5話 1年前、ニニスは、ニニスなの!!
隼人の魔法、ファイアボムは、その手から放たれた
ある者は、身構え、ある者は叫んだ
魔法防御魔法に魔力を込めるもの
涙を流し、許しを請うも、何もせず、ただ見守るもの
我関せずと、無視するものと・・・・・・それぞれであった
そう、そこにいた、約数人を抜いて全ての視線が、ファイアボムに向けれらる
その魔力の塊は、勢いよく、宮守鉄雄に向けて飛んでいく
それは、鉄雄に当たろうとも、鉄雄が避けようとも
いつかは、何かに当たり、その魔法は拡散、炸裂する
その威力はこの教室を焼き尽くすだろう、そう思われた
だが
勢いよく飛んでいく魔力の塊は、鉄雄に届く前に
隼人と、鉄雄の丁度真ん中で
大きな音を上げ、空中で弾けたのだ
そして、その魔法は炎を纏い破裂し拡散していく
それはまるで、大きく打ち上がった、炎の花火の様に
そして、その炎が教室を包み込もうと広がり
一番近くにいた、隼人と鉄雄に襲いかかる
その瞬間だ、そう、その炎が隼人と鉄雄に襲いかかる瞬間
その炎の全てが凍りつく
そう、突如、氷で作られた炎の彫刻ができあがった
その出来事と、美しく幻想的な、氷の彫刻は
見たいて者の視線を奪い、彼等の時間を止めるが
凍りついて、瞬く間に、その氷の芸術は、音もなく粉々に弾け
ダイアモンドダストの様に、光輝き消えていった
その光景に見とれていた、生徒達は、言葉をうしなった
その中、冷静に分析する蓮
「ほう、すごいな、どんな魔法を使ったんだ?」
そして、隣にいた、蓮の友人は答える
「それは、分からんが、使った奴は、あいつだ」
そう言って、指さした先には
隼人が、床に倒れたため、その奥に居た
2人の人間がはっきりと見えた
それは、鉄雄と、もう1人指を指された人物
真っ赤な魔導帽とマントを羽織る、女子生徒だった
腕を組むようにし、その魔道士を彷彿させる姿からも
その中等部1年の少女の体格からは、につわしくない武器をを右手にもち
ドヤ顔でポーズをキメる、女子生徒であった
「ん?あれは」
「蓮は知らないのか?
彼女は、小等部の時、上位クラスだったから
俺達とは、あまり関わること無かったが、名前くらいは来たことあるだろう
確か、フルネームは【カレラ・エルノーラ・クレミシ】
イタリアあたりの、どこかの国の貴族の出だとか、聞いたこと有るな
そして、あの真っ赤な魔道士本来の格好からは、相容れない
彼女の武器があれだ」
「ほう、聞いたことあるな、1つ下の学年に
赤い魔導帽をかぶる、マジックシューターが居ると
そうか、彼女がそれなのか」
*****
燃え様に赤い魔導帽と、マントを羽織る、少女
彼女の名前は【カレラ・エルノーラ・クレミシ】
ニニスが、ミドルネームで、エルノと呼び
鉄雄が、カレラと呼ぶ少女
カレラは悩んでいた
目の前の、大文字隼人が発動し魔力を注ぎ込んでいる魔法にたいしてだ
今すぐ、その魔法を止める手段は、いくつもあるが
それでは、あまりにも、芸がなさすぎる
一番、私 (わたくし)が引き立つ方法を模索しないとと
そして、彼が発動した魔法の最大威力も、カレンには推測できた
純粋な、後衛、魔道士職なら、その魔法、ファイアボムを制御しえるだろうが
中途半端な、彼の魔法ならと
カレンに、中途半端・制御しきれないと思わさた原因の1つが
魔力を貯める時間にもあった、魔力を貯め出して、すでに20秒以上
そして、それだけ時間をかけた割に、魔力の塊はさほど大きくはない
時間がかかりすぎなのだ、そんな想定内の威力の魔法それも
反撃してくださいと言わないばかりの時間
カレンにとって、この彼の料理法を考えるには十分な時間であった
それもそのはず
実際、隼人がこの魔法を使うのが初めてであり
その魔法の本来の力の半分も出ていなかったのだ
そして、横目で、友人のニニスが
何やら、紙のおもちゃをつついて遊んでいる姿を確認し
子供を見守る母親の様な笑がこぼれるが
その傍らに、カレラの瞳に映った
異質であり、異様であり、興味をそそられる人物、紫音を見る
気難しい、ニニスが笑顔で、初対面の男性と会話をするなんて・・
どうやって、ニニスに取り入ったか・・・
いや、鉄から聞いた話では、あの男は他人に取り入ったり
気に入られようと、行動する人間ではないと
どちらかと言えば、他人と関わり合いを持ちたくない人間だと聞いた
なら?ニニスが、あの男を気に入ったのか?
鉄雄と仲の良いカレンは、中等部に進学するに当たって
学園に入学を決めた彼の事を少し聞いていた
「こんど友達が、中等部から入ってくるんだけど
こいつが、笑えるくらい、かなり変人なんだ
いたってシンプル、怒らないし、いたって無害だし
無愛想に見えるけど、話しかければ、普通に対応もするが
自分から他人と関わり合いを持つような奴じゃないし
見ればわかるが、どちらかと言えば、他人を遠ざけようとするな
まぁ、友達になれば、笑えうほど、バカで、面白い奴ぞ
あと・・・・まぁいいか
おっと、奴の実力は、魔力、魔力量とも2だ!
