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異世界・1話 礼儀正しい兄妹

 



 異世界


定義は幾つかあるが

今いる世界以外の世界を一様に【異世界】と呼ぶ

その数は星の数ほど存在する。


 その中の1つの世界がある

それは科学魔法が発達した現代ではなく

魔法が発達した世界である

魔物と飛ばれる生物が存在し

魔王や勇者、冒険者が存在する世界でもある。


 科学が発達していないことで

TV、車など、電気を必要とする機械と言われる物はないが

魔法で光などを作り出したり

魔法を生活の一部として使う生活魔法などがある

全てが魔法で成り立つ世界。




 そう、電気も車も無い世界に置いて

近年・・異質な存在と化した街がある。


 10数年前までは

ある下級貴族が治める小さな街だった

大きな都市から離れ山間に存在した事で

人目にはつかず、その街を知る者は少なかった

それを良い事に、下級貴族は

地図にも乗らない街を隠し領地し

獣人亜人を奴隷として働かし

高い税金を取り

それを国に納めることはなく

全てを我がものにし至福を肥やしていた。


 10数年前・・街を治める存在が変わった

街に姿を現したのは

1人の少年と、変わった姿をした、2人のメイド

少年は、下級貴族を殺し

あたらしい領主となり、恐怖で街を支配した

気に入らないものは殺し、欲しいものは奪った!

