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異世界・6話 友達になろうね!約束だよ!

 






 リル達は、ミカの転移で、ある場所に出現した


少し高台である場所、そこから見える景色は


国と言える大きさの街の姿だった。




 この国は、100万人規模の民が暮らし


木造とレンガを組み合わせた様な


古き時代のアメリカに近い建物が並ぶ町並みだった。




この高台には完全木造、日本で言う社 (やしろ)に近い大きな建物があり


鳥居に似た物まである


そして、今リル達は、その鳥居に似た何かの下に居た。






 それは蓮の「さほど時間はかからんはずだ!」の言葉で


ほぼ強制的に連れてこられた場所であり


魔王【雷帝・レイ】が治めている国の1つでもあった。






 そして悪魔達は、アロンテックだけを残し


残り5人の悪魔は国の上空で待機している為


この場所に居るのは


蓮・ミカ・リル・鉄雄・胡桃・アリス・茜・フォー・ティアンガ、である。








 社から、和服に近い服装の40歳ほどの男が走ってくる


歳のせいか足取りは重く、息もすでに上がっていた。




 そして、アロンテックの前まで来ると


大きく肩で息をして、何かにすがるような勢いで




《アロンテック様!


 レイ様は何処に?


 オババが、レイ様がおいでなされたと》




その時、男が来た社から、大きな声が聞こえてくる




《この、バカもんがぁぁぁ!!!》




それは、巫女姿の・・・お婆さんの怒鳴り声だった


お婆さんは、2人の巫女に、支えられ必死に歩いてくると




蓮の前で地面に正座し頭を下げる


それを見ていた、男と2人の巫女は


何かに気づいたのか、地面に正座し頭を下げ


そして、お婆さんは口を開いた。




《レイ様、ようこそお出でなされました》と。




《よう【キヨノ】、しばらく見ないうちに、また歳をとったな!


 だか! よくワレだと分かったな。》




《はい、このキヨノ、歳をとっても


 まだまだ巫女としての、力はおとろえておりませね


 ですが・・・レイ様、本当にご無事で何よりです。》




 そう言うと、キヨノは、大粒の涙を流し泣き出した。




【キヨノ】はこの社の長であり


この国の長でもあるが、国王ではない


王とは、魔王【雷帝・レイ】であり


この社は、レイを祀る場所でもあり


キヨノは、この国を預かる巫女の一族であり


その中で、一番偉いだけである。




そして、巫女の1人も瞳に涙を貯めて口にする




《レイ様、お姿がお代わりになった事は


 ミーティア様から、聞き及んでおります


 ですが、4年前その存在をこの世界から消した時


 王を失った、我等がどれほど苦しみ嘆いたか・・・。


 どれだけ、あの【天使】と【神】を呪った事か・・・。》




彼女の名前は【サワコ】、キヨノの長女であり


先ほどの男が夫【ミルトン】


もう一人の巫女は、サワコの妹【ヨシカ】である。




巫女姿の3人は、今まで溜まっていた思いを握り締め


涙を流すが、ミルトンは




《レイ様!


 どうしても、お願いしたい》




《このバカモンがぁぁぁあああああ!》




 キヨノは、再び怒鳴ることで、ミルトンの言葉を遮り


年老いても、その鋭い眼光でミルトンを押さえつける。




《失礼いたしました、レイ様


 そして、ミカ様、アロンテック様


 それで、そちらの方々は?》




《コレか?


 まぁ・・・・・・・・・・・・・・


 友人・・・?


 友達 (ダチ)と言っておこうか。》




《なんと!!!!


 そうですか!