気に入らないからって
あんまり、いじめんなよ、はっはっはっは」
気に入らないから、イジメルって、どんな目で、私 (わたくし)を見てんのって話だけど
あの、ニニスが気に入るなら、面白い人間であることは間違いなさそうね
ニニス達を、横目で眺めながらそんな事を、思いつつ
カレンは、両手をマントで隠れた腰にやり
2年の乱入者が放とうとする魔法に対して準備をはじめるのだった
そして、とうとう、その魔法は放たれた
その初動を感じ取ったカレラは、放たれるより速く、その両腕を動かす
腰に添えた、両の腕を覆い隠していた、燃えるような赤いマントを翻し
両手に握った、武器を観客の目に晒す (皆魔法に集中し、誰も見てないのだが)
それは、誰が見ても、彼女には似合わないであろう、武器であった
そう、それは黒く鈍く光る、通称44マグナムと言われる拳銃
【リボルバー式魔法拳銃、K&A・S社製M29、8インチモデル】である
大人でも、扱い辛い、大型魔法拳銃を軽々と右手で持ち
そして、左手の指に挟んだ3個の.44魔法弾
そして身体の前で、腕をクロスさせるように挙げる
クロスさせた時、リボルバーに銃弾を装填させ
おおきく構えをとる、右手に持つ44マグナムを構え
左手を、ハンマーに添えた
そして、隼人の手から放たれた、魔力の塊を狙い撃つ
最初の魔法弾は、重力系魔法弾
それは、隼人と鉄雄の間にある、魔力の塊にヒットする
そして、ファイアボムは大きく弾け炸裂しその炎を開放したのだ
2発目の魔法弾、それは、氷系魔法弾
弾け撒き散らす炎を、かいくぐり、その中心部にある
初段の重力弾が起こした、力場にぶつかり
その魔法弾に込められた、力を解放する
その力は、魔力の炎さえも凍らすほどの力
一瞬にして、解放された魔力の炎は、その先端までも氷の結晶と化した
最後の魔法弾は、振動系魔法弾であった
それは、氷の結晶となった、炎の彫刻に当たると
それそのものを、超振動で粉砕したのだった
そして、隼人の放った魔法は全て、氷の霧となり
教室の後ろを包みこみ、ダイアモンドダストの様に光輝いた
空中に溶け、もとの魔力そなって、消えていった
そして、カレラは、腕を組むようなカッコをし
拳銃を強調しながら、ドヤ顔をキメる
「さすが、カレラ様カッケェ」
「ふぅふふぅ~~ん」
時間にして約1秒にも満たない時間で行われた
カレラの早撃ち、その早撃ちを目で追えた人間は居なかった
いや、隼人の魔法に視線を囚われ、誰も見ていなかった
やっと、目の前で起こった、幻想的な出来事が
赤い魔導帽をかぶったカレラの魔法だと気づいた生徒たちが
声を上げ、拍手をし、自分達が無事であったことに、感謝するのだった
「あれ?、カレラ、何時もの、デザートイーグルは?」
「あるわよ、でも今回は、進学祝いに頂いた
この子の、お披露目も兼ねて、演出してみたのだけど
思いのほか、上出来だったみたいね
実際は、3種の特殊魔法弾を、その場で組み込むには
リボルバーの方が、都合がよかったでけなんですけどね」
ニコリと笑いながら、右手に持つ、44マグナムを
鉄雄に、自慢するように、元居た場所にすすみでる
カレラ専用にカスタマイズされた
【リボルバー式魔法拳銃、K&A・S社製M29、8インチモデル】
その拳銃に、刻印された魔法は2つ
魔法弾の、初速および加速アップ
そして、魔法弾発射時の、音と光の軽減
そのため、実弾は使用不可となっている
そして、小柄な人間が付けるであろう
魔法刻印の、フィードバック軽減をつけていない
カレラは、44マグナム、3連続狙撃を行ったため
その、威力のフィードバックで
初撃を撃った場所から1メートルほど、後方まで位置をずらしていた
事実、子供が、この銃を撃ったなら
その威力で腕は持って行かれ、肩が外れる事も、骨が折れることすらあるのだ
それを、位置のズレだけで、3連続の狙撃を、何食わぬ顔で行った
カレラの実力は、相当なものである
「中等部の進学祝いで、拳銃送る人間の顔が見てみたいな
て、いうか、今の魔法弾、オーバーキルもいいとこ
試合以外で、対人に使ったらダメな部類だろ?」
「そう?、まぁいいじゃない、この子のお披露目と
私 (わたくし)の中等部クズクラス、デビューと言うことで
大目に見てもらいましょう」
「まぁ、(中等部)本校舎じゃないから
先生も、風紀も、こっちまで出張らないから
かまわないけどな」
「ふふ、そう、あっちにいては
この子達を、好き勝手に使えませんものね
だからこそ、私 (わたくし)は、クズクラスに成ったのですから
これくらいは、大目に見てもらわないと
それより、ラスボスのお出ましですよ」
そこには、隼人を廊下に放り出し
鉄雄と、カレラの前に、堂々と立つ
赤髪短髪で攻撃的な髪型をした人間がいた
「そっちの、いい物をみさしてもらった
お前も気にはなるが、今は、宮守お前だ
隼人の敵 (かたき)も取らないとだしな」
「ティオーノ先輩、色々噂は聞いてるが
シンプルに言って、後輩イジメをするとは、思わなんだわ
まったく、先輩を硬派だと思ってた俺は、がっかりだ」
「その通り、イジメは良くないな
でもな、休み時間は別として授業中
俺様の安眠を、邪魔する奴は、容赦なく潰す
それが、先輩だろうと、後輩だろうと関係はない」
「まぁ、それは、同感だな、なら・・・」
鉄雄は、後ろにいる、今回の火種となった8人を指差し
「こいつらも、充分わかっただろうから、もういいだろ」
「あぁ、それは、もういい
こっからは、俺個人の興味だ
宮守、お前の強さが知りたい
隼人をここまで追いやった、お前の強さがな」
「まぁ、もてる事、もてる事、毎回この手の相手には、おおもてですわね」
(カレラの奴・・・俺は男より女に、もてたいんだ
それも年上の、ナイスバディに)
「それは、同感だな先輩、小等部の時は、勝てる気がしなかったが
今なら、いい勝負ができる気がするよ」
そういって、鉄雄は、ズボンのポケットに手を入れたまま
首をぐるり回しながら
蓮に向かって一歩前に進み出たのだった
そして、折り紙に夢中な2人を他所に
その場にいた、人間全員が、緊迫した雰囲気に緊張し
額に汗をかくのだった
足を開き、ポケットに手を突っ込んだままの
構えを取らない棒立ちの鉄雄
自己流で作り上げた、その格闘スタイルに、構えはなかった
もしその構えがあるとしたら、ポケットに手を入れる事だろう
そして、同じく構えを取らない蓮
その態度は、格下相手に構える必要は無いと言わないばかりに
堂々としたもので、右手で「かかってこい」と、言わんばかりに
鉄雄に対し、手招きをするのだった
鉄雄は、小さく「ッハ」と笑うと同時に
軽く前傾姿勢となり、蓮の懐に飛び込んでいく
そして、見せるのは、今回は左足ではあるが
大文字隼人に初撃食らわした蹴りである
軽い左の回し蹴り
それを、隼人と同じ様な動きで、蓮は右手で受けようと腕を動かす
後ろに下がり躱せばいいのだが、この教室の後ろと言う場所では
前後幅は有るものの、下がりすぎれば
追い詰められるのだ、それを嫌ってなのか
いや、それよりも、初手から格下相手に下がる事を拒否したのか
無造作に、右腕を動かした
だが、その蹴りは変化する
脇腹に向かって来ていた、その蹴りは
何時しかその目標を蓮の膝に写し加速する
だが、膝にヒットしたと確信した鉄雄だったが
蓮は右足を少し上げ、脛 (すね)で受けるのだった
蓮にしてみれば、可能性の問題である
隼人に同じ様な蹴りをしてきたと聞き
準備していただけのことである
だが、鉄雄にしてみれば、得意としていた膝蹴りを止められたのだ
驚きはするが、些細な事でもあった
そこから、鉄雄の動きは、1段階速くなる
威力より、速さをとった、その蹴り数々
鉄雄のズボン、それは片方に両足が入るだろう太さを誇る
そして鉄雄の蹴りと共に、そのズオンは空を舞い
蓮の視界を覆い、そしてその影から、機動を隠し連を襲うのだった
見事なまでの、鉄雄の連続蹴り
10発20発と、蹴りを入れていくのだった
それを観ていた1年は、鉄雄が優勢だと思っただろう
そして、数少ない鉄雄の実力を知る者は
その光景を疑い
蓮の実力を知る者、2年の生徒達は、驚きもしない
鉄雄の止まらない連続蹴り
その全ての蹴りを防ぎ、躱し、受けきる蓮の姿がそこにあったのだ
鉄雄の実力を測っていた蓮は、防御に徹していた為
その全ての蹴りを防御しきっていた
そして、蓮の頭に浮かぶのは
速く見えるが、防御した感覚で言えば
その実、多少違和感はあるが、思ったほど速くないし、威力もない
ズボンで隠してはいるが、反応速度で優る俺には無意味
手こずる事はあっても、隼人が負けた理由が思いつかない
やはり、初撃で膝を潰されたのが原因か?
