25話 実験
とある森に、突然現れる、少年
その少年は、コミカルな動きをしながら、1人喋る
「寒!虫多!暗!なんで、俺がこんな所に来なきゃいけないんだ」
『シオン様が、面白そうだから今日がいいと、言ったからですね』
姿無き、少女の声が紫音の頭に響く
「俺が?言ったか?言ったような覚えが・・・まぁいい
リル、お前は、先に行け、そして中の事を監視報告しろ
ギンは、とりあえず、ついてこい
俺の実験も兼ねているから手をだすなよ」
そうして、懐から、ある仮面を取り出し、うきうきで装着する
『シオン様、それは?』
「あぁ、監視の目を潰すのは当たり前として
それでも素顔を晒すのは、マズイだろ?」
『いえ、それはわかるのですが、そのデザインは?』
「ん?ひょっとこだけど?
そうか、誕生日の買い物の時、お前は居なかったんだな
店に飾られていた、このお面に一目ぼれしてな
バァさんに買ってもらったんだ
カッコイイだろ!この口の曲がり具合は
ヶの化身、イリンクリティウケンを彷彿させるだろ
そして、頭に巻かれた、手ぬぐいは、日本男児の魂を感じる
これ程の、芸術作品が、1500円だぞ
今世紀最大の買い物だとは思わないか?」
『イリンクリティウケン・・・・・?
たしか、以前の世界で名前だけは聞いたことが有りますが
どんな生物だったかは、私は知り得ません
シオン様が、そこまで言うのでしたら、古龍 (エンシェントドラゴン)をも超える
壮絶絶後な生物なんでしょうね』
(壮絶絶後?・・・なんだそれは?
まぁ、この世界のタコの、でっかいの、みたいなもんだが・・知らないなら黙っておこう)
「まぁそんなもんだ、さて、真夜中のピクニックとシャレこもうか」
『はい、それでは、お先に失礼します』
「コン」
姿無き少女は、その場を離れ先に進み
小さな、狐のヌイグルミの様な生き物は、一度高く飛び紫音の肩に乗った
そして、少年は歩き出す
目指すは、この暗き森の中で、唯一の光を出している建物
もとは、何かの工場だった建物だろう施設向け歩きだした
閉ざされた、大きな鉄格子で作られた門の前に小さな監視室が設けれれていた
そこにいる、門番の様な人間が気づく
暗闇の道を、この建物に近づいてくる人間を
いや、仮面の少年をだ
男の目に移る少年
背は低い、それは遠目からでもわかる
どう贔屓目に見ても身長150cmも無いだろう
黒系の長スボン、黒系のシャツだろうか?
そして、上着も黒系であるがため
闇に紛れた、その人物を見つけるのは困難であっただろうが
ただ、その仮面は闇に浮かび上がっていた
そう!!!
ひょっとこの仮面が!!
