26話 お持ち帰り
ビィーーーーーーーーーーーーーーーー
監視制御室に、いきなり鳴り響く警報音
机に寄りかかり寝ていた、男は、その音で飛び起きた
そして、初めて鳴る警報に驚き、自分が何をするべきかを一瞬わすれる
数秒・・・・たち
男は、正気を取り戻し、自分のあるべき仕事を開始する
目の前に吊ならる、スイッチの1つを上げ
マイクに向かって、声を挙げた
「警告、今しがた、加波山の、第二研究施設が襲撃にあった
所長不在により、私、警備主任、戸塚が命令する
これより、この研究所の警戒レベルを引き上げる
警報レベル・イエロー、銃火器装備許可
また、所長・又は、管理責任者と連絡を取り、随時連絡をする
各自この放送を終わると同時に
手の空いた研究員は、第一会議室に集合
警備員および、戦闘に参加出来るスタッフは
各所決められた場所にて、武装レベル4にて警備態勢に付け
また非戦闘員は、食堂に集合し待機だ
これにて、連絡を終わる」
この放送が鳴り響いた場所は
茨城県、筑波山の麓にある研究施設
筑波細胞科学・第一研究施設である
そして、この男は、言葉どうり
所長と、この施設の責任者である2人の士族への報告を行う
それは、十士族の【四】の字 (あざな)を持つ一族【四条】
そして、【九】の字を持つ一族【九重】である
そう、この施設は、十士族である、四条と九重の2つの士族の合同研究施設
名前は、細胞科学研究所ではあるが
その施設内では、クローン技術の進歩に日々時間を費やしていた
そして
5月の連休、研究所にいる人数は、色々な研究の維持に必要な研究者、人数と
施設の運営をするための、最低限の、各スタッフ
そして、所長の定めた、最低人数の警備員である
そして、放送が終わると、それを聞いていた人間達は、ざわめくが、それも数秒
施設にいた全員が、声を掛け合い、放送の指示どうり動いていく
それは、そうだ、クローン技術を研究する人間達、それに関わる人間達である
国際法で、禁止されている、クローン研究である
それが、世の中に出る、危険性は十分に理解できているのである
研究室に2人を残し、研究員は会議室に集まっていた
非戦闘員達は、食堂に集まり、非常食の確保に走り回り
警備員と、戦闘に参加できるスタッフは、武器管理室に走り、武装する
会議室に集まった研究員の前に、急ぎ現れたのは戸塚
そして、口々に喋る人間を左手で静止し、マイクを持ち出し話し始める
これは、施設内全てに放送された
「これより、入手した情報と、これからの事を指示する
最初の報告どうり、今現在、加波山の第二研究施設が襲われている
襲撃人数は、信じられないが、現段階で1人だという事だ
これが、クローン技術に関する襲撃だとしたら
この第一施設にも、襲撃の手が伸びる可能性がある
そして、この事は、所長及び、四条家・九重家にも報告済である
じきに、ここと、第二施設に、十士族の特殊部隊が、到着する予定であり
到着までの時間は、予想であるが、最速で60分
また、施設の警備員達にも連絡を行っているから、応援が来るはずだ
我々の目的は、それまで、この施設の死守である
最悪、この警報、警戒レベルイエローは、朝まで続くものと考えて欲しい
そして、これからの事を伝える
まず、ここにいる、研究所員は、PCルームに行き
機材の停止、最低限のPCを残し、全てのパソコンのロック
食堂の非戦闘員は、食べ物、飲料水の確保
朝まで警戒レベルが続くものと考え
食べ物の用意、簡単な食べ物、おむすびでいい
そして、警備員は、2手に別れ、正門と裏門の死守
戦闘に参加するスタッフ各員は
取り急ぎ、西の第一、第二、東第三、入口を手動ロック
その後、正面入口と、南入口にて、武装し待機
研究室の人間は、予備電力は装備してはいるが
もしものシステムダウンに、対応できるようにしてくれ
そして、これからは、何かあれば、デバイスを使い施設緊急回線にて、逐一報告を
