4話 1年前、ラスボスは遅れてやってくるが、出るタイミングを失う
蓮は、自分の教室から出て
呼びに来た、友人と共に、1年の教室に向かうのだった
廊下には、1-Jの教室の前の出入り口と
後ろの出入り口で生徒達が固まっていた
教室の前の入口には、遊久路栄斗 (ゆくりえいと)と、その後ろを囲むように
1-Jの男子生徒が陣取っていた
それに、対抗するように、教室の後ろ出入り口には
2-Jの男子生徒が、女子生徒を守るかの様に廊下を封鎖していた
どうして、そうなったか蓮は、知りもしないが
遊久路栄斗の存在を聞いていた事から、蓮は、ある程度の状況を推理する
それは、実に、今しがた起こった事を見ていたかの様に
8割方合っていたが、それを蓮は知る由もない
そして、蓮は
(まぁ、エロ斗が居るんだから、そんな事もあるかもな)
と、心で、つぶやき、隼人がどうなっているか
1年の教室を覗き込む、クラスメイトに声をかける
「よう、どんな感じだ?」
「蓮か、まぁ見ての通りで、隼人の負けは確定だな」
蓮は、出入り口から、顔をひょこっと覗かせ
中の状況を確認する
そこには
未だに、ポケットに手を入れたままの鉄雄と
すでに、機動力を失い、足を止め
小さな声で、何かを、ブツブツ言っている隼人の姿があった
えっと、足が重そうな隼人に、ん?宮守は無傷なのか?・・・隼人も弱く無いはずだが?
同年代、それも魔法格闘ではない、純粋な武力で考えるなら
まず、負けることはない、もし負けても、相手が無傷と言うのは、ありえないだろう
それが、相手が、あの宮守であってもだ
「さすがに、状況が把握できんな、解説よろ」
「いまさら来て、よろって、蓮が来なきゃ、次俺だったのに・・・
まぁいいか、簡単に言えば、隼人の油断だな
前々から知っての通り、宮守の戦闘スタイルは
武器なし、素手の攻撃無し、足技主体の打撃で、それはテコンドーに近い
そして、前後の動きより、横移動主体だ
対象的に、隼人は、打撃投げ組み技、何でもこなす、オールラウンダー
それも、軽い身体を生かした、スピードと技の豊富さ
弱点をあげるなら、軽い身体のからくる、打撃技の軽さだろうが
それを補う為の、投げと組み技だけどな
そして、今この場は、教室の後ろのスペース
椅子や机が邪魔で、前後の移動幅は有るものの
横に動けるのは左右1歩ほどだろうな
そうなると、状況的不利なのは、どう見ても、宮守だろう
足技も、こう幅が狭くては、大ぶりもできないし
得意であろう、横移動もできない
それに引き換え、隼人は、スピード、踏み込みの速さもさる事ながら
足技だけの相手に、自分が負けるとも思ってなかったんだろうさ
まぁ、それが油断に繋がったんだろうが
まずはだ、宮守の初撃、中段の右蹴りからの、変化で隼人の左膝を潰された
まぁ、俺なら、軽く躱せたけどな、まぁ油断していた隼人は、食らったってわけさ
後は、動き悪くなった隼人のスキを付いて、やりたい放題
左右の足、特に太腿に合わせて、3~40蹴り食らってるから
もう、まともに動かないだろうな
あぁなると、今から強化魔法使っても、意味ないしな
そして、見てみ、隼人、ぶつぶつ言ってるだろ
ありゃぁ、ブチ切れる寸前だ?何かやらかすぞ」
笑いながら、説明した男子生徒は
隼人が、ブチ切れて何をするか、期待津津である
「油断というか、熱くなり過ぎだろ
隼人の奴、普段は冷静なんだが、元々沸点低いからな、あっ!!」
**********
蓮が、1年のクズクラスを覗く、少し前
「うぜぇ、いい加減倒れろよ、大文字先輩」
「うるせぇ、くそが、そんな虫も殺せない蹴りで俺が倒れる訳がないだろうが!」
哲雄は、すでに、何十発も蹴りを入れては入るが
倒れない大文字にイラついてきていた
