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12話 その女性の全ては、お風呂から生まれ変わる。(改)




「うぃわぁあぁ~~~~~~~~」



 玄関で、大きく背伸びをする紫音の姿がある

その隣には空中に浮かんでいいる、15cm程のメイド服の少女がいる

紫音とリルは森での戦闘を終え家に戻ってきた。


 紫音は未だ

裸にロングコートという姿

それでも靴だけは履いていたのだ

空間転移で家にもどるが

リルに言って出現場所は玄関に指定していしていた

家を汚したら、鈴に怒られる上

家の掃除は紫音の管轄

汚せば自分で掃除するハメとなる


紫音は、コートのホコリを落とし靴を脱ぎながら、リルに指示を出す。


「リル、悪いがレンの所に報告に行ってくれ

 俺も服着て準備するから

 30分後位に連絡いれるから迎えにきてくれ」


「わかりました

 私も、あちらに所要がありますので、行ってまいります

 準備できましたら連絡をください

 それでは、お先にしつれいします。」



 そう言い残し、リルは小さな光になり、消えてゆくのを見送り

違和感を感じる、静かな我が家に・・・


「そういや、だれもいないんだったな」


 三千風 (みちかぜ)家は、小さな一軒家で

両親と紫音、鈴の4人家族である。


 父は、鈴が合宿で泊りだからと

鈴大好き親父は友達とマージャン合宿とか言って明日まで帰ってこない

というか、普段からあまり家に帰らない父親の顔など忘れた!


 蘭(母親)さんは、魔法科学者であり

月の大半は会社の研究所に泊まり込んでいる

今日も鈴と父が居ないなら帰っても仕方が無いと帰ってこない

と言う訳ではない、ただ自分の仕事(研究)が楽しくて帰ってこないだけである

まぁ、俺としては、父より家に帰らない母親など要らない

あの化物が帰ると俺が無駄に叱られる!


妹の鈴は、言うまでもない合宿である。


 誰も居ないから、淋しいとは思わない

あの世界で、孤独だったこともある

10年間、山の中で誰にも合わなかった事もある

それを思えば、今は、仲がいいとは言わないが家族もいる

それに、リーゼントの大工バカや

俺の、オアシスくるみちゃん・・・

どこに寂しさがある!!


 これからの事を考えるだけで笑えてくるさ。


 いや【くるみ】が居るだけで

世界はバラ色さ!!


 そんな中、自分の部屋に行こうとして階段を上がり

2階まで上がって思い出す

そういえば、風呂に入ろうとして強制召喚されたんだったと。


 山の中を走り回って、ホコリだらけだし

風呂に先はいろうかと、階段を降り風呂場に向かう。


 洗面所に入ると電気は点いていた

当然と言えば、当然。


 召喚された時には

洗面所も風呂場も電気を点けていたのだから

洗面所で服を脱ごうにも、着ているのはコートのみ、そのコートを脱ぎ

洗面所の棚から、タオルを出して肩に掛け

入口の横引戸をスライドさせ風呂場に入る


「ん? だれだ?」


 風呂の洗い場に、見慣れない黒い塊が隅に居座っている

すこし、ビックリして良く見ると

丸裸の見知らぬ褐色肌の女性が

背中を、こちらに向け膝を抱えて

小さく丸まっているではないか!



 俺の言葉に反応し

女性は頭だけ振り向き

ちょうど同じ高さだった俺の股間を確認し

そこから視線を上げ俺と目が合うと


「だ、誰とは、お主こそ、わ、我を忘れたというのかえ?」


 透き通る声だが

緊張しているのか少し高めな声ではあるが・・・・どこかで聞いたような?


「だからだ誰だ?」


「さ・先程助けられた、魔術師じゃ!」


「おーーーーーで、何してんの?」


「先程、小さな妖精が

 ここで湯浴びをしろと、連れてこられたのじゃが

 お湯など無いでありんす!

 それより、あれは本当に妖精か?

 莫大な力を感じたでありんすが!」


「あぁ、アレか!

 今世紀最大のビッチ妖精だ!

 まぁ、それより

 こっちの世界では風呂入ったことないのか?」


「も・・この世界にきやんして

 数日でありんすが・・・

 1回頭から水をかけられた程度じゃ、あの豚どもめ」


「そっかぁぁ、、、」


 そういって、俺は前に数歩すすみ、手を伸ばす


「な・な・な・何をするきでありやんすか?!」


さっきより、身体を小さく丸めて

視線だけを俺にむけ・・睨んでやがる


・・・ああ・・・そうか


「はずかしいのか?」


「あ・あ・あたりまえじゃろ!

