかったし

愛樹と古都は、十士族である、四条優美に対して

どうしても一線を引いてしまうのは、仕方のないことでもあった


そして、古都の準備が終わるのを待つわけでもなく

廊下では騒ぎが起こる

すでに、廊下に面する窓には、教室に残っていた生徒が

野次馬となり集まりだしていた

それに気づいた愛樹は、すかさず確認をする

そこに見たのは、鈴達5人と、それを囲む3年

そこには、見覚えのある人物達、柊朱莉の親衛隊だ

そして、前に出て話しているのは、児玉先輩


幾度となく、問題を起こしている親衛隊の面々であった

その場を見た、愛樹は、この現状の全てを理解した

そう、コレは、児玉先輩が、合宿の集合でのあの事件の事で

鈴に対し、何かの攻撃をしかけたと

それはそうだ、今日朝から噂されていた内容を考えれば

朱莉親衛隊である、彼等が動かない訳がなかったのである

その事に今更気がついた愛樹は、自身の配慮が足りなかったと

鈴に申し訳がたたなかった


そして愛樹自身、この現状を打破できる力は無かった

愛樹はすぐさま判断する、自身が打破できないなら

打破出来る人物を呼ぼうと、自身の最も信頼できる人間を

その人間に好意を持ってる訳でない、そう、尊敬しているだけなのよ、と

頭の中で、誰でもない、自分自身に言い訳をしながら

携帯を取り出し、もう1人の生徒会副会長の草壁に連絡を取るのだった



そう、事と次第を聞いた

学園本堂の生徒会室にいた草壁は

眉間に力を込めて、生徒会室を後にした


そして、愛樹との電話を切ると

ある人間に電話をかけるのだったが

それは、通じることはない


「くそ、宮崎の奴出ないか・・・

 土曜の午後か、取締に校門にでも出払ったか・・

 仕方がない、一人でどうにかなるか・・・」


廊下を走りながら、ブツブツと独り言を言うのだった


草壁が電話した相手、風紀委員長【宮崎心 (みやざきしん)】

朱莉の親衛隊がいるなら、大人数の乱闘となれば

草壁1人では収集できない可能性から

風紀委員の力を借りようと電話したのであったが

彼が電話に出ることは無かった



本堂から、中等部校舎に行くには、3箇所ある1階の渡り廊下を通るしかない

そして、生徒会室は、本堂の3階に位置していた

草壁は、3階の廊下を走り

3階から、1階に続く階段を数段飛ばしで一気に駆け下りる

1階では、何事かと、驚く先生達や

廊下を走る草壁を注意する先生を無視し

渡り廊下を走り抜けた

中等部校舎に入り、2階に上がると、すでに人だかりがあり

すでにデュエルは始まっており

野次馬の声

何かを打ち付ける音

そして、おおきく叫ぶ、見知った声、そう、児玉の声だ


野次馬の人だかりで、前に出れない草壁

数歩下がると、自身に肉体強化魔法を数個掛け

廊下を蹴り、その勢いで、野次馬の頭の上を飛び越え、壁を走る

そして、一気に、姿が見えた、児玉の前に降り立った


そう、今まさに、桜が児玉に突撃するため

その体を発射した瞬間であった

すでに、それを察知していた草壁は

桜の拳に対し斜に構え左腕を構え右腕で支え、防御態勢に入り

その腕に装備した武器、いやその防具に魔法を使う

一瞬であった、それは、児玉と同じく硬化魔法である

その瞬間、草壁の腕に装備された、漆黒の手甲は

ダイヤモンドの硬さに迫るほどの硬さになるのだった


桜にとって、草壁は、ただの障害物でしかなかったが

だが、それが人間であるなら話は別である

ただの障害物であるなら、壊せばいい、砕けばいいだが

それが人であるなら、避けるしかない

いや、きっと何も考えてもいないだろう、それが桜なのだ


突如現れた人物、桜は固く握った拳を開き

草壁の腕にある手甲に手を掛けると同時に左足を地に付け地面を蹴る

彼の手甲を支点にし、体をコマの様に回転させ

彼の横を綺麗に抜けていく

そして、その後ろで、曲がった剣を構える児玉に目標を定めようとしたとき

野次馬の声が五月蝿い中、桜の耳に鈴の声が届くのだった


「桜、まって」


その声で、ピタっと動きを止める


その場に居た全員が、止めに入った男の顔をみて

この、お祭り騒ぎは、決着つかず終わりだろうと、少し残念に想っただろう

そう、生徒会副会長の、草壁大樹を見た瞬間に


そして彼は、止まった桜を確認し

背筋をのばし、落ち着いた低音の声で


「この場は、生徒会副会長である、草壁が預かる」


そして中等部校舎にも響き渡り、一瞬の静寂をもたらしたのだった


すでに合宿で一緒した、生徒会の面子と鈴は面識があった

生徒会長の柊朱莉と、仲良く成ろうとは思わないが

あの事件の後、丁寧に対処してくれた

副会長の草壁や、書記の城戸とは

合宿中、普通に会話するような知人となっていた

生徒会の、もう一人の副会長と、会計は、クラスメイトであり友人でもある


そして今、顔の怖い、草壁が怒っていた事に

この騒ぎの中心人物である

鈴、かんな、夏目の意識をより緊張させる


桜と言えば、普段なら戦いを邪魔され、ふてくされる所であるが

桜は、新しいオモチャを嬉しそうに確認しながら、鈴の元へもどっていく


草壁は、嫌そうな顔をする児玉を一瞥すると


「すまないな、三千風、全ては事前に対処できなかった、俺達がわるい

 俺も、あんな、バカな噂を本気にして、こいつらが動くとは思わなんだ

 この馬鹿どもを代表して、謝らせてくれ」


「あんな噂とは、どういうことだ?」


「噂は噂だ、柊が、本当にデゥエルで負けたと信じたのか?