きっと、仮面の色が黒だったなら
そばに来るまで気づかなかっただろう
その驚きは、監視員の眠気を覚ますには十分であった
街から離れた山奥の施設、この男が監視員になって2年
関係者以外の車が来たのは、道を間違えた車が1回来たくらいなのだ
それを、この夜中に、歩いて近寄ってくる仮面をかぶった人物は
この男にとって、あってはならない出来事なのだ
「そこの君、そこで止まれ、それ以上近づいたら発砲する」
少年に、魔法銃を向け叫ぶ監視員
紫音はその場で一旦止まり
足元のジャリの中から小石を一掴み拾い上げる
そして、おもむろに、警備員に投げつけた
紫音のスキルを乗せた、その石つぶての威力は半端ない威力を醸し出した
1発目は、手に持つ魔法銃に当て吹き飛ばし
2発目を警備員の肩に当て、肉を穿ち
3発目を、警備員の太ももに当て、小石はふとももにメリ込んだ
悲鳴を上げて、倒れこむ警備員を見守り、歩き出す紫音
そして、その男は、身体を引こずり、監視室に戻り、警報ボタンを押す
それを見届けた紫音は、男の頭を無言で、こつく
そして、まるで恐ろしい物を見たような顔で意識を失い倒れ込んだ
この位置からでも、建物内で鳴り響く警報の音は十分に聞こえており
それを確認した紫音は嬉しそうにうなずくのだった
「順調順調♪」
だがイキナリの、難問が・・・
そこには、大きな鉄格子の門が立ちはだかる
「あぁ・・・・先に脅してでも開けさせとくべきだったか・・」
そんな紫音の独り言に、ギンが一度 「コン?」と鳴いた
「あぁ・・・ギン子さんや、手を出すなと言った手前もうしわけないんだが
コレ開けてもらえるかな?」
ギンは、紫音の肩から、水平に前に歩き出し
鉄格子の間まで行き、何かの魔法を発動させる
それは、ギンを中心に黒い球体が鉄格子を巻き込む形で徐々に大きくなり
その大きさが紫音と同程度なったとき、ギンが「コン」とないた
それと同時に、魔法は解除され
魔法が展開されていた空間に格子は存在していなかった
そう、鉄格子は、円形状に切り取られた用になっていた
そして、何もなかったかのように、ギンは空中をトコトコと歩き
紫音の肩に戻るのであった
「おお、すげぇ、どうやったんだ?」
「コン、コンココンコン」
紫音の感心する声に、得意げに答え、ギンはどうやったか説明する
「ほうほう、ほーーーそうかそうか」
「コンコンコンコンココンコン」
「それは、すごいな」
そんな会話をしながら、切り取られた鉄格子を抜け
建物の敷地内に足を踏み入れる
ちなみに、どんな魔法を使ったか、誇らしげに説明するギン
絶妙なタイミングで、相槌をうち、返事をする相手に有ることを忘れていた
紫音は、ギンの言葉を理解できない、その内容は届かないのだ
紫音は、ギンの相手をしながら
手に持った小石で数台の監視カメラを壊し歩く
そして、建物の入口が見え出す頃には
警報が鳴り出して、数分はたっていた
それは、数人の警備兵が入口まで、紫音を出迎えるには十分な時間でもあった
そして、8人程の武装した人間は、紫音に拳銃や、マシンガンを向け
「侵入者に告げる、それ以上近づくなら発砲する」
その行動を見て、仮面の下で、ニヤリと笑う紫音
「おっと、忘れてた」
そういい、両手で上着のポケットを探り
ある手袋状の物を取り出した
それは、指の部分が抜き取られたグローブ
ただ、手のひらと、手の甲に当たる部分に、不格好な鉄の板が貼り付けられたいた
それを、両手にはめると
シオンのスキルによって、周波数を変えた声で武装した人間に伝える
「俺ハ、オ前達ノ、敵ダ、死ニタクナケレバ、戦ウコトダナ」
そして、歩き出す
それを見た警備兵は、各々発砲する