 レイ様にも、ご友人が


 この、オババ、感激しております


 その姿になられて、丸くなられた様で


 私共も、以前より接しやすいのか


 ついつい言葉多くなった事を


 申し訳なく思っております。》




 キヨノは涙をぬぐいながら


以前とは全く違う、レイの姿をその瞳に映す


あの以前の様な張り詰めた緊張も無ければ


常に敵を探していた攻撃的な雰囲気さえもない


そう、それが無くなった事で


昔よりその懐、男としての度量の大きさが増していると


以前の魔王としての力は感じられないが


今のレイの姿に


人として、男としての魅力を感じ


成長したその姿に、より一層惚れ込むのだった。






《かまわん、ワレ自身も


 異世界で、10数年生きてきて


 多少は【弱き者】の立場も理解したからな


 それに・・・


 キヨノ、ワレは異世界で家族を、両親と妹を得てな


 今ではこの雷帝と呼ばれたワレも、面倒見の良い【兄】となったのだぞ!》




《まことに


 異世界では、そんな事が・・・


 素晴らしい、強く逞しく国の王、そして英雄とも讃えられた雷帝・レイ様


 その一方その、魔王しての孤高の強さゆえ


 相容れぬ存在も多く、一人長い時間を城で過ごして居た、レイ様に家族が・・・


 うぅぅぅ・・レイ様が家族を思う心を・・・。》




 レンの、その嬉しそうな顔


キヨノは、こんなレイを見たことがなかった


人として成長したのは、家族を得た事からなのだろうと


キヨノは、感極まっていくのだった。






 蓮とキヨノは、しばし会話を続けるも【ヨシカ】に


ここではなんなので、社にお上がりくださいと


社にある、雷帝の為に作られた神聖なる場所に、蓮やリル達は案内された。




 この間、リルは、鉄雄達に通訳を行っていた


この場に【胡桃】がいなければ、100%しないだろう面倒臭い通訳を・・・


そして、この後も胡桃の為に通訳を続けるのだった。




 その場所では、この世界のお茶や、お菓子などが振舞われるが


アロンテックと、ティアンガは席に着くことなく


社の外で待機となる。


(ある意味、2人にとって魔王と同席するなど


 針のむしろの上に立たされている様なものである。)






 蓮は、一言も口を開かない【ミルトン】に


そして、先ほどの態度から、何かあると、ある事を思い出す


それはこの地にやって来た本来の目的である。




《それで、キヨノ


 ワレに用事があるのだろ?》




 その言葉は、キヨノ達4人


そして、部屋の外で待機していたり


レイを歓迎するため動き回っていた


他の巫女達にも伝わり


一気に緊張が部屋を支配していく。




 サワコ達の視線がキヨノに集まると


キヨノは、静かに重い口を開いた。




《レイ様、私の孫を覚えておいででしょうか?


 この【サワコ】と【ミルトン】の子供【ヒサノ】の事を》




《あぁ、そういえば小さいのが居たな


 その【ヒサノ】がどうかしたのか?》




しばし、静かな時間が流れると




《我等が王、レイ様


 どうか、あの子の最後に会って・・


 あの子を看取って貰えますでしょうか・・・


 まだ、十 (とう)にも満たない孫娘ですが


 巫女の一族でもあり


 本来なら、私共と同じくレイ様に仕えるはずでしたが


 それも出来なくなり・・・


 それは、レイ様の恩恵を裏切る行為であり・・・


 そんな立場の私共ですが・・




 ですが・・・


 


 ですが・・・


 


 こんな事をお願いできる立場では・・ないですが・・・




 あの子の最後の情け・・・に




 どうか・・》




《どういうことだ!!》




 キヨノは言葉に詰まり泣き出すのだった


同じく我が子の事に、サワコと、ミルトンも泣き出し


涙ながらに、ヨシカが説明を始めた




《は・・・はい


 数日前から、ヒサノが体調を崩し寝込みました


 私達も、手を尽くし回復したのですが


 その甲斐も無く症状も悪くなり


 今では体も動かず


 会話すら・・・ままならず


 後は最後の時を・・・》




 部屋の外でも何人かの巫女のすすり泣く声が聞こえてくる。




 ミルトンはその場に土下座し、その思いをぶつける




《レイ様!


