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20話 それからの デブ

 



ある、山の中一人の男が居る

それはまだ、太陽は真上に有るはずなのに

多くの樹木に囲まれて、光の届かない、薄暗い闇に覆われた地上

樹海と言ってもいいだろう

そして、微かに差す光を頼りに

西神虎亜 (にしがみこあ)は、今、道なき道を走っていた


「くそ、あの子供はなんだ、化物かよ!

 あの、俺すら知りはしない魔法の数々は、なんなんだ

 それに、あの2匹の式神も、意味不明でないか

 奴は陰陽系の使い手なのか?

 情報が足りねえよ、俺様の神掛かった演算処理能力でも

 知らねえ事は、わかんないんだよ

 面白そうで、付いてきたのはいいが

 死ぬ目に遭うとは思わなんだわ」


ぶつぶつと、つぶやきながら

足元の茂みを、かき分けながら走り続ける


この男、ある戦いが終わり、逃げてきたのだ

自分のいた組織は、絶対成功するであろう作戦を立てた

そして、その作戦は決行されたが、その作戦とは関係なしに

この男、あろう事か、自分のいた組織を裏切ったのだ

そして、事態はとんでも無い方向に向かうのだが

最後は、何故かその作戦の敵・味方は和解した感じとなった

だが、この男、一旦組織を裏切ったてまえ、たった1人となり

その場から逃げ出してきたのだ

そして、その場所とは、山に囲まれた谷にある、高速道路の上である

逃げ出したのはいいが、周りは全て山、ふもとまでの道はなく

薄暗い山の中をひたすら、走っていた・・・・のは、始めの数分

すでに疲れて、歩き出している、その男はある事を悩んでいた



「くそ、調子にのって、挑戦させろって言ったものの

 どうすれば、勝てるんだ

 絶対的魔法【ザ・ワールド】ですら通じない相手に

 俺の脳は覚醒したんではないのか?

 そうか!あの化物に逢わなければいいのか

 さすが俺様、即座に答えが出る

 それが、なんの解決になるんやねん」


一人でバカな事を口ずさむながら

虎亜の頭に、ある一つの疑問が浮かぶと共に

高速演算した脳は、その疑問に答えを出す


疑問それは、脳が覚醒した瞬間の出来事を思い出した事から始まる

あの時は、全ての事、目に映る物から、耳に聞こえてくる物までが遅く感じられた

そして、その体の動きは、軽く、やまさんを超え、超人的だったではないか?

それは、まるで、【ザ・ワールド】の魔法結界の中の用にだ

それは自身の脳の演算処理が上がることにより起きた出来事だと思っていた

それが、今は通常の感覚、体の動きも、以前のままだと

あの時の感覚は何だったのだと?

何故?そうなったかと?


そして、その疑問は、高速演算処理能力を持つ虎亜の脳は即座に回答をだす


大気中の膨大な魔素による、人体全性能向上

そして魔素に含まれていたであろう、光属性の力によって

肉体の回復、これにより、受けていいた怪我、火傷はほぼ完治

そして、精神と肉体の統一、全ての意思の一元化によって

虎亜の身体は、全てが目であり耳であり手足であり脳となった

これにより、虎亜の身体は、まるで1つの考える細胞となった

それは、神経と言うものがなく、体全体で見、聞き、考え、動く

そこに、目で見て、脳で考え、身体を動かすと言う、神経を通した電気信号はなく

その誤差は1ミリ秒すら生じることはない

見た瞬間には、考え、動いている

そしてその考えると言う演算能力は、信じられないほどに上がり

あの、世界が遅く感じる感覚となったのだ


その、現象も、虎亜が、やまさんに勝ちたいと思った事により

意思の統一性が無くなり、徐々に身体の感覚が通常に戻ったのだと

 

