10話 シオン と しおん
うん、アレだアレ!
紫音は、左太腿を撃たれた、蘭を守るため
井門圭人の前に立ちふさがった
そして鈴は、蘭を救うため、蘭に回復魔法を発動させた
蘭は、足を撃たれ、その機動力を失い戦えなくなったことを自覚する
そして、半ば覚悟し、井門に申し出る
「わかったよ、井門圭人、子供の安全は保証してくれるんだろうな」
その言葉で、井門も、ホッと息を吐き
「はい、従って頂けるなら、安全は保証します、戻り次第医者も手配しますので
しばらく安静にしてもらえると、嬉しいです」
「あぁ、足をやられては、もう逃げれないしな・・・・・」
そして、膝を落とした蘭と井門の間に立ちふさがる紫音のケツを右手で叩き
「紫音もういい、下がれ」
そして鈴の頭を撫で
「鈴もありがとうな」
「・・・・・うん・・・・」
静かに返事をする鈴
蘭は気がつかない
普段の紫音なら、ケツを叩いた瞬間に何かの反応を起こすのだが
今の紫音は、目の前の男に集中し、何も反応しない事に
それは、紫音は未だ諦めていないことを、この状況を覆す方法があるはずと
そう、紫音は考えを巡らす
リーダー格である、やまさん
責任者は、このメガネの男、指揮系統である、メガネの男を一撃で倒し
それに動揺した、やまさんが、0、5秒も動きを止めれば、どうにかしてみせると
そして、蘭が諦めた事によりメガネの男、井門圭人は張り詰めた心を緩め
安心したように、手に持つ拳銃を懐にしまった
その一瞬、紫音は、右拳を固め、地面を蹴る
スキルを乗せた右拳、メガネ男の腹部にさえ当たれば
この男は最低でも十数秒は動きを止めるはずと・・・
「ガコ!」
紫音の頭にそんな音が響いた・・・・
その視界、世界が高速で流れる
詩音は何が起きたのかさえ分からないでいた
いや、すでに、紫音には意識すらなく
その脳は、その働きを放棄した
そう、紫音が、井門圭人を攻撃する瞬間
紫音の意識の外から、神業とも言える一撃
やまさんの蹴りが、紫音の右即頭部にヒットしたのだ
その、完璧な、スピード・パワー・タイミングで、紫音にヒットした蹴り
即頭部にヒットした、その打撃は、紫音の脳にも多大な衝撃を与える
自身に強化魔法を掛けていない紫音を殺すには十分な威力であった
その蹴りの威力は、紫音を身体ごと吹き飛ばした
数日後に10歳の誕生日を控えた紫音
その身長は、鈴より多少高いといっても、135cmほど、体重は30Kgも無いのだ
おもちゃか、人形かの如く、意識の無い紫音の体は
その四肢を不規則に振り回し、頭から回転しながら十数メートル飛んでいく
そして、道を塞ぐように止められていた、トレーラーのコンテナに
頭から衝突し、身体全体でトレーラーに張り付くが
神の一撃とも思われた、やまさんの蹴りの威力は未だ持続する
コンテナに、張り付いたまま、渦を捲くように回転する
そして、蹴りの威力が失われると
糸が切れた操り人形のように、滑り落ち
これが最後の止めかのように、後頭部をアスファルトに叩きつけた
そして、紫音の体は地面に横たわる
紫音の瞳は、蹴られた時のまま、見開かれ
横たわる視線の先には、膝を付く蘭と
蘭を回復している鈴の姿が映し出されたいた
だが、その瞳に光はなく、その目には意識は感じ取れなかった
蹴りの衝撃・トレーラー衝突の衝撃・地面に落ちた後頭部への衝撃・・・
すでに、紫音の脳は、その機能を停止し、生きた屍と化す
脳機能は止まり
その意識は既に無く
体は動かない
だからこそ
紫音の意志は
紫音の心は
魂と言う形で、動き出す
(・・・・・・あぁ・・・・・
体が動かないや・・・感覚もないや・・・
僕は死ぬのかな・・・・
まぁ・・どうせ死んでも・・・
どうせ死んでも?・・・なんだろう?・・・
まぁいっか・・・死んでも・・・・
それにしても・・・・・・蹴られた?のか・・・
負けたのか・・・・・・あんな、おっさんに・・・・
神さえ・・・・殺した・・・・この俺が?
