3話 1年前、ムダ個性、1年クズクラス
そして、蓮の話は続いていく
鈴の知る、紫音サイドの事は、後にリルに聞いた話である
紫音はシオンとして、成り立った時に
より多くの知識を求めた
その時、幾つかの選択枝の中に
日本に幾つかある【国立関東天童魔法学園】の事が頭に浮かぶ
そして、シオンが蘭と交わした約束の中に
高校だけは卒業しろと言うものがある
ならば、残り数年程の人生、暇つぶしに行ってみるのも一興かと
友人の、【鉄雄】もいることだし、それなりに面白いだろうと
中等部への入学試験を受ける事となるのだが
緯度経度と言う、7:3メガネに、詳細を調べてもらうと
どこから、その情報を持ってきたのか、分からないが
その情報は、学園の裏の顔を明確に記したものだった
そう、緯度経度は、ある書類を入れた封筒を紫音に、笑いながら渡す
紫音は、その笑みを不思議に思ったが
その書類を確認していく紫音
その内の1枚の資料のコピーを見て、目を丸くする
そして緯度経度の楽しいそうな顔の意味を納得したのだ
そこには、事前の書類審査の時点で
紫音と鈴の名前の上に【特別入学枠、合格】の判子が押されていたのだ
2人はまだ、試験さえ受けていない
つい先日、中等部入学、入試用の手続きの書類を送ったばかりである
そう、それほどに【三千風蘭】の名前の力はすごかったのだ
そして、その書類を、何処から持ってきたか定かではないが
緯度経度も、紫音との数年の付き合いで
その手腕は、恐ろしいものとなっていた
そして、それを知った紫音は、苦労もなく入試に合格するが
入試で申し訳ない程度に回答したテストが、高得点とれるわけでもなし
紫音の教室は、鉄雄と同じJクラスとなる
鉄雄も鉄雄で、昨年の頭のおかしい生徒と同じく
自分からJクラスとなった変人である
そして、登校初日の入学式も終わり
次の日から、本格的な授業が開始された
Jクラス、担任はいる物の、彼が、何をするわけでもない
そう、中等部、クラス初顔合わせだからと言って
和気合い合いと、自己紹介するというクラスでは無いのだ
担任は目視と、数合わせで、出席を勝手に摂ると
何も言わずに、教室を出て行く
昨年の出来事から、授業をする先生は増えたものの
授業の3割は、教師のボイコットから自習なのだ
そんな事を、気にする紫音や鉄雄ではない
紫音が学校に来る目的は、大量の知識が収められてるアーカイブ
要は図書館と、学園の所有する、巨大サーバーに蓄積された情報に有るのだ
それ見るとき以外は寝て過ごすだけである
そう、授業初日、その1時限目から紫音は枕持参で、机に身体を預け眠りにつく
紫音の席は入口と反対側、窓のそば前後で言えば真ん中辺りである
そして、その前の席に陣取ったのは鉄雄であった
鉄雄も、自身の机から、大きな辞典を取り出し机上に広げた
きっと誰も興味を持たないであろう、その古き本の名は
【世界の樹木、そして、失われた木々】
その趣味全開の本を読みふける
鉄雄の近くには、小等部から仲のいい鉄雄の友人が陣取っていた
また、このクラスは例年と違い、テスト順位ではなく
学校側が、扱いに困まるような生徒であったり
手の付けられない変わり者が多く居たのだ
そんな、生徒達も、多少音が出る様な事をしていても
基本は静かであったが
やはり、騒ぎ立てる生徒も居たのだ
彼等は8人ほどで、最近流行りの、携帯ゲームをしていた
教室の後ろ、出入り口に近い場所を陣取り
自習とはいえ、授業中に大きな声で騒ぎ立てていたのだった
いつしか昼休みとなり
寝ていた紫音に鉄雄が声を掛けた
「おぃ、起きろ紫音、昼なったぞ、飯どうするよ?
俺は今日は弁当なしなんだよ
購買でパン買うか、それとも食堂まで行って食べるか?