そして、信じられない光景を目の当たりにし、恐怖で驚き
冷静な判断も下せず、手に持つ銃器を全て使い、化物を殺そうと奮闘するも
全員が全員、数分で・・・いや
彼らにとって、その時間は数十分にも感じただろうが
実際は2分足らずで、全ての実弾と魔法弾を使い切ったのだ
その後に残る表情は、怯え切った小動物のソレである
腰を抜かし、その場に倒れこむ者や、小便を漏らしたものもいた
・・・・・・・・・・・・・・・
紫音が歩き出すと同時に、一人の人間が拳銃を撃つ
すでに、意思加速約100倍の紫音にとって、拳銃の弾の速度は
子供のキャッチボールより遅く感じられる
問題はそこからだ、砂丘で転げ回ったおかげ
どうにか3倍ていどの肉体加速に慣れてきた紫音は
マンションで捕まえた人間相手に、銃を持たせ遊んで、イヤ
「もし、俺にかすり傷1つでも付けたら逃がしてやる」といって
実戦形式で最終調整を終わらしていた
そう、すでに、紫音の意思に体が付いてくるようになった、慣れてきたのだ
そうして瞬間的加速で、手に付けた鉄板入グローブで、銃弾を弾く
それは、意思加速で銃弾の軌道計算をし、自身に当たるだろう弾を
手の届く範囲に来た瞬間、絶妙な角度で横に弾く、その瞬間火花がちり
紫音の、ひょっとこの仮面が、不気味に浮かび挙がるのだった
何が、起こったか解らない人間達は、手に持つ武器を乱射するも
紫音は、仮面の下でニヤケながら
『うお、さすがに、この数は骨が折れるな・・』
少し左膝を折り、右足を引き、徐々に姿勢を少し下げる
足元にくる弾は、スリ足でよけ
自身に当たるだろう弾丸は、全て弾く
だが、8人もの、拳銃とマシンガン
いくら3倍の肉体加速では、さばき切れる物ではない
いっきに、今の紫音の最大であろう瞬間6倍加速で、凌ぎきる
元々、それほど拳銃の訓練を受けていない、警備兵
その撃つ弾は半分も、紫音に当たる軌道を取らない
それどころか、時間が経つとともに、恐怖で腕が震え
紫音を捉える、弾丸は徐々に減っていった
そして同じ用に、紫音も限界を超えた加速に筋肉は悲鳴を上げ
徐々に加速速度は落ちていった
それも2分足らずで、全弾撃ち尽くすという無様な人間達の手によって終を告げた
それは、紫音がやりたかった実験の1つ
数人の銃を持つ相手に何処まで対処できるかだった
そして、紫音の目の前に残ったのは、怯える小動物の様な人間
弾のでない引き金を、未だに引く人間達に近づき
紫音は、近づき大きく息をすい、大声を上げる
「ワッ!」
それは、スキルを乗せた一撃
怯え、縮こまった相手、それも全員が紫音の方向を見ているのなら
このスキルを乗せた大声でも
正面から大脳を揺らし、又は、緊張した身体を震わせることによって
気絶させることは容易いのだ
『やっば!さすがに、8人相手は、キチイ
まぁ数発はカスったが、それでも、上出来上出来、ハッハッハ』
『そいつらは、シオン様を傷つけたのですか、なら殺して良いですか?』
(まてよ、さすがに今のは、調子に乗って、やり過ぎたか?
まぁ、まぁどうせ、理解不能な事は、魔法だと思うだろうから、いっか・・・)
『まぁ、そんな事は、きにすんな、ほっとけほっとけ
そんな、かすり傷より、速度を上げすぎて体が痛い・・・・・』
そして、研究所内に入り、奥に向かう、実験施設に向けて進んでいくのだった
途中数人の警備兵に出くわすも
簡単な魔法と、スキルを使い行動不能にしていく
先程のように、人間離れ、いや達人の域を超えた馬鹿げた事はもうしない
研究所襲撃できる人物とか、ならまだ知らず
あれほどの体術?技?現時点であの動きを可能とする
この世界の人間を紫音は、まだ知らない、なら隠せる物なら隠しておきたいのだが