第二施設に侵入者した組織、そしてその目的、人数は不明と思っていて欲しい
それでは皆、後1時間と少し、十士族の部隊が来るまで、慎重に動いてくれ
解散!」
足を止めて聞いていた全所員は、再び動き出す
そして、戸塚は、その場にいた、所員を1人つれて、再び監視室に戻り
監視カメラの映像をチェックする
施設内外に設置された、数十台以上あるカメラを操作し始める
目の前に並べられた、20台近い、監視モニターに外の景色を映し出し
数台に施設内通路の映像をモニターに映し出し監視する
そして、緊張の中、器用に各モニターを動かし
戸塚は、連れてきた男と、2人で、目を光らせ監視する
****************
第二研究施設から、転移する人物がいる
紫音、ギン、リルである
そして、転移先は、女性クローンを精製する、筑波の第一研究施設
紫音が、女性クローンが見たいと、駄々をこね
嫌がるリルに無理やり転移させる
その為、細かい位置指定をせずに、転移した為・・・・
女性のクローンの裸が見たいなら、どうぞご勝手にと、言わんばかりに
筑波研究施設の施設内にある、クローン研究室のど真ん中に出現した
研究室と言っても、天井は4メートルほどあり
広さは、大きめの体育館ほどある部屋である
そこに数え切れない程の装置が縦横に綺麗に並べてあった
「おおぉ、こりゃすげぇ」
転移してきた瞬間、先程と同じように
大きな筒型の装置に目が奪われ、テンションが一気に上がる
大きな強化ガラスで出来た、筒状の装置の中には
何かの溶液に浸かる裸の女性の姿があった、それも、軽く見ても30体
顔の作りから、全部が日本人であるだろう
そして、歳で言えば、10歳から30歳までの女性
日の当たらない、研究室で作られた為であろう、透き通るほどの白い肌
装置の上からLEDで照らされた、その姿は神秘的で
それは、今にも動き出しそうでもあった
だが、動くことはない
その30体はあろう、女性型のクローンには、意思と言うものがないのだ
脳機能は確実に動いている、そして人間としての本能があれば
音や、光等に反応し、重い目蓋も動くことが有るだろうが
そのクローン達は、何にも反応する事が無かった
実験で、電流を流す事で、四肢や指先の動くのだが
なのに、筒状の水槽に入れられた、彼女達は、ピクリとも動かない
それは、非科学的ではあるが、彼女達に、意思、又は魂が無いものだと考えられた
だが
そんな事は紫音に関係ない
テンションのあがった紫音は、まるで
鈴が魚屋の店先で、瞳を輝かせ、活きの良い魚を選ぶように
瞳を輝かせ、彼女達を見定めていく
その後ろでは姿を消した、リルが
顔を引きつらせ、歯をくいしばり拳を固く握りながら、ウキウキの紫音を見ていた
そんな、女性の裸に夢中の紫音と
そんな紫音を嫉妬の眼差しで、ガン見するリルを
呆れながら、ギンは自身が神である紫音の為に
2人を無視し、部屋の中を、見渡し確認する
ギンの生体感知、そしてその中から、クローン体を除き
残った物に視線を送ると、視界に入ってきたのは、白衣を着た2人の人間の姿
それは、研究室に残った2人の男性であった
広い研究室の奥で、急ぎ作業をしている、2人は
音もなく現れた、仮面の少年に気づかない
ギンは空中を数メートル走り進むと
その赤い瞳を輝かせ、音もなく人知れずスキルに近い魔法を使う
全ての者を魅了する、賢き女帝をイメージした使い魔【ギン】
その賢き女帝が、持って生まれた固有スキル、それは魅了
その力の欠片ですら、ただの人間を、魅了するのは簡単であった
そして、2人の研究員の男は、ギンに魅了され
作業する手を止め、紫音に振り向き、膝を折り腰を下げ
紫音に対し頭を下げた
紫音は、周りの、女性の裸を物色しながら
その足を、部屋の最奥、2人の平伏した研究員のいる場所に、ゆっくりと足を進める
「ギン、あれって、もしかして魅了の類か?」
「ココンコン」自慢げに答えるギン」
「マジか!