 出来れば・・・出来れば、ヒサノをお救いください!


 無礼とは承知しております


 ですが、どうかヒサノをお救いください。》




キヨノも




《こんな、バカ者ですが


 ヒサノの父でございます


 本来なら無理としりながらも


 レイ様に書を送ったのも


 この者の願い


 救えなくても、最後にレイ様に看取ってもらいたいと・・・。》




 その中、リルは淡々と通訳をする


それを冷静に聴く、鉄雄・茜・フォー


我関せずの、ミカ、5人と


キヨノ達の温度差は激しかった・・。




 蓮は立ち上がり


《ヒサノに会いに行くぞ!》と伝え


キヨノも、蓮をヒサノの居る部屋へと案内するのだったが


やる事もないので、便乗する鉄雄達


ただ胡桃は、リルの通訳で聞いたヒサノの事が気がかりで


リルに念話で『私も行きたい』と念願していた。






 すこし大きな部屋に通される


そこには布団で寝るも、苦しみ続ける小さな少女と


少女を見守る医師だろう老人と付き添いの女性の存在がいた。




 蓮は静かに少女に近づき、ドスンと畳らしきものに腰を落とすと


全身を震わせ、もがき苦しむ少女に声をかけた




《ヒサノ、少し見ない間に大きくなったな


 ワレの事が分かるか?》




ヒサノは視点がままならないまでも


必死に声を練り上げ




《レ・・・イ・・・さ・・・・ま》と




その言葉にもならない4つの単語を発するのに、1分を要するほど


少女の体は病に冒されていた。




 レンも静かに、その言葉を聞き終えた!と


「あぁ、レンだ!【雷帝・レイ・マーティン】だ!


 ヒサノ、お前に会いに来たぞ!」




医師は、蓮が国の王である、雷帝・レンだと気がつき


深く頭を下げ




《レ・・・レイ様におきましては、ご機嫌うるわしく》




《世辞はいい!


 ヒサノの様態はどうなんだ?》




《は、はい!


 先程から少し体調も良くなり


 こちらの言葉にも反応できほどに・・・・》




体調がよくなった?


これだけ苦しんでいるのにか!!と


蓮は、1つの願いを込めて




《治るのか?》と聞くが




《・・・・・私では、力及ばず・・・・。》




医師は下を向き、自身の無力さを王に詫びるしかなかった。




 蓮にとってみたら、魔王であった時に治めていた国の事


そして、巫女の1人が死のうと関係ないと


以前のレイなら思ったかもしれないが




目の前で苦しみ、レイに何かを訴えかけようと必死でもがく姿が


熱で寝込んだ小さな頃の【桜】と被ってしまう


助け用にも、蓮ではどうしようもなかった。




 キヨノが看取ってくれと言った


ミルトンが、助けて欲しいと願った


だが、それは、すでに手を尽くした後と言う事


そして蓮の配下の軍団は、全てと言っていいほど悪魔であり


回復魔法を得意とする存在は居ない。




 と・・・一瞬諦めかけたが




 後ろで通訳をしている声に




一緒に来たのは【チート】だ!と思い出す


そう、この【チート】なら、回復できるかもしれない


ヒサノを助けることが出来るかもしれないと




《おい、リル、お前回復魔法が使えるよな!》




いきなり声をかけられたが、驚くこともなく




《はい、使えます。》




《ヒサノを回復してくれ》




 リルにとって、どうでもいい事なので、断る理由もないが


胡桃からも『お願い!』と言われれば、素直に指示に従う




部屋の片隅にいた胡桃達から離れ


ヒサノに近づいていくが




《ちんちくりん、まちんなし》


と、フォーはリルを止めた




《モブ子?どうしました?》




《ここは・・・・レイ殿と呼ばしてもらうが


 酷なようだが、その子は助からぬぞ


 それは、頭の中の病ぞ


 魔法で回復することはなかろうし


 ましてや、ちんちくりんの強い魔力で回復しようものなら


 この場で、死ぬ可能性もあるでありんすよ。》




《どういうことだ?》




《話を聞いて、判断しただけでありんすが


 体調が悪くなったのが、数日前でありんすね?