そして、蓮は反撃に移るのだった
それは、本物の蹴りを見せてやると言わんばかりの蹴りであった
それは、一瞬であった
鉄雄の連続蹴りでおこる、微かな隙の縫って
蓮の、威力・速さを兼ね揃えた一撃
それは、蹴り足を出し、片足で身体を支える鉄雄の腹部へと吸い込まれていった
確実に当たるだろうと思われた蹴りは空を切るのだった
片足を上げたままの姿勢で動きを止める蓮
そして、距離をとった鉄雄を睨みつける
「今の動きはなんだ?
それに、お前は素手の攻撃は、無いんではないか?」
蓮の視線の先、そこには、ズボンから手を出した鉄雄の姿があった
そして、蓮の言葉に両手をブラブラと揺らしながら答える鉄雄
「あぁ、今の攻撃はやばかった、流石に、ヒヤっとしたさ
なんで、手で受け流さしてもらった
まぁ、分け合って手での攻撃はしない
だけど、手を使わないことはない
攻撃を受け流しもするし
武器を持った相手なら、それに対抗するために、盾を持つこともあるさ
ただ、それほどの相手に、恵まれてないだけだ
そう久々だよ、手を出して戦うのはさ」
「ほう、今まで手を抜いていたと?」
「ハハ、言葉どうり、手を抜いていたのさ
それに、受けに徹する相手には、俺の技は不利だからな、さっきのは様子見さ
ティオーノ先輩も、様子見で本気じゃなかっただろ」
「まぁな、でもさっきの蹴りは、当てるつもりだっけどな」
二人は、本気ではない、まだまだ、奥の手は隠してると言わないばかりに
見合ったまま、ニヤリ笑う
「なら、俺から行こうか」
そういって、構えも取らず、足をすすめる蓮
対抗するべく、左足を前にだし半身で待ち構える鉄雄
そこから、一気に戦いは加速していく
蓮は、ダッシュして鉄雄を襲う
ボクシングの様なジャブを数発繰り出してからの右のストレート
そう、距離を詰めて足を止めた蓮は、至近距離の戦いを挑む
それに対し鉄雄は、その距離を嫌い、一歩また一歩と下がる
そうなのだ、至近距離を苦手とする鉄雄
それは攻撃が、足技全般の鉄雄の不利な間合いでもある
そして、同じ速度でも、鉄雄の一回の蹴りの間に2回以上攻撃できる蓮
それでも、鉄雄は器用に蓮の攻撃を躱し、その腕で受け流す
そして隙を見つけては、蹴りで反撃するのだが
それも、長くは続かない
そう、鉄雄はすでに、追い詰められていた
徐々に下がる鉄雄、それに気がついた、鉄雄の後ろに居た、リンチされていた人間達は
その場を明け渡し移動していたのだが
それでも、鉄雄は窓際まで、追いやられる事となった
「さあ、チェックメイトだ、最後に言い残すことはあるか?」
「無いな・・・・」
そして、蓮だけに聞こえる様な小さな声で
「このクラスで一番強いのは、俺じゃないぞ!」
「!?」
「さぁ来いよ、先輩、奥の手って奴を見してやるよ」
そう、言い残す事は無い
何を言っても言い訳でしかない
すべてが、鉄雄にとって不利な状況なのだ
そして、鉄雄自身にとって、鉄雄はすでに負けていた
それは蓮にではない、隼人にである
この戦いにルールはない、最後に立っていた人間が勝ちなのだ
それが、魔法を使おうとも、援軍を呼ぼうともだ
そう隼人のやった事は、間違いではない
魔法が苦手な人間には、魔法で対抗する、当たり前の事である
そうではあるが、鉄雄は違った
自身の身体1つで戦う事に誇りを持ち、相手と対等な状況で戦う事を良しとしている
口には出さないが、隼人の魔法に、対処が遅れ
カレラに助けを求めた時点で
鉄雄の中で、負けなのだ
そう、仕留める時に仕留めきれなかった、自身の負けなのだ
そして、蓮に対しても、同じ土俵で戦っていた
相手が、強化魔法も何も使わないなら、自分も使わないと
そして、この教室の後ろの狭い場所ですら、文句の1つも言わなかった
それが、鉄雄の機動力、いや、その実力の3割も出せていなかってもだ
それでも、1撃位は入れれる、下準備は終わったと
そう、勝ち負けは、どうでもいい、負けても命を失うことはないと
ならば、一撃入れて、この先輩を驚かしてやると
そして、最後に挑発するのだった
「まぁいい、一番強い奴は、後回しだ
奥の手やらに、興味がわいた、いくぞ!」
そういい、蓮は攻撃に映る、数度拳で攻撃し
教室のマド近くまで追い詰める
そして、そこからの必殺の右蹴り
教室の角まで追い詰められた鉄雄にとって
それは、逃げ切れないだろう蹴りであった
だが、確実に当たると思った瞬間
蓮の目の前から鉄雄の姿が消える
だが蓮の反応も早い、もし高速移動したのなら
居るべき場所は自分の右側と、即座に振り向くが
そこには、すでに蓮の頭に迫ってくる鉄雄の右上段回し蹴りがあった
だが、それも蓮にとって、今までと変わりない鉄雄の蹴りであって
防御が間に合う蹴りであり、即座に右腕を防御に回すのだった
そして思う
奥の手と言っていたが、あれは、あの移動法か?