俺ですら、精神系の魔法は使えないのに
何で、お前が使えるんだ!」
「コン ココンコンコンコンコンココン」
「そう言うけどな、大体そこまで考えて使役したわけじゃないぞ」
「コーーーン」
「あぁでも、その力は役に立つし、お前は賢いからな
使い方次第で、色々と幅が広がりそうだな
さっきも転移するとき、何かしただろ?」
「ココン コーンココン」
「ほう、さすがギン、なかなかやるな
どっかの、力を持て余してるバカとは違うな」
「コン」
『シオン様・・・本当は、ギンの言葉お分かりになるのでは?』
「いや、全くわからんが?、まぁ、あれだ、適当にニアンスで」
「コン・・・・・」
ギンは、言葉が通じてない事を、思い出し、ため息まじりに鳴く
それでも、ギンや、コハクにしてみれば
言葉は通じなくても、伝えたい意思は伝わっているので
それでいいのであるが
それでも、たまに、何度言おうが通じない時もあるのだが
それはそれであった
そんな、話をしていると紫音は、魅了された研究員のそばまで進んでいた
そこには、他の装置とは違う装置が、横並びに3台あった
それは、他の装置とは違い、横向きに置かれた装置
中にいる素体は仰向けに寝るように横たわる
紫音は、3台ある、その中の1つに近づき、中を覗き込む
「これは?」
横に控えていた1人の研究員が、紫音の言葉に反応し口を開く
「はい、そちらは、素体ナンバー、MJ-003になります
右から、MJ-001・MJ-002となります
そして、その装置は、最新型のクローン生成装置
今現在は部所は小さくなりましたが
ホムンクルス製作部の長年培った技術と
今のメイン事業の、クローン生成の最先端技術を詰め込んだ装置
MCCSとなります
年始そうそう、試験的に3台導入された装置でして
その性能は、今までの36%以上向上されてはいますが
未だ、脳に関する問題点は打破できておりません」
無機質に話す男を観察し
(おいおい、ギン子さん、魅了といいうか
これは、上位の精神支配じゃないのか?)
そんな、複雑な表情で
「この、装置を開けれるか?」
その言葉に2人の男は、立ち上がり装置を操作し
MCCSの上部のハッチを開けた
そして、ハッチが解放された事により
装置の中で、水溶液に浸かる女性の綺麗な裸が姿をあらわす
裸を恥ずかしがることもなく横たわる3人が女性
その3人を品定めするかのように、紫音は1人1人確認していく
MJ—001・年齢で言えば20歳前後だろう、見るからにナイスボディである
MJ—002・こちらは見た目は15歳前後だろう・・・胸はない
MJ—003・10歳ほどの少女、俺や鈴と同い年くらいだろうか
その3人の顔が似ている事から、同じ人間なのだろう
紫音は、クローンの元となったのは、同じDNAだろうと判断するが
それでも、胸の大きさを考えると
青年期に一気に発育したのだろうかと
それとも、この装置は、そこまで成長を操作できるものかと
感心するも、紫音はMJ—002に視線を移し、リルを呼ぶ
「リル」
『・・・・・・・』
「おぃリル」
『・・・・なんでしょうか?
この施設の崩壊がのぞみでしょうか?
お望みであれな、1キロ四方を消滅してさしあげますが?』
おこってるな・・・確実に
「まぁ、やりたいなら、やればいいが
その前に、ひとついいか?」
『はい、では後ほど
シオン様が、私に惚れ直すほど綺麗さっぱり、消滅させてみます
で、なんでしょうか?』
「ああ、リル、お前このクローンの身体に入れないか?」
『え?』
「ん?その姿だと色々不便だろ?