 だいたい、女性の湯浴びの途中に入ってくる

 お主が悪いのではないのか!」


「だが、俺は気にしない!!

 そして、お前も気にするな、ワッハッハッハ」


「気にするわ!

 今すぐ出て行け!」


「そう言うな、お前すこし臭うぞ、汚いし」


「うるさい!うるさい!うるさい!

 魔術で、お湯出そうとした所でありんしたのに

 そこに、お主が来たのじゃろうが!

 よもや、こちらに入って来るとは思わなんだわ!」


「ふん!

 ここは俺の家だ!

 何に遠慮することがある!

 俺は、俺が風呂に入りたい時に、風呂にはいる!!!

 それにな、魔術でお湯なんて出さなくても

 ちょこっと見てな

 ここをこうやって回すと

 あぁ~~ら不思議! お湯が出ますよ、奥様」


シャワーヘッドを取り、ハンドル回しお湯をだしたのである

暖かいお湯とは別に・・・

異世界人には、通用しないネタで

湯気で温まってきた浴室を寒くする。


「おおおお

 これはどんな魔術でありんすか?

 どんな力も使った形跡がないではありやせんか!」


「これは、化学だ

 詳しくは後で教えてやってもいいが

 じゃまだ、おまえは・・」


 俺は小さく縮こまった黒い塊を持ち上げ・・(けっこう思いな・・)

湯船に投げ込んだ


行き成りの事に、黒い塊はなすすべもなく湯船に頭をぶつけ

その黒い尻を露にする。


 思春期の俺様だが

いまさら尻ごときに・・・心踊らされる訳・・・だ・・・・・が

そんな事より、今はこの、ごわごわした髪だ!

湯船に頭をぶつけ、フラフラしている黒い人に

手持ちのタオルをほおると


「恥ずかしいなら

 とりあえずそれで隠しとけ

 それに、そんなに背中を曲げてると猫背になるぞ!」


 黒い女は、受け取った、タオルを縦に持ち

タオルと両手で胸と大事な所を隠す。


 ただ、俺は、蘭さんの口癖が移ったかの様な言動に

一回ため息を落とす・・・

(猫背って・・・・)

そして、お風呂用の椅子を置き腰を下ろし

横目で黒い人を観察する・・・

これは、アレだエロい目で見てる訳ではない

異世界の人が珍しく・・・いや、俺、元、異世界人・・・まぁいいや


 未だ湯船の隅で丸くなった女性は小刻みにふるえていた

それはそうだ、異世界に召喚され

先程は死を覚悟し

俺に殺してくれと言ったくらいなのだ


もし、俺が今、異世界に召喚されたなら

気が狂って、美女という美女を犯しているだろう!

だって、そこには、蘭さんも、鈴も、リルも、マリアも居ないしな!

嬉しくて気が狂うだろう!!

うん! うん!

分かるぞ、黒い人!

これから広がる、楽しい未来に喜びで打ち震えているんだろ!


「な・な・なに見ている!

 おかしな真似をしてみなはれ

 ここら一帯を吹き飛ばすぞえ!」


 とりあえず歓喜する姿を見られたくない黒い人は恥ずかしいのだろう

前かがみになって膝を抱え、ツンデレを披露している!


 強気だが、なかなか楽しそうな黒い人の姿を

横から覗き込むように


「おかしな真似って、どんな事だ?