目の前で、消えたのは驚いたが、ただ、それだけだ
多少消えようが、俺なら、追いつけるし
この程度の速さの蹴りなら、防御も間に合う
だが、それは間違いであり、油断でもあったのだ
蓮が防御の為、動かした腕は間に合わない
鉄雄の繰り出した蹴りは、蓮の予想を反して
すでに蓮の腕の内側にあった
そして何が起こったか分からない蓮
防御したと思った蓮は、右手も防御の為上げた状態
右足の蹴り足も戻し、地に付けたばかり
その態勢からは、さすがの蓮であろうと躱す事はできない
そして、鉄雄の蹴り足が、蓮の赤髪に触れるか、触れないか、その瞬間
蓮は躊躇なく1万倍の意思加速を使う
世界が止まった感覚の中、鉄雄の蹴りに意識を集中する
それは、今までと違い、違和感の感じない蹴りであった
そして直感で、その蹴りの威力が今までと全く違うことに気づく
そして、その蹴りを食らうことは、非常にマズイと判断し
意思加速の副産物、肉体の加速
体重移動、予備動作、バランス、そんな物は関係無いとばかりに
腰の位置をそのままで、意思だけの力で上半身をだけをよじり
鉄雄の蹴りを避けるのだった
蓮にとって、両親や祖父、親類相手以外で
意思加速を使ったのは初めての事であり
そして、目の前の相手、宮守鉄雄を最大警戒すると同時に
心から称賛するのだった
そしてその強さに敬意を示し
肉体加速を使い蹴りを避けた後
防御に使ったその腕で、鉄雄に攻撃するのだったが
すでに、そこに鉄雄の姿はなかった
そう、鉄雄は避けられる事も予想して、すで距離を開けていた
鉄雄の組手の練習相手は、紫音なのだ、必中の蹴りであっても
紫音は躱すのだ、紫音が特別なのは知っている
そして、鉄雄の瞳には、血族間で受け継がれる、そのスキルで感じ取った
蓮の雰囲気に、紫音と同じような、特別な物を見ていたのだ
だからこそ、鉄雄はあらゆる可能性を意識しながら動く
だからこそ、その初手を防御されてから、ある罠を蓮に仕掛けていた
そして、その罠が成功し蹴りが当たるだろう瞬間までも
鉄雄は油断していなかった、だからこそ、即座に間合いを開けたのだ
そして、一瞬の膠着状態
その瞬間、リルから紫音に念話が届く
『シオン様』
『ん?また、栄斗がスキルつかったか?』
『いえ、鉄雄さんの相手なんですが
この部屋に入った時から、違和感があり、見ていたのですが
今しがた1万倍に達する意思加速を、使いました
推測ですが、その魂はこの世界の住人ではなく、あの世界の出身者かと思われます』
『は?マジで?』
『はい、マジです』
赤髪短髪・・・それなりのイケメン・・・
いや、前世と今の姿が似ていないのは、俺自身で分かっている
『リル、奴を観察しろ、普通の人間と違うことはないか?』
『かなり、魔力はあるようですが、それは人間の域を超えていませんが・・・』
『ん?』
『ただ、彼の周りには、異常な程の、雷精霊が集まっています』
『な・・・・・・俺が知る限り
1万倍の意思加速とか出来るのは、英雄又は、魔王か、準魔王クラス
そして雷精霊を従える人物なんて、1人しか・・・・
でも、奴が転生してるなんて、在り得るのか?
俺と同じ様に、蒼き勇者に負け、天使に飛ばされた?
いや、ありえんだろ、あいつにかぎって・・・・』
『どうなさいますか?』
『いや・・・・とりあえず、面倒だから、無視の方向で
それでも、鉄雄には知らせとくか』
『そうですね、意思加速を使って来るとなると
鉄雄さんの、今の通常攻撃は今後当たることは皆無でしょうし』
『だな』
『てつ、聴いてるか?その相手、俺と同じく意思加速使うぞ
俺の予想では、肉体加速が最低でも4倍だと思ってくれ』
『なんだと、早く言えよ、今よけられたのは、それでか?』
『え?わりぃ、、見てなかった』
『おい、見てろよ、それにしても4倍か・・・・・
って、勝てねぇじゃねえかよ、なめてんのかよ、バカにしてんのかよ』
鉄雄は紫音との念話で、紫音に八つ当たりするのだった・・・・
「おい、宮守!ソレは誰から教わった?ソレの相手はだれだ?」
『シオン様、鉄雄さんの念話が感知されました』
『マジか?』
『マジです、私達の念話は感知されていませんが
まだ念話を覚えて数年、その意思加速の速度も10倍も達しておりません
鉄雄さんの念話では、内容は別として
そのスキルの上位が使える彼には、感知出来るようです』
ソレの相手と言われ、その意味を理解できたのは、鉄雄だけ
2人の戦いを見ていた人間、いや、この世界の人間には意味がわかるはずがなかった
そして、鉄雄は笑って答える
「さぁな、答える義理はない
そして俺にしてみれば、4倍の加速って、勝てる気がしねえよ」
4倍の加速・・・
速度強化ではない、加速と言った
それは、意思加速での肉体加速のことだ!
念話・意思加速・肉体加速・・・こいつは知っている
そして、拙い念話だ、覚えて間がないのだろう
なら、念話を、誰が教えた?
念話の相手か?俺が感知できないとなると、そっちが異世界人か?
