24話 それからの、7:3メガネ
ある、ビルの最上階、特設応接室
ぐるりと見渡しただけで、その部屋の装飾品は
かるく億を越えるほどである
その豪華な部屋で、ある組織の大物と、ある非凡な男が
大きなテーブルを、はさみ、座っていた
とある業界の、ある組織の会長、50歳前半であろう、貫禄のある男性は
ソファーに腰深くすわり、眉間にシワを寄せ、しかめっ面で考え込んでいた
その後ろに控えるように、立っているのは
部下であろう2人の男性
体格の良いその身体に、似合わない黒のダブルスーツは、はち切れんばかりである
そんな強面な部下を2人したがえていた
一般人なら、その場にいるだけで萎縮し
ソファーに座る、そのいかにもな雰囲気を漂わす男性と普通に話すことすら困難であるだろうが
7:3に分けた髪型のメガネを掛けた非凡な男性は
物怖じせず、まるで学校の先生と話すように会話を楽しんでいた
その姿に、強面の2人は、そんな男に対し顔には出さないが、内心驚いてもいた
「そうなんですよ、もしもの時にって事なんですよ
現在の魔法医療でも、治せない病気と言う物は、ありますからね
とくに臓器関係は、手遅れになると、最悪、死ぬ事になるかもでしょう
そんな時の為になんですよ」
「それは、わかっているんだがな
井門よ、それにしては、高すぎないか?」
「いえいえ、これは、非公開の技術ですし
こ こ だ け の話、国際法にも、ひっかかりますから
この値段でも安いと思いますよ
実際、命が買えると思うなら安いと思いますが・・・・・
どうでしょう?」
机の上に広げた、資料を見ながら、説明をする井門
それを見ながら、考え込む、男性
「そうなんだが、それはそうと
この話が本当かどうか、保証はあるのか?」
「まぁそれは・・・・・信じられないでしょうが・・・」
ブブブブブブ・・・・・・・ (携帯のバイブ音)
「ん?電話か?」
「すいません、電源切ったはずなんですが?・・・・」
「まぁいい、資料を見てるから、出てもかまわんぞ」
「ありがとうございます、それでは、少し失礼して・・・・」
バックに入れていた携帯電話を取り出し
スマホの画面をみる、井門
(ん?非通知、誰からだ?
この携帯は、仕事用だから、非通知で掛けてくる知り合いはいないはずだが?)
そんな事を思いながら、一回、画面に指を添え、スマホ耳にあてる
そして、井門が声を出す前に、イキナリ相手の声が頭に響く
「ボク!ボク!今、車ぶつけちゃってさ
その相手が、ヤバイ筋の会長の車らしくて
殺されたくなかったら、1000万円だせって・・・・
お父さん、お願いだから、今すぐ、お金用意してく」
プチ・・・・・・・・
井門は、いたって自然に、一言も話さず、通話を切る
資料を見ていた、男性は・・そんな井門の態度を見て
「ん?どうしたんだ?」
「あ?いえ
ちょっとした、イ (タズラ)・・イエ・・間違い電話でした、お気になさらず
会長、今日は、お話だけ聞いてもらえれば、大丈夫なので
ゆっくり考えてもらって結構です
今回、会長を紹介くださった、あの方は
かわいい、お孫さんの為に
お孫さんの、クローンを契約しようかと、おっしゃられていましたし
あ、まだ、契約はしてませんがね
そういうのも、有りだと思います
そこは、人それぞれですからね」
男は、ソファーにもたれかけ、腕を組みながら
ニヤケた顔で、話しだした
「孫か・・・ワシの、妾の子にな、子供が2人いてな
上の子が女の子でな、今3歳になるんだが、これが
かわいい!!