神を?・・・・・
そんな事より、蘭さん・・・・・鈴・・・・・・
2人が無事であるなら・・・・それだけで・・・・
だけど・・・・死ぬ前に・・・・・
PCの・・・・あのフォルダー消したかった・・・
そして・・・・・・本棚に隠してる、あの雑誌も・・・・・・
やばい・・・・・死ぬより・・・・・恥ずかしぃ・・・・・)
紫音は自分の死を、受け入れようともしていた
****************
鈴は、吹き飛び、そして倒れた紫音を、チラリとのそ視界に収める
そして、立ち上がろうとして、足の痛みで倒れかける蘭を
助けるように抱きついた
トクン・・・・・トクン・・・・・・・
鈴は、その小さな鼓動を感じていた
それは、鈴の心臓の鼓動ではない
鈴の中に感じる、もう一つの鼓動、それが徐々に大きくなってゆく
そう、これはきっと紫音の鼓動
双子の超感覚であると、私にはわかる、紫音は無事だと
そして、その鼓動は大きくなってゆく、もうすぐ紫音が目覚める
今度こそ、紫音が助けてくれる
そして、蘭に告げる
「大丈夫、紫音は大丈夫」
トクン トクン トクン
鼓動と共に、魔力、魔力量が膨れ上がってゆく鈴
だが、鈴はそれに気が付くことはない
紫音の事も気にはなるが、今は蘭を守る事を優先する
そんな中・・・・・・
西神虎亜の暴走
マシンガンの乱射
それによって、蘭と鈴はその銃弾を受ける事となる
その銃撃から、鈴を守ろうと抱きしめる女性は、おおきな叫びをあげた
その叫びと共に、鈴を抱きしめる腕から力が抜け
鈴の隣に倒れ込んだ
彼女の脇腹には、銃弾が貫通し、白かった白衣が徐々に赤く染まってゆく
その姿に、鈴はその瞳に涙を溜めながら、母の名を呼ぶ
「ら、、、ん、、、、、さ、、、、、、ん、、、、、、」
紫音の鼓動は大きくなっていく、だが紫音は未だ動かない
なら、今は私が蘭さんを守らないと、助けないと、二度と蘭さんを・・
その脳裏に昔のトラウマを浮かべながら
どうにか、言う事を聞く両手を蘭の脇腹へとかざす
それは、残りの力を使って、蘭に回復魔法を使うため
「いま、、、、た、、、、すけ、、、る、、、か、、、、、」
母を名を呼び、言葉をかける、それと同時に体から力が抜けていく
腹部の痛み?そんな事はどうでもいい
母を・・・蘭さんを失う、辛さ悲しみは・・・・
あの時感じた、心の痛みは、こんな物ではなかったと・・・
その瞳に貯めた、涙が溢れ出す
蘭の脇腹を貫通したその弾丸は、そのまま鈴の腹部に穴を開けた
大きな血管に当たったのだろうか
鈴が呼吸するたび、言葉を発するたび、大量の血液が噴き出していた
薄れる意識、腹部の痛み、集中力は欠け、回復魔法は発動することはない
だが、鈴の気がつかない所で、膨れ上がる、魔力
そして、たった数秒で、大量の血液を失った鈴は、その意識を失いかけるが
「らん、、さん、、、、、、、、、、
お、、おかあ、、、さん、、、、ごめ、、、ん、、、、なさい、、、、、、
もう、、、、ち、、、から、、、、が」
涙で、蘭の顔がハッキリと見えない・・・・・・・
大量の血を失ったことから、耳鳴りが起こり
何かを発する母の言葉さえ聞き取れなぃ・・・・
「ぉか、、、ぁ、、さん、、、、、、、、
おか、、、、、あ、、、、
さ、、、ん」
鈴は残った力の限り母の名を呼ぶ・・・・
言葉を発する度に、腹部の穴から、血液が吹き出る
それは、更に鈴の命を縮める事となる
だが、鈴は母を呼ぶことを辞めることはない
自分の為に2度も、母は命の危険に陥ったのである
母の為、その名を呼ぶことで、死にかけた母の意識をつなぎ止める
母にかざした、その手は、すでに魔法は発動していない
それでも、回復して欲しい、元気になって欲しいと
鈴は、諦めはしない
その強い意思をもって、手をかざす
だが、その強い意思を持ってしても
しだいに、全身の力は無くなり
次第に母を呼ぶ声も、小さくなり、力尽き
鈴は母の胸に倒れ込んだ・・・・・・・
そして、最後の力を振り絞って伝える
「しおん、、、いるから、、、だい、、じょ、、、、う、、、、ぶ」
それは、小さな 小さな とても小さな声であった
未だ感じる鼓動は、止めど無く大きくなってゆく
もう来る、紫音なら蘭さんを助けてくれる
この状況さえも、解決してくれる
きっと、私が目を覚ました時には
何もかも終わっている
紫音ならきっと・・・・・・・・
そして、鈴はその意識を失った・・・・
**************
(蘭さん・・・・・・
鈴まで・・・・・・
僕は一体・・・・何を・・・しているんだ
動け・・・・・動け・・・・・・
死ぬのは、どうでもいい・・・・
くそ、死ぬなら、2人を助けてから死ね、僕
動け俺・・・・死んでも動け・・・・
家族も助けれず、俺は何を・・・もう、失わないと誓ったはずだ
もう二度と家族を失わないと、あの時誓ったはずだ
死んでも守ると・・・・・・・
そう・・・・・・誓った?