 光属性の回復魔法や、木属性の回復魔法を使っても回復しない


 ましてや病台は悪化する一方であったのではありんせんか?》




 医師だろう存在は頷く




《それは・・貴族病と言われる病


 その中で、言語能力の低下、思考の低下となれば脳の病でありんすね


 その治療方法は無いでありんす。》








************






 この世界にも、病気や病などは当然ある


これは回復魔法が効かないのである。




回復魔法には、大きく分けて2つある




光属性の回復魔法と、木属性の回復魔法である




多少例外は存在するが、回復魔法とは、基本上記の2つの事を言う




 光属性の回復は


怪我をした場所を、怪我をしていなかった状態に戻そうとする


復元魔法とも言える。




 木属性の回復は


怪我をしたら、それを治そうとする肉体の再生能力を高め促進する


再生(成長)魔法とも言える。




ただ、そこには病気を治す力はない


もし治ることがあっても、それは元々、ほっといても治る病気である。




そう、肉体的外傷なら治せるが


内蔵や脳に起きる病に対して、回復魔法は意味を成さない。






 貴族病と称される病がある。




本来なら、数年に渡って発病する進行性の病気


例えるなら癌 (ガン)である


平民と違って、貴族や王族、位の高い身分の人間は


体調が悪くなると、おかかえ医師の(高位)回復魔法などで回復する




それを長く行っていくと


肉体の再生を促進させたり


癌は巣食う場所を正常に戻すことで


癌と呼ばれる症状は進む


いや、回復魔法によってより進行する


また、他の病と呼ばれるものも悪化していくのだ




元々、癌は肉体の1つであり、成長していく体の1部である


どんな回復魔法であれ、成長する体を阻害出来ないのである。




また、1000年を超える長寿の、純血種のエルフにとって


寿命まで生き老衰で死ぬ存在は少ない


その半数が病で死ぬと言ってもいいのだ


そう、ダークエルフと違い


光の精霊に愛された、エルフ族さえも病でしぬのだ


回復魔法が全能ではない事を一番理解しているのが


長寿であり、魔法に長けたエルフとも言ってもいいだろう。




そう、フォーは知っていた


貴族病、それも頭の病


あとは、苦しみ死んでいくだけだと・・・。






**********








 そしてフォーは言葉を続ける




《先に言ったでありんすが


 これは頭の中の病でありんす


 これ以上病が重くなれば


 家族すら認識できず


 ただただ苦しんで、病で命を落とすより


 苦しみと激痛で、自ら命を落とすこととなりんす。


 苦しまず、命を終わらすと言うのでありんすなら


 1つの安眠処置として、安楽死をおすすめするでありんすが》






 その冷酷ともとれる言葉は


ミルトンの唯一の救いだった


魔王なら、王なら、もしかして救ってっ下さるかもと言う


微かな願いすら打ち砕いた・・・。






そして先程より、重くのしかかる雰囲気となる






 すでに、ヒサノが苦しむ姿を見続けていた、キヨノは


畳らしきものに頭を擦りつける




涙を流し、心を悲しみと苦しみで磨り潰し


言いたくない言葉をひねりだす・・・




《ヒサノを・・・・ヒサノを苦しみから救ってくだされ!》と・・・






ヒサノの母である、サワコも、娘の苦しんで死んでいく姿を想像し


変わってあげたいが、変われぬ悲しさに


その身を引き裂かれる思いで・・・




《どうか・・・・安らかに、天に帰れるように・・・》と・・・






ヒサノの父、ミルトンは泣きながら


《いやだ・・・いやだ・・・オレからヒサノを・・・取り上げないでくれ》と・・・






 だが、すでに助ける手段は無かった。




 