哲雄も哲雄で、微妙なのだ、手加減するのがイヤなってきたのだ
その気になれば、動きが鈍った大文字など相手ではない
ピンポイントで足の骨を折ることもできる
頭部を蹴って、意識を刈り取る事も出来るが
足の骨を折れば、完治するのに数ヶ月かかるだろう
頭を蹴ってもいいが、この大文字が下手にうごいて
当たり所が悪いかったときの事を考えると・・・
鉄雄のできることは、急所に入らないように
足を削っていくだけであるのだ
それでも、時間稼ぎには、ちょうど良かったのも事実でもある
隼人は鉄雄の初撃を躱せなかった事を悔やんでいた
油断は無かったはずだと、右足の中段蹴り
それは左肘で確実に止めた筈だった
そう、止めたはずだったのだ、だが左肘に何の感触も無く
痛みが走ったのは、左膝だった
隼人には、鉄雄が繰り出した、蹴りの変化がわからなかった
いや、分かるハズがない、そういう蹴りなのだから
鼓道場、ここで教わる基本の戦闘態勢は、少し斜に構え
身体の中心線を相手から隠す形である
その前足の膝を壊されたのだ
正確には、膝自体には、ダメージが少なく
膝を動かす筋肉の付け根に、一番痛みが走る角度で蹴りを入れたのだ
そんな事は分からない隼人は、考えないようにするが
体は、左膝を庇おうと、動きがぎこちなくなる
そして、その痛みから隼人の踏み込みは、微かに遅くなるのだ
格下相手なら、それでも勝てただろう
だが、鉄雄にとって、それで充分
隼人の攻撃の隙を付いて鉄雄の蹴りが、隼人を襲う
そして、すでに、隼人の足は、動かない
立っているだけで、精一杯の隼人
一度でも、バランスを崩せば、倒れ立ち上がれないだろう
隼人は、すでに自分の置かれた状況は理解できていたが
だが
年下に舐められたまま、終われない
それ以上に、一発も入れずに負けたとなれば
後で何を言われることか・・・
そんな思いを胸に隼人の血液は、どんどん頭に登っていき
感情が口から漏れる
「クソクソウクソクソクソクソクソクソクソ」
自分では気づいていない、頭に血が登りすぎて
いや、まだまだ登っていくのだが、鉄雄は、それに拍車をかけるのだ
隼人が、ぶつぶつと、つぶやき始めた頃
鉄雄が、教室を覗き込む、赤い頭の人間に気が付く
「・・・・やっぱきたか・・・・・」
鉄雄は隼人に対し正面を向き
両手をズボンのポケットに入れたまま、肩幅より少し広く足を開く
そして胸を張り首を少し傾げ、隼人を見下すように
「大文字先輩、もう代われよ、時間の無駄だ」
そして、上半身を前に倒し、一度舌をだし
「俺は、大文字先輩とちがって、弱いものイジメをする趣味はねぇし
手加減するのも疲れた、それに、やっと、ラスボスが釣れたしな」
それは、完全なる侮辱である
だが、反論は出来ない
隼人達は、ここに騒がしい1年をリンチにしに来たのだが
鉄雄の、【弱い】言う言葉と、【手加減】と言う言葉に
とうとう隼人は、キレた
「殺す」
そして、右手を鉄雄に向け手のひらを広げ
右手の手首を左手で掴む
「火・火可・火可・火可・火可・・・・・・・・」
隼人の右手の前に、赤い塊が出現し
徐々に大きくなっていくのだった
それは、炎系、広範囲炸裂魔法【ファイヤーボム】
そのボールの様な球体を打ち出し、目標物に当たると、炸裂し燃え上がる
その込める魔力によって、威力が増すというものだ
隼人は、ありったけの魔力を込めていく
力で勝てないなら、魔法で勝つ
オールラウンダーと言うのは簡単だが、器用貧乏である
その分、何でも出来るのだ、そう、大文字隼人は
格闘技において、優秀でもあるが、魔法全般に対しても優秀であった
そして今、隼人は魔法を使う
それは、正解なのだ、決まったルールも無く、戦っているのだ