目の中に入れても痛くないほど、可愛いとは
あの子のことを・・・・・・・・・・」
喋り続ける事、20分
ようやく話は終わりを迎えようとしていた
「・・・・・・そうか、孫の為に、か・・・・あいつも、そんな歳になったか」
「でしたら、会長も、可愛いお孫さんの為に、どうでしょうか?」
「でもな、どうするかな・・・・・ん?井門、携帯なってるぞ」
ブブブブブブ (携帯バイブ音)
「何度も、すいません、少し失礼します」
そして、井門は、今日2度目の携帯を取る
さすがに2回目ともなると、会長の後ろに控える部下が、苛立ってくる
この会長、昔は短気であった
会社の会合の途中、携帯が鳴ろうものなら
すぐさま、その人間を殴っていたほどである
いや、未だに、殴るであろうが
それは、身内でない井門には、当てはまらない
身内にはキツイが、身内以外には優しい人物でもある
会長と言う立場、そして、いつも付き添う強面な部下のため
他人から、怖がられ、恐れられ、普通に会話することすら出来ずにいた
直属の部下ですら、会長を怒らさないように
普段、使い慣れない敬語を使う
そんな会長を慕う、2人の部下は、井門の態度に徐々に苛立ちを覚える
だからこそ、初対面で有るに関わらず、気さくな態度で接してくる井門は
この会長にとって、久々に得た話相手でもあった
でなければ、孫の話をする訳がなかった、それも、20分以上も・・
そして、電話に出るため、スマホをつつく井門を見ながら
(初対面の相手に孫の話をしたのは初めてかもな
この男、なかなか面白い、見所があるのか、ないのか
不思議な魅力があるのか、ないのか・・・)
会長が、そんな事を考えてる事など、つゆ知らず
井門は、再び不通知の電話にでる
「おとうさん、1000万用意できた?
じゃないと、ボク殺される、たすけて」
さすがに、2度目ともなると井門は、ある事に気づく
携帯越しの声は若い、まだ子供?、小学生くらいなのか?
そして、どこかで、聞いたことのある声・・・・どこかで・・・・?
顔を横に向け口元を隠し小声で
「だれだ?」
「お父さん、わからないの、ボクだよ、井門赤道
息子の赤道だよ!」
「悪いが、私に子供はいない、だれなんだ?」
「忘れたの、ボクだよ赤道だよ
さっき、アカギ・コーポレーションの会長の、赤城雅紀 (あかぎまさき)の
車に、ぶつけちゃって、赤城会長に殺されそうなんだよ
たすけて、お父さん・・緯度経度お父さん」
井門の顔から血の気が引き、真っ青になっていく・・・・
井門に息子は居ない、その事から、この電話の主は息子ではないが・・・
アカギ・コーポレーション会長、赤城雅紀その人は井門の目の前にいた
そして、今、井門が赤城雅紀と会っている事を知る人間は関係者以外いない
最後に、井門の事を、緯度経度と呼ぶ人間は、この世に、2人しか知らない
そして、男の子の声となると、1人しかいない・・・・・・
そう、それは、2月の終わりに出逢った、少年からの電話
電話番号は、少年の母親から、教えてもらったのだろう
だが、何故?赤城雅紀と会っていることを知っている?
それ以上に、少年からの電話に、緊張する井門
「おい、井門、顔色が悪いぞ、何の電話だ?」
赤城雅紀は、徐々に変わっていく井門の顔色を見、驚いて声をかけた
それに、井門は緊張した声で
「い・・・いえ・・・・・お構いなく・・・・」
「ハハハ、その様子だと、俺が誰だか分かったみたいだな
久しぶりだな井門さん、まぁ赤城会長との商談の邪魔したら、悪いから要件だけ伝えるぞ
今晩9時、家に居ろ、ちょこっと話があるから会いにいくって事で
じゃぁな、商談うまくいくといいな」
そして、井門の返事も待たず、電話は切れた
ゆっくりと息をはき、左手で額の汗を拭い
視線が合った、貫禄のある男性に・・
「会長すいません、何度も電話でてしまい
すこし驚くことがありまして、びっくりしただけですので・・・」
「そうか・・・・大丈夫か?顔が青いぞ?」
「はい・・」
井門の変化に解 (げ)せない赤城
自分はそれなりに、威厳があるはず
その自分の前でも、その態度を崩さない目の前の男が
電話一本で、死人の様な顔になったのだ