 こんな・・・」


 その体に笑いながら手を向け聞いて見たのはいいが


「お主を殺して、我も死ぬ!!」


怖え・・・本気で殺気飛ばしやがる・・・

両手を上げ、正面にある鏡に向き直りながら


「俺は正真正銘の変態だが

 嫌がる女を手籠めにするほど飢えてねえし

 落ちぶれてもねぇよ」


 風呂場の壁に備え付けられたリモコンに手を伸ばし

設定温度を少し下げ浴槽にお湯を張っていく


 行き成りお湯が流れ込む湯船に居た黒い人は

驚いて悲鳴を上げるが

俺はシャワーを頭にかけながら笑う・・・


「ゲホゲホゲホ・・・・・

 ッペ!!!」


 笑いすぎでシャンプーの泡が口に・・・

その泡まみれの俺の姿をみた黒い人も

クスクスと、笑い出した訳だが

まぁ、緊張は取れたみたいだ

それもそのはず


 まぁ、徐々にリラックスしてくるのは当たり前である

俺の、生まれ持ったスキル波 (なみ)と呼ばれる振動

戦闘で使用した、木刀と桜のナックルは

この波を利用し刻印魔法陣として超振動を作ったに過ぎない


自分の頭を洗いながら、この浴室に、10Hzの弱い電波を発生させ、緊張を解く

この世界に来て知ったことだが

これは『a波』と言って、リラクゼーション効果があるのだ

続ける事により脳内で、エンドルフィンが作られていくのである

そして、ソレとは別に1秒に1回体感できないほどの弱い刺激を脳に与える

これにより脳は刺激を受けて、ドーパミンが分泌される

声にもスキルを載せている、発音に揺らぎをつくる

これにより耳からもリラックス効果を与えることもできるのだ

この重複するスキルの効果により

ある種の麻薬効果と催眠効果を自力で作り出していく!


こうなれば後は俺様の意のままだ

あの世界では、この技を使って、ハーレムを築いたこともある

今では、この世界の科学文明で勉強し

前の数倍は確実に使いこなしている

それでも、こっちの世界では試す機会は少なかったが

そう、自信満々に自慢するが!


効果抜群だ!!


 黒い人が居る湯船に、お湯を貯めながら

俺はシャワーでシャンプーを流し

コンデショナーを手に取る。


 そして、徐々に湯船に溜まるお湯を興味深々に眺める黒い人に声を掛ける

そう、先ほどから気になってるアレ・・・・

いや、でかいオッパイではない

触り心地よさそうな尻でもない

黒い人の、ストレートの黒く長い髪から、はみ出ている、この女性の耳である


「もしかして、お前ダークエルフか?」


 今までリラックスしていただろう黒い人の雰囲気が一変し

真剣な雰囲気を纏い真剣な顔で


「我は純血種のダークエルフでありんす

 それより、お前お前うるさい」


「おぉぅ、やっぱダークエルフか

 そうそう

 俺は三千風紫音 (みちかぜしおん)

 シオンでいいぜ、お前は?

 名前知らなきゃ呼べないな」


「お、お主は、正気かへ?

 最高位の魔術師に真名を教えるなんて

 呪い殺されても文句いえぬ事ぞ」


「はぁ? お前はしないんだろ

 それに、この世界では、当たり前の事だしな

 べつに名無しでもいいぜ

 それなら「黒女 (くろおんな)」って呼ぶし。」


 ビックリして、目を見開き睨む様に俺に視線を向ける黒女・・・

まぁ、俺は他所を向きながら目を閉じて髪を洗っている訳で見えやしない

ただ、俺のスキルでダークエルフの心音を聞きながら

口元をニヤニヤしながら答える。


「我は・・・・

 ク・・【クァトゥオル・ペタルム・フレイア】・・・

 フレイア様と呼びいなはれ」


 女性は、名乗った瞬間

スキルで感じていたダークエルフの心臓の鼓動が跳ね上がる


「それは真名か?」


「わるいかえ?

 お主は、我の命を助けてくれたでありんす・・・

 それくらいの礼儀はありんすよ」


 高位の魔術師が真名を告げる事は

 命を差し出すと同じ意味

 その事に心臓の鼓動は跳ね上がったままである


「そうか、クァトゥオル・・古代ラテンで4か、ペタルムは花びらか?

 4つの花びら? 四葉のクローバー? 幸運? フォーチュン?

 由来はどこになる?・・・・

 それに、フレイアは神名か、ならフレイアはそのままでいいか

 うん、なら今日から【フォー・フレイア】と名乗れ、いいか?」


「え?フォー?」


「おぅ、クァトゥオルって言葉は、こっちでは

 数字の【4 (よん)】とか【Four (フォー)】とか言うんだよ

 だからフォー・フレイヤ

 俺の【シオン】の【シ】も、元は4って言葉だしな

 同じ意味を持つ名前を持つ仲間だ

 後、ミドルネームも出さないほうがいいだろうしな」


 仲間と言う言葉に安心したのか

真名を告げても何もしない俺を信用したのか

徐々に心拍数が落ち着いてきた。


「うん・・・・同じ数字・・・仲間・・・・・」


 フォーは、ぶつぶつ言いなが

その胸に寄せた両手を合わせ

この世界に来て初めて心から休まるような安心感を感じていた。


「じゃぁ、フォー、少し聞いていいか?」


「すでに、呼び捨てでありんすか?」


「ダメか?まぁダメでも呼ぶけどな」


「それなら、しかたないでありんす、フォーと呼ぶことを許すでありんす」


 フォーは恥ずかしそうに、照れながら偉そうに答えるのだった。


「ありがとさん

 んで、その喋りはどこで覚えたんだ?」


「我の世界で伝わってる異世界語であるが?