『おい紫音、どうすれば勝てる?』
『まぁ無理だわな、そして、念話が感知されてるんで
今後念話なしで、まぁガンバ!』
『おぃ!・・・・』
「そこか!」
鉄雄の念話に、再度、反応した蓮
その直感で感じた、ある方向に
即座に右手を振いデバイスを起動させ魔法を飛ばす
雷系、初歩魔法【サンダー】初級より、格下とされる
雷系で一番初めに覚える、初歩魔法である
だが、元々の魔力値の高い蓮、そして
前の世界では、魔王【雷帝・レイ】と呼ばれた男でもある
その蓮が、その属性を使うのだ、そしてその魔法には精霊達が手を加え
その威力は中級魔法に届くほどだった
その魔法は、紫音達がいる場所を的確に狙う
いきなりの事で、反応できたのは、カレラだけだが
すでに遅かった、放出系の魔法の中で
雷系統の魔法は、光系統の次に早い魔法である
そして、中級魔法に届こうかと言う蓮の魔法
気づいた時には遅かったのだ
カレンは、叫ぶ
魔法が飛んでいく場所に居る、友人に向かって
「ニニス!!」
栄斗も、叫ぶ
気の弱い、幼馴染の少女に向かって
「キィィィィィィ!!」
鉄雄は、叫んだ
お前の側にいる、クラスメイトを守れと
「紫音!」
そう、今その魔法が、紫音・ニニス・希唯に襲いかかる
一人の、悲鳴と共に
その魔法は、ある物に、さえぎられた
魔法が当たった事で、その全貌が明らかになる
ニニスの展開していた、防御符、数十枚で作られた
ドーム状の多重結界であった
それの表面を流れるように、蓮のサンザーは拡散されていく
一番驚き、悲鳴を擧げたのは、希唯であった
その顔をハンカチで抑え、大粒の涙を流し震えていた
ちなみに、そのハンカチは
朝出かけるとき鈴に無理やり持たされた紫音の物である
一難去って又一難、希唯にとって、人生最悪の日になりそうな勢いである
そして、廊下では、幼馴染の少女を助けようと、教室に飛び込もうとして
友人達に身体を掴まれ、動けなかった
遊久路栄斗 (ゆくりえいと)の姿があった
その希唯が
(この男は壊れている、人間として壊れている
何なの?この人間?怖い、恐ろしい・・・)
と思わせた人物がいた
結界を張ったであろう、ニニスですら
いきなりの事に、小さく「キャ」と悲鳴をあげ、一瞬震えたのに対し
「今度は、ニニスが着ている、きぐるみのペンギンを織ってあげようか?」と
あの魔法を、完全無視し、顔色一つ変えず、紙を折続ける男
泣いてる私に、何も言わずそっとハンカチを差し出した
無愛想ではあるは、一瞬優しさが垣間見えた男
そう、その男、紫音が、その精神の在り方が、わからなくなってきていた
そして、ニニスは、椅子の上に立ち
魔法を繰り出した男に向かって声を張り上げた
「お前何様なのね
なんのつもりなのね
それ以上暴れるなら、ニニスが相手になるのね」
だが、蓮の視線は、別の人間を見ていた
宮守が叫んだ名前えは、しおん・・・シオンだと
あの、我関せずで自身のやりたい事を貫く態度
そして俺の魔法に対し、反応する事すらなかった
それに・・・
数年前、富士山 (ふじやま)が、微かに纏っていた
あの覇気、アレは、あの世界の俺の友人であった、シオンの物
あの時は、気のせいだと、思っていたが
本当に、お前なのか?
そして、蓮は、我関せずで折り紙を折る男に向かって歩き出し
念話を飛ばす
『おい、シオン、お前だろ?』
返事がない?違うのか?
『おい、シオン!』
その間に、鉄雄とカレラが
蓮と、ニニス達の間に立ちふさがる
「うぜぇ!じゃまだ」
そう、すでに、蓮の興味は、2人にはない
今興味があるのは、あの世界の出身者であり
自身の古き友かもしれない男である
そして、2人に構わず、進む
その足に魔力を乗せ踏み込む
デバイスを介さない、異世界の魔法
そんなことは、誰も気づかない、いや、知りもしない
その魔法の名前は
【スタンサークル】
最小限抑えた、その魔法は
蓮の踏み込んだ足を中心に、床に広がる、約半径5メートル
その範囲内にいる者を、電撃で数秒動けなくさせるものである
気づいた時には、すでに遅い、レジストできない限り回避不能である
そう、一番近くにいた、鉄雄とカレンは、魔法をくらい、動きを止める
その他に、自分は関係ないと、無視を続けていた、1年クズクラスの生徒の数名も
その魔法の余波を喰らうこととなった
だが、ニニスの結界は、その魔法すら拡散しレジストした
そして、後2人、机にカブリツキ、我が趣味に没頭しつつ
蓮の魔法の余波をレジストした人間もいたのだが、蓮は気にもしなかった
動けなくなった、鉄雄と、カレラを無視し
姿を現した、ニニスの多重結界まで進み
自分の進む道を遮るなと言わないばかりに
その右手に雷撃を纏い、 ニニスの多重結界を殴るが
その結界は、それをも防ぐ
「ふん、ニニスの結界は、完ぺきなの
そんな攻撃では、びくともしないなのよ」
ドヤ顔で、言い放つ
「そうか、でも、お前にも興味はない
俺の狙いは、そっちの男だ」
そういい、ニニスの多重結界に左手を添える
ニニスの多重結界、その完成度は高かった
使われた符も高度なものであったし、それに込められた魔力も相当なものだ
だが、意思加速を使い、電撃と、覇気を纏い、肉体加速をした、蓮の左手には、意味を成さなかった
そう、覇気を使ったことを誰も気づかれず、一瞬にして、ニニスの多重結界を破壊したのだ
それには、ニニスも驚く
そして、結界が無くなって無防備になった紫音に
「お前は、なんだ!」
その言葉と同時に、踏み込み、雷撃を纏った右拳で
未だ、蓮の事を無視し続け、折り紙を織り続ける男の顔を殴りつけた
そして、今
蓮の覇気と雷撃を纏った右拳と
紫音が自身に掛けている超振動の防御魔法が衝突した
雷が落ちたような、大きな音と
地震だと思わんばかりの衝撃が駆け抜け
教室を、眩いばかりの光が広がり包み込んだ
それは、中等部本校舎に居る人間が、地震が起きたと錯覚するほどであった
その場に居た人間は、確実にその男が死なないまでも
確実に病院行きだと確信しただろう
そして、蓮に対しては、流石にそれは、やりすぎだろうと
止めに入るべきだったと、悔やむ、蓮の友人達
だが、数名は違った
蓮の拳が、シオンに当たる瞬間
叶芽希唯 (かなめきい)は
すでに叫び声すら、出せない、いや出ないのだ
目に映るのは、雷撃を纏った拳が、顔に当たる瞬間までも
その態度を、変えることのない男の姿、希唯は、思い出す
紫音の言った【俺はニニスを信じる】と
それは、死に直面しても、信じれるものだろうかと・・・
もし、死んでも後悔は無いのだろうかと?
カレラ・エルノーラ・クレミシは
多重結界を破られたが
今日知り合ったばかりの、鉄雄の友人という、一風変わった男を助けるため
最後の望みを、ニニスに賭ける
宮守鉄雄は
紫音と同じ種類の強さを持つ、ティオーノ先輩
紫音と、どっちが強いかな?
ニニス
ニニスは、このシオを守ると言ったなの
そして、シオは、信じてくれたなの
ならば、全力をもって守るなのよ!