自分を相手するより、びっくりすることとは・・・・なんぞや・・と
その、内容を聞きただそうかと、ソファーから身を乗り出し
井門に再度、声をかけようとした瞬間
ガチャ・・
部屋の扉が開き
会長の秘書らしき女性が部屋に入ってきた
「失礼します、会長そろそろ、ご時間ですが」
その言葉で、井門の交渉時間は終了した
そして、次回の、アポを取った井門は
会長から「車で送ろうか」との申し出を丁重に断り
日も暮れていない時間で或るにも関わらず早々と帰路に着く
********
井門の住んでいる都内のマンション
12階建て、その5階に位置する部屋に井門は住んでいた
多少築年数は立っているが、セキュリティーは、それなりに高い物件でもある
時間は過ぎ、夜9時少し前
1LDKのリビングで、机の上に携帯電話を置き
携帯電話を見つめ、じっと待つ井門の姿があった
部屋の時計は、9時を指す
井門の緊張の中、背後に人気を感じると同時に
右肩を叩かれ振り向くと・・・・・
井門の右頬に、ある人物の人差し指が突き刺さる
「うぅぅうわ!」
井門の叫びに、嬉しそうな少年の姿があった
「よう、井門さん」
「なんで、ここに?あ、、いや、紫音さん、お久しぶりです」
そう、いきなり現れた少年は紫音であった
「いきなりで悪いが、場所移動するぞ」
その言葉で、井門の視界は一瞬、闇に包まれるが、すぐに明るい場所にでる事となる
そして、井門の部屋でない場所、そこは静岡の三千風家のマンションのリビング
「しゅ・・・瞬間移動・・・・ですか・・・・」
目の前が、知らない部屋になり
緊張で喉がカラカラになった、井門は、思ったことをつい口にする
「あぁ、正確には、空間転移だがな、同じようなもんだ
そう緊張すんな、今日はある提案というか、お願いがあって呼んだんだ
まぁ、座ってくつろいでくれ」
そういい、紫音は床に敷いてある、自分のであろう、座布団にすわり
井門にも、来客用の座布団の場所を指差し、座るように進める
一回深呼吸をし、ゆっくりと座る井門
「それで、紫音さん、提案とは何でしょう
私は、前回のケジメを取らなければなりません
命を差し出せと言われても、仕方ないことを」
紫音にとって、どうでもイイ事を、しゃべり出す井門を遮る
「そりゃ、もういいって、命を取ろうってわけじゃない
緊張すんな、それじゃ話にもならん
鈴、お茶~」
「はぁ~い」
そして、鈴がオボンに、2人分の紅茶と、チーズケーキを乗せてやって来る
「井門さん、こんばんわ、ゆっくりしていってね
じゃあ紫音、私はこれで帰るね、リルお願い」
「あぁ、ありがとう」
「おやすみなさ~い」
鈴は挨拶をすると、その場から消える
リルによる、空間転移である、この静岡のマンションから
東京の家に転移していったのだ
井門にとって、自分はこの兄妹から、嫌われてると思っていた
蘭からは、紫音には気に入られていると言ってはいたが、信じきれずにいたのだ
それはそうだ、この兄妹を死の淵まで追い込んだのだから
いや、この男の子にかんしては、死んでいたはずなのだ
自分が嫌われていても、その罪を償えと言われても仕方ないはずだったが
この兄弟は、まるで、友人が訪ねてきたかの用に、接してくる事に
井門の罪悪感は居た堪れなくなっていた
そして、紫音のすすめられ、紅茶とケーキを頂く
チーズケーキに合わせてだろうか、少し苦味の効いたハーブティーと
甘いチーズケーキの相性は、抜群であり
ゆっくりと、無言で味わって食べていた為か、ハーブの効果だろうか
井門は次第に緊張もほぐれてくる
そして、半分も食べ終わった頃
紫音が口を開く
「井門さん、それでお願いなんだけど」
「紫音さん、私の事は呼び捨てでいいですよ
そして、謝罪も込めて、できる限り、お引き受けします」
「なら、俺の事も呼び捨てでいいぞ、井門さんの方が、年上なんだからさ
それに、内容聞かなくていいのか?何を頼むかわからんぞ?」
「はい!」
緊張もとれ、強い意志をもって、返事をした井門
紫音は一瞬、タメて、真剣な眼差しで
「じゃぁ、ケツの穴貸して」
「え?」
「だから、ケツの穴を」
ガン!!!