最後に立っていた者が勝ちである
そして、鉄雄は、攻撃系の魔法が苦手であり
防御系は、もっと苦手であるのだから
そして、そのことも、隼人や、蓮達は知っていたのだ
機動力の高い、鉄雄を確実に倒すため
広範囲の攻撃系魔法を用意していた
これは隼人が、鉄雄と対峙した時に
もしもの切り札として用意していたものだが
使うつもりはなかった、威力よりも
その範囲攻撃で出る被害が予想できなかったからだ
だが、ブチギレた隼人には、関係なかった
隼人の頭にあるのは、宮守鉄雄を殺すことだけなのだから
隼人の魔法の発動
鉄雄は、その魔法を見も、何の魔法か分からなかったが
徐々に大きくなる、赤い塊に、それが範囲系の炎魔法である事を理解した
「間に合わんか」
そう、すでにある程度大きくなった、塊は
その魔法を発動させた、隼人の意識を狩っても、消滅する事はない
ただ、暴発するだけである
そして、鉄雄は、隼人と距離を取るため、後ろに下がる
そこには、隼人の魔法が何であるか理解した、先程まで、リンチを受けていた7人が
青い顔をして震えていた、そして、一番最初に蹴られ意識をなくした奴が転がる
そして机に腰をかけ、楽しそうに鉄雄を迎えた真っ赤な魔導帽を被る女性がいた
「おかえりなさい」
「ただいま、カレラ、見せ場を残しといたぞ」
「嘘おっしゃい、逃げてきたんでしょ」
「知ってんだろ、俺は、あの手の魔法が苦手なんだ」
「知ってるわ、だから逃げてきたんでしょ?」
「そうだけど、そこを突っ込むなよ」
「で、どうするつもりなの?」
「だから、見せ場を・・・悪かった、助けてくれ」
「はじめから、そう言えばいいのよ
だけど、彼のファイアボム程度だと、私の見せ場にもならないのよね
ほんと・・・何か、いい方法はないかしら」
そう言って彼女は首を傾げ本気で悩むのだった
**********
隼人がキレて、魔法を発動させた頃、廊下では
「あ・・・キレた」
「あぁ、あれは、炎系の何かか?」
「あぁ、蓮の言う通りだ、隼人の隠し玉、ファイアボムだろうな
さっきの授業中、炎系統の範囲魔法、聞かれたから
隼人でも制御出来そうな、ファイアボム教えといたからな
暇な時間を使って、デバイスに組みこんだんだろうな」
「そうか、範囲系か、、、、ん?」
「どうかしたか?」
「どう見ても、隼人の奴、制御できてないだろう?
何処まで、魔力注入するきだ?ファイアボムって、炸裂だろ?
ヤバくないか?」
「・・・・・・・・・・・あ・・・・・・」
そして、廊下に居る、クラスメイト達に声を上げる
「おい、お前ら、隼人の範囲魔法来るぞ、防御に専念しろ」
そして、遊久路栄斗と対峙していた、2年生達と
遊久路栄斗達、1年達は、教室の状況に気がつき
各自、防御魔法を使うもの
また、防御魔法が苦手な生徒は、友達の防御魔法に庇ってもらったり
または、その場から離れだしていた
すでに、止めに入ろうにも、発動してしまったそれは
本人の制御でしか、その発動を止められない
そして、その魔法を発動した隼人は、キレていた
そして、ファイアボムは、まだ隼人には制御しきれない魔法であった
だからこそ、魔法は暴走し、より魔力を蓄える
現状で、この魔法を止められる人間は数人、その中に蓮はいたが
騒ぎ出す、クラスメイト達の手前
なんだ、かんだで、蓮は出て行くタイミングを逃す
その心境は
(まぁ、面白そうだし、あまりにも被害が出るようなら、その時止めればいいだろう)
ぐらいである
蓮、その魂は、違う世界で魔王までなった人物である
その気になれば、この世界の魔法など、どうとでもなるのだ
だからこそだろう、この後どうなるだろうかと、面白がり見守るのだった
そして、1-Jの教室内でも、隼人の魔法から逃れるため