まぁ、どっちにしろ、アホほど人がいるけどな」
「ふぁぁぁあああ・・・・・
ん?昼飯?・・・・・確か弁当を持たされた気がするが・・・」
そう言いながら、紫音はカバンを探ると
どうやって入っていたか不明なほどの大きい弁当箱が出てきたのだ
それを机の上にだすと、包んであった布に、メーッセージカードらしき物が付いていた
「でかくね?・・・紫音それ一人で食べるのか?」
「いや、鈴が作ってくれたんだが、鉄や、友達と食べてくれってさ」
そういい、メーッセージカードを鉄雄に見せた
「おぉ、鈴の手作り弁当か、そりゃ美味そうだ
だから、今日、母さんが、わざとらしく
「中等部から弁当いるのをすっかり忘れたの、ごめんね」
とか言っていたのか」
「はは、鈴の奴の計画的犯行か、それにしても
授業初日だというのに鈴の奴、奮発したな」
3段重ねの弁当を並べて見ると、色とりどりの食材が並び
見た目でも楽しませてくれる、色彩豊かな、お弁当であり
その匂いに惹かれた、鉄雄の友人達が集まり出したのだ
そして、鉄雄は初めてクラスメイトの友人達に紫音を紹介したのだ
「紹介するわ、コイツは【紫音】
そして、この弁当は俺達が全部食っていいらしいぞ」
「いただき・・・
「おお、ありがてえ、いただくは」
「いただきまーす」
「おぃ、ちょっとまて、その唐揚げは、俺が先に目をつけたんだぞ」
「うっせぇ、早い者勝ちだろうがよ」
「なになの、何かくれるなの?」
「うめぇぇーーーーーーーーーーーー」
「ちょ、ナニコレ、美味しすぎない?」
「この、ミニハンバーグのデミグラス、有り得ないうまさなんだけど」
「肉ばっか食ってんじゃねぇよ、俺にもよこせ」
「ヤバ!マジヤバ!超ヤバイヤバイヤバイ、MYだって」
・・・ました、うま!」
「俺食ってないんだけどなぁ・・・・・・まぁいんだけど」
そう、ほんの数分で、弁当の中身は空になったのだ
だが、紫音は気にしない
それ以上に、鈴の作った弁当を、笑顔で食べるクラスメイト達
そして「美味しい」といってくれた事に、満足していたからだ
それにしても、流石に鉄雄の友人達
その姿、服装は異質、独自のアイデンティティーを貫く人間達であった
「うまかったぁぁ、しおんだっけ?どっかの、一流シェフでもやとってんの?」
「いや、普通の家だよ、シェフおろか、お手伝さんも、いないよ」
「へぇ、それにしても、お前の、母親料理上手くね?」
「・・・・あぁ・・・うん、まぁ、そかもな」
まぁ、集まった中の数人は、お手伝いさんや、シェフが居るような
金持ちの子供だろう事が、あからさまに分かる様な会話をしながら
シェフが居ないなら、弁当を作るのは母親だろうと、想像する初対面の人間に
これを作ったのは、双子の妹だと、説明するのがメンドくさい紫音は
もう、それいいかと、適当に返事をするのだった
だが、その弁当が鈴の手によるものだと知っている鉄雄は
紫音の態度に、どうせ説明するのがイヤなんだろうなと、苦笑いをしていた
「え?これ君のお弁当?わぁ・・・君食べて無いよね?私の少し分けてあげるよ」
「いやぁ悪いな、つい美味しくて、俺のもわけたるわ」
「マジで!うわぁ、ごめんね、ボクは中等部では、食堂行くつもりだったから
機会があれば、今度お礼に奢らせてよ」
「ニニスの弁当をたべるなの、今日は、りんごなのよ、たべるなの」
鉄雄の見守る中、紫音は会話の中心となり
机を合わせ、紫音の弁当を食べた、弁当持ちの友人達は、その弁当を広げた
そして、数人から、弁当を少し分けてもらい、軽い昼食を食べるのだった
紫音と鉄雄は気づく、鈴の策略にまんまと放ったことを
転入してきた、紫音がクラスに馴染める様に
鈴は、無駄に大きな弁当を拵えたのだ
それを、周りに、おすそ分けすることで、紫音に友達が出来るようにと
そうなのだ、そうでもしなけれな
紫音自身が、自ら動き
クラスメイトと交流する様なタイプではないであろうと
そう、その考えは、当たっていた、紫音にしてみれば
学校とは寝る所であり、友人など、どうでもよかったのだ
まぁ、そのうち、鉄雄以外に、2・3人出来て
面白おかしく、過ごせればいいと思っていた程度なのだ
それなのに、鈴の策略で
クラスメイト数人に囲まれて、徐々に打ち解け始める紫音
紫音にしてみれば、想定外であり
これから、友人・友となるだろう人間が
いや、きっと、彼等、彼女等にとって
紫音はすでにクラスメイトで有り、友達であったに違いないのだ
そう、紫音の周りに、多くの友人が集まった事自体ないのだ
以前の紫音だった彼の記憶にも有りはしない
そもそも、友人と呼べる人間が、片手で数えれる位しか居ないのだから
それも束の間
ガラガラガラ
ドカ!