まぁ、こんな下っ端では、その技すら理解できないだろうと
気にせず、先に足を進め、施設内に入っていった
そして、同時に2人ていどの相手なら、簡単な魔法、スキルを使い
行動不能にすることなど、紫音にとって簡単な事である
今は、肩にギンが居る為、もし少ししか無い魔力が尽きても
すぐに回復できるのだから、ある意味使いたい放題である
そして、実験場の扉を開ける紫音
そこに広がる、筒状の装置に心奪われる
すでに、リルの事前調査から、ある程度聞いてはいたが壮観である
紫音は中央通路を進みながら、左右の装置を興味津津に見つめる
そして、奥に居る人物の元へと歩みを続ける
そこにいた人物
スーツを着こなした30代男性
中年太りの、外国の血が混じった男性
白髪頭の外人のジジィ
警備兵であろう3人の男
一番前で備えるは、SPであろう黒服の体格の良い人物が2人
あとは、室内の隅っこに固まっている、研究員が10数名である
SPと警備兵は、すでに戦闘態勢であり
実験施設だからだろう、拳銃は持って無く
警棒らしき棒と、SPは刃渡り30cmはあろうナイフを所持していた
「そこで止まれ!」
スーツの似合う男性が、シオンの歩みをとめた
「お前は、だれだ?何の為にここに来た?」
「オ前達ノ、敵ダ
スデニ聞イテイルダロウ、先日、高速道路デ、三千風蘭博士ノ拉致ヲ阻止シタ者ダ
ソシテ、忠告モ聞カズ、次ノ日ノ夜ニモ、三千風宅襲撃モ阻止シタ」
「知らない、そんな話は、私達には、関わりないことだ!」
きっぱりと、否定する男を、仮面の少年は指差し
「我々ノ情報網ヲ甘ク見ルナ、四条慎二
オ前達ガ、イヤ四条家ガ、極秘裡ニ勧メテイル
クローン研究ニ行キ詰ッテイル事ハ、ワカッテル
ソノ理由、脳科学ノ事モナ、今更否定シテモ遅イ
全テ調ベハ付イテイル」
「だとしたら、なんだ、やれ、こいつを殺せ、いや捕まえろ」
すでに、侵入者は1人だと、報告は受けていた
それでも、仲間が居ることも視野にいれ、この仮面の男を捕まえようとしたのだ
その言葉で、四条のSPである2人の男性が、紫音に襲いかかる
2人は、左右に別れ走り出す
紫音にしてみれば、だからどうした?と言わんばかりだ
そして、2人の足元を指差し、デバイスを使い魔法を発動させる
「ロック・バインド」
指差す事で、魔法発動場所の、仮想三次元計算方式を省略し
デバイス交互位置指定方式に切り替えたことで
発動速度を早め、使用魔法量を少なくした事が、裏目に出る
2人の足元に、魔法陣が出現し魔法が発動する、コンマ0数秒
だが、紫音が腕を動かし指差す1秒に満たない時間で
2人の男は、その意図を読み取り
紫音の魔法発動の瞬間いっきに、紫音に向けて跳躍し
手持ちのダガーを数本投げつける
紫音はその場から、後ろに飛びのき
おそってくるダガーを、鉄板入のグローブで叩き落とす
そして2人の男は着地と同時に、体制を整え
前に出て構えを取る背は若干低いが体格がいい短髪の男は
自身に強化魔法を掛ける
そして、後ろに位置するは、背の高い体格はいいが
前に居る男より少し細めな男、髪をオールバックにした男は
前にいる男に防御魔法を掛ける
それを見た紫音は
「オォーーースゲーーーーーヤルジャン!」
右手を前にだし親指を立て、ナイス!と鼓舞する
そんな事お構いなしにと、後ろの男から受け取ったナイフで
前方にいる男は、2刀となり、紫音に襲いかかる
そして、後ろの男は支援に回る
前方で攻撃する男の動きに合わせ
紫音に中距離から、風系統魔法【エアカッター】で攻撃する
この時の紫音の意思加速は、格闘戦に向けて、約5倍
肉体加速は、先ほど限界を超え、疲労した為2倍程度が限界である