 蓮は、少しの沈黙のあと覚悟を決めた






《ワレが、この手で看取ってやる


 キヨノ、最後の挨拶を。》




《我が王・・・その力になれぬ、孫娘にまでも慈悲を頂き感謝いたします・・・》




泣きながら、王に頭をさげた。




 すでに、ヒサノの命は諦めていた


その事は、社に居る全員が納得はしてないが、理解はしていた


もう、あの病は治らないと・・・。




 そして、ダークエルフに突きつけられた事実


苦しんで死んで行くより


王である、魔王【雷帝・レイ】その手にかかって死ぬ事は誇りでもある


そう、王に看取ってもらえる


その栄光を胸に、死して魂となっても、王に仕える事許される・・・・・と










 ヒサノの寝る布団の周りに、集まりだすキヨノ達




 言葉が通じる今なら




 別れの挨拶が出来る




 それは、レイがこの場に来た奇跡の1つだったと




 王である、レイに感謝し




 涙ながら、静かにゆっくりと




 別れを交わす・・




 いや、別れの言葉を




 涙ながらに、ヒサノに伝えていく




 ヒサノも、苦しみながら


 


 その瞳に涙を浮かべるのだった・・・。




 


 






 重苦しい空気の中




 ヒサノに近づいていく、胡桃の姿があった


リルの通訳を聞いて胡桃はリルを連れて、ヒサノの傍に近寄ると




「リルちゃん、通訳して。」




「はい」




「ヒサノちゃん生きたい?」


 《彼女の言葉を、お伝えします


  ヒサノ、生きていたいですか?と》




 その言葉に、キヨノや蓮が驚く中


ヒサノは、苦しむ声の中に小さな声で


ゆっくりだが・・・・その意思を示した




《い・・・・き・・・た・・・い・・・》と!


 「生きていたいそうです。」




それを聞いた胡桃は、嬉しそうな顔で




「わかった、絶対助けてあげる!


 元気になって、友達になろうね!


 約束だよ!」


《わかりました


 絶対に助けてあげます


 元気になって、友達になってください


 約束しましょう・・と


 そして、彼女と、ヒサノの願いはきっと叶うと、断言します。》




 ヒサノは、その言葉に


「あああ・・・・」と言葉にならない声をあげ大粒の涙をながした。




胡桃はヒサノに笑うように微笑むと


「リルちゃん、お願い!」




「はい。」




 リルは布団ごと、ヒサノを空間に取り入れた。




驚く面々だが蓮は


《リル何をするきだ!!》と怒りと共に問いただす。




《何をする気も、胡桃さんが、ヒサノを助けたいと言いましたので


 それに従ったままです。》




《助かる?》




それは、胡桃とリルの行動を見ていた、キヨノ達全員を心底驚かす


一番驚いたのは、フォーだった


《ちんちくりん、どういうことでありんすか??》




《そうだ、この黒いのいった通り、貴族病は治らない病気のはずだ!》




《さぁ、私は貴族病が何なのかは知りませんが


 私も、胡桃さんも、この貴族病を治せる人物に心当たりがあります。》




 その言葉に蓮は1人の男を頭に浮かべるが




《あの・・・変態か?


 奴にそんな事ができるのか?》




《先程も言いましたが、私には分かりません、ただ・・・。》




 リルは、力強い姿の胡桃を視界に収める




レンとの会話は、高速念話で伝えていた


だからこそ次の言葉は、胡桃にまかせる


そう、普段リルの後ろに隠れる胡桃だが


今は自分の意思で前に出て自己を主張をした、胡桃に任せた。




「しーくんは・・・


 しーくんは、私の願いを叶えてくれるの


 絶対に絶対に叶えてくれる!