紫音が、しゃべっている途中にも関わらず
紫音の頭がいきなり、誰かに後ろから頭を叩きつけられたかの用に
低いテーブルに打ち付けられた
そして、現れたのは、綺麗な薄紫色の長い髪を携えた15cm程の少女
「シオン様、貴方はバカですか?変態ですか?ホモですか?」
「全部や!」
リルの質問に、頭を起こしながら、ドヤ顔で答える少年は嬉しそうでもあった
そんな、2人?のやり取りに付いて行けれない井門に
リルは振り向き、かるく会釈をする
「言葉を交わすのは、初めてになります、井門様
シオン様のメイド、リルでございます、今後共よろしくお願いします」
井門も、小さな少女に釣られ、軽く会釈をした
「まぁ、ケツの話は今度するとして
井門さん、俺に雇われてみないか?」
「雇う?」
「まぁ、そんな大層な話でもないんだが
俺は情報が欲しいんだ、情報を売って欲しい
または、俺の欲しい情報を調べて欲しいんだ
まぁ、急ぎでない限り、今している仕事の合間でいんだけどね」
「それは、構いませんが・・・情報と言っても、色々ありますが?」
困惑した井門は、その真意を聞く
「とりあえず、今知りたいのは、蘭さんを襲った組織
井門さんの居た会社でもなく、襲ってきた奴らではなく
その後ろで糸を引く、クローンを作ってる組織の事だ」
それを聞いた井門の視線が一瞬、紫音から外れ
「それは・・・」
数秒の沈黙
「言えないのか、言いたくないのか
それとも、交渉人としてのプロ意識なのか
だから、言ったんだ、俺に雇われないかと
俺が、井門さんの、メイン雇い主となれば
情報を提供するのに、問題は無いだろう?」
ニヤニヤと笑いながら、紫音は井門に告げる
「紫音さん、それは・・・そうなんですが・・雇われるといっても・・・
いや・・・そうですね・・・ケジメもありますし・・・・」
ある事を考え混みながら、どうにか自分を納得させようとする井門
それを、察してか紫音が、驚くことを井門に告げた
「今、考えた事を当ててやろうか
それは、金の問題だろ、自分にケジメと言い聞かせ
タダで情報を提供しようと考えてるだろう
まぁ、実際俺は小学5年生だからな、そんな金持ってない
又は、蘭さんの懐から、お金が出るとおもってるだろ?
それなら、いっそ、この間のケジメと言って、俺を納得させるつもりなんだろう?」
「そ・・それは」
口ごもる、井門をニヤリと笑い
「リル」
「はい」
返事をしたリルは、スススっと、テーブルに近づき
100万の札束を10個、テーブルの上に出現させた
驚く井門に
「とりあえず、1000万
まぁ雇うといっても、社会的には、雇用できないからね
割のいい、バイトだと思ってくれ
俺を裏切らない限りは、情報が取得できなくても、最低でも、月100万
もし、必要経費で、もっと入用なら、言ってくれればその都度だそう
メインの雇い主と言うのはそういう事だ
この金額なら今の会社より多いいだろ?
いい話だと、思うがどうする?」
井門は、右手の中指で、メガネの中央を押さえメガネの位置を修正し
真っ直ぐに、紫音を見つめ話し出す
それは、この男が仕事モードに入ったことを意味していた
「紫音さん、この話を受けるにあたって
いくつか質問させてください」
「ああ、いいよ」
「この、お金はどこから?三千風先生の、お金ではないのですか?」
「それは違うな、お金っていうのは、有るところには、あるんだよ
まぁ、俺の金じゃないのは、確かだけどな
これは、盗んできた、世間には出せない、政治資金
政治家が溜め込んだ裏金ってやつだな
だからだろうな、盗まれても公表できないんだ
だから、あっちこっちから盗んでやった
全部で、軽く10億超えてるんじゃないか?」
ケラケラと笑いながら、自身の犯罪を説明する紫音
そんな、犯罪を飲み込み、なっとくする井門
「そうですか・・・なら、安心して頂けます
でも、どうしてそこまでして、情報を得ようとするんですか?」
「どうしてって?そりゃぁ俺は昔から情報が命だと思ってるからかな?
それが、どんなバカげた情報だったとしても
ある意味バカげた情報の方がスキだけどな、そりゃ置いといて
今回の用に
争いごとに巻き込まれてから、情報を集めても遅いと思わないか?
この世界は、リアルタイムで進んでいるからな
マンガや、アニメみたいに、巻き込まれた、なら何も考えず戦え?
相手の強さも、その大きさすら知らずにか?
バカげてる、愚の骨頂かっていうんだよ
戦う前、争う前から戦いは始まっているって言うんだよ」
「それなら、なぜ、今更あの組織の事を知ろうと?
その言い分では、すでに知っている物と」
「あ・・あぁ、言い忘れてたな
信じる信じないは、どっちでもいいんだが
俺は、この間死んだよな、そして生き返ったんだ、みてたろ?