虎亜は、自分のだした答えに納得する

だが、分かったからには、次の手段を考える

なら、あの状態にするには、どうすればいいかと


そして、その問にも、脳は即座に答えを出す、無理だと


もし出来たとしても、そこに有るのは、ただの、何らかの1つの意思

その1つの意思以外の事を考えたら、その状態は終わると


ならば、それの近い状態、肉体強化、速度強化をすればと考えた






事実、魔法での、肉体強化、速度強化は、戦闘に置いて重要な役割をする

ただしそれは、諸刃の剣でもあった

肉体強化にしろ、速度強化にしろ、それに慣れ対応しなければ成らないからである


それとは別に魔法に捕われず

武・技のみを突き詰める人間達がいるし

時に、その技は、魔法を超えることもありえる



肉体強化、その強化された、力を操れなければ、力に振り回される事になる

パンチ1つ打つのにも、拳を握れば、その力で指の骨は折れることも有るだろう

腕を振り回せば、その力で、身体は振り回されるだろう

走るに至っては、地面を蹴ったその足は地面との摩擦を超え、力を分散し滑る

または、力の掛ける方向を間違えれば、前に進むより、上に飛んでしまうだろう


同じく速度強化も、同じような事が言えるだろう


そして速度強化にいたっては、もう1つ克服しなけれんば成らない事がある

それは、肉体的速度を上げようが、脳機能の速度は変わらないと言う事だ


どれだけ、早くなろうが、それを動かし、対応する脳は変わらないのだ

だからこそ、肉体&速度強化の人間の限界は、約2倍だと言われている

それ以上は、脳が対応しきれないのだ


また、昨今、魔法文明となった現代では

戦いの支流は魔法格闘戦であり、とくに魔法接近戦において

ある一定上の上の人間、または軍隊、格闘家においては

肉体・速度・技のバランスは最重要視され

その強さは、日々の訓練によって培われる


そして、その道の達人に置いては、技の鍛錬のみで

上記の人間に勝てる存在も現実に居るのだ


どちらも、正解ではないが、不正解でもなく

個人の進むべき道は、それぞれである



だが、裏を返せば、脳の処理速度が上がれば、強化の倍率を上げれるのだ


そして、今その考えに至ったのが、西神虎亜である


「そう、俺の脳は、神に近い高速処理能力があるんだ

なら、いや、だからこそ速度強化、体の全部の速度を上げる限界まで

制御は、脳に任せればいい、俺様は神になれる人間だ」


虎亜は、足を止め、自分の持つメインデバイスと、子デバイスを確認する

それは、先程の戦闘で、ボロボロになっていたが

まだ作動していた、そして起動させる


起動させる魔法は、速度強化魔法のみ

その速度は、先ほどの【ザ・ワールド】と同じ約7倍

それに対して、脳は危険視号を虎亜に送るが、虎亜はそれを無視をする

結界内では、あったが、そこで自分は動けたと、ならばイケると

そして、虎亜に魔法が掛かる


ここで、虎亜は自分の勘違いしたことに気づかない

【ザ・ワールド】での自身の加速、それは、速度強化ではなく

高速演算能力によって、書き換えられた時間制御魔法である

それは、他者から見れば、その違いはあまりないが

それらは、全くの別物、根本から全く違う魔法なのだ


そして、速度強化魔法が発動する

そう、虎亜の感覚が、速度強化についていく

感覚の7倍、虎亜の前で全ての物がゆっくりと動き出す

ここまでは、思い描いた通りである


そして、脳内で警報が鳴るのを無視して

一歩踏み出す、虎亜

そのスピードも7倍である

前方への軽い体重移動、左足を軽く前にだし

上半身を軽くひねり、右足に力を入れる

だがそれは、虎亜の意思とは別の動きとなる


体全体が、左方向に吹っ飛っとんでいき

虎亜の脳内に、回避不能の文字が湧き上がる

それと同時に、大きく地面をぶつかり高く跳ねる

虎亜の脳は、その演算能力で身体を操るが、それを無視するかのように

その身体は、木々にぶつかり、受身を取ろうとする身体は

また、その反動で、ピンボールの用に、次々と跳ねていく

そして、最後には、大木にぶつかり止まり、魔法が解除された


その間約8秒、虎亜の体感では、約60秒その間

地面や木々に打ち付けられた衝撃が痛みとなって全身に走る

7倍速で、あげられた叫びは、高周波となり、周りの草々を揺らす

そして魔法が解除された事により、その叫びは

今、悲鳴ととなり、誰もいない森の中に響き渡る


