2話 古き記憶
ある車の後を付けるように浮遊している少女がいる。
それは、15cm程の人の形
裸であるがため、女性を模した生き物?だとわかるが
いや、それすらも定かではない。
それは、その本人すら
自分の存在が何かなのさえ分からずにいる
そして、その答えを教えてくれる人物はいない
当たり前である、その存在は
この世界に来てから約10年間、誰にも認識されていない
それもその筈
人間のいるこの世界にあって
別の次元から、この親子を見ているのだから。
誰とも会話することなく
誰とも意思疎通する事なく
10年間ただ見守っていたのだ
生きる為に、何も必要としない
肉体の有無すら分からない、その身体では
食べ物も、空気すら必要としない、その精神体の名は
【リトル・L・アンシャン】
前の世界では、リルと呼ばれていた、ハーフエルフである。
そして、リルは人間の認識できない
別の次元から、常に見守っていた
彼女の目視していた、赤いスポーツカーに乗る、この親子を
いやそうではない、紫音と呼ばれている
もうすぐ10歳を迎える男の子をである
そう、その男の子【三千風紫音】その前世は
リルの魂の恩人であり、リルの家族であり、リルの最愛の人物であった
【シオン】他ならない
だが、三千風紫音は前世での記憶は失われていた。
神のイタズラか
世界の気まぐれか
前世のシオンの技の成す所か分からないが
シオンの魂に引きずられ、この世界に付いて来た、リルではあるが
今はこの世界の次元の狭間に、ハマっている状態であった
次元間の知識など、有りはしないリルにとって
すでに、自分は死に幽霊に近い存在だと認識していた。
「あぁ~~楽しそうなシオン様、笑い顔のなんと、可愛いことか
あの笑顔を、いつか私に向けてほしい、いや、あってはならない事です
シオン様に何があっても、私はただ、見守るだけと決めたはず・・・・」
誰も聞いてない、ただの独り言である
10年という長い月日
誰にも相手にされず、その存在すら認識されない
そう、最愛の相手が目の前に居るのに
自分の存在すら気づいてもらえないのだ
触れる事も温もりを感じることも出来ない
そんな状況、普通の人間(知的生命体)の精神では耐えられないであろう
どんな人間でも、精神が壊れるか、死を選ぶかであろう。
大昔、ある戦争で逃げ出した兵隊が
10年に渡って無人島で1人で暮らしたという話がある
それは、助け出されるまで、戦争が続いていたと思っていたらしいが
これは、周りに誰もいない状態で孤独ではあるが
生きるために日々何かをしていたのだ
することさえあれば、人間耐えられるものである
事実、今も昔も、数年なら
誰にも遭わず、何も気にせず1人で生きている人間は実在する
だが、周りに人がいて、自分が認識されないと成ると話はちがってくるだろう。
生きる為、何かをする事はなく
何をしても世界と愛する者に無視され続け
自分の瞳で見える手足では
何も掴める事はなく、何も感じない。
それでも
リルは10年間変わらず、シオンを見守り続けている
そう、この世界に干渉できない
リルにとって、シオンが死ぬような事があっても
手助けが出来ない
そして、見守るしかできないのだから。
「シオン様も、もう10歳ですか・・・・・・
生まれて10年ですか、シオン様にとって節目の時
この世界では大丈夫でしょうか・・・・・・」
またも独り言である
いや、リルにとって、聞く相手がいなくても
言葉が話せる事が
嬉しく楽しくで、ついつい独り言を口ずさんでしまうのである
「10年節目、そしてシオン様の死
今シオン様が別の世界、並行世界にいってしまわれると
私は、この世界に取り残されたまま・・・・・・・
死ぬこともなく・・・・・・