まぁ、なんて言うか・・
それと同時に、前世の記憶も、ついでに蘇ったんだ
だから、あの時までの俺は、いたって普通の子供
今の俺は前世の俺なんだよ、わかるか?」
ここに、蘭か鈴が居たなら、どこが普通の子供だ!ってツッコミが入っただろう
「いえ、何を言われようが
今思い出しても信じられない、あの出来事の張本人である
紫音さんが、言うんですたら、信じるしかないでしょ」
「まぁ、今の俺は、この世界の情報が無いんだ、少ないんだよ
だからこそ、情報が欲しいんだ
ネットで集めれる情報はある程度、自分で調べれるからいいんだけれど
裏の情報、10歳の俺では集められない裏の情報が欲しいんだよ
で、どうする?」
「わかりました、その話お受けします」
「お!ありがとう
そして、さっきもいったが、裏切れば殺すから
この話と、俺の事は口外禁止でな
もし、辞めたくなった時は、辞めて構わない
後、俺の力が入用なら、惜しみなく貸すよ
誰かを殺したい言うなら、殺してやるよ」
さらっと、怖いことを冗談っぽく言うが
井門は、その言葉が本当だと言うことは、心底わかっていた
そして、紫音は、井門に取り急ぎ、知りたい情報を提示する
蘭さんを襲った組織の特定
そして、日本のトップクラスのハッカーの情報
である
あとは、十士族の、情報や
街や、裏組織で流れるウワサ
些細な、馬鹿げた噂ですら、情報として教えるように井門に頼む事となる
そして、数日後、紫音の元に、書面にて、とある情報が届く
紫音は、すぐさま動く事はない
紫音の下 (もと)には、極秘で動ける最適な人物が居るのだ
井門から届いた情報を元に、その人物は、誰も認識できない次元の狭間から調査を行う
そう、その力を使って、どこにでも入り込む事が出来る
そして、その力を使って、汚職が噂される大物政治家から
表に出せない、お金を盗んだのだ、その気になれば
日本最大手の銀行の貸金庫の中身だけ盗む事も可能なのだ
そこまで、すごい人物なのだが、ある欠点もある
ただ、紫音の言うことを聞かない
紫音の傍を長時間離れる事を、嫌うのだ
調査に出しても、半日もせずに、戻ってくる
誰かを監視、尾行させても、「飽きました」と言って戻ってくる始末なのだ
基本、身内以外の人間は、害虫程度にしか見ていない為だろう
誰しも、どうでもいい害虫を数日、尾行、監視しろと言われても無理だろう
そのへんは、紫音もすでに諦めてはいた
そして、紫音の意図する事を全て理解できない、理解しようともしないのだ
そこまで、紫音も真意を説明する気もないのだから、仕方ないだろう
もし、紫音の思い通りにこの人物が動き、紫音の意図を全て理解できたなら
紫音の知りたい情報は、全てその手の内に集まっただろう
そして、井門の情報と、リルの情報を元に
紫音は行動を起こす事となる
**********************
5月に入り、連休を静岡のマンションで過す、紫音と鈴達
鈴は、連休を利用して、とある定食屋の手伝いをすることになっていた
そして数日すぎ、5月5日の夜8時少し前
紫音は部屋着から、外行きの服に着替えながら
「さて、今日の留守番はどっちにするかな」
その言葉を聞き、紫音の足元にいた、2匹の動物は紫音に訴えかけた
「にゃぁ!」「コン」
「ほうほう」
「にゃにゃにゃにゃぁぁぁにゃ」
「コンココンコンココンコン」
「そうかそうか」
「コン!」
「へーー」
「んにゃぁっぁ~~~~~」
「マジか!」
「紫音様?前々から気になっていたんですが」
「ん?何?」
「コハクと、ギンの言葉がわかるのですか?」
「今更何をいってんだ、この2人は俺の使い魔だぞ
こいつらの言葉なんぞ・・・・
ハハハ、まったくわからん!わかるわけがない
日本語しゃべれってんだ」
笑いながら答える紫音に、呆れ顔のリル
「やっぱり、わかってなかったんですね・・・」
「ニャァーーーー」
「コーーーーーーーン」
そして、コハクとギンは、大きな声を上げて抗議する
その声に引かれたのか
風呂上りの鈴が、髪の水気をタオルで抜きながら
近寄ってきて、声をかける
「あれ?紫音どっかいくの?」
「あぁ、ちょっと遊びに行ってくる」
「ふぅ~ん、きよつけてね~、あ、リル」
「はい、なんでしょう?」
紫音の頭位の高さで、ふわふわと飛んでいた
15cm程の少女が返事をした
「明日朝5時半に、お願いできる?」
「はい、わかりました、それまでには帰ってきます」
そんな、何時もの会話をして、紫音はギンを連れ、リルと共に転移していく
ギンを選んだのは、ただ単に、前回ギンが留守番だった為である
**********************
同日、午後6時
フルスモークの高級外車が、とある建物の入口の門の前に止まる
入口の警備員が、出てきて車の人物を確認すると
焦ったように、入口のゲートを開いた
そして、その車は建物の奥に消えていく
そこは茨城県、加波山、そのふもとにある研究施設
連休と言う事もあり、研究所に居る人間は、何時もの5割程の人数だろうか?