 大昔、召喚とかで、呼び出された御仁が使っていた言葉とかで

 書物にあったのを、伝え覚えていただけでありんすが?

 おかしいのかえ?」


「おかしいと言うか?色んな言葉がまざってんだよな?」


「書物といっても数十冊ありやんすからの~

 我には、何がおかしいかわからんのじゃ」


「かまわんよ、話事態は通じてるし

 その方がおもしれぇし!」


「どういう意味でじゃ? それは!?」


「きにしなさんな、盟約はどうなった?」


「それは、よくわからんのじゃ

 この世界に召喚された時

 何か装備品付けられたのじゃが

 あの小さき妖精が

 それを全部はずしてな、もう大丈夫と言って

 ここに湯浴びといって

 連れてこられたでありんす」


「そうか、それなら大丈夫なんだろうよ

 あの小さいのは、リルって言う

 まぁ後で自己紹介すればいさ

 それに、これからの事で

 他にも合わせたい人間が何人かいるしな」


 フォーは、先ほどの小さい存在を思い出していたし

紫音は、リルと初めて会った時を思い出し


 あっと、そういえば

リルも始めて会った時は、あそこから拐ってきて

汚なかったから風呂で洗ってやったなと

昔の事を思い出しながら

コンデショナーまで終わらした。


 そして

紫音はその股間に有る物を隠そうともせず

フォーに向き


「よし、こっちに来い」


「○■▼◇∀∈--------」


 聞き取れない叫びが風呂場にエコーが掛かって響く


「うるせえ!」


そう言って、軽く立ち上がり浴槽に乗り出しフォーの頭を軽く押さえる

頭を押さえられたフォーの頭は固定され

紫音が軽く立ち上がった為フォーの目の前には紫音に股間が・・・

それに浴槽に居るフォーの逃げ場は無い!


「お主は何を、す・・・するきなんじゃ」


「何をされたい?」


 ニコリと微笑みながら言うと

タオルと両手で胸と大事な所を隠しながら

フォーは瞳を左右に泳がせながら言葉に詰まる

そんなフォーを楽しみながら

逆の手をフォーの肩に伸ばし、がっしりと掴むと

フォーを体ごと引き寄せ・・・・


 浴槽の中でこちらを背を向けるように座らせた

キョトンとするフォーの髪を手繰り寄せていくと


「な・・・何をする気じゃ!」と

俺の手を振り払うように頭と肩を震わせ

後ろからは見えない、その豊満な胸を隠す



「うっさいな、髪洗うから動くな

 大体、ダークエルフでその容姿なら

 100年以上生きてんだろ

 なら、処女じゃあるまいし

 そんなに恥ずかしがるなよ

 だいたい、俺は始めて会った時からずっと裸だ!」


 笑いながら、フォーの頭を掴むと、少し後ろに倒し

顔に水が掛からないようにシャワーを髪に当てていくが

帰ってきた言葉は俺を驚かせる


「しょ・・処女 (バージン)じゃ

 200歳超えて処女で悪いかえ!」


それは、フォーの誠意いっぱいの抵抗であった


「マジか!

 200歳? でも、俺には関係ないし」(だって魂は1000歳だし!)


 そういって、フォー髪に、コンデショナーをかける

シャンプーしようと思ったんだが

思いのほか髪が痛んで指が通らない

油分が少ないのだろう

この状態の髪にシャンプーを使うと泡立たないし

油分を分解するシャンプーでは髪が痛んでしまう

先にコンデショナーで油分を与えながら

髪全体をほぐしていく

その後は、普通にシャンプー・コンデショナー・トリートメントと

俺のひゃ男性用なので、妹の鈴のを使う

後で量が減ってると言われようと知ったことではない・・・・

やっぱり、俺のを・・・

イヤ、まて、それでは、俺が鈴を怖がってるみたいではないか!