消滅することもなく・・・・・・
シオン様のいない世界に・・・・・」
何かが頬を伝い流れ落ちてゆく感覚だけが、リルの脳裏に焼きつけられる
だが・・・・・そこには物体は存在しない
それは脳に刻まれた涙の記憶である。
それは、いつか来るであろう事柄
それを考えると、さすがのリルでさえ
心が壊れそうなるが
今はシオンの可愛らしい笑顔を見つめ心を引き締める。
そう・・・・・10年の節目の時
この世界に来る前
あの世界での最後の出来事を思い出す・・・・・・・。
そこは、科学文明が、発達しなかった世界の1つ
科学より魔法が発達した魔法文明世界である
その膨大な魔力によって生み出される生物は魔物と呼ばれていた
そう、科学文明が発達した現代から見れば
そこは小説にあるファンタジーの世界である。
それは、シオンが、この世界(前世)で勇者と戦い敗れ、消滅した日の前日の夜
私と、マリアが、シオン様の部屋に呼ばれ時の事。
窓際の1人がけのソファーに座るのは
自称もうすぐ20歳、身長は180cmほど
体格はやせてはいるが服の下には密度の濃い筋肉があり
男性にしては少し長めのサラサラの髪
その髪は見た目は黒色だが日光に当たれば深い紫色に反射する
そんな、切れ長の瞳をもつ美青年の人間、シオンである
そして、机を囲むように、ソファーに座るのは
見た目は人間、自称20歳、身長は170cmほど、
ミニスカート、大きな胸を強調したメイド服を着込み
金髪より銀髪に近い長い髪、少しタレ目な美女、マリアである
そして机をはさんで、マリアの正面に座るのが
ハーフエルフにして年齢500歳以上、身長150cmほど
足元まであるロングスカート、長袖、肌の露出を極限まで抑えたメイド服を着込み
右目部分だけ穴があいた白い仮面を被る
薄紫の長い髪を携える、女性、リル
3人がソファーに座ったところで、シオンが話し出す
シオン「わるいな、忙しいところ呼びだして」
リル『シオン様、おきずかいなく』
マリア「ほんとっす、シオンさん反省してくださいっすよ」
シ『マリア!』
リルは、仮面の奥から、マリアを睨みつける
マ「お嬢、冗談っすよ、冗談っす」
リ『・・・・最後まで、それで通しますか・・・』
マ「フッフッフ それでこそ、あたいってもんです」
ドヤ顔で、言い放つマリアであった
リルは、喉が潰れており声が出ないが
その代わり範囲念話で会話をする
声が届く範囲に念話を送っているのだ
これにより、念話ができる人物であるなら、普通に会話ができるのだ
シ「ああ、そのほうが、マリアっぽい」
笑いながら、話すシオン
シ「でだ、まぁ、ちょこっと真面目な話をしようかと2人を呼んだんだ
俺のキャラじゃないから、本当は嫌なんだけどな」
マ「そうっすよ、シオンさんは、適当でこそ、シオンさんなんすから」
シ「良い事いうな~さすがマリア」
マ「いやぁ~~~てれるっす」
リ『2人共・・・・・・』
シ「悪い悪い、マリアと話すと話が進まん」
マ「あたいっすか?あたいが悪いんすか!」
シ「全部マリアが悪いんだろ?」
マ「何をおっしゃいます、シオンさん、あたいが悪いのは頭だけっすよ」
シ「知ってる!」
そして、無駄に、シオンとマリアは大笑いする
パコーーーーーーーーン パコーーーーーーーーン
どこから出したのか、リルは2人の頭を、丸めた紙で叩いた
そして何事も無かったのように
真剣な表情でシオンが話し出す
シ「それでだ、勇者が明日此処に来る
そして計画どうり、俺は勇者に殺されるわけだが
この世の未練と言うかな、ちと照れるが・・・
俺の生きてきた中で、本当の家族だと思ったのは、お前たち2人だけだ」
リ『・・・・・・』
マ「シオンさん、まだ20歳さいっしょ?