その為もあろうか、研究所は静まり返っていた
そして、今しがた研究所に付いた人物は
研究所・所長室、その部屋を訪問する
「お久しぶりです、四条さん」
「やぁ、山之辺所長、休みの所すまんな、今日しか時間が空かなくてな」
研究所、所長室の主
東南アジア系の血が混じっている人物
日本生まれ、日本育ちの
少しアクの強い顔立ちの中年太りの男性
ライカイロ・山之辺 (やまのべ)
そして、スーツをビシっと着こなす訪問者は
十士族の1つ四の字を司る一族
現当主の息子の1人である
次男の、四条慎二 (しじょう・しんじ)である
兄と共に、若くしてその才能を発揮し、四条財閥を盛り上げていた
そして、テーブルをはさみ
座り心地の良さそうな、大きなソファーに向かい合うように座る
そして、会話は続いていく
「それで、所長、次の案は浮かんだか?」
「それが、まだ、あの三千風先生いれば、筑波の奴らを出し抜けたんですが
あれ以上とは、言いませんが、それに匹敵する、妙案は今のところ・・」
「あぁ分かっている、親父 (オヤジ)からも、聞いている
士族からの通達で、あの先生が今後、拉致されれば
十士族の戦闘部隊が動くことになるらしい」
「それでは・・・」
「あぁ、今後、あの先生には手が出せなくなった
先生を、狙っていたは組織が有りすぎて
前回の事は、上にバレていないから、良かったもんだが
もしバレてたら、私は、この名を【四条】の名を無くす所だった」
少しの沈黙の後、2人は今後の方針に付いて言葉を交わしていき
時計の針が8時を超えた頃、研究の成果を見るため
2人は部屋を後にし、実験場に足を向け歩き出す
そして、元々は、何かの工場だった、この研究所
実験場は、その名残だろうか、かなり広い
だが、白を基本とした室内は綺麗にされており、清潔であった
その真ん中の通路のを研究を確認しながら歩く
通路の両脇には、大きなガラスの筒状の物があり
その中には、裸の男性の姿があった
それは、作られた肉体、ある男性のクローン体である
その1つが1つが、大きな装置であり
高精度な最先端コンピュータで制御された物である
そんな大きな装置が、約200機
人間だと確認される、クローン体が精製されていたのは、50機ほどであろうか
事実、研究の為、作っては廃棄、作っては廃棄なのだから
意志を持たない、動かないクローンなど、現在、研究以外に使いようがないのだ
もしあったとしても、新しいクローンで代役できるというものだ
そして、通路一番奥に、一際大きな装置が幾つも並んでいた
そこにいる、白髪の男性に声をかける
「博士、調子はどうですか?」
「ん?四条か、あぁ、調子もどうも、ほとんど (研究は)すすんでない」
「やはりですか・・・」
「スキャンする限り、大脳は正常に動いている
そう、ボディーはパーフェクトなんだ
何が足りないのかか解らない
誰か教えてくれ!!」
白髪頭を掻きむしり、激情する博士と呼ばれた老人
彼も、有名な学者である、クローン技術に惹かれ10数年は昔から
この地にて研究に没頭していた
そして、博士と呼ばれた老人は
2人の来客に、色々説明していいく
その人体科学、脳科学に関する説明は、2人には理解不能
近くにいた博士の助手である人間も高度すぎる博士の理論には付いて行けないでいた
毎度の用に、一度話し出したら長い愚痴に近い、そんな話を
永遠に聞かされる事を覚悟した、回りの人間達を救ったのは
研究所内に鳴り響いた、緊急警報のブザー
そして、所内放送で研究所に伝えられた言葉は
「所長、侵入者です」