鈴など、怖くない、アレは俺の妹だ

兄が妹を怖がるなど・・・・・

怖くない恐くない・・・・鈴のシャンプーを使って・・・・や・・・・

自分の中で葛藤していると


 頭を洗われながら、フォーが、ポツリポツリと話し出した。


「我は、物心着いた時から母と森でくらしてたでありんすから

 周りは女性ばかりで・・・

 それに、たまに会う男性は好みじゃなかっただけじゃ

 そもそも、我は純血種のダークエルフでありんす

 肉体的成長は人間で言う20歳位でとまるからの

 寿命も1000年以上、だから・・・・」


 心拍数が少しあがるのを、紫音は感じ取る

フォーは目を閉じると何かを決心したように、少し貯めて話しを続ける


「お、お主が、我に飽きるまで

 ずっと一緒に居てやっても良いのじゃよ

 信じられぬなら盟約を結ぶかえ?

 人間の短い寿命尽きるまで付き合ってやるのも一興でありやんす」


 フォーの心拍数が200を超えるかのごとく上がって

限界を超えたのか、少しずつ下がっていく

フォーの髪を洗う紫音の手は止まる事は無い


「と、言うか、行く当てが無いだけだろ?」


そんな、そっけない返事に

覚悟を決めて言葉にしたフォーは目を見開き、少し口開き、視線が横に向く・・・が

頭をしっかりとホールドされたフォーの視界に

後ろに居る紫音の姿はみえない・・・。


 言葉を失ったフォーだったが

紫音にしてみれば、すでに一回

「俺の所来る気はないか?」と誘っている訳である

冗談交じりのその言葉であったとしても

その言葉に嘘は無い

だからこそ


「フォーの、好きにすればいいさ

 俺の事情なんて、気にしなくてもいいし

 忘れても捨ててもいい

 そもそも盟約なんて要らねぇ

 ただ、6、7年でいいぞ

 それまでは、フォーの居場所は俺がつくってやる

 それ以降も、どうにかなんんだろ」


 それは、ぶっきらぼうだったが

まるで、ソレが当たり前で、

フォーの心に届いていく・・・


何故か心が温まる言葉をくれ

まるで、私の全てを無条件で受け入れ、受け止めてくれるかの様に・・

胸を隠していた手が自然と下がっていく

もう胸を隠そうとはしない

とても恥ずかしいのだけれど

それは、自分の全ては貴方のものですと

口で言えない心情を態度で示しているのである

そして姿が見えない紫音に心を預け、問う


「なぜに、6,7年でありやんすか?」


「あぁ、それくらいしたら俺は

 この世界から消えるか死ぬからな」


 ビクっと身体を震わせたフォーは問う


「な・何故でありやんすか?」


 紫音の爆弾発言に身体を震わせながら問う

フォーは、始めて会ったあの時から

この男が気に入っていた

「俺の元に来ないか?」と聞かれた時からである

姿は今と変わらず裸だったけれど

あの一言がこの世界にきて

フォーにとって、どれだけ嬉しかった事か。



 フォーはこの世界に召喚された

そしてここ数日、奴隷以下の扱いを受けていたのだった。


 ただ良かったのは

逃げ出さない為の拘束具と

盟約に縛られたダークエルフという身であったが為

美しい容姿であっても

所詮ドワーフ、ゴブリンと同種族、異形の者ではないかと

誰も気味悪がって、性奴隷の様な扱いをしてこなかった事だ

それでも、召喚した男達は、いやらしい目でこちらを見ていた

貞操を守れるのも限界であっただろうと思う

もしもの時は、盟約に抗い、死んでやると

覚悟を決めていた。


 あの者達は

私を助けようとしたこの男を殺せと言った

それをしなかった我は、盟約に逆らったと全身に激痛が襲う

この男を殺しても、私は、いつまでも奴隷の用に扱われるなら

この優しい言葉をくれた男を守り死んだほうが

どれだけ楽だったろう。


 そんな私に、死ぬなと

自分を殺せと、私には死ぬなと

自身の命より私の命を優先してくれた

そんな男に興味が湧かないと言うのは嘘になる

そう、この男に心奪われた

そこからの記憶は飛んでいる

気が付けば全て終わっていた。


 今は、ソノ男と裸で向き合っている

今まで異性に裸を見られた事もない

ただこの男は始めて会った時も、今も裸である

そんな、自分の姿、男の姿を思うだけで