これからの事を考えると、人前に出れないその姿より
人間の体があったほうが楽だろ?」
『はい、欲しいです、シオン様を抱ける肉体が』
?ん・・・今なんていった?・・・・まあいいか
シオンは、MJ—002のクローンを指差し
「なら、この身体がいいな、リル入ってみてくれ
ただ、入れるかどうかは分からんけどな
【魂の無い肉体】【肉体のない魂】なら
もしかしたらって、さっき思い付いた訳だが」
『シオン様、私的には、できれば、あちらのMJ—001の素体の方に、入りたいのですが』
「あぁ却下だ、こっちのクローンの方が、以前のリルに近いからな
俺は、以前のリルが好きだったからな、俺はこっちがいい」
『す・・・き・・・すき好きスキ大好き・・・すき・・・・うふ・・
すき・・ふふふ・・・・・』
「おい、リル、戻ってこい・・・はぁ・・・・・
それと、ギンお前も、残りのどっちかのクローンに入るか?」
「コン!」
ギンは紫音の言葉に答えると共に
紫音の肩から、MJ—001のクローンの上に大きく飛び移動した
それを視界にいれた、リルはトリップしていた世界から一気に現実に戻される
姿を見せないリルは、拳を固く握り悔しがるが
その思いを押し殺し
MJ—002のクローンの前に、小さな光の結晶となって現れた
その光を目にした、ギンはMJ—001の豊満な胸の上で
勝ち誇ったかのように、光に向けて鼻で笑う
小さな光は、ピクっと刺々しく光って反応するが
MJ—002の少女の身体に、静かに吸い込まれていった
そして、少女は、小さく身体を震わして、ゆっくりとその目蓋を開き瞳を覗かせる
言葉が出すほどの力も無く、リルは念話で話しかける
『シオン様、肉体を得ましたが、少し動きが鈍いです
シオン様的に言えば、多少時間を掛けて、すり合せの必要が有ると思われます』
「そうか、わかった」
シオンは返事をし、装置の中で、何かの水溶液に浸かり
どうにか起き上がろうと、身体を震わしている
リルの魂が入った、少女の肉体を抱き上げた
紫音の身長は130cmちょっとである
そして、リルの入った少女の身長は150cmほど
不格好ではあるが、紫音は自身より20cmほど大きいリルを
お姫様だっこしたのである
リルは、久々のだっこで、その精神は暴れていたが
如何せん今は慣れない体の為、その身体は大きく動くことはなく
ピクピクと震えているだけであった
「ギンは、どうだ?」
紫音は、ギンの居た場所を振り向く・・・
そう、そこには、先ほど、そこにいただろう、ギンが・・・まだ居た
紫音の声に振り向くギンは、紫音と目と目が一瞬合い
悲しそうな顔で視線を落とした
ギンにしてみれば、神である紫音に、言われたことができない
神が自分の為に肉体を用意してくれたのに
それに、入ることが出来なかった
それは、我が神を、どれだけ失望させた事かと・・・
「いや、ギン・・・ギン子さんや・・・気にするな・・・な・・・・
お前は、使い魔であって、魂と言う概念が無いのかもしれん
仕方ないと言えば、仕方ないことなんだが
どう考えても、リルが肉体に入れた事自体が異常なんだ
思いつきで言っただけなのに、こいつ、マジで入りやがったからな
いやいやいや、出来なくて当たり前なんだぞ
これは、無茶を言った俺が悪いんだから、そんなに気にするな・・・な?」
『フッ・・・入れないのですかギン
所詮は、それまでの存在であり、たかが使い魔
今後は、何でも出来る、素敵なレディーである私を見習いなさい』
「リル、お前、今の状況わかってるか?」
『何がでしょう?』
「そうか・・・リルお前今の視界は?」
『視界?この肉体に依存していますが?』
「説明しよう!そう、リトル・L・アンシャン
彼女の肉体は今、一糸纏わぬ姿である
だが、その裸体に纏わり付くは、ローションの様な濃度の高いドロドロの粘液
意識は有るも、何かの薬でその肉体は、自由は効かなくなり
彼女は、より小さな少年に抱き抱え挙げられた
その少年の両手により全身をまさぐられる
それは、なんとイヤラシイ光景だろうか!