何処からか取り出した、両手いっぱいの符
それを一気に、紫音の顔の前に投げつけ組み合わせる
多重結界に使っていたより上位の符
それを組み上げ、その防御範囲を狭め
より強固な防御結界を作り上げたのだった
蓮の拳は雷撃を纏っていた
それは、隠れ蓑、その雷撃の下には、覇気を纏っていた
その拳が、ニニスの貼った結界に触れる
覇気と雷撃を纏う、蓮の拳はその魔力で
ニニスの符を触れた場所から電撃で焼き尽くす
100倍に意思加速した、紫音の目にはその焼き千切れる様が事細かに映し出される
そして、ニニスが作り出した結界を抜けて、蓮の拳が紫音に当たろうかと言う時
1万倍に意思加速を使い
『おぃ、レイ、お前そこまでするか?』
『お?やっぱり、シオンかよ、早く返事しない、お前が悪いんだろ?』
『いやいや、だからって、俺じゃなかったら、これ死んでるぜ?』
『そうか?かなり手加減してるぞ、それで、いつ気づいた?』
『あぁ、お前が、意思加速して、てつの攻撃よけただろ
あれで、確信したわ、それでも、俺に気づくとは思わなんだよ』
『あぁ、感だ、あと宮守がシオンって叫んだろ
それに2年ほど前に、お前、覇気を使って戦った事あっただろ』
『2年前?』
紫音がそんな昔の事を覚えているはずもなく
悩む紫音の頭の中に、リルの念話が流れてくる
『シオン様、たぶんシオン様が覚醒した時の事だと思われます』
『あぁ、そういえば、そんな事もあったな』
『その相手だろう1人に残留してた覇気を感じ取った
あの時は、気のせいだと、思ってたが、やっぱり合ってたんだな』
『それよか、レイこの拳早くどけてくれ電撃で髪の毛が焼ける』
『ん?無理だろうな、結界抜けたとき、その勢いが加速され
結界破壊で起きた力余波で
止まらねんだ、まぁ、シオンなら、対策してんだろ?
それと、俺の今の名前は【蓮・B・ティオーノ】だから、よろしく』
嘘である、相手がシオンだと、分かってから
今の世界でのシオンの実力も図るため
蓮はその拳に力を込めたのだから
そして、それに気づかない紫音でもなかったが
ならばと、雷帝・レイに釘を刺す
『分かった、レンでいいな、後お前の右腕吹っ飛んでも、俺のせいにするなよ』
『覇気を纏った、この拳をか?
そりゃすげぇ、ふっ飛ばせるものなら、ふっとばしてみな』
『フッ・・・』
すでに、リルの報告で
レイの右手には、雷撃で隠し覇気を纏っている事は知っている紫音
それも、リルの太鼓判付きである
リルが言うには、レイは、完璧なるまでに自身の覇気を操っているらしい
誰にも気付かれないレベルまで、漏れ出す力を制御し
覇気を纏った時の見える、オーラを電撃で隠しているらしい
ベタ誉めである
そして最後には、シオン様もあれくらい覇気を制御できれば良いものを
シオン様の覇気は、だだ漏れですから、困ったものです
とか言う始末
いや、あれは、わざとだから、意識して漏らしてるから
返事が無い・・・・・・
信じて無いっぽいが、気にしない
そして、ニニスの結界を突き抜けた、蓮の拳が紫音を襲う
だが、紫音のスキルで作り上げた、常時発動型身体防御魔法がその牙を向くのだ
紫音の身体防御魔法
ある一定以上の衝撃が、皮膚の上に張られているセンサーに当たると
その衝撃に対応する、超振動が発生するというもの
それは、秒速1キロを超える速さの、ライフルの弾丸ですら
対応し粉砕できるものである、その威力にもよるが
紫音自身も多少の衝撃を受ける事もあるが
蓮の拳をセンサーは感知し、超振動で対抗する
それは、蓮の覇気を纏った拳を砕けないまでも
その拳の皮膚を剥ぎその肉を削り跳ね返したのだ
驚く蓮、覇気で纏った拳を跳ね除けダメージを負わす
紫音の防御魔法に驚き、その痛みで顔が歪む
その一方で、蓮の拳は遮られ、紫音に届く事は無かったが
その拳が纏っていた、電撃と覇気による攻撃は、紫音の顔に届いていた
その電撃で紫音の顔表面の3割は焼き爛れ
その覇気での攻撃を殺しきれなかった、紫音は
座っていた椅子ごと、後ろに倒れたのだった
そして、校内に響き渡った衝撃も、その音も光も消え
1-Jクラスに静寂が訪れた
その後景を見た、ほとんどの人間が青ざめる
蓮の電撃を纏った拳で殴られた男が
居るべき場所に居なかったからだ
だが、その静寂も数秒であった
机の影から、黒いボサボサ頭が上がってくる
「っいったーー・・・・びっくりしたーー」
そこには、無傷の紫音が居た
紫音が傷を負ったのは、時間にして0.1程である
傷を負った瞬間にリルによって瞬間回復されていた
ついでに、蓮の拳もすでに完全回復されていた
殴られた男が無事なのを確認した
皆は、大きく息を吐き安堵するのだった
「シオ無事なのなの?」
「あぁ、衝撃で、転けはしたけど、ニニスの防御符のおかげで、かすり傷1つないよ」
立ち上がりながら、ニニスにお礼をいう紫音
「いや、でもなの、ニニスの符は焼き切れたなのね・・・
なんで、無事なのね」
そう、紫音の机の上には、焼き焦げて炭になった符の焼けカスが
大気に煽られ、微かに揺れていた
「わからん、でも、ニニスが守ってくれたんだろ?」
「でもなのなの・・」
ニニス自体、何がおこったか分からず、その声は震えていた
紫音は、そんなニニスのツインテールの頭に右手を沿え
「ニニスありがとう」
そうして、椅子に座ったまま、何かに怯え震える希唯の頭に左手を沿えた
ビクっと震える、希唯
そして、誰にも聞こえない程の小さな声が漏れていた
「い・・・・今・・・顔が・・・・いや・・・でも・・そんな・・・・・」
どれだけ小さい声だろうと、この距離で紫音が聞き逃す訳もなく
(うわ、一瞬だったのに見えてたのか?
それにあの光の中だったのに・・・目が良いな、この娘 (こ))
そして、小さな声を、希唯の耳に飛ばす
「はは、気のせいだ、気にすんな」
そして、希唯は、再び震えるのだったが
(あ・・・・・あくま・・・・)と・・・
この時、希唯の瞳に、紫音がどのように見えていたかは、希唯しかしらない
そして、彼女にとって、人生最大の出来事だったに違いなかった
そして、2人の頭をなでながら
紫音は、スキルが発動する
左手から感じる、希唯の心拍数、204
右手から感じる、ニニスの心拍数172
左右個別、心拍数同調
そして、徐々にクールダウンさせ
2人の心拍数を通常に戻す
そして、両手から、アルファ波をを強制的に流し込む
脳波と心拍数を支配した紫音
2人は紫音に強制的に平常心を取り戻させられた
蓮は、砕けたと思った右拳を、静かに眺めていた
『シオンこれは?』
『あぁ、治しといた』
『・・・・・・まぁいい、後で面貸せ』
『断りたい所だが、俺も聞きたいこともあるし、わかったよ』
そして、蓮は、声をあげ、此処に居る全員に告げた
「終了!解散!俺達は教室にもどるぞ」
混乱覚めあらぬ中、2年生達は、各自で騒ぎながら、教室に戻っていく
争いが終わったと思われた瞬間いち早く駆けつけた遊久路栄斗は
叶芽希唯に寄り添うと、希唯の頭にあった、紫音の左手を跳ね除けた
そして希唯の両肩を掴むと、「大丈夫か?」と声を掛けていた
あぁ、そういえば、幼馴染とかいっていたな
そして、このチャラ男、希唯に惚れてるな・・・・・
いや、頭を撫でていたのは、下心があったわけじゃないのよ
いや、ほんまに、、、そんなに睨まなくてもいいと思うんだが・・・・・
『あたりまえです、シオン様には、私というものがあります
そんな、小娘に興味など有る訳がないのです』
・・・・・うん、気にしない気にしない
そして、カレラが近づいてくるが、そのカレラの視線の先にいた、ニニスは
じっと、蓮を睨みつけていた
「おっと、ペンギンの嬢ちゃん、そんな怖い顔でみるなよ」
「お前はなになの?