「ぐあぁあああああああああああああああああああ」


一際大きく響く、虎亜の叫び

その体が受けた痛みと

筋肉が7倍の速さで動いた、その代償は

計り知れないほどであり、その痛みで、虎亜は叫んだあと気を失う事になる









「ぐは!」


何かの拍子に、全身に痛みが走り虎亜は目を覚ます


目を開けると、そこは薄暗い森の中

木々の間から、見上げる空には、星々が輝いていた

それは、虎亜が気を失ってから、数時間の時が過ぎたことを表していた


「あ・・・・・うぅ・・・・あぁぁ・・・・もう夜か・・・」


身体を、動かそうとしたが、まだ多少痛みが走り

ゆっくりと見上げた夜空の星に気づき夜になったことを確認した

その身体は、脳が行なった、最適回避運動と

まだ微かに周りに漂っている、鈴の回復効果の乗った魔素により

おおきな怪我も無く、すでに完全回復に近づいていた


時間を確認しようと、ズボンの後ろポケットに手を伸ばし携帯電話を取り出すが

一目見て、それが壊れている事に気が付く

それは、すでに画面にヒビがはいり、欠けていたのだ

一回ため息をつき、地面に転がったまま、現状を確認する

サイフと鍵類は無事であるが

やまさんに魔法で焼かれた為、上着はほとんど形は無く

上半身は裸に近い状態で、ズボンに関しては、ところどころ焦げてはいたが

まだ、上着よりは、多少マシなだけであった


「あっと、ここ静岡かよ・・ちっ・・家 (東京)まで、どうやってかえろっかぁ・・

 携帯壊れたから、ジィにも連絡できんし

 このカッコではな・・・・・変態よりたちわりぃなぁ

 どっちにしろ、街かどっかに行ってから考えるか

 どっこいしょ」


ぶつぶつと、言いながら

痛みを堪えて、身体を起こし、闇に包まれた斜面を下っていく

そして、数分、微かな明かりを見つけ進んでいくと

山の斜面の下に、街明かりが見える所まで来た虎亜

それは、足もとに見える明かり

直角とは言わないが急斜面の下、数十メートル

上に立つ虎亜にとっては、10階位のビルの上にいる感覚

左右を見渡すも、下に通じる道も無く

迂回して下に行く元気も力も無く空腹な虎亜は、ある決断をする


「きっと、やまさんが、この高速演算処理能力を手に入れたなら

 地味に、チマチマ鍛錬とか言いつつ修行とかしてそうだな

 ああみえて、貧乏性の凡人だからな

 あぁやだやだ、見かけだけの、弱いおっさんは

 まぁ、あの、おっさんには、この力は使いきれんだろうがな

 だが、いずれ神となる俺様には、修行とか鍛錬とか

 バカバカしくて、出来て当たり前なんだよ

 そう、できて当たり前なんだよ」


手と足が震え、頭から血の気が引いていく

そして、力のない乾いた声で、無理やり自分を鼓舞する


「そうさ、出来て当たり前なんだ

 だって、俺様は天才、そして神となる人間なんだから」




そして、数分その場に立ちはだかり




そして、一歩、二歩と進み

男は両腕を広げ、誰かに告げるように、小さくつぶやく



「後はまかした・・・・・」



“DANGER”

“DANGER”

“DANGER”

“DANGER”

“DANGER”

“DANGER”

“DANGER”

“DANGER”



頭の中に鳴り響く、何かを無視し

身体を前方に倒し、下に見える光の闇に、ただ落ちていく



“自己防衛システムON 

 自動回避運動ON

 落下距離、推定53.43メートル

 生存確立13%誤差±2%

 DANGER

 再演算開始

 生存確立ルート検索

 不確定要素、ヒット【ザ・ワールド】

 暴走確率78%、次元変動崩壊34%


 再演算


 再演算

 

 演算終了

 生存確立78.4%

 魔法暴走率12.8%  


 最適化開始

 魔法【ザ・ワールド】から、詠唱者へ時間操作魔法を抽出

 抽出成功、魔力注入発動

 バランス・最適化・調整

 自身への時間操作2.5倍

 時間操作内での思考3倍

 魔法効果内付着エンチャント有

 肉体操作、その他、全ての権利を、西神虎亜から、高速演算処理システムAI (仮)に移行します”






崖を飛び降りた、虎亜は

その肉体を、自分自身に託し、闇の中を落ちていった・・・・





その後、彼がどうなったか知る者はいない

 


 

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