あたいと逢って9年ほどっすよ」
シ「あぁ、だからこそな・・・・話しとこうと思ってな・・・・・・」
リルとマリアは、シオンの言おうとする事が、分からずにいた
シ「2人は、俺の知識や
無限とも思える魔力を変だと思ったことはないか?」
リ『人間にしては、異常ですね』
マ「そうっすね
才能だけでは説明つかないっすね
生まれながらの魔王とかっすか?」
シ「その事を話そうかと思って、2人を呼んだわけだ
これは、信じる信じないは、まぁどっちでも良いが
今回の計画で2人は俺が勇者に負けて死なないと思っているだろう?
そして、俺が死んだふりをして、2人の前から姿を消すとも思っているだろう?」
リ『はい、どこへ行こうと探し出します』
マ「あたいも、お嬢と一緒すね、すでに包囲網は敷いてるっすよ」
シ「だろうな、だからこそ、本当の事を言うつもりになったんだ」
二人の答えに、すこし笑い
シ「俺はな、だいたい10歳から20歳までの、10年間を、何十回と繰り返してるんだ」
シオンは2人を見て
シ「分からないって感じか、そうだな俺の一番古い記憶はな
その時の俺は子供だった、たぶん10歳位だろう
ある草原で目覚めたんだ、自分の名前も分からなかった
たぶんその時記憶喪失になったんだと思う
だがな、そこが繰り返しの起点となるんだ
その時から約10年立つ度に、俺は死ぬ
それは事故であったり、病気であったり、何者かに殺されたりとだ
自殺したこともあったが、それでも関係なしに
10歳の子供の姿で、あの草原で目覚めるわけだ
まぁ、何十回と繰り返してると、もう生きる事がめんどくさくてな
まぁ、それでも最初以降は記憶は全て残ってるわけだ
だから魔法の勉強をしたこともあるし、知識も蓄えたんだ
っとここまで、大体わかったか?」
リ『・・・・・・』
マ「それは、ずっと同じ世界っすか?」
シ「あぁこの世界だ、この世界の無限とある平行世界をずっと繰り返してるんだ
さっき何十回と言ったが、覚えて無いだけで百回を超えているかもしれない
だけど、これは言っとく、お前たち2人と出会ったのは今回が初めてだ
だからこそ、リル、マリア、2人はここにいるんだ
そして今は掛け替えのない家族だと信じてる・・・・・・・・
次の世界でも、お前達が、この世界と同じ様な目にあっていれば
確実に、また助けるだろう、いや、助けに行く
だが、きっと今の様な家族にはなれない、それは2人と同じ人物かもしれないが
お前たちではないからな」
リ『・・・・・・』
マ「・・・・・・」
シ「おっと、ちょこっと、話がしみったれてきたか・・・
そんな訳で俺は明日確実に死ぬ
俺的には、また10歳に戻って、また1人で生きていくだけだが
残ったお前達は、好きにするといい、計画どうり、ここに残ってもいいし
ここを出て国を世界を見て回るものいい
色々な出逢いの中、好きな奴ができたなら結婚してもいい
ただな、自由に生きて幸せになって欲しいんだ
その事が言いたかったんだ」
何も言わないマリア
リルは・・・思い悩む
シオン様の言ったことが本当なら、明日確実に・・・・
シオン様の居ない世界に私の生きる意味はあるのだろうか
そして、シオン様もマリアも、分かっているはずなのだ
私の寿命もそう長く無いことを
すでに回復魔法や、自身の治癒能力を持ってしても
ボロボロになった身体が保(も)たない事を
いや、よく今まで保ったと感謝するべきか・・・
できれば死す時もシオン様と共に有りたい・・・・・・・
部屋の空気が重たくなり、聞こえるは、外で吹く風のおとだけであった
いきなり
シ「まぁ明日俺は確実に死ぬ、後の事は任した好きにしろ」
そして、雰囲気を変えようとマリアが、頑張る
マ「うわ、丸投げっすか、最後までひどいっす」
シ「おいおい、お前達や、他の奴らも、10年は遊んで暮らせるだけの
お金は残してるだろ、それで、ひどいは無いだろ
俺は10歳文無しで、人生やり直すんだぞ」
マ「よく言うっすよ
あたい達が居ないからって
ハーレムでも築くつもりっすか」
「は!!!