そう、それは、ショタ姉
姉を薬で動かなくさせ、今その少年の毒牙にかかり
ベットに連れ込もうとする瞬間を切り取った様な!!!
全身の力が抜けて、だらしなぁ~~く四肢をたらし
どろどろの粘液まみれの裸体を晒す、情けない姿だぞ?」
『で、ベットはどこですか?さぁ、速くシオン様、私をベットへ!!!!
ベットへ行きましょう!!』
きいてねぇ・・・・・
「ダメだなこりゃ、ギンも、もう諦めろ、無理だから・・・・ん?」
突如紫音の耳に響く機械の作動音・・・・・・
それは、カメラのレンズを絞るような音が・・・
*************
MCCS (マテリアル・クリエイト・クローン・システム)
その3台ある、なかの1つ
MJ—002に、リルが入った頃
この施設のPCルームで、動き回る研究員達がいた
その中の1人が気づく
いや、他の作業の合間に、視界に入ったのだ
クローン・MJ—002の、計測器モニターの示す異常数値に
青ざめた顔それでいて、とても歓喜に満ちた声で
「みんな、これを見てくれ、J—ツーが異常値を出してるんだ
今メインモニターにだす」
そして、男はPCを操作し部屋にある、一番大きなモニターに映し出す
それを見た研究員達は一斉に声をあげた
モニターに映し出される数値の数々
その値が、普段より上がっていた
とくに、全員が見ている間にも、脳波レベルが少しずつ上がっていくのがわかる
いや、数分前までは、生命の維持ができる、極わずかな物だったのだ
そのクローン体MJ—002には、意識以前の前に
脳機能は、ほぼ動いていなかったのだ
その脳波が上がっていくと言うことは、意識レベルが上がってきたと言う事
それは、クローン生成を開始してから初めての事である
そして研究員の念願であり夢であった
「何が、起こったんだ、研究室の映像を出せ」
「はい」
モニターに映し出されたのは、研究室の映像
それは、緊急時の今、管理室の戸塚に全操作をになっていた
そして、7台あるカメラの6台は研究室の1つしかない出入り口を映し出す
そして、残りの1台は入口の上部に据え付けられており
唯一、紫音の姿を捉えていた
だが入口と反対側にいる紫音を鮮明に移し出すには遠すぎてもいた
各々、思っていることを口にし
ある者は、研究室に向かって走り出してもいた
「おい、MCCSの前に誰かいるぞ」
「あれは誰だ?」
「くそ、見てくる」
「あれが侵入者でないか?」
「あの2人 (研究員)は何をしているんだ」
「こちらPC室、戸塚!研究室に侵入者だ
監視カメラの主導権が、そっちに行ってて、ここから操作できないんだ
ここに戻してくれ」
「なに??研究室にだと、わかったすぐ、そちらに戻す
だが、どうやって入ったんだ、外部から侵入した形跡はないんだぞ
研究室に通じる通路も、こちらで、常に監視していたんだぞ!」
そして、監視カメラの操作が復活し
MCCSの前にいる、仮面の少年にピントを合わせるべく、それを操作した
紫音は、1体の女性クローンのを抱き抱え
落ち込んだギンを、励ましていた時
紫音の耳に、カメラの起動音、いや起動音と言うより
カメラのレンズを機械的に動かす音を聞き分ける
紫音が、感知できた、カメラの場所は3箇所
実際はこの部屋に設置された7台全部が、動いていたのだが
如何せん、この世界は、あの世界と比べると、うるさいのである
どこにいても、身の回りには機械があり
その微細な音ですら、紫音にとって、雑音にほかならない
そして、この部屋には、幾つもの巨大な装置があり
7台全てを感知する事は、今の紫音では無理であった
「ギン!」
紫音は、カメラの位置を念話のイメージで、ギンに伝えると
それを察知したギンは、小さな魔力の塊を3個出現させ