ガシャガシャガガッガ・・・・・・ドタ
教室後ろの出入り口が、いきなり開き
大きな音と共に、ドアの近くにいた、生徒が吹っ飛ぶ
そして、数個の机と椅子をなぎ払い、床に倒れたのだ
「なにすんだ、てめえ!」
いきなり蹴られた少年の友人達は、敵意を向けて
ドアの向こうに立つ人間達を睨みつける
教室後ろの出入り口付近で、今日一日騒いでいた集団
彼等は、小等部で仲のよかった8人組
普段から素行は悪く、幾つもの警察沙汰も起こしていた
学園側も、注意をするが、彼等には強く出れなかった
彼等は個々の能力が高く優秀だった、更生さえすれば
学園にとって利益になる生徒だったからだ
そして、彼等の親は、各企業の重役でもあり
学園に融資されている金額も、桁が1つ違っていたのだ
そんな、生徒だからこそ、学園は強く出れず
最終手段として、クズクラスに入れたのだ
それを分かっている、少年達は仲間意識は高かった
小等部から、学園内、学園外で、つるみ悪さをしてきたのだ
仲間意識が高いのは当たり前だろう事である
そして、今いきなり、その仲間の1人が蹴られたのだ
残った7人が、苛立ち、怒るのは当たり前だった
だが、ドアの外に居るのは、彼等の見知った顔
小等部の時、幾度となく見たことのある、1学年上の人間達
直接、争ったことはなかったが、それなりには噂は聞いていたが
彼等、8人もそれなりに、悪さをしてきたのだ
相手が年上であろうと、遠慮はしなかった
瞬時に肉体強化をかけ
ドアの向こうにいる、2年生に襲いかかる1年
だが、相手が悪かった、そこにいたのは
鼓道場に通う小柄の男【大文字隼人 (だいもんじやはと)】
その実力は蓮のお墨付きである
隼人は、その手で軽く2人を弾き飛ばす
それを見た残り5人は、本気になる
3人は、自身の武器をとる
1人は、オーソドックスな西洋剣
1人は、日本刀
1人は、短剣を両手に構えた
残りの2人は、いつでも魔法を打ち出せる体制をとった
そして、弾き飛ばされた2人も、痛みを堪え立ち上がるが
だが、時はすでに遅かった
蓮達2年生の暇人は、10人を超えていた
そして、彼等、彼女等の経験値は高かった
すでに、魔法を構えた2人は、バインド系魔法で拘束され
武器を構えた3人は、隼人の打撃で教室の奥へと飛ばされた
終わってみれば、圧倒的な力で瞬殺された8人
蓮達にしてみれば、狩りにもならない相手であった
蓮は、興味が失せたか、さっさと自分の教室に足をむけたのだ
そして、ここからは、1年生に対する2年生のリンチである
教室の後ろの角に、8人を追いやり
5人の男達が、それを取り囲んだのだ
隼人はすでに、その場から下がり廊下で待つ友人と合流し
「今年の1年は、予想以上に、ヘタレばっかりだわ
せっかくジャンケンで勝って一番槍を得たのに興ざめだよ」
と友人に愚痴を溢す
そして、友人達と廊下で笑い話を交わしながら
教室の中の様子を伺っていた
2年生の彼等は
二度と授業中に騒ぐなと、授業や、他の生徒の邪魔をするなと
言い聞かせるように、殴る、そして蹴る
泣きじゃくる、8人を無視し、心が折れるほどの痛みと恐怖を与えていくだった
そう、その暴力は、8人以外にも
このクラス全員に対しての見せつけでもあるのだ
自分達に、逆らわないように、力と、恐怖で支配しようとしたのだった
そして、1-Jの教室にいる生徒にも、口止めを忘れない
1年前、彼等は、こうやって、クズクラスを制圧していったのだ
・・・だが、何事にも例外と言うものがある
この年の1年のクズクラスになった生徒は
縮こまり怯える、8人みたいな、ただの頭の悪いバカばかりではない
学園側で、手の付けられない変わった生徒も多いいが
それ以上に、蓮達と同様に、このクズクラスに来たいが為に
ワザと成績を落とした人間が、多くいるのだ
そう、彼等は、目の前で泣き叫ぶ8人の事など、どうでもよかった
そう、自身に関係ないと完全無視を決める、1-Jの生徒達
その反面、たかが、少し速く生まれただけの、2年生に
このクラスの主導権を握られるのが、気に食わない人間達が居た
それも、少し前まで
絶品の美味さを誇る弁当を食べて気分よくし
新しい友人を得て、楽しく会話をしていた彼等
そう、気分よく楽しんでいた所に、いきなり2年生が乱入してきたのだ
そして、目の前で行われた、必要以上の粛清に
リーゼントと携えた男が動くのだった
鉄雄の動きは早かった
動いた瞬間には、教室の後ろで泣き叫ぶ8人のバカ達をリンチしていた2年生5人を蹴り飛ばす
その動きに気がついた、隼人だったのだが
すでに廊下に出ていた為一歩間に合わなかったのだが
蹴り飛ばされ、飛んでくる人間の隙間を進み鉄雄の前に躍り出た
一方、鉄雄は、ポケットに両手を突っ込んだまま
バカ8人を、その背中で庇うように、立ちふさがるのだった
隼人は同年代では、小柄な体格であった
それが、中等部1年であるが
体格の良い鉄雄の前にでると、見劣りするのだった
対峙する2人、学年は1つ違うが、小等部から学園に通う人間
歳の近い、有名人なら、顔も名前も知りはするのだ
そう、彼等は見知っていた
「宮守か、お前も、この馬鹿達の仲間か?