もう何度も作ったわ!!!」
バサ ダン ドン タッタッタッタッタ
リルが突然立ち上がり部屋を出て行った
シ「すまんな、マリア、リルを頼む」
マ「お嬢の事はお任せっすよ、で、マジで死ぬの?」
シ「おおマジだ!」
そして、2人は笑い出す、その笑い声はリルにも聞こえていた
その夜・・・・
リルはすでにベットで布団に潜り込んでいた
コンコン
「お嬢起きてるっすか?」
『マリア?どうしたの』
マリアは、リルが起きている事を確認すると、リルの部屋の扉を開けて入ってきた
「一緒に寝るっすよ」
そう言い放つと、リルのベットに潜り込む
『マリア!』
「一緒に寝るのは久々っすね、あれ?シオンさんの方が、よかったすか?」
『あたりまえです!』
布団の中で、リルとマリアは互いの背中合わせて、寝ていた
しばしの無言が続き
「お嬢、あたいも柄に無いことをいうっすよ」
『なに?』
「さっきのシオンさんの話で、確信したっすよ、今回の計画は全て
お嬢とあたいの為だと」
『うん、たぶんそうでしょうね』
そう、2人がこの計画を知ったのは1年ほど前だが
シオンはそれ以前から、その計画を実行していたのだ
そしてその計画はシオンが、倒される死ぬ事を前提で作られていた
全ては、その後残された、2人の為であった事に
リルとマリアは気がついたのだ
「それで・・・あの朴念仁は、わかってないんすよ」
『なにを?』
「あたい達の、望みは何時までもシオン様と共にって事を」
マリアの言葉に、拳を握り、その思いを口(念話)にする
『命尽きようともシオン様と共に・・・・』
「で、計画をぶっ壊そうと思うっす」
『え?』
「簡単な事っす、勇者がシオンさんに止めを刺そうとする時に
助けにはいるっす、用は命乞いっすね
あたいは、さっきのシオンさんの話を信じて無い訳じゃないっすが
生き残れる可能性があるなら、なんでもやるっすよ」
そう、シオン様が死ぬわけがない、殺させない
この命に変えてもシオン様は殺させない
リルの全身に力がみなぎる
『ありがとうマリア』
「ひっひっひ、惚れ直しましたっすか?」
小さな声(念話)で
『マリア大好き』
「てれるっす、明日はシオンさんに、ギャフンと言わすっすよ」
そして2人は眠りにつく
そして運命の日である
シオンは勇者PTと対峙した
PTリーダーの女戦士と、侍、神官、魔法使い、弓使いと、短剣を持つ男
そして、リルより背の低い【蒼き勇者】と呼ばれる少女
言葉数少なく、とある国の軍旗の模様の入った仮面を被っていた
そして、7人と1人の壮絶な戦いが始まった
その戦いを見守る、おおくの人物の中に、リルとマリアは居た
初めは均衡していた戦いも、徐々に押されるシオン
30分も経たない間に、蒼き勇者の一撃が決め手となり
シオンは深手を負うこととなる
シオンは膝を屈し、その場に蹲(うずくま)る
全てはシオンの計画どうりであった
シオンが動けない事を確認した、勇者と神官が、ある祈りを初める
それに呼応したように、大空に巨大な魔法陣が出現して、6人の天使が舞い降りたのだ
6人の天使の1人とシオンが会話をしていた様子を
遠くで見守るリルは見ていたが、その内容はリルには聞こえない
そして6人の天使が魔法を展開する
それは正三角形で作られた、正8面体を作り出す
遠くから見るそれは、菱形をしており、その高さは、シオンの倍はあるだろう
そして、その中心に居るのは無抵抗のシオンであった
天使達が魔法陣に向けて力を加えると、シオンは苦しみ出す・・・・
そんな一部始終を見ていたリル
やはり、シオン様の死は変えられないと
胸の前で両手を組み、何かに祈るように、リルは涙する
そんな中、背中を誰かに押され、一歩前に踏み出す