そして、町に住む全ての者の命を【奴隷】として生涯を奪った。



 獣人も、人族も、皆同じく奴隷となった

街から逃げる者は殺され

領主に唾を吐くものは殺された

人が減れば、それを補う様に

領主は何処からか、奴隷を連れてきて働かせるのだった。


 街の住人の唯一の救いが

領主に使える、2人のメイド

 1人は、領主の呪いで

癒えぬ傷を全身に抱えるも

住人に優しく、その身を犠牲にしてまで、領主から住人を守る

 1人は、よく笑い、よく喋る、お調子者として領主に仕えたが

領主に隠れて、金銭や、食料を、住人に配るなどしていた。


 だが、領主が来て約10年

奴隷達は、何度か領主に逆らうも、その強さと恐怖に勝てずも

つねに奴隷達は静かに謀反を企む。


 奴隷は、とある旅人から、勇者の話を聞いた

その勇者は、天使の使いであり、魔王を倒す存在だと

そして、弱いものを助ける為

世界を周り続けていると・・・。


 住人は勇者に助けを求めた

そして、領主は勇者と呼ばれる存在に倒され

天使に殺された

そして、1人のメイドが、領主の後を追い死んだ・・・

それは、ここ数年前の出来事でもあった。




 今、この街に、領主と言う存在は居ない。




 この街の中心人物は

死んだ前領主の2人のメイドだった


そう、前領主と共に死んだメイド

少し経った頃、その死んだはずのメイドが生き返った

そう1度死んだ事と、前領主が死んだ事で

全身に渡って呪われていた傷が消え

美しい姿を取り戻し、街に戻ってきたのだった。


また、領主が死んだことで

奴隷制度は廃止され

この街は、街で生きる住人に委ねられた。


 獣人族や亜人族や人族

その全てに、分け隔てなくである

獣人、亜人を奴隷とした人族の記憶は残るが

10年と言う長きに渡って

奴隷だった人族の記憶は

獣人亜人を受け入れ

獣人亜人も、メイドの言葉に耳を傾け

人族を受け入れたのだった。


 奴隷制度と言うものは

全ての住民の心に、最低最悪を刻んだ長く苦しい時であったが

それは、住人達の絆を強くし、その魂を強くした、過去の遺物となった。


そして、メイドが連れてきた【メガネ】と呼ばれる他国の存在がいた。


 このメガネは、【科学】と呼ばれる

魔力を必要としない未知の魔法を街に持ち込んだ。


現代世界で言う【太陽光パネル】そう電気を持ち込んだのだ

多くの恩恵は、2人のメイドと、孤児院と化した元領主の屋敷にもたらされた

そう、TV・ゲームと言う娯楽と言う形で

だが、何十人と暮らすこの場所では

洗濯機や電子調理器、レンジや、冷蔵庫と言った

白物家電と言われる物は、何よりも重宝されていた。

屋敷に送られる電気のパネルが設置された場所は山の斜面で

企業でも扱われる大きな物だった。


また、メガネを通して

この街に降り注いだ異世界の恩恵は電気だけではない

建築技術から土木技術に料理

特に、砂糖、塩、胡椒と呼ばれる香辛料は

食べ物を豊かにし、異世界のレシピは

この街を、食の街と言わしめる


最近では、このメガネ

一日・・・いや、街の住人が朝目が覚めた瞬間

屋敷のすこし裏手に、屋敷より高く頑丈にそびえ立つ建物を出現させた


今では、メガネの事を知らない住人は居ないだろう・・・。


山間に存在した、小さな街

住人は誰1人として知らなかった

自分達の街が

この世界でもっとも最先端を行く街となった事を。


 この街の事は徐々に広がっていくが

大きな都市に届くほどではない

届いても、きっと信じないだろう

自分達の国こそが

世界に置いて最先端であると・・。

そんな中、噂を聞き街を襲撃しようとした存在も多くいたが

孤児院の出身者で組まれる自警団によって撃退されるのだった。


そして、今


2人のメイドが暮らす、孤児院とも言える屋敷に

この世界の人間で無い存在が足を踏み入れるのだった。




*************




 屋敷にある一室

この部屋の主人とも言える存在であるメイド服姿のリルが

次元転移し戻ってくる。



 部屋の主人とは言うが

ほぼ転移する為の部屋であり

生活感など有りはしない

部屋に寂しく存在する家具は、洋服箪笥1つと、木製のベットくらいだろう

タンスに入っているのは、メイド服が数着

ベットも、使っていないのでホコリが溜まっているだろう


 メイドは、そんな自分の部屋を一度見渡し

広いスペースに向きなおると

7人の人間が出現させた

6人は立ったままだったが

1人の男だけは、椅子に座ったままの状態で出現した。


 椅子に座ったままの男

白いワイシャツの首のボタンを外し

水色のネクタイを大きく緩め

インスタントのカップメンを食べようと

それこそ、麺を口に運んだ状態である。


 そう、メガネと呼ばれる、井門圭人は

家で1人、寂しくラーメンを食べていた

だが、イキナリ自分の家のリビングから

見慣れた部屋に移動させられたにも関わらず

気にせず、ラーメンを口に含み

数度噛み飲み込むと、口を開いた


「皆さん、なぜ?こんなところに?」


「そこの堕魔王先輩が、ベビーモス?の肉を取りに行くと言ってね

 みんな巻き込まれた感じだよ。」

井門の問に答えたのは、アリス

いや、アリスしか井門の相手をしなかったと言うべきだろう


「そうですか、ベヒモスですか

 出来れば私にも分けて欲しいですね。」


「牛くらいの大きさの動物なら

 食べきれないでしょうから

 言えば貰えるとおもうわよ?

 それに、変態が後でバーベキューするとか言ってたわ。」


「そうですね・・・・・・・・・。

 以前、聞いた話ですが

 牛より多少大きいらしいので

 私の分の、肉もありそうですね。」


そう、アリスと、井門、2人しか会話をしていないと言う以前に


アリスと、井門以外の存在が、自己中すぎるのだった。




 茜は、転移してきて

窓に近づき、異世界と言う世界をその目で垣間見る


町並みは、中世のヨーロッパに近い

多くの建物は、木の柱に赤レンガを組み合わせた物だが

その中に似合わない江戸時代の木で建てられた長屋に似た建物がある

そこに行き来する、人・・・

そして、人で無い存在を目にした・・・。


 茜の両手が震える・・・。

それは、驚いたわけでもない、怖いわけでもない

ただ、それを絵にしたいが

すぐ戻ると思い、何も持っていなかった事を思い出し

目にしたものを書き留めたい衝動に駆られていたのだった。

そして、ポツリ

「紙か・・・ペン・・・・

 仕方がない・・・デバイスで写真を・・・。」


それを聞いたリルが


「スケッチブックでよろしければありますが?」と

茜に差し出すと

茜は、お礼も言わず奪うように受け取ると

窓を開け、鬼気迫る勢いでペンを走らせていく・・・。




鉄雄は転移してきて、一番初めに目にした箪笥に釘付けである

「おぉ!コレいい木つかってんなぁ~~

 いい作りだし、なかなかの出来!