もしそうなら、お前も狩るぞ!」
「大文字先輩、俺をこんなクズと一緒にして欲しくないね
まぁ、友達でもないし、こいつらが、授業中騒がないなら
俺は静かに寝れるから、助ける義理もないんだけど
ただ、先輩方は暴れすぎた、俺達はまだ弁当を広けているんだ
ホコリが入るだろ、ホコリがよ
ちったぁ他人の迷惑って物を考えろや
なぁ頭の中身も足りないが、身長も足りない先輩よ?」
鉄雄は、右手をポケットからだし、人差し指で自身の頭を指差し
首を少し横に倒し、隼人を見下ろすように
背の低い隼人を挑発するのだった
「宮守、お前は殺す」
彼、大文字隼人に背丈の話は禁句である
格闘において、体格差、体重差とは、その勝敗に最も関係する事柄の1つである
その為、各種スポーツに置いて、体重別で競技を行うことがある
代表的なのが、ボクシングや柔道である
だが、鼓道場には、そんな物は有りはしない
大文字隼人はその、小柄な体格のお陰で
動きは速く、技も豊富で、鼓道場でも有力株であるが
隼人にしてみれば、その技、速さは
自身の軽い打撃を補う為の苦肉の作である
隼人の目指すスタイルは別物であったのだ
昔見た、マンガに出てきた、敵役 (かたきやく)に憧れて武の道を進みだした
その適役が、死ぬ間際に放った、たった1度の拳
その必殺であった一撃に心を射たれ憧れた
未だに、その目指す道は未だに遠く、鍛錬も足りないが
それは今後、修練を積み重ねればいい
だが、体格だけは、彼にはどうしようもなかったのだ
その事を、知らず挑発する鉄雄に
隼人は、ここに来た目的を忘れ激怒し
その両拳に力を貯め、鉄雄に襲いかかるのだった
一方、鉄雄が動くと同時に
紫音と一緒に弁当を食べていた女の子が声を紫音に声をかける
「あらら、行っちゃったか、しょうがないね
あっと、君は、この学園来たばっかりだよね
コレくらいの喧嘩は良くある事だから、怯えなくても大丈夫だよ
巻き込まれて怪我しても、あれだからここから動かないでね
ニニス、彼おねがいね」
「はいなのね」
紫音の線の細い身体を見て
戦いに向いてないと思ったのだろうか
または、紫音のか持ち出す雰囲気から、弱いと思ったのだろうか
彼女は、紫音を鉄雄の喧嘩に、巻き込まれないように言うと
彼女自身は、自分の机の上に置いてあった
真っ赤に燃えるような赤い、魔道士帽を緋色の髪の上に、ひょいと冠り
同じく背中の、真っ赤に燃える様に赤いマントを翻し
ゆっくりと、鉄雄の後に続いた
そして、中等部の制服を、オシャレギの様に着こなす、良くしゃべる男の子
紫音の持参した鈴の弁当に一番速く手を出し食べた男でもある
彼は、一度廊下にいる人数を確認すると、隣にいた
ウェーブのかかった長い髪の女の子に視線を送るのだった
彼女は、それに気づくと、ため息まじりに、右手で廊下を指した
後から紫音は気づくのだが、彼は廊下にいた女の子を見定めていたのだと
そして、彼女を許しを得た、良くしゃべる男の子は、嬉しそうに
教室の前のドアから廊下に出て行った
浮かれるように、足取り軽く飛び跳ねながら
そして、ニニスと呼ばれた、瞳のパッチリとした少女
驚くことに、鈴より、身長が低いのだ
とても同じ学年とは思えない小柄な少女
その容姿と名前から、日本人ではないのだろう事は分かったが
その服装は、このクラスの中で、一番異質
いや、ある意味その姿は、紫音にとって、ドストライクであった
彼女は、ペンギンの着ぐるみを着込んでいた
その、かわいい着ぐるみの完成度は、目を見張るものがあった
細部まで作りこまれており、フードを装着した時の
全体的バランスは、紫音に【カンペキ】と思わす程である
そして、このサイズだからこそ、の完成度だとも感じる
これを着る人間が、あと10cmも身長が高ければ
このバランスは崩れるだろうと
そう、同じ様な着ぐるみを、鈴や、リルに着せてみたかったが
それは、どうやっても
このニニスと言う少女の完ぺき差には程遠いい事は
服作りを趣味とする、紫音には、手に取るように分かっていた
そして、先程までフード被っていた為、分からなかったが
今は、フードを脱ぎ、綺麗な金髪のツインテールを振り回していた
そんな彼女の興味は、違うところにあった
小さな紙ヒコーキを右手に持ち、それを、頭上高く上げて
「ピューン、ビュビュビューーン、ダダダダーーン」
と効果音を口ずさみながら振り回していた
それは、紫音が暇つぶしに、鈴のメッセージカードで織った、紙ヒコーキ
それを、知らぬ間に、奪い取って遊んでいた
そして、紙ヒコーキを見ながら
「しお君は、見物なのよね、エルノが行ったから、心配ないなのよ」
しお君?・・・たぶん俺か、さすがに、そこで区切られたのは、初めてだ・・・
「ほぉ・・エルノさんて、あの赤い魔導帽の人?えっと、ニニスさん?」
「ニニスでいいなのよ、エルノは強いなのよ、安心して見学するなの
何があっても、しお君には、かすり傷の1つもさせないなのよ」
気が付けば、何人かいた、男共は、全員廊下に出てしまい
紫音のそばには