教室の前に固まり、防御魔法を展開させる生徒達がいたのだが
そんな中、我関せずの精神を貫く生徒達もいた
数名の生徒は、そんなこと時間の無駄とばかり
自身の机で、自身のやるべき事、又は、自身の趣味を貫いていた
そして、ここにも、そんな我関せずの2人と、魔法に怯える1人の生徒がいた
それは、髪にウエーブが掛かった、先程までは、可愛らしい女の子だった
叶芽希唯 (かなめきい)である
今はと言うと、顔を青くさせ、アタフタと動揺していた
「大丈夫?あの魔法、ヤバイみたいよ
みんな、騒いでいるし、避難してるし、2人とも逃げないと
ニニスちゃん、速く、立って、そんな紙のオモチャで遊んでいる暇ないよ」
学園では、小等部5年から、攻撃系魔法を勉強していくが
それは、簡単な初心者用魔法ばかりだ
そして、希唯は、中等部になったばかりの1年生である
隼人が使っている、範囲系魔法は中級魔法
周りが騒ぎ警戒する様子をみると
その魔法を知らない、希唯でも、自分が置かれている状況が分かると言うものだ
そして、それが、目の前で発動しているのだ、怯えないワケがないのだ
一方、片手に1羽、両手で2羽の折り鶴を持って嬉しそうにしている小さな少女は
手に持つ、芸術品に近い伝統工芸を、オモチャ呼ばわりされた事に
より腹を立て、より彼女に嫌悪感を膨らます
そして、楽しい時間を邪魔する叶芽希唯に強く言葉を返す
「うるさいなのよ
あそこに居るのは、エルノなの、だから大丈夫なのよ
それに、ここに居れば、しお君のついでに、守ってあげるなのよ」
「そんな事いったって・・・・・・
紫音くん、貴方も、、、、、なんで、そんなに冷静なのよ」
半分泣きそうな顔で、3羽目の折り鶴を折る、紫音を見つめる叶芽希唯
「ん?いあぁ、ニニスが守ってくれるって言ったからな
俺に出来る事は、折り紙を折るくらいしかないだろ?」
「なんで、今日逢ったばかりでしょ
それに、こんな小さなニニスちゃんが、何ができるって言うの」
隼人の魔法に込める魔力がどんどん溜まっていき
誰しもが、その魔法の威力なら、この教室を半壊できるだろう事を理解する
それは希唯も例外ではなく、それを防ぐほどの防御魔法を使えない希唯は
すでに、混乱し恐怖していた
紫音は、そんな彼女を、ほっといてもいいのだが
横で騒ぎ立てられうるさく、ニニスはそんな彼女に苛立っている
先程もだが、この2人は、きっと反りが合わないのだろうと
めんどくさいが、希唯に声をかける
「希唯さん、落ち着きな、小さいとは言うが
ニニスは同級生だ、そこに、身長も年齢も関係ないだろ
それに俺は、ニニスとも希唯さんとも友達に成りたいとも思ってる
なら、俺は、どんな事があってもニニスの言葉を信じるよ
希唯さんも、ニニスと友達になりたいなら、信じてあげな
まぁ、俺は人様に好かれるほど、まともな人間じゃない
どちらかといえば、忌み嫌われる部類の人間だろうから
友達とか思われるのが迷惑なら、今の内に言ってくれ」
まぁ、対人会話スキルは、1000年近く生きている俺にとって
慣れたものである・・・・・・と思ってるのは紫音、本人だけである
そして、幾分オヤジくさい
1000年近く生きてきた、紫音の年齢も
あの事件から成長を止めた、双子の妹、鈴の身長も
同級生と言う枠組みの中では、関係ない
それは、紫音自身向けた言葉でもある
そして紫音にとって、乱入者の放つ魔法など、些細な火遊び程度の事
それに、姿は見えないが、紫音のそばには、リルがいるのだ
そう紫音の側にさえ居れば、ここに戦闘機がミサイルを打ち込み銃撃しようとも
紫音、ニニス、希唯は、かすり傷1つ負うことはないのだから
そう、紫音は、ニニスの事を信じてる訳ではない