もう二度と?
家族を?
・・・・・・・・・・・
いつ?
・・・・・・・・・・・
だれを?
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
リル・・・・?
だれだ?・・・・・
リル・・・・・家族・・・・マリア・・・・
そうか・・・・・
そうだった・・・・
俺は・・・・)
魂という形になっていた【しおん】
その魂に刻まれた、前世の【シオン】記憶と
この10年で新しく刻まれた、この世の三千風紫音が、合わさる
シオンが、新しく三千風紫音の人生を垣間見たのか?
三千風しおんが、シオンの、数百年とも千年とも言える人生を垣間見たのか?
それは、解らない、ただ・・・
今、シオンと、しおんが1つの新しい魂となって形作られようとしていた
「あぁ、そうだった、そうだったんだ」
[あぁ、そうだ、そうなんだ]
「僕は・・・」
[俺は・・・]
「そう、シオンだった・・」
[そう、しおんとなった・・]
刹那の時の中で、シオンの脳裏に現代に置いて、しおんが蓄積していた
知識が映し出される、科学が発達した現代の知識がだ
その大半が、魔法科学の知識であった
シオンは、あちらの世界、あの異世界で
魔法の知識は蓄えたものの科学という知識はない
シオンは、その科学に驚き歓喜し賞賛した
空を飛ぶ鉄の乗り物、海を潜る鉄の乗り物、月まで行ける乗り物まである
だが、シオンの興味は、元素・原子・分子と言う物に行き着いた
それは、シオンの魔法に対する考えを、一変するものであったが
それゆえに、その矛盾と、疑問にも行き着くのだが
それは、あの世界と、この世界は、理の在り方が違っているのだが
そんな事は今のシオンが知る訳がなかった
そうやって、徐々に、しおんの魂は、シオンの魂に同化していく
千年の時を刻んできたシオン魂が、幼い、しおんの魂を取り込んでいく
いや、元々同じ魂なのだ、どちらが元で、どちらが取り込まれる訳ではない
ただ、1つの魂の中で、2つの意思が同化していった
シオンは、見知らぬ知識に、歓喜していたため
ある大事な、幾つもの事柄を、忘れてもいた
その1つ
しおんの肉体は、動きを止めていた事だ
その肉体の最重要部分でもある、脳がその機能、動きを停止していたのだ
言うなれば、脳死の状況である
シオンの魂が1つと成ったとしても、その脳が死んでいたなら
その一生がベットの上で静かに暮らすこととなったであろう・・・・
そんな時いきなり、シオンの魂は紫音の身体に戻される
戻った瞬間その体は一度、波打つ用に身震いし
そして、シオンは、その体で、世界を感じ取り、最大の疑問がシオンを襲う
数十回?いや百回?は超えているのかもしれない
すでに、その回数は忘れたが
その数だけ、俺は同じ世界を繰り返してきた
それは常に、あの魔法が発達した世界であった
多少の時間や場所が違っていた時もあったが
常に同じ世界であった
だが、今回は、あの世界ではない
それも、シオンとしての記憶は無かったが
俺は、この世界で赤ちゃんとして生まれ
三千風紫音として、10年間生きてきたのだ
シオンの記憶の中で、初めての事であるが
それは、前回の生からの、続きでもあった
その前世では、数え切れないほど繰り返してきた時間の中で、初めての事が多すぎた
それは、リルとの出会いから始まり、マリアとも出会い、家族を持った
そして、最後には、勇者に負け、天使達に異世界へと投げ出されたのだ
その全てが、シオンが初めて体験する人生でもあった
そう考えると、異世界での転生も、納得がいくかも知れないと
思えるはずもなかった・・・・そこまで割り切れるシオンではなかったのだ
だが、頭に浮かぶ言葉は
「まぁ、いっか・・・」
であった
そう、今のシオンには、現状を受け入れるしか、選択肢は有りはしなかった
そう、赤ちゃんとして生まれ、約10歳の年齢でシオンの記憶は今蘇った
なら、その魂は、約20歳までと・・・
もしも、人間の寿命、約80数年を全うしても、また何処かで
あの世界に転生、いや、また、この世界で、この場所に
この状況化に戻ってくるのかもしれない
だが、それは解らない
なら、ぐだぐだ考えるのは、めんどくさい
今回はこの科学文明が発達した世界を桜花するのみであると
心で、クスリと笑い、口元が、ニヤける