恥ずかしさで心が弾けそうなのに・・・・・


 目の前にいる男と居ると、何故か心が安らぐ

いつ以来だろう、まだ小さき少女の頃、母親の腕で抱かれて

母の子守唄を聞き夢現 (ゆめうつつ)と

母の腕で寝ていた頃を思い出す。


 ぶっきらぼうに、語りかけてくる男の声に

心を奪われ、身体に熱いものが流れる

今まで好きになった男も居た、そう、ただ居ただけだ

好きだからといって

告白したわけでもない

一緒に居たかったわけでもない

今なら分かる、アレは、愛ではない

恋に恋する少女の憧れであったと。


【愛】そんな物は書物には書いていなかった

百人いれば百通りの、愛があり、自分だけの、愛がどこかにあると

少女は、それを探したかったのかもしれない

そんな、自分だけの【愛】が見つかる日がくると。


 今は、ただ、この男と居たい

心安らぐ時間を共にすごしたい・・・

叶うなら書物に記載された様な

互いを抱きしめ合い

肌と肌を重ね合い

唇と唇を重ね濃密な時を重ねたい

この男の全てが欲しい、もし叶わなくても

この身体を・この心を・この思いを

私の全てを、この男に受け止めてもらいた

もしも・・・

もしも・・・

時間さえ許されれば

残り数百年、千年に近い

自分の一生すら捧げられると


まるで


初めての恋に、その身を焦がす程の愛を燃やす

盲目なまでの純粋な少女のように思いを寄せていく。


 ただ、この男が私を、どう思っているのか解らない

見た目は、まだ成人もしていない、17・8歳くらいだろうか?

ただ魂の風格は、人間のそれとは違う

洗礼され研ぎ澄まされた魂は

数百年は、鍛え練磨し、叩き上げ

何者にも傷つけれないほど、研ぎ澄まされていた

どうやったら、十数年しか生きていない人間に

これほどまでの魂が・・・・・と思うのだった。


 だが、この男が人間である以上

寿命で死ぬまで80年もないだろう

それまで、ただの道具として使われても、性欲処理の相手でも

男が許す限り、そばに居たいと


許されなくても、ただ・・・・・そばに・・・・・


そう思い、告白とも思える言葉を告げたのだ

だが、その男が言ったのだ、後数年で死ぬと

そんな事がわかるものか!

未来は無限に広がっているのだ

そんな数年後の未来が確実に分かる魔法なんて存在するはずがない

そんな思いを、問いただす



「なぜって?それは俺の運命? いや呪いかな」


髪を洗いながら、当たり前のように告げる


「運命?呪い?

 そんな物、我が変えてやる

 呪いも解くでありんす」


「ありがとな

 後できちんと説明するが、無理だから諦めろ」


「そんな事・・・・そんな物・・・・」


 悲しそうに、呟くフォー

そんなフォーを見て

悪ガキが、楽しそうに笑う


「な・・何がそんなに楽しいのじゃ!!」


「死ぬなんて、大した事でもないしな、気にするな」


「死ぬ事が・・・大した事ないじゃと!

 本当に、わかっておるのか?


「あぁ、誰しも何時かは死ぬんだ

 気にする事でもないだろ?」


「・・・わかったのじゃ

 じゃが、お主後できっちり説明おねがいするでありんす」


「それよか、俺はずっと、お主あつかいか?」


「そ・・・それは・・・」


「紫音だ、シ・オ・ン、いってみろ」


「シ・・・・シ・・・・」


「ほれほれ」


「お主は、お主でありんす!

 わ・我を捧げたんだ

 お主 (ぬし)は、我の主 (あるじ)だ

 そうだ主だ、今後、主と呼ぶでありんす」


「俺はどこの領主だ」


 俺はフォーの左右のコメカミを押しつぶす!

蘭さん直伝の技だ、効かないわけがないだろ!!

フォーは叫びをあげ悶絶し暴れる


「シオン!いってみろシオン!」


「い・・・いたい

 イタイィィィィィィ

 わかった!わかった!

 言う言うから、やめるのじゃ」


 俺は「フン!」と鼻で笑い


「いってみろ」


フォーは聞こえないような小さな声で


「シオン・・・・」


「聞こえん、大きい声で、もっかい」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「フォー、裸見せるより

 俺の名前呼ぶほうが、恥ずかしいのか!