今後、中等部3年間たぶんJクラスに通うだろう紫音
そして、ニニス、そして希唯も一緒だろうと思うと
今のうちに、仲良くさせとかないと
このままでは、とばっちりを受けるのは自分だろうと理解し
2人の仲を取り持つ為、紫音は希唯を宥めていくのだった
だが、その希唯に向けた言葉は、紫音の思惑を超え
ニニスに響くのだ
ニニスも、幼くして自身の国から、この学園に来て、唯一の知り合いは
エルノと呼ぶ燃えるような魔導帽とマントを着る女性だけである
心の何処かで、寂しかったのかもしれない
弁当がキッカケだった
昼休みに、エルノが手招きで呼んでいるので
近寄ってみたら、おおきな弁当箱が並べられ
進められるままに、誰のか知らぬまま食べると、とても美味しかった
聞いてみると、この弁当の主は、自分の弁当にも関わらず
いっさい手をつけず、食べるクラスメイト達を眺めているだけだった
頭がおかしいのかと、これが、ジャパニーズ・イジメかと、あまり興味は無かったが
弁当を食べた返しにと、ニニスは自分の弁当である、リンゴを渡すのだが
「ありがとう」と無表情で受け取った男は、リンゴを拭きもせず
受け取ったその手で、リンゴを口に運び、かぶりつき
小さな声で「ん、うまい」と、つぶやいた言葉をニニスは聞き逃さなかった
そして、彼の手から生み出される
芸術とも言える紙で織られた鶴は、ニニスの心を奪う
そんな目の前の男
無愛想で、大雑把で、何を考えているのか分からない、変わった男
見た目的には、セットされていない髪はボサボサ
猫背で姿勢はわるく、やる気が全く見られない
そんな、お世辞でも、普通の人間とは言えないだろう彼は
知り合ってまだ、30分も立っていない自分を
友達になりたいと、そして無条件にニニスの言った言葉を信じてくれた
それは、ニニスの身長・年齢、その服装すら受け入れてくれた事に他ならない
そして、彼は言った、彼自身は忌み嫌われる部類の人間だと
そうなんだろう、見た目も、雰囲気も、ニニスが今まで出逢ってきた人間には無い
どちらかと言うと、紫音の言った通り、関わりになりたくない人間であり
ニニスも、自身から紫音に声を掛けることも、話すこともなかっただろう
きっと、中等部での3年間、紫音と関わりを持つことは皆無だったに違いなかった
だが、出逢ってしまった、知り合ってしまった
ニニスの見る限り、その行動と言動には、偽りはない
ニニスの周りにいる大人は、全くその逆の人間ばかりだった
身なりを整え、自身の権威を飾るかの様に、宝石で自身を飾る
見た目は、煌びやかだが
その、行動、言動は、常に裏を探り、人の揚げ足をとり
常に誰かを蹴落とし、強いものには胡麻をすり取り入ろうとする
そんな事しか考えていない、人間ばかりであった
そんな中、紫音の自身を隠さない偽りの無い言葉は
ニニスの心を打つものだったのだ
そして、ニニス照れくさそうに
「ふん、そんなに言うのなのなら
友達にしてあげるなの、シオは、感謝するなのよ」
耳を真っ赤に染め上げて、紫音から視線を外すニニス
そんな姿を見て、さすがに紫音もクスリと笑い
とうとう、シオになったかと・・・
「ありがとう、ニニス、よろしくな」
そして、隼人の魔法に、恐怖し大粒の涙を流す希唯は
両腕を身体の前で組み合わせ、身体を震わせ、涙声で、2人に話しかける
「あの・・えっと、あの、わ、私も友達いいかな・・」
「ふんなの、キイも、ついでに友達にしてあげるなのよ」
「希唯さんも、よろしく」
「でも、な、なんで、この状態で・・・・なんで冷静なの・・・」
「大丈夫だから、きにすんな」
「そうなのよ」
そして、1年・2年の生徒の注目の中
隼人の魔法【ファイアボム】が放たれたのだった