シオに恨みでも、あるなのなの?」
「恨み?・・フフフ ハッハハハハハハ」
「なんなのなの、お前は、バカなの」
「あぁ、すまんすまん、いや、実はな、俺は、そこのシオンと友達だ」
「なの?!」
「はぁ?」
ニニスも驚くが、鉄雄も驚いた
そして、数人の視線を受ける、紫音
「・・・・・あぁ、随分昔の事で、今さっき思い出した
レンの言った通りだ、友人だよ」
「な・・・なんで、友達を、殴るなのよ
そんな奴友達でも、何でもないなのよ!」
(あ・・・・・いっきに心拍数あがった・・・)
ニニスは、自慢の防御魔法符が、破壊されたのだ
ニニスにとっては、日本の学校で初めて出来た友人を
その日に、いや、友達となった、数分後に失う自体に成りかねなかったのだ
怒るはずである
「?挨拶みたいなもんだって、なぁ?シオン」
「アホか?挨拶の度に、殺す気か、まぁ、ニニスそう怒るな
たぶん、レンは寸止してたんだよ、だから俺は無事なわけだし
こいつは、昔からこう言う奴だから」
「ま・・まぁな」
話を合わせろと、言わんばかりの紫音の視線に頷く蓮である
そして、蓮を睨みつけながら
「シオが、そう言うなら、許してやるなのよ」
「きにいったぞ、ペンギンの嬢ちゃんは
ニニスと言うのか?俺は2年の、蓮・B・ティオーノだ、よろしくな」
椅子の上に立ち、紫音に頭を撫でられながら
両手を腰に当て、ペンギンの着ぐるみを着た少女は
小さな胸を張って、答えるのだ
「ニニスは、ニニスなのよ」
「ハイハイ、それは私 (わたくし)が説明させて頂きましょう」
話に割って入ってきたのは、カレラである
「お前は、さっきの、マジックシューター」
「たしか、エルノさん?」
蓮と紫音の反応をみて、自分が自己紹介をしていなかった事を気づく
「そうですね、先に自己紹介をさせてください
私 (わたくしは)【カレラ・エルノーラ・クレミシ】と言います
ニニスはミドルネームで呼んでますが
どうかファーストネームで、カレラと呼んでくださいね
そして、この子は【ニース・ニケ・クロヴィス・メロヴィング】8歳です」
「8歳?」
「え?」
「ハァ?」
「その辺も、簡単に説明しましょう
私とは、親戚にあたるのですが、私が国に戻らず
日本の中学に上がることにしたので、追っかけてきたのです
ちなみに、この子は飛び級ではありません、すでに自国では
大卒資格と博士号をもった、天才です、チビですけど
そして、我が国、フランク王国
その王族、メロヴィング家、第三公女であります
まぁ、地位と金を使って、学園に入学し
駄々をこねて、小等部にも行かず
私と同じクラスになった、成金の、わがまま娘ですけどね」
「ニニスは、ニニスなのよ、それ以外は、どうでもいいなのよ」
そんなことは、自分には関係ないと、無い胸を張る
王族と聞き、栄斗や希唯、その他のクラスメイト達は目を丸くして驚いた
そして、その身分の違いから
小さな少女を見つめ、一線を引いてしまう
それは、彼等が、同級生でありながら
十支族・四条家の長女、四条優美を特別視し一線を引き
声すら掛けれない、それと同等であった
今後、ニニスは、クラスメイトから、はれものを触るように扱われる事となる
この事で、今後ニニスに友達が出来なくても
ニニスは、カレラを怒る事は無かっただろう
これは、カレラによる篩い落としなのだから
これで、ニニスと近寄ってくる、人間は減っても
それで、近寄ってくる人間は、2種類の人間となる
1つ、媚 (こび)を売って、私利私欲の為に近寄ってくる人間と
1つ、ニニスに惹かれ、身分など関係ないと、言う人間に
そう、相手が、王様だろうと、気にしない人間もいる
紫音・鉄雄・その他、数名
蓮にいたっては、元魔王なのだ
人間の、それも、たかが小国の国王など、取るに足りない事であった
「ニニスに、カレラに、宮守、そしてシオンか・・・
今年の1年は、楽しそうだな」
「おい蓮」
「あぁ?今こいつらと話してる所だろぅが」
「それよか、さっきのはやり過ぎだ、先生連中がこっちに向かってるってよ」
「そりゃぁ、うぜぇな、わかった戻る
そういうことだ、お前らまたな」
1年の教室から出ようとした蓮に、ニニスが
「もう来るななの」
「そういうな、ペンギンの・・・いや、ニニス、友達 (ダチ)だろ
それと、宮守、今度はハンデ無しの全力でやろうや」
言いたい事だけ、言って出て行った
「ハンデなしだと、余計かてるきがしねえよ
で・・・紫音、お前ティオーノ先輩と知り合いだったのか?」
「ああ、殴られてそうになって思い出した
だいたいアソコまで理不尽なまでに自分勝手な奴なんぞ
そう居ないだろ」
「紫音・・・それを、お前がいうのか?」
「なんで?俺いたって、フツウだろ」
「あぁ、お前の基準が、どこにあるか知らんが
だいたい、やりたいことを、やる
やりたくないことは、しない
その中じゃぁ普通なんだろうよ
だがな、それを自己中っていうんだ、覚えとけ」
何時もの事ながら、紫音も、ティオーノ先輩と同じく、自己中だわ・・・
「まぁまぁ、その言葉、そっくり、貴方にあげるわ、てつ」
実際は、鉄雄もかなりの、自己中である
そして、このカレラも同じ穴の狢である
「シオ、レンが、ニニスに友達だろって言ったなの
でも、友達になった覚えがないなのよ」
「日本にはな、【タイマンはったらダチ】って言う格言があるのさ」
「それは、なんなのなの?」
「まぁ、蓮はニニスと友達に値する人間だと判断したってことだろうな
いやなら、無視すればいい、だけどあいつは、かなりの自己中だぞ
ニニスの事を友達だと思って、そのうち無理やり遊びに来るぞ
まぁ、学年は違っても、クラスは隣だしな
アレは変わり者だが、俺よりは、いいやつだぞ」
ニニスは、頭を撫でられたまま、耳を赤くさせ
「そこまで、ニニスの友達の紫音が言うのなのなら
レンのダチって物になってあげるなのよ」
「それは、蓮本人に言ってやってくれ」
「あらら、ニニスは、彼 (紫音)と友達になったのですか?」
その言葉に、顔まで、真っ赤にさせ
「それはなの、シオが、友達にしてくれと頭を下げたからなの
だから、友達にしてあげたなの
ついでに、友達にしてやったなの、もう一人が、キィなの」