振り返ると、そこには、瞳に涙を溜めたマリアの姿があった
そして、マリアはそっと、リルに言葉をかける
「お嬢、あたい達の望みは・・・・」
『シオン様と共に』
そう答えると、リルの瞳に力が宿る
それを見たマリアは
「後の事は、任せるっす、いってらっしゃいっす」
そこには、リルに別れを告げるマリアの、笑顔があった
『行ってきます』
力強く答え
魔法を受け苦しむシオンに向き直すリル
そして、リルのボロボロの身体は、最後の力を振り絞り
シオンに向けて走り出す
その姿を見送るマリアの頬に雫が伝う、一度流れ出したその雫は
止まる事を忘れ、涙となり止めど無くながれる
「お嬢、シオンさんを頼みます・・・・」
リルは、シオンに向けて走る、昨夜マリアと話した言葉
【命尽きようとも、シオン様と共に】その言葉を胸に
『シオンさまぁーーーー』
「リル、くるなぁーーーーーーーー」
シオンの叫ぶ声が聴こえてくるが
走る勢いに任せ、シオンが居る、正8面体の中に飛び込む
天使が6人がその力を注ぎ、構成される奇跡の立体魔法陣
その中は高密度天力と高密度魔力が反発しあう
その立体魔法陣の中にある全ての存在を圧縮し分解する
そして、その反発しあった高密度の力で
世界の理を歪め、時空の歪を作り出し
その歪みから立体魔法陣の全ての力を別の時空へと飛ばす魔法
6人の天使の力の融合により、成せる技
それは神の御技、奇跡の所業であった
一度魔法に掛かってしまえば、脱出不可能なその魔法
魔王ですら、数分しか耐えれないだろう
シオンはその姿を未だ維持できていた
それは、魔王も超えるとも言える、シオンの魔力だからである
リルは、そんな、立体魔法陣に飛び込む
すでに、私の身体はボロボロで、残された時間は少ないだろう
シオン様が、あそこから救い出してくれた
マリアと出逢い、心をもらった
そして多くの人々と逢い、優しさをもらった
人を愛する事を知って、愛する人を見つけた今
愛する人の居ない世界で、その残り短い時間を過ごす事は
あそこに居た、ただ生かされていた悠久の時を生きるより苦痛だと
いっそ死ぬならシオン様と共に、その腕の中でと・・・・
その身体は立体魔法に触れると、吸い込まれた
その瞬間から手足の指先から分解されてゆく
シオンに向けて手を伸ばすも
リルの視界には、伸ばした腕は、すでに半分以上存在せず
最愛の人に届かず、リルの瞳に涙が浮かぶ
そんな、リルの身体は、シオンに引き寄せられ、抱きしめられた
すでに、リルの身体は、両手両足無く、意識は段々と薄れてゆくが
シオンの胸に抱きしめられた事で、薄れゆく意識が少しもどる
それは、シオンの胸の鼓動、温もりを感じたからにほかならない
『命尽きようとも、シオン様と共に・・・愛しています・・・・』
薄れゆく意識を奮い起こし、手も足も、すでに無く
シオンに抱きつくことさえ許されない、そんなリルに出来ることは
想いを伝えることしか出来なかった
そして、その体を抱きしめるシオンの力が、より強くなったことを感じ取る
より強くなる、シオンの、鼓動と温もり・・・・・・・・
何かを叫んではいたが、すでにリルの聴覚では聞き取れなかった
視界には、愛する男の横顔
その視界の端には、何かを叫ぶ、蒼き勇者と呼ばれていた少女
そして、視力が落ちてきても分かるマリアが笑顔で立っていた姿が・・
そして、リルは、愛する男の胸の中で死ねることに幸せを感じながら
・・・シオンの腕の中で・・・・・・
・・・・完全に意識を失くした・・・
その後、何が有ったのかは、リルは知る由がない・・・・・
その身体に・・・・が・・・・を・・・・したことさえも・・・・・・