ニニスの事を母親の様な眼差しで見つめる、ウェーブのかかった髪の長い女性と
ニニスの3人だけとなった
紫音は、その場で、鉄雄の喧嘩を見守る事となる
その一方で、ニニスは、初めて見る、紙ヒコーキに夢中だった
自由奔放で、身長も鈴に近い、ニニス
その、愛くるしい、着ぐるみ姿も相まって
紫音にとって、一番親近感の沸く相手でもあった
鉄雄に襲いかかる、隼人
彼の連続攻撃は速く、手の出せない鉄雄を押している様に見えたが
実際は、両手をポケットに入れた鉄雄は
その全ての攻撃を読み切り、隼人の攻撃は全て空を切る事となる
そう、鉄雄の後ろで守られた、男共は
鉄雄が押されていると思い込み、鉄雄が負けたら
又、再び、自分たちが殴られると恐怖した
そして、一人の男子が、持っていたナイフを、隼人に投げつけたのだ
牽制か加勢か、鉄雄の背後から、飛び出したナイフは
隼人に向かって、飛んでいったが、隼人はそれを物ともせず軽く弾く
ちらりと、ナイフの出処を確認する鉄雄は
戦闘の邪魔をされ、腹を立て、一瞬バックステップをすると
その人間を蹴り、トドメをさした、その威力は2年生のイジメの比ではない
1撃にして、そのクラスメイトは、何が起こったか分からないまま
床に崩れ落ち、身体を痙攣させだした
そして、近くにいた、燃えるように赤い姿の女性は
にっこりと、微笑みながら
「まぁ、死んではないでしょ
あれの邪魔をするなら、今すぐ、そいつと同じ目にあわせるからね」
そして、彼等は段々と理解していく、2-Jも怖いが
クラスメイトは輪を掛けて恐ろしいと
鼓道場で、多くの有段者、大人に混じり鍛えてきた隼人
鼓道場では、実践形式の戦いでも、負けないように日々修練している
戦いの途中、何処からか撃たれたライフルの弾に当たって負けても
横槍がはいったとか、死角からの狙撃は反則だと言う言い訳は
鼓道場では、許されないのだ、それに対処できなかった自分が悪い
又は、その予測、予知、できない自身が悪いのだと、教えられてきた
だから、投げられたナイフに対しても
難なく対処するし、それを怒ることはない
隼人は、鉄雄に対し怒り攻撃しているが
頭の中は常に回転しており、その判断力は冷静であった
だからこそ、隼人は、その小柄な体ながら、学年上位の力を有していた
だが、所詮それは、道場や、学園のシュミレーション戦闘
又は、学内での喧嘩や、決闘 (デュエル)までの話である
生死を分けた、戦いなど、した事は無い
いや、この科学魔法時代、中等部や高等部、成人にすらなっていない人間が
生死を分けた戦いなどを、すること自体ありえないのだ
だが、居る所には、居る物である
小学5年にして、紫音と共に、死線をくぐり抜けてきた鉄雄
それは、数千、数万を越える、試合や訓練では越えられないであろう経験値なのだ
そう、彼、鉄雄の実力は、隼人を超えていた
そして、そんな時の為の
廊下に居た2ーJの中距離戦闘を得意とするメンツ
もしも、1-J、クラス全員が反抗し集団戦になれば
その位置からの、戦闘支援や、中距離攻撃、魔法攻撃の役割を担うはずだったが
すでに、そこにいた、2ーJの女子3人は、戦闘不能状態に追いやられていた
隼人が鉄雄に襲いかかると同時に
教室の前から、陽気なステップで、廊下に飛び出していった男の子に動けなくされていた
彼の後ろに付いて教室から出てきた男ども
彼等は、加勢に来たわけでない
これから起こるであろう出来事をその目に焼き付けるために彼を追ってきたのだ
制服を、オシャレ着の様に着こなす彼は
廊下に出ると右手を向き、教室の後ろドアの近くにいる
2-Jの女子に声を掛けた
「1年ぶりです、ボクの可愛い先輩方」
それに振り返った2年生達、そして、1人の女子から震える声が漏れた
「エロ斗・・・・なんで、お前が、Jに・・・・」
「先輩つれないなぁ、ボクの名前は、遊久路栄斗 (ゆくりえいと)ですよ
エ・イ・ト、と呼んでください、可愛ららしい先輩達に
そう呼ばれたいんです、心からそう思っているんです
そして、先輩方が、中等部に行かれてから
会えなくなること1年、ボクは、とても寂しみました
そして、今日再び巡り逢えた事の喜びは
まるで、織姫に出逢えた彦星の喜びに勝ります
あぁ、どうか、その白く美しい手を、我が手に・・」
まるで、舞台でお芝居を演じているかのように
身体全体を使い、見るものを圧倒していく
そして、一歩踏み出す栄斗、同じく一歩下がる2年女子達
遊久路栄斗、資産家の親を持つ彼は、頭脳明晰で容姿端麗
マセた子供ならではの、可愛らしさを武器に、年上に人気があり
幼き頃から、芸能人として活躍する彼
すでに、仕事とし、モデルや、ドラマ、舞台をこなしていた
ただ、そこにいて、立っているだけなら、絵になるであろう人物
柊朱莉、四条優美と、並んでも遜色ない人間
芸能人としての彼を、好きな人間もおおいいであろう
だからこそ、2年の女子達は、彼がJに居る事など思いもしなかった
たがしかし人間、どこかしら欠点の1つか、2つは有ると言う物
そして、栄斗は、人格的欠点と共に、凶悪な個人スキルを要していた