紫音にとってみれば、これも想定内で実験の内でもある
空気を圧縮し回転させ円盤状にした物を、楕円の軌道で投げつける
【エアカッター】自体は初級魔法でもあるが
その連続で発動、いや同時発動も行ってもいる事からマスタークラス
最低でもツヴァイマスターだろう
そして計算された楕円の軌道
それは、初心者の使い方ではない、上級者だからこその使い方
パワーのある魔法では、周りに被害を出すかも知れないため
最小限での魔法攻撃
いや、恐るべきは、訓練された2人の連携である
紫音は2刀の男の攻撃を捌きながら
飛んでくるエアカッターを器用に避ける
そして2擊3擊と10数度打ち合っているうちに
誘導されたかの用に、回避不能のエアカッターが弧を描き、紫音の両脇から襲いかかる
紫音に同時に襲いかかる、ナイフ2本と、左右からの魔法攻撃
意思加速した紫音には、それが回避不能だと言うことが手に取るように分かる
意思加速それは、反則級の裏ワザでもあるが
体がソレに共わなければ意味は成さない
辛うじての肉体加速、瞬間的加速ではあるが
同じ速度であれば、速度強化に劣るのだ
そう、今の紫音の瞬間的2倍の速度より
常時2倍の、速度強化のほうが、どう考えても早いのだが
意思加速での、アドバンテージで、どうにか
2刀の攻撃と、後方からの魔法攻撃を凌いでいるのだが
SPの洗礼された連携に、紫音はチェックメイトを迎えるはずであった
だが、紫音の身体は、その体制からからは、考えられない方向へ曲がる
意思加速でならではの動き、意思の力で無理やり身体を曲げる
1つ目のナイフを左手で弾き
2つ目のナイフを右手で軌道を変える
そして、右方向から来た、魔法は身体を無理やり曲げて避ける
だが、左から来る魔法だけは避けきれない軌道で飛んでくるため
1つ目のナイフを弾いた勢いで
飛んできた魔法を、左手の鉄入りグローブで叩き落とす
だが、紫音のそれと、エアカッターの魔法は、相性が悪すぎた
これが、炎か水か氷系統の魔法であるなら、叩き潰せただろう
そう、紫音は分かっていた、だからこそ、今まで避けてきたのだが
最小限のダメージで、この連携攻撃をやり過ごすため、左手を犠牲にする
そう、エアカッターを左手の鉄入りグローブで円盤状の面を叩きつける
だが、左手は実体のないエアカッターを潰す形で、魔法の中に入り
その圧縮され高速で回る魔法で、ズタズタに切り裂かれる
魔法は破裂し、紫音の手は、肉が弾け、血が噴き出した
「イッテェーーーーーーーーーーーーーー」
叫びを上げるも、2人のSPの攻撃は続く
左手の盾を失った紫音は、徐々に押されていく
『シオン様、大丈夫ですか?私がその2人を殺しましょうか?』
『コン?』
『あぁ、邪魔をするな、わからないのか?俺は楽しんでいるんだ
弱くなることで、こんなにも戦いが面白くなるとは思わなんだ
まぁ、戦闘技術では、勝てないのは分かったから、次は・・』
紫音は、気づかれないように、ある細工を施し、大きく後ろに飛び退くと
右手を上着のポケットにツッコミ、先程拾った小石を床にばらまく
それを見た2人の男は足を止めた
目の前に、ばらまかれたアイテムに、どんな魔法が掛かっているか分からず
このまま、突っ込むのは悪手だと踏んだのだ
紫音は足を止めた前に居た男の足元を指差す
ソレに男は反応し、また魔法が来ると飛び退くのだが
「チェーンロック」
叫ぶと同時に右手を広げ上に挙げる
先程後ろに下がりながらも、設置していた魔法を発動させる
飛び退いた男の足元に3つの魔法陣が湧き上がりそこから
6つのチェーンが飛び出し、その先には手錠の様な輪っかが付いており
飛び退いたことで、空中で動きが制限された男に襲いかかる