 彼女が泣いて、謝ったと、本気でしんじたのか?」


「それは・・・・だが、そいつが、三千風鈴が、朱莉様を倒したと」


「すいません児玉先輩、私、三千風鈴じゃないんです

 私は、山代かんなです、三千風鈴は、この子です」


かんなは、隣にいた、小さな少女の肩を掴み一歩前に突きだしながら

謝罪のため、大きく頭をさげた


「なんだと?お前が、三千風じゃなかったのか?

 それに、そんな子供が?三千風だと、朱莉様に勝っただと」


「児玉、だから、それは嘘だ・・・・」


そして、草壁は、そこに集まった全員を見渡し


「全員に言っておく、柊が、この三千風に謝ったのは

 この児玉と同じように・・・・・・・・・



草壁は、あの合宿に行くため集合場所であった事を簡潔にはなし

その真実を、耳を傾ける全員に伝えた



 と、言う事だ、お前達、柊の取り巻きも分かっただろう

 仲間どもにも、きちんと伝えろ」


それを聞いた、生徒達は、口々にその真相を話し合っていた


「すまんな、三千風、色々と迷惑をかけた」


「いえ、事情をしっていて、調子にのった、友達がわるいんです」


そこには、バツが悪そうにしていた

かんなと夏目の姿があり


「すいません、面白がって、桜をけしかけました」

「すいません、私も同罪です」


そして、優美も頭をさげた


「草壁先輩、私も、何もできなくて」


「いや、いい、白梅から事の起こりも経緯も全て聞いている

 すべて、児玉が悪い、お前達は、もう帰っていいぞ

 俺は、児玉にきっちり言い聞かせる」


「てめぇぇ・・・・」




そして、草壁に催促されるように、5人は校舎を後にする



優美は難しい顔をしているが

終わった事は、しかたないと

残り4人は、楽しそうに笑っていた

そして、その内容は、やっぱり桜は強い

あのままなら、勝っていたのは桜だと

そう話しながら、学園の校門を抜け進んでいく


「あ!桜、テニス部は?」


「あ・・・あぁ~~~わすれてたぁぁ~~いってくるぅぅ~~」


桜は振り返り、体を揺らしリズムを取りながら、再び学園に戻っていった


テニス部主将さん・・

かわいそうに、今日の桜は、暴れるぞ・・・

そんな事を思いながら桜を見送る鈴であった



優美は、難しい顔のまま、迎えに来た車で、帰っていく


そして残された3人

鈴と夏目は、かんなの奢りでのスィーツを楽しみに

アキバに買い物に行くのだった



*******



後輩の女子生徒5人を見送り

廊下に残された、草壁は

その左手に装備していた手甲を見下ろし


「なんだ・・・あれは・・・・あの動きは・・・」


そして、先ほどの事を思い出すのだった


ティオーノが、勢いよく飛び込んで来たはずだ

そして、俺の手甲を利用して、向きを変えた

でも、俺の腕には、一切の衝撃は無い

軽く触られた、ほどの感覚があっただけだ・・・

どんな体術・・・


その瞬間、腰骨から脳天に突き抜ける様な震えが走り

額に汗が噴き出す


確か・・・・・・蓮・ティオーノの妹だったな

少し調べてみるか・・・・・

だが、今は・・・・・


草壁は、彼女達が消えていった、廊下奥の階段を見つめたまま


「児玉、とりあえず、生徒会室に来い話はそれからだ」


「チッ、なんで俺が!」


「そして、月陰、お前にも聞きたいことがあるから、付いて来い」


「ぁ、、、、あの、、、、、、、、」


「月陰だと!あの女どこだ!」


「えっと、、、、あの、、、、」


「そこかぁぁ!!なぜ、お前がそこにいる」


そう、月陰舞、彼女は今だ、柱にへばりついていた

そして、それに気がついた児玉は、驚き怒りをぶつけるが

月陰はしどろもどろで、会話にはならなかった


最後には草壁の「うるさい」で、静かになり


舞姫と呼ばれる彼女、月陰舞は

柱に張り付いて、動こうとしない


(なんで?なんで?

 私何もしていないのに?なんで?

 児玉君だけ連れて行けばいいじゃない?

 私、関係ないじゃない、ここに居ただけですよ

 草壁君そんな怖い顔しないでよ・・・

 許してよ・・・・)

 

2年の教室から出てきて合流した、白梅と和泉に

無理やり柱から剥がされ

白梅にその手を引かれ

生徒会室へと向かう姿は


迷子の子供が、知らない景色に怖がり震えながら

知らない大人に、連れられていく様であった



そして、誰も居ない生徒会室には、2通の置き手紙が


〔 少し出かけてきます、そのうち戻ります、朱莉 〕


〔 ごめんちゃい、会長止めるだなんて、むりっす 〕



「あいつらぁぁぁぁ!!!!!!」


その草壁の怒りの声は

生徒会室の在る本堂と呼ばれる建物に響くのだった




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