本来の使い方は、まったくもって別物であるのだが
彼の極悪非道のスキル
彼が、そのスキルに付けた名前は
全世界の男が憧れる、スキルであり
そして、全世界の女子が、白い目で見、迫害するであろうスキル
そのスキルの名前は
「ラッキースケベ」
芸能人としての彼と
その、スキルの名と共に
彼の名は、学園で知らない人間が居ない程知れ渡っていた
そして、いつしか【エロ斗】と呼ばれ
その行動から、この、クズクラスへとなったのだ
それでも、学園に、彼のファンクラブもあり
彼のスキルの犠牲、それどころか
「もう、いっその事、私が彼を抱いて、めちゃくちゃにしたい」
と言う高等部の女性も多く居るのだから
世の中、おかしな事ばかりである
一歩、又、一歩と進む栄斗
そんな中、教室内では、隼人と鉄雄の戦闘が始まっていた
いきなり、教室から飛んできた、一本のナイフ
それは、開けたままの窓を通り抜け、廊下にいた女性に向かって行ったのだ
「あぶない!」
その声と共に、ダッシュする栄斗
栄斗の、目的は、戦っている鉄雄の援護と言う口実である
そうと言っても、戦闘能力皆無に等しい栄斗
出来る事といっても、廊下で待機する2年生の後方支援を妨害するくらいである
そう、廊下を確認したとき、見知った2年生の女子を見つけて
心弾ませて、出てきたのだ
そして、2年の女子と顔を合わせると
栄斗の目に、光る物が映し出された
それは、ナイフであり
それは、どう見ても目の前の女の子に当たるだろう事は栄斗にも理解できた
そうなれば、援護とか、妨害とかいう話ではない
女生徒に怪我等、さしてはならないと
栄斗は、大きく叫びながら
全身の力を振り絞り、ダッシュするのだった
そして、女生徒をナイフから守る為に、一番確実な方法
それは、女生徒を突き飛ばせば、ナイフは、当たらないだろうが
紳士である、栄斗には、女性を突き飛ばすなど出来るはずも無いのだ
そして、仮に突き飛ばせたとしても
勢いの良い、ナイフが、廊下の壁に当たって、跳ね返り
他の女生徒に当たる可能性を考えると
栄斗の選択肢は、限界までダッシュし
ナイフを止める事だけとなったのだ
そう、栄斗は、廊下を蹴り上げ、その全身のバネをつかいダッシュした
栄斗の声に、自分に向かってくる、ナイフ気がつき
驚いて身体を硬直させる、女生徒と
その隣にいて、同じく驚いて動けなくなる女生徒
そんな2人を守るため栄斗は、ギリギリまで身体を伸ばし右手を前にだし
その右手でナイフを叩き落としたのだ
叩き落とした時、右手の甲にナイフの刃が当たり、軽く血が飛び散ったが
栄斗は、その血すらも、女性に掛からないように配慮していた
それこそ間一髪、ギリギリであった、間に合わなければ
ナイフは、確実に女生徒の胸へと、突き刺ささり、おおきな事件へとなっていただろう
誰しもが、そう確信した時
倒れそうになってまでも、限界まで腕を伸ばし、女生徒を救った栄斗は
そのまま、両腕を伸ばし、廊下に倒れた
受身すらする、余裕のなかった栄斗は、その衝撃を全身で受けるのだった
だが、それでよかった、自分が痛い目を被 (こうむ)っても
可愛い先輩が、怪我一つないのなら、それだけで、栄斗の心は満たされた
栄斗は床に手を付き、可愛い先輩の姿を確認しようと
上半身を起こし、顔をあげる
そこには、薄い青色の、逆二等辺三角形のレースの布が存在した
栄斗が倒れこむ時
大きく前に出された両手
その指先に何かが引っかかっっていた事に、やっと気が付くのだ
そう、それは先輩女子達の、スカート
そう、栄斗は倒れると同時に2人のスカートとズリ下ろした
そして、栄斗の視線の先には、スカートを脱がされ
下着を顕にした、2人の女生徒の、可愛いパンティーが存在した
「レースのフリフリですか、やっぱり先輩は可愛いですね」
「エロ斗、みるなバカ!」
唯一無事であった、2年の女子
その右手で、栄斗の顔を殴ろうとするも
それを止めようと、栄斗は、自分を守るため
殴ろうとする彼女に向かって両手を突き出した
スカートを、ずらされた先輩は、顔を赤らめ、一気にスカートを持ち上げるのだった
その力の篭った肘が、栄斗を殴ろうとする女性の体に当たったのだ
いきなりの事に、彼女は、バランスを崩し、体が前に倒れそうになるのだったが
その体は、斜めになった所で、停止した
そう、倒れそうになった彼女を、支えたのは栄斗である
叩かれるのが、嫌で伸ばした、その両手は、彼女の胸をワシ掴みしていたのだ
彼女は栄斗の両手を振り払い、自分の胸を両手で覆い隠し、その場にへたり込む
「もうやだぁ、何度目よう、コイツに関わると、ろくなことない」
「先輩、見た目より、けっこう大きいですね
1年で成長しました?去年、揉んだ時より1サイズ大きくなったでしょ?
あ、いや、これは不可抗力ですからね、倒れた時、スカートに指がかかったのも
それに、今のは、手を伸ばしたら、おっぱいが降ってきたんですから
ボクはわるくないですよ」
悪気もなく、言い訳をする栄斗
だが、誰しもがわかっていた、ワザとであるだろうと
スキルを使っただろうと!