そして、チェーンの付いた輪っかは男を拘束し地面に引っ張り
男が地面に縛りつけられるかと、思われた瞬間
後ろの男の魔法が飛ぶ、エアカッター先ほどとは違い魔力が多めに込められたそれは
紫音が張ったチェーンを断ち切り、男を助ける
そして、チェーンを断ち切った、3つのエアカッターと
同時に放たれた、1つのエアカッターが、紫音を襲うが
紫音は、それを察知し、怪我した左手を大きく左から右に振り
左腕にあるデバイスの魔法を発動させる
「マジックウォール」
紫音の正面に鈍い色の半透明な壁ができ、魔法を受け止めるはずが
すでに、魔法力が尽き、半分以下の強度となった【マジックウォール】は
エアカッターを遮る事ができず、エアカッターは、紫音に襲いかかる
「マジカァァ コリャァァァァ!」
その叫びに
SPの2人は、威力を挙げた、エアカッターが
魔法の障壁を打ち破った、驚きの叫びと叫びと取る
だが、紫音にとって
マジックウォールが、相手の魔法を防ぎきれなかった事に驚いたのではない
ここに来るまで、つかった魔法は、束縛系の魔法【ロックバインド】その回数7回
この場でSP対して最初に使った、2回
そして、今つかった、設置型の【チェーンロック】3つに、【マジックウォール】
とくに、防御系の【マジックウォール】は、
思いのほか紫音の魔力量を奪っていったのだ
肩には、魔力吸収蓄積型使い魔の【ギン】が居る為
残り魔力を考えないで使っていたとは言え
これらの魔法は、すでにシオンによって魔法式を書き換えられ
極限まで消費魔法料を抑えた魔法であり
本来の半分以下の魔力で発動していたに関わらず
予想以上速く、魔力が切れた事に
シオンは自分自身の魔力量の無さに驚き叫んだのだ
その叫びと共に、飛んできた魔法を避けるため、紫音は横に飛び退いた
飛び退いた紫音に、2人のSPの男は、動きを止める
それは、紫音がクローン生成用機材を背にしたからだ
1機、数百万はする機材を背にした侵入者を
おいそれと魔法攻撃できないSPの2人
そして、接近しようにも足元にばらまかれた、アイテム?の存在
または、先程の用に設置型の魔法が仕掛けられていないかと
身動きができないでいたのだ
2人のSPは、デバイスを通し小声で作戦を練るが、一歩踏み出せないでいた
そんな2人を見た紫音は、両手を挙げ
「ココマデダナ、コレ以上ノ、戦闘ハ、ドッチノ利益ニモナラナイ
コレ以上戦ウナラ、施設ノ崩壊ヲ意味スルゾ」
ハッタリである、ばら撒いた小石もハッタリである
実際、紫音は、魔力も切れ
左手は魔法に潰され、小指と薬指は、動かなくなっていた
その痛みで、叫びたいのを我慢し
仮面の下では涙を流し、歯を食いしばっていたのだから
そうなのだ、今SPに襲いかかれたら、紫音は確実に負ける
いや、すでに負けている、だからこそ、戦いを辞め、逃げる裁断を始める
その言葉を聞いても構えを崩さない2人
その後ろから、近づいてきたのは四条慎二
「殺されたくなけば、質問に答えろ」
「答エレル、事ナラ、答エテヤロウ」
「ここへ何しに来た?目的はなんだ?」
その言葉に、紫音は自分自身に問い
右手で、頭を掻きながら、首を傾げ
そう、目的と言われても
紫音の頭の中に浮かんだ事は
1つ・この身体に慣れたとはいえ、実戦の戦闘経験を積みたかった事
1つ・この世界の銃火器相手の戦闘経験を積みたかった事
1つ・クローン技術、その研究を見たかった事
1つ・蘭さんを襲った組織の、責任者であろう四条慎二の顔が見たかった事
1つ・四条慎二に、これ以上、蘭さんに手出し無用と忠告する事
「ナニッテ・・・・・?
目的?・・・最先端ノ、クローン技術ヲ、コノ目デ見タカッタカラナノカナ?