 俺の存在がそんなにはずかしいのか!」


「シオン!シオン!シオン!シオン!シオン!シオン!シオン!シオン!シオン!シオン!」


 もう褐色肌の下は真っ赤である

好きな男の名前を連呼したのだ

200歳超えても乙女は乙女なのだった。


 だが、乙女の心を読めないのが紫音


「ひゃひゃひゃひゃ、よく言った」


と大笑い・・・しながら


 バカかこいつ?

たかが奴隷だった所を助けたくらいで

その相手に陶酔するなんて・・・

まぁ、俺様のスキルで

頭ん中、パッパラパー状態で

麻薬漬けの重度の中毒者でもあるが

これはアレか!!

下手くそな、ラノベや、ネット小説にある

そいつの危機を救ったら

性奴隷になると言う

ハーレム主人公補正!

とうとう、俺様もカッケーエロゲ主人公に!

な・・・分けないか


 そんな事を思いながら

フォーが知りたそうにしていた

科学の話やら魔法の話やらを交わしていく


「何か聞きたいことはあるか?」と


「そうでありんすね

 この湯のでる魔法も調べたい事の一つでありやんすから」


「ははは、さっきも言ったと思うが、それは化学だよ」


「カガクとな?」


「向こうの世界では水は水だったろう?」


「あたりまえでありやんす、水は水」


「この世界では、水は H2Оといって

 目に見えない水の粒子まで、見ることが出来るんだ

 水に電気を流せば、水は燃えるし、爆発もする

 そういうことを化学でやるんだ

 これは魔法、魔術にも応用できてな

 この世界では、科学魔法いうんだ」


「ありえぬ

 水が燃え、爆発するなど・・・

 だが科学魔法とな・・・

 我の知らぬ知識がまだまだあるという事でありんすか・・・」


 そんな話をしながら

すでに、フォーの髪を洗い終わった俺の手は

フォーの頭を撫でている

どうせ撫でるなら、別の場所を揉みたいわけではあるが・・・


紫音は軽く、欲望を満たす為どうにかフォーの後ろから

その身体を覗こうと・・・・

そんな瞬間

さっきまで、俺に心も体も開いていた

フォーが湯船の中でタオルで胸と大事な所を隠し

半身の状態でこちらに視線を・・・

そう、その視線は俺の背後を指している

そして俺は、額に冷たい汗をかき

背後に存在するだろう殺気に、振り返ると


空中に浮いている、リルの姿があるのだ


わすれてた!!!!


「40分たっても・・・連絡がなかったので

 御向いに参りました

 いったい何をなされてますか?」


「あ、いや・・・汚れてたんで

 お風呂であらおうかなぁ~と」


「そうですか、なぜ、そちらの女がおられるのですか?」


「いや、リルが、風呂の使い方教えず

 風呂場に置いていったんだろ?」


「・・・・・すいません・・・

 当然、使えると当たり前に思っていました

 (ッチ・・・無能ですか、この女・・・)」


「(なんか漏れてんぞ!)

 だろ、だから使い方おしえてたんだよ」


「【だから?】そんな事を言って

 なぜ?一緒に入っているのですか?」


「それは・・・・あれだ・・・うん、あれだ

 よし出るぞ、そろそろ行かないとな」


「シオン様

 私は、どういう事かと聞いているのです

 私は長いあいだ一緒にお風呂に入ることすら禁止されているのに

 それが今日ポットでの【モブ女】とお風呂に入るとは

 どういうことかと!!

 シオン様に、聞いているのです!!」


 そういえば、あの事件から、禁止してたんだった

そりゃ怒るか、仕方がない・・・


「わかった、リル、明日一緒に風呂入ってやるから許してくれ」


「ゆるします」


 さっきまで鬼の形相で殺気立っていた、リルが笑顔で答えた

だが、納得いかないのは、フォーである


フ「どういうことかえ?

 そんな小さな小動物と風呂に入っても仕方がないと思うでありんすが?」


リ「このモブは

 すこし胸が大きいからといって、何をいっているのですか

 なろうと思えば、人間サイズにもなれますよ

 だいたい、シオン様は

 すこし控えめな胸が好みですから!」


紫(フォーの奴、リルを小動物といいきったぞ!

 俺でさえ躊躇しそううな鬼の形相の、リルをだ

 おかげで、リルは攻撃対象を、俺からフォーに移した

 さて今のうちに逃げるか

 だが、リルさんよ、俺は控えめな胸が好みと、言った覚えはないぞ)


フ「何を言うのかえ?