 だから、あの子を助けてくれる


 あの子が、生きたいと言ったの


 私は、あの子を助けたい!」




言い切ると、顔を真っ赤させて、部屋の隅にいた鉄雄に抱きつくのだった。




 リルは日本語が分からない、キヨノ達に訳す




《あの子の名前は【胡桃】と申します


 そして、あの胡桃さんがもっとも信頼する人物であり


 私の主でもある【シオン】様なら


 ヒサノを助ける事が出来るでしょう。


 それが、絶対ムリだと思われる


 ヒサノの病気であろうと


 胡桃さんの願いであるなら


 どんな事でも、シオン様は叶えてくれるはずです。》




《そんなことが・・・》




キヨノの言葉に、リルはドヤがおで




《当たり前です


 私の愛するシオン様は、なんでもできるのですから!》




そんなリルの自慢に入ってきたのは、ドヤ顔のフォー




《そうでありんす


 我が夫は、素晴らしいのでありんすよ。


 それで、ちんちくりん・・・・


 本当にそんな事が出来るんでありんすか?》




《このモブ子は、立場も弁えず


 私の旦那様を夫と!!


 だいたいシオン様の事を知らずに


 よくそんな恥知らずな事を言えたものですね!》




 フォーの顔がゆがむ


リルの言うとおり、シオンと過ごした時間は少なく


シオンの事を知っているか?と言われれば首を縦に触れないフォーである。




 が・・・リルも




《ですが、治せるかどうかなど私も知りません


 ただ、シオン様は、なんでも出来ます


 そしてそれを支えるのが、妻である私の役割なのです


 それすら、分からないとは


 所詮【モブ】、シオン様に合わせる価値もありません!》




 その言葉に食ってかかる、フォーだが


 


 蓮は、言い合う2人に拉致があかないと




「宮守、本当にシオンはそんな事が出来るのか?」




「出来る出来ないなんて関係ないだろ?


 ただ、胡桃が願うなら紫音なら治すだろ


 それが、紫音だからな。」




その、リーゼントは、当たり前のように口にする。




 蓮はこの宮守の兄妹と


シオン、鈴の兄妹の関係性は


自分の分からない所に有るの事を改めて理解するのだった。






キヨノ達は、リルにすがるように問う




《本当に治るのか?》と




そして、何度も何度も頭をさげ




《おねがいします。》と・・・。








 そう、紫音の知らない所で


貴族病と呼ばれる、末期の病状の少女の治療を約束した胡桃とリルだった。








 リルは、ヒサノの病を治すことを約束する。




 リルと胡桃は、帰る寸前まで、キヨノ達に


そして、この社の巫女達にまで何度も頭を下げられ


大勢の人に囲まれるのだった




それは、ヒサノがどれだけ愛されていたのかわかる光景だった。




リルは、自慢するように何度も口にする


《私の主なら造作もない事です》と・・・




全ての巫女達が、ここに居ないリルの主【シオン】に期待するのだった。








 


面白くないのは蓮だが




それでも、蓮もなぜだか、あの変態なら・・・と・・・。




 そして蓮は左手で頭を抱え笑う




「オレも、アレに毒されたかのかもな・・・。」と








 リル達は、ティアンガや、悪魔達と合流し


一度、屋敷に戻り、現代世界へと戻る準備をする。








 リルは、満足だった、シオンの自慢が出来たことに!




 鉄雄は、満足した、異世界の千年樹を手にしたから!




 茜は、満足だった、幼女を堪能し、もふもふした事に




 アリスは、喜んだ! 新しい鎧に、その性能に!




 胡桃は、誓った! 必ず【ヒサノ】を助けると!




 蓮は、とりあえず満足した、肉が手に入ったと!




 ミカは、楽しんだ、いっぱい楽しんだ!




 フォーは、喜んだ! 主である【シオン】に会えると!


 


 サラは、驚いた! 自身を縛っていた物が無くなり、自由である事に!




 メガネは、太陽光パネルの修理を忘れ、屋敷の子供達をビデオ撮影していたが、またもや、何も知らされず、リルの空間に入れられ、何も思うことは無かった。








 そして、10人は


 


 現代世界へと転移していくのだった・・・。






 

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