だが、それを証明するものは、何一つ無いのだ
傍から見れば、すべて偶然である
そう事の発端は、先輩を助けようと行動を起こした栄斗
そこから、ドミノ倒しの様に、エロイ展開にすすんでいった
栄斗は何一つ悪いわけではない、本当なら
美男子に助けられた、女性は
「助けてくれて、ありがとう」と感謝し
ラブコメモードになりそうな展開なのだが
そんな事は有り会えない
すでに、ナイフの事なぞ、誰も覚えてはいないだろう
だからこそ、そんな、エロイ展開に成る事を期待して
栄斗の後ろに、男子達がついてきたのだ
そして、2人の女生徒は、たくさんの男子生徒の前で
パンティーを披露することとなったのだ
栄斗、それは女生徒から嫌われ【エロ斗】と呼ばれるが
ある男子生徒の間では【栄雄 (えいゆう)】とも呼ばれていた
スカート下ろされた2人
その反動で、ホックが壊れ、手を離すと、スカートがズレるのだ
そんな状態では、隼人の加勢もできず
胸を揉まれた女性も、それどころではない
彼女らは、少しでも速く、エロ斗の前から逃げだしたかったのだ
そう、これこそ、栄斗が銘打った、極悪非道スキル
「ラッキースケベ」
なのである
この時、紫音に念話で話しかける、リル
『シオン様、お気づきですか?』
『ん?なんかあったか?』
『先ほどの彼のスキル、あれは異常です
詳細は、分かりませんが、かなりの危険だと思われます』
『スキル?・・・・』
「ニニス、1つ聞いていいか?」
「何なのね、この紙で作ったヒコーキくれるなら
答えてあげても、いいなのね」
暇つぶしに、作った紙ヒコーキではあるが、そこまで気に入ってくれたなら
作った甲斐があると言うものだが
「あぁ、それでよかったら、あげるよ
そんなに気に入ったなら、後で鶴を作ってあげようか?」
「鶴なのね?ホントなのね?なんでも教えるなのよ」
座っていた椅子を後ろに弾き飛ばす勢いで立ち上がったリニス
背の低い彼女は、椅子に座っていても、立ってもさほど変わりはしないが
その瞳は、輝いていた、それには、隣りに居た女性も驚きを隠せないようだった
そう、思いのほか、食い付きのいい、小さな少女ニニスに
少し、驚くが、良く良く考えてみると
この時代、折り紙という技術は、ほとんど廃れていたのだ
ネットで探せば、過去の遺物として出ては来るが
現代世界で、折り鶴を折れる人間は極わずかだろう
そう、それが、ただの紙ヒコーキだとしても
この世界では、とても珍しかったのだ
そして、廊下の栄斗を指差し
「廊下に出て行った彼なんだけど
何か特殊な魔法か?スキルでもあるの?」
「知らないなのよ、だけど、鶴・つる・ツルなのよ」
一言で終わった
知らないのかよって、突っ込む前に
異常なまでに催促されている
どれだけ、興味津津なのですかと・・・・
「少し、いいかしら?」
「あぁ、えっと・・」
「私の名前は【叶芽希唯 (かなめきい)】
先に、紫音くん、お弁当ごちそうさま、とても美味しかったです
そして、ニニスちゃん?
今更ながら、2人共初めまして
2人共、中等部からの転入?」
「あぁ入ったばっかりで、右も左も分からない感じかな
あと、鉄雄とは家が近くて幼馴染で
学園じゃぁ、奴くらいしか知り合い居ないっぽい」
叶芽希唯、なんだろうか、この女性、普通の人っぽい
それなりの礼儀もあるし、何で、このクラスにいるんだ?
鉄雄曰く、クズクラスには、変わり者と
ホンマ物のバカしか居ないだろうと聞いてたんだが
普通の人間もいるのか?
それとも、実は本物のバカか??
それと、この、ニニスも転入組だったのか、
あの、エルノと言う、真っ赤な奴と知り合いみたいだったから
てっきり、小等部からの繰り上がりかと思っていたんだが
あの素振りからして、個人的な友達か何かか?
それなら、さっきの【知らないなの】は
彼の事自体、知らなかったと言う訳か・・・
「そうなんだ鉄雄君とは、友達なんだね
私は、小等部から学園に居るから
学園の事で、分からないことが有ったら言ってね
ニニスちゃんも、分からない事あったら、私に言ってね
私に出来ることなら、何でもしてあげるからね
絶対に、私に言ってね」
可愛らしい顔をして、ニニスに微笑むが・・・
「・・・」
ニニスは、鶴と聴き、さっきまで楽しそうにしていたのだが
今は、黙り込んで、じっと叶芽希唯の顔を覗き込んでいた
「ニニスちゃん・・どうかした?」
「ニニス、こいつ嫌いなの」
「ど、どうして、、ニニスちゃん、私なにかした?」
ニニスの言葉に、一瞬何が起こったか、反応できず
我を想いだしたかのように、ニニスに詰め寄る
「しお君、たすけるなの」
そう言って、ニニスは、紫音の側に駆け寄り、その後ろに隠れるのだった
「いや、あれだ
あっと、叶芽さん?希唯さん」
「希唯でいいよ」
「希唯さん、まぁ今日は初対面だから
何かの、思い違いか、勘違いも有るだろうからさ
これから仲良くなっていけばいいと思うよ」
おい?ちょっと待て、何で俺が、赤の他人を仲裁しなくちゃならないんだ?