 先程、我の胸を、こう嬉しそうに揉んでおったのじゃよ」


紫(いや、揉みたいと思ったが、まだ揉んでないぞ!)


リ「な・・・シ・シオン様

 私に言ってもらえば、何時でも喜んで揉んでもらいますのに」


紫(てめぇに揉めるほどの胸はねぇだろ!!)


フ「そんな、ちんちくりんの胸をもんでも

 何が嬉しのものか?

 楽しくもありやせんでしょう

 それに我は、明日は主シオンの頭を洗うと決めてるのじゃ」


紫(そうか、胸を揉むチャンスは明日もあるんだな!)


リ「言ったのですか!?

 それは、又この、モブ女と、お風呂にはいると言ったのですか?」


紫(言った覚えはないが・・・一緒入れるなら、言ったでいいか?)


フ「言ったのでありんす、我と風呂に入ると」


紫(リルの顔が・・・ヤベェ・・・・)


リ「どういう事ですか?

  シ・オ・ン・さ・ま!!!!!!!」


紫(死のう・・・・死んだら楽になれる・・・・・)


フ「主シオンは我との約束を破るのでありやんすか?」


紫(だが、死ねない、死ぬならフォーの胸を揉んでからだ!)

 「わかった! わかった!

  明日はリルと入るから、明後日はフォーでいいか?」


 フォーは一瞬、顔が引きつったが

所詮、小動物、主と風呂に入ろうと何も出来はしないと

明後日には、また愛を重ねれると勝ち誇った顔をした

だが、それを見逃さないリルである


リ「し・・・明々後日は、私とですね

 モブと2回入るなら、私は10回は入りませんと、釣合いません」


フォーの眉毛がピクっと反応する


フ「ちんちくりんが、何回入ろうと

 主様に奉仕が出来るとは思えませんでありんす

 明日から毎日、主様は私とお風呂に入るでありんす!」


リルの形相が・・・・さらにヤバイ事に・・・

それに、キリがない堂々巡りに入り込んでいくと言うより

本気で遣り合う気か?

この家を壊す気か?


紫「まて!時間ないんだろ

  リル、この家壊して鈴に怒られたいのか!!

  フォーもそこまでだ!とりあえず移動するぞ」


リ「くっ・・・食事抜きは・・・」


フ「主シオンの赴くままに」


悔しそうな、リルに比べ、勝ち誇ったように従うフォー


紫(まぁ、リルは、平気で俺に歯向かうから鈴を盾にする!俺かしこい!)


紫「そうだ、リル」


リ「はい」


紫「この女は、フォー

 取り敢えず、トイレの使い方教えてやってくれ」


リ「なんで私が!」


紫「そうか

 なら俺が使い方おしえるし

 それも、親切丁寧に

 又の開きからまでもな!!」


リ「私が教えます!」


紫「フォー服は取り敢えず、俺のジャージでも着てくれ

 後で女物借りるから、リルついでに、服だしてやってくれ

 じゃぁ先に上がって準備するわ」


 逃げるように洗面所に出て

バスタオルを手に取ると

体についた水気を吹きながら

2階の自分の部屋に移動する。


 服を着て時計を見るとすでに

午前1時を軽く過ぎていた

そんな中、俺の黒色のジャージを着たフォーがリルと一緒にはいってきた


フ「ここが、主様の部屋かえ?」


紫「ああ、オタク丸出しの部屋だから、あんまり見るなよ~~

 恥ずかしいじゃんかぁ~~~。」


フ「オタクとは、何かえ?」


紫「(ネタが通じねぇ・・)

 これだから、異世界の人間は・・・」



俺は、ラノベ・漫画・アニメが好きで

壁の本棚には、ラノベ・漫画がズラリと並んでいる

緻密に隠しているR18の薄い本は内緒だ!!


紫「フォー空間転移はできるか?

 あと人数制限あるか?」


フ「あらかじめ、ポイントをロックしておれば、できるでありんす

 人数は・・・我と主様2人のみ

 付け加えるとロック出来るポイントは9箇所でありんす

 ただ、異世界には移動できんでありんす・・・ね。」


紫「・・・・。

 それじゃぁ、この部屋ロックしておいて

 とりあえず後は、あっちいってからか、リル頼む」


リ「はい、では移動します」



 俺は、リルとフォーと共に

あの自称【魔王】と名乗る、赤頭の居る場所に転移するのだった。



 

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