それを放ち、3台のカメラを破壊したのであった
それを確認しながら
「ギン、この (研究員)2人の記憶を消せるか?」
「コン」
「よし、なら、俺達が入ってきてからの記憶を消せ」
ギンは頷き、2人に向けて、何かの魔法を使うと
2人の男は、意識を失い、その場に崩れるように倒れた
「リル、その状態で空間転移は使えるか?」
『はい、通常魔法なら使用可能だと思われます』
「なら、帰るぞ、転移場所は・・・・・」
紫音の視線は、両腕に抱き抱えた
何かの液体まみれの、裸の少女に写り
一度ため息を吐き
「静岡のマンションの風呂場だ」
『分かりました、転移します』
そうして、眩い光が広い研究室を包み込むと
次の瞬間には、クローンを抱えた、仮面をつけた少年の姿は
全ての監視カメラから姿を消した
そして、そのモニターを見ていた人間はイキナリの出来事に言葉を失った
そう、侵入者が消えたからではない
脳波レベルがあがり、思考を持ったかと思われたMJ—002
それは念願の、意思を保ったクローンの完成を意味してたのかもしれなかった
それが、いま、MJ—002の生体モニターが全て止まり
Errorの文字が表示されたのだから
そして、いち早く研究室に走り込んだ男から
MJ—002のクローン体が消えたことを告げられた
その後、録画された映像を確認するが
初めから侵入者を捉えていた映像は、距離もあり、ピントも合っていなかった為
その、細かな詳細は何も分からなかったが
侵入者が、使ったと思われる、光源がクローンの身体に吸い込まれたと同時に
クローンの脳波レベルが上がった事だけは分かった
だが、その光源が何だったかは、その後も謎のままであった
この事は、ここの責任者でもある
十士族の、四条家と九重家にも、即座に伝わることになる
この後、その2つの家の力をもってしても
2つの施設を襲った、ひょっとこのお面をかぶった少年だろう人間の素性
又は、その少年だろう人間の関与する組織の事すら
何一つの情報すら手に入れることが出来ずにいた
ただ分かったことと言えば
あの、三千風蘭先生を影から守る組織である事だけであった
そして、この仮面の少年による、襲撃事件は十士族の力によって世間に出ることはない
だが、このクローン実験は、十士族に与えられた闇の事業の1つ
それを担っていたのが、四条と九重である
その他にも、表に出せない、ある実験や、ある研究もある
それらも、十士族の、2つ又は3の士族からなる合同チームで行われていた
四条・九重は、1体の試験体が消えたことを頑なに隠した
襲撃された時点で、十士族内での立場は悪くなっているのだ
このうえ、試験体を紛失、どこかの組織に盗まれたとなれば
その痛手は、想像を絶するものとなるはずなのだ
だが、四条も九重も、立場は悪くなったが、一点の希望の光もあったのだ
それは、あの仮面の少年が、意識無きクローンを
何かの魔法を使い、意志を持たせ、クローンが活動しだしたのだ
それは、計測器のデータでも、遠目ではあるが、その映像は残っているのだ
そして、四条・九重は極秘裡に、情報を集めるが
何一つ、目新しい情報は出てくることはなかった
高速道路で、三千風蘭を拉致しようとした人間達も
今回の襲撃事件の話を聞かされ
薄々、その仮面の少年の正体を勘付いていたが
誰ひとりとして、その事を口にする人物はいなかったのだ
それ程までに、彼らに
恐怖を・畏怖を・尊敬を・誘惑を・敵意を
色々な感情を植え付けたのだった
(*'ω'*)・・・・さて・・・
あと1話で覚醒編と言う、入学編から続く長い序章のおわりです。
2話ほど、閑話を挟んで、本編に入ります。
これこそ、作者の求めていた
変態が起こすお笑い学園漫遊記!