ツイデニ、四条慎二、オ前ガ此処ニ来ル情報ヲ掴ンダカラナ、顔ヲミニキタ
アトハ、忠告?、今後三千風蘭博士ニ、危害ヲ加エルナラ、オ前ラヲ潰スト
ダガ、ソンナ事ヨリ、ナゼコノ施設ニハ、女性ノ試験体ガ居ナインダ?」
当初の目的は、自身の実験であり
この世界での戦闘経験をその身で体験することである
それは、入口での銃撃戦と
思いもよらぬ、四条のSPが強かった為
予想以上の格闘戦闘・魔法戦闘の経験を得たことは確かである
そして、実に今日この場所で、その実験をしたのは
井門の情報で、今日四条慎二が、ここを訪問すると知り
ついでに、忠告と顔を見るため、施設見学を数日ずらし、今日にしただけである
そう、ただ単に、タイミング的に、合っただけである、それ以外の意図はないのだ
そして、紫音はこの施設に入ってから
女性のクローンを1体も見ていない
だからこそ紫音の興味は、女性型クローンに移っていた
「・・・・・そんな事は、どうでもいい、こいつを捕まえろ
知っていることを全て吐かせろ!」
「ですが・・・」
その言葉に、2人のSPは・・・・動かない、動けない
未だ余裕のあるように見える、仮面の少年に対して、動けないでいる
大きな魔法を使えば、少年を抑える事も出来るが
それは、ここの設備を壊すことに成りかねない
2人の男は、すでに確認していた、仮面の少年が幾つものデバイスを持っていることに
それは、まだ幾つもの、魔法を保有していることに他ならないのだ
そして2人の前でつかった魔法の回数は数回、なら魔力はまだ有るのだろう
そう、1人で侵入してくる位なのだから
それなりの実力者・魔力保有者なのだろうと
そして、紫音も同じく確認していた、2人の男の事を
さすが、十士族の1つ、当主ではないが、四条の名前を持つ男の専属SP
紫音の予想を超える強さであった
それも後で魔法を使っていた、オールバックの男が使用した魔法は数個
その男のデバイスの量から考えても、保有魔力量は通常の人間の倍以上
所持魔法の数も、紫音に匹敵すると、もしこの場が外ならば
周りを気にせず戦えたなら、圧倒的な力で紫音は秒殺されて居たのかもしれない
だからこそ・・・
『よし、とりあえず逃げるか?』
『では、どこかに転移しますか?ここを破壊しますか?』
100倍を超える意思加速で、周りを置き去りにして会話を始める
『それよか、リル、お前知ってただろ?』
『何をですか?』
『ここに男性のクローンしかないことをだ』
『・・・・・・・き・・気づきませんでした』
全く嘘が下手である
『なら、女性のクローンの場所はどこにある?となりの建物とかか?』
『わ・・・わかりません、し、しりません』
『そういえば、もう一箇所、クローンの実験場があったはずだな』
『・・・・・・・・・』
『オイ、リル!』
『えっ・・・聞こえませんでした、なんの事でしょう?』
『もう一個の実験場だ、井門の資料にもあったはず
お前はもう視察しているはずだよな?』
『わすれました・・・・』
『そうか、そこに女性型のクローンがいるんだな
お前が言わなくても、井門に聞くから、リルお前はもういい』
『シオン様・・・だって、あんなオッパイだらけの場所にいったら
私を見てくれなくなるじゃないですか!!
数十体の裸の女が有るんですよ
巨乳大好きなシオン様の鼻の下が伸びるのは確実・・・
こんな事なら、シオン様に知られる前に
私の手で闇に葬る去るべきでしたか・・・』
『裸の女だと!よし行こう、今すぐ行くぞ』
『・・・・シオン様・・・・・』
『コン・・・・・・・』
テンションが上がる紫音に、呆れかえる、リルとギン
「ククク・・・スマナイナ、急ギノ、用事ガ出来タノデナ
コレデ、失礼スル」
「おい!」
四条慎二は、仮面の少年を引き止めるように
右手を前に出しながら、叫んだ瞬間
施設の中に閃光が走り、そこにいた全員の目を潰す
リンによる、光魔法、要は目くらましである
そして、紫音とリル・ギンは、転移していく
そして、10数秒後、視力がもどった、男達の前に残るは、床に広がる青い炎だけであった
床に広がる青い炎
その炎の元の姿は、紫音の左手の肉片と、血である
紫音の痕跡を消すため、その飛び散った血・DNAすら残さないため
ギンが独自に判断をくだし
魔法の炎で、床に飛び散った、肉片と血を残さず燃やしたのだ
そう、青い炎は、全てを隠滅した後、
その炎が、燃え尽きる寸前に青く燃えあがった姿
四条慎二と、数人の男達は、言葉もなく
消えゆく青い炎を、ただずっと眺めていた