「・・うん・・・・ニニスちゃん、おねーさんは怖くないですよ~」
「・・・・・・・・」
「ニニスちゃん・・・・・なんで・・・?」
悲しそうな顔で、ニニスを見つめる希唯
「さぁ?」
ほっとくに限るな、関わると、めんどくさそうだし・・・
「あぁ、ごめん、話は戻るんだけど
さっきの紫音君の、質問に私が答えるね」
「?」
「え?忘れたの?、彼のスキルの話だよ?」
「あ・・・・・・わ・忘れてないよ」
わすれてた・・・・・
「さすがは、鉄雄くんの友達だね、まぁいいや
彼は、【遊久路栄斗 (ゆくりえいと)】
私とは、幼馴染ってやつかな
それで、エイトの使ったスキルなんだけど
あのスキルの名前は【ラッキースケベ】
説明する必要がないよね
名前のまんまで、質の悪いスキルなんだけどね」
「ラッキースケベ?
そんな・・・スキルが、本当に存在するのか・・・?」
「本当は、違うらしいんだけどね
どう考えても、ラッキースケベの方がしっくりくるって言いだしてね」
「まぁ、あの惨劇を見たら納得するしか・・ないか
それにしても、ラッキースケベとか、羨ましい」
「男の子って、本当にバカよね」
「まぁ、それほどですけどね
あぁそうだ、説明ありがとう、希唯さん」
「どういたしまして、それで、出来ればツルを作ってあげて」
そういって、希唯を睨みつける、ツインテールの少女を指さしたのだ
「そうだった、ニニスちょっとまってくれ
確か、ノートがあったはず」
まったくもって、以前の紫音の無駄知識は
いつどこで役に立つか、俺には皆目検討もつかないな・・
役に立つ?いや、これは、何かに巻き込まれたと判断するべきか?
まぁいっか・・・
深く考えても仕方ない紫音と判断した紫音
カバンの中から、紙のノートを取り出し
一枚破ると、正方形に整え、紫音は数年ぶりに折り鶴を作りだすと
ニニスの機嫌は良くなり
そのツインテールを揺らしながら
嬉しそうに紫音が紙を折る仕草を見つめていた
その傍ら
『リル?いたって、危険視するほどの、スキルじゃ無さそうだが?
まぁ、面白そうなスキルではあるけどな』
『シオン様、あのスキルは、こちら側、次元の狭間にも干渉してきました
それも、発動のタイミングが、確認できませんでした
起こった後に、スキルが発動していた事に気がつきました
そのスキルの原理、意味、理、その全てが不明です』
『なんだそりゃ・・・・偶然を、ラッキースケベにするスキルだろ?
いや、それでは次元干渉などしないか?
それ以前に、意思加速や、何かを操作した痕跡があれば
リルが気づかない訳が無いだろうし
彼が自分で付けた、スキル名なら
元のスキルは、なんだ?・・・
リル、今後、奴のスキルの、痕跡があったら、教えてくれ』
『わかりました、最重要監視対象者として登録します』
すでに、紫音達は、鉄雄の戦いなど興味はなく
紫音は、ニニスの前で折り方の説明つきで、折り鶴を作り始めていた
その頃、隣のクラス
2-Jで、暇を持て余す蓮
1年のクラスで、まだ音がする事から、無駄に1年をイジメているのかと
あいつらも、暇なんだなと、思っていた
だが、1人のクラスメイトが、教室のドアごしに、現状報告を行った
彼は笑いながら
「レン、隼人が押され気味、このままでは、きっと負けるね」
「隼人がか?相手は誰だ?」
「それが、宮守が出て来たわ、それに、何故かエロ斗がJにいやがる」
「げ・・・エロ斗かよ、それに宮守が何で出てきた?
奴が出て来る予定はなかったはずだろ?」
そう、1-Jで騒いでいた、人間と宮守の繋がりは無かったはずである
そして1ーJの中で、一番強いであろう人物は、宮守鉄雄だと知っていた
それは、同じ学園に通っているのだ、知っていた当たり前であり
知らなくても、すこし調べれば分かることである
そして、鉄雄の人となりも
そう彼は、友人でもない人間を助けるほど、お人好しではない
出てくるはずが無かったのだ
「あぁ、リンチするのに、少し暴れすぎた
弁当にホコリが入ったんだと」
お手上げの仕草をし、ため息をつき
話を続ける
「そして、女子達が、エロ斗のスキルで、戦意喪失したわ」
「マジか、やっぱり対女性に関しては、無敵スキルだな」
「だな、で、クジ順で行けば、俺より、レンが先だがどうする?」
「宮守相手か、手合わせしたことないが、これも一興行ってみるか」
蓮は、重い腰を上げ教室を後にする
なんだ、かんだと言ってみたが
すぐ終わると想い、先に教室に戻ってみた物の
思いのほか、時間が掛かり、教室で1人で待つ蓮はヒマだったのだ
そう、隼人を抑えこむ宮守の強さに、連は楽しみのあまり、口元がゆるむ
そんな蓮を感じたか
連を呼びに来た、隼人と同じく、鼓道場にその身を置く、男子生徒は
残念そうに、一言こぼした
「そうか、なら俺は、出番なさそうだな」
そう言い残すと、蓮の後に続くのだった