その為にも、今は家族を、蘭と鈴を、助け3人で元気に、蘭の実家に帰るだけと
それが、できるだけの力は俺にはあると
そう、その気になれば
都市国家くらい簡単に滅ぼした
神さえも殺した力があるのだからと
シオンは、紫音の身体を動かし、立ち上がろうとして、ふらつき、足を滑らす
しおんにとって10年使い慣れた体ではあるが
シオンにとっては、初めての肉体であった・・
何度、同じ世界を繰り返そうとも、シオンの肉体は全て同じであった
だが、この世界での紫音の体は、母、蘭から生まれた肉体であった
そう、この体は、あの世界での、シオン肉体ではなかったのだ
一言で言うのならば【ひ弱】肉体に置ける強度が、そもそも違っていた
幼いからではない
魔物と言う存在が居た世界
人々は、否応がなしに、戦うことを運命付けられた
それは、人間の能力を遥かに超える魔物や、種族だらけである
種族間、単体では、人間は最弱の種族でもあると言えよう
それでも、この現実世界の人間と比べると
数段、強いとも言えるだろう
そもそも、その肉体の作りが根本的に違っていたのだ
基本、紫音は、引きこもりに近い人間でもあるが
同い年であり幼馴染である、鉄雄と言う悪ガキ
昔風にいうのなら、ガキ大将と毎日遊んでいるため
同年代の子供より、筋力的に多少は優ってはいたが
それでも、あの世界での10歳の紫音から比べれば
かなり【ひ弱】であった
シオンは、しおんのサポートも受け、どうにか立ち上がった
その視界には、蘭と鈴に走り寄る、井門圭人の姿があり
そして、井門は、2人のそばに近寄り
蘭の胸に倒れ込んだ鈴に手を差し伸べ用としていた
「さわるな、そして動くな」
[さわるな、そして動くな]
紫音とシオンは、井門の、その動きを止めた
今のシオンと紫音にとって、家族以外は全て敵であり
この、井門の思惑がどうであれ、敵である
それが、2人を助けようとしての行動であったとしてもだ
血まみれで倒れる、2人に、敵である井門をこれ以上近づかせない為
シオンと、しおんは、井門を止めるため、その力を使う
しおんは、その言葉にスキルを乗せ、発した
それは、しおんがシオンの魂を垣間見た時に、覚えた新しい使い方の1つ
それを現代の知識を合わせ、新しい技を生み出した
それは、スキル発動の標準を井門の頭蓋骨に合わせ
脳内で乱反射させ、大脳中枢神経に、シオンのスキル波を叩き込んだ
それにより、井門の意識と身体をつなぐ神経は破壊されたのだ
井門の身体は、脳から切り離され、動きをやめた
殺さなければ、それでいいと、頭に有るしおん
その為、脳を壊さない程度に、スキルを加減してはいるが
神経を破壊する事に躊躇はなかった
これ以降、井門圭人が、全身麻痺となって
病院のベットの上で、その生涯を贈ろうとも
しおんにとって、どうでもいい事であった
そして、その技は、脳内の仕組みを完全に理解できてない
シオンには出来ない使い方である
シオンは、その言葉に覇気を載せる
魔法で瞬殺しても良かったのだが
しおんの体内魔力量は少なく
シオンが魔法を使うのには、少なすぎたのだ
また、異世界の魔法が、この世界で、通じるか
どれだけの威力が出るか解らない為
蘭と鈴を傷つけない為にも使用を留まった
また、シオンの無限とも言える
その魔の根源となる【魔核】は、シオンの魂に刻まれており
それを起動させ、使用しても良かったが
シオンと、しおんが、完全に1つの魂と融合していないため
もしか、何かあったらと、その使用を控えたのだ
そのため、魔力を消費しない覇気を言葉にのせ
井門の動きを、その根源でもある魂から動きを止めさせた
それでも、人間を相手に使うのだ
その開放した覇気は、微々たるものであったが
覇気を使ったことにより、その体は覇気を纏い
自身が放つ覇気によって
目・口・耳から、血が吹き出す
【ひ弱】である、紫音の体は
自身の微々たる覇気にも耐えれなかったのだ
だが、次の瞬間には、回復してゆく
そして、紫音は動かない
その瞳に何かを写していた
何かに、驚愕したまま、、、、、
作者のモチベーションのため(いや、お前やる気ないだろ!!とか、言わない)
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