その方向に首を動かすと
先ほどの衝撃と音で、この校舎に確認に来た数名の先生
だが、おおきな異常も無く、1-Jを覗くと
大粒の涙を流し泣いているだろう女生徒と
その両肩を掴んでいる男子生徒の姿を見つけ
数名で教室に入ってきて
いきなり、希唯を捕まえてる両手を縛り上げられる
そして、意味も分からず連行される、栄斗
そして、状況が分からず、混乱する希唯は
女性の先生に慰められながら教室を後にするのだった
後に彼女、叶芽希唯は、その日の事を、こう表現した
【人生最大の最悪の日】と・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そして、ニニスは思い出したかの様に
「エルノ、これ見るなの、飛行機なの、鶴なの、すごいなの、もらったなの」
机の上に置かれた、折り紙を、自慢しだしたのだった
紫音は、騒がしい場所から、そそくさと抜けると
自分の椅子に座り、机に体を預けだらける
そして、折り鶴を自慢する、一番騒がしいニニスを眺め
【ニース・ニケ・クロヴィス・メロヴィング】・・・
何処かで見た覚えが・・・
『シオン様、確か先日読んでいた、論文にその名前があった覚えがあります』
『論文?』
「あぁ、たしか・・魔力力場における、空中固定だったか・・」
「シオ、知ってるなの?」
つい、口に出してしまった、その言葉に
ラレラと嬉しそうに話していた、ニニスが反応する
その目は、無邪気な少女の瞳ではなかった
そして、その目を紫音はしっていた
蘭さんと同じ科学者、いや探求者の目だと
そして、ものすごい勢いで迫ってきた
「いや、ちょっとまて」
「魔力力場と磁場、相互作用による、空中固定なのよ
今年初めに発表した、ニニスの論文なの
それを、なんでなの、シオが知ってるなのよ?」
まぁいいかと、机に、だらけさせていた体を起こし
椅子に座りなおす、猫背の様に背中をまるめてだ
「俺の親が、科学者の端くれでな
面白そうな論文だといっていたので、ちらっと目を通しただけだ
そこに、ニニスの名前が合ったことを、今思い出して・・・
あぁ、、、だから、さっきの防御符は
物理的支え無しで空中散布されてたのか
たしか、ある程度の軽い物質であり
一定以上の魔力を内蔵する物でないと
今の魔力の空中散布量子力学の理論では施行出来ないと書いていたが
ニニスの符ならば、その条件を満たせるのか
それも、あれは、感知遮断と視覚遮断の魔法で、見えない様にしていたとは
天才だな、ニニス」
にやける、ニニス、そこには8歳本来の顔となった、嬉しそうな顔があった
可愛いものだと、思った紫音だったが
ニニスにとって、紫音の存在が、1ランク上がったのだ
見た目から、変人だと分かる、その姿とは違い
彼の発する言葉には嘘が無い、そして無条件に自分を信じてくれた
年齢も身分も、知ってもなお、その彼の対応は変わりなかった
それ以上に、自分の論文を読み、その意味を理解していたのだ
それは、ニニスと同等までも行かないまでも
ある程度の知識が有るというもの
いや、ある程度ではない
最低でも科学魔法の分野にいたっては大学院クラスの知識が有る事が
少ない会話でも、ニニスには分かったのだ
それは、嬉しいことなのだ、自身の研究室にも
ニニスに付いてこれる人間は居なかったのだから
そして、嬉しそうに紫音に問いかける
「シオ、ならばなの
地球におけるなの、磁場におけるなの、意識同調をどう思うなの?
今、器具を利用した脳波磁場同調でのなのを
意識レベルの疏通の一時成功をしてるのなのよ
だけどなの、ニニスの思い描いた結果には、届かないなのよ」
カレラは
「またはじまった・・・
君ごめんね、何言ってるか分かんないでしょ
相手しなくてもいいのよ」と
「まったくわからんな」
とわらう鉄雄
「・・・・・・・・第6感の証明、それにおける意識の伝達、電波ってところか・・・」
「それが、わかるなの?シオ?」
「・・・・・・ニニス・・・」
「何なの?」
それは、核心であり、ニニスの次の研究であった
それを、あれだけの情報で一発で言い当てた紫音に驚き
その知識に驚愕する
そして、次の言葉に期待を膨らませ、嬉しそうにするニニス
「めんどくさい、俺は寝る」
そういって、机から、MYマクラを取り出し頭から机に飛び込み寝るのだった
「なんなのなんななんなの!
なんで寝るのなのよ!!!!」
ニニスは、紫音の体を揺すり叩き起こそうとするが
紫音の新たななるスキル衝撃遮断を発動させる
多少の衝撃ならば、それに相反する振動によって、極小までに衝撃を和らげる
そうやって完全無視で、寝るのだった
中等部、入学式の次の日にあたる
初の授業が行われた、その日の昼休みにおこった出来事
これが、鈴の知る、蓮が、紫音そして鉄雄と出逢った時の出来事であった
この後、紫音と蓮は話し合う事となり
蓮にリルの存在を紹介すると
蓮も、前の世界での自身の側近であった
ミーティアとミカを思い出し、会いたいと、紫音の前で口をすべらす
なら、逢いに行けば?と言う、紫音に驚き
リルが、前にいた世界に行けることを教えられる
そして、蓮は一度、前にいた世界へ戻り
自身の国へ戻るのだった
そこで、何があったかは、紫音は知らないが
悪魔である、ミーティアとミカを、こっちの世界に呼びたいと言う蓮に
紫音はある方法を、教えるのだった
悪魔である、2人の姿は、言うまでもなく悪魔其の物である
それが、この世界で普通に活動する唯一の方法
悪魔の身体を捨て、人間の体に入る事である
その為、全ての能力は人間程度になるだろう
そして、その成功率や持続年数も、紫音は保証できないと告げた
そんな事はない、リルがいる限り、成功率は100%だろう
持続年数も、リルが側にいる限り、その肉体の寿命くらいまでは保証できた
デメリットしかない、その条件を
ただ、自分達の主と共に居たいとねがう
ミーティアとミカは無条件に頷いた
その後、現世に来て一度、精神体となった2人は
リルの虚数空間に入り
とある、研究施設で、その寄り代となる肉体を手に入れるのだった
のちに、緯度経度の手をかり
住む場所を用意し、2人は、現世で主と共に生きていくのだった