 まぁ、表面の繊維が潰れてるのが気になるが

 こっちの世界は、このレベルが標準か?」


かたや胡桃は、ベットに釘付け

(すごい・・・・この作り細工・・・。)

「おにぃちゃん・・・・コレ、すごい!」

それは、まず紫音達以外の前では、照れて声を出さない胡桃が

我を忘れて声を出したほどだった

「胡桃?」

そして鉄雄の視線もベットに向き

その目を輝かせる

木製ベットの四つ角にある、作り細工

いや、ベット自体も、キングサイズの大きなベットであるが

その木枠から全てに、細工彫が成されていた

それは、現代でも希に見ない

いや、これほどの物は鉄雄ですら直に見たことがなかった。

「リル、このベットは何処で手に入れたんだ?」


リルは、茜にスケッチブックを渡した所で鉄雄の問に答える


「ベット?ですか

 10年ほど前に頂いたものですが。」


「10年って言うことは

 まだ生きているんだな

 なら、そいつは何処にいるんだ?」


「ドンガですか?街の住人ですが

 そうですね、今の時間なら

 家で朝食を食べているかと?」


「ドンガ?この街に居るのか?」


 それには鉄雄も驚いた

これ程の職人、日本で言うなら国宝と呼ばれる腕を持つ職人である

この世界なら、王と呼ばれる存在に、その作品を献上するだろう

国王専属の職人、国のお抱え職人と考えればキリがないが

それが、この街に居る?


「はい、この街の住人で、職業は

 あちらの世界で言うなら、木工職人でしょうか?」


「そこに、ドンガの所へ連れていってくれ。」


そう、大工を目指す鉄雄にとって

同種の職業とも言える、木工職人

それは、鉄雄にとって無視できない職業であり

その人物が、これほどの飾り細工を作るなら

逢わずに居られなかったのだ


これは同じ血が通う胡桃も同じで

胡桃も鉄雄の後ろで、兄と同じように目でリルに訴えかけるのだった。




 蓮は、転移してきたが

目の前にいる、同じく転移するも、周りの状況など気にした様子もなく

ラーメンを食べる井門の姿に呆れると覇気を解放する。

だが、その体は、あの世界のか弱い人間の体であり

1割程度の覇気だが

その覇気の圧は、この世界の普通の人間でも屈服できるはずだった・・・。


 リルは論外としても

目の前の人間は、1人として怯えることもなく

自身の欲望のまま行動する

宮守と鎧女やメガネが覇気を無視するのは、まだわかる

だが、あのアカネと言う女も

宮守の妹さえ、俺様の覇気を受けて

たじろきもしないとは

あの変態は、こいつらに

覇気に対抗できる何かをしいているのか?


 ミカは、不機嫌になっていく蓮を尻目に

蓮が覇気を使ったことで

部屋の外に現れた気配を感知し

無造作にドアを開けた。


 通路には

膝を床につけ頭を下げ

絶対者である、主の帰還を喜び、主を出迎えるべく静かに佇む

黒く怪しげな角を持つ、人類とかけ離れた6体の存在が有った。


 それは、ティート達を鍛えるべく

この街で住み込みで・・・・・・子供達と遊ぶ

8人の魔王の1人【雷帝・レイ】の配下の悪魔

アロンテックを始めとする、6人である。


《久しぶりだな、お前ら。》

《《《は!!》》》


頭を上げることもなく、一言だけで返事をする

アロンテック達6人は、それだけしか、許されていないからだ。


主たる存在と、言葉を交わしていいのは

【ミーティア】【ミカ】など、魔王に近し力を持った存在や

役職を持つ悪魔のみである。

魔人と恐れられる力を持つ、アロンテック達ですら

【雷帝・レイ】の悪魔軍団の中では

戦うだけの戦闘要員、いわば手足なのだ

そんな存在が、頭である、主と会話をしていいはずが無く

頭を上げれるはずも無く

ただ出来ることは

主の覇気を感じ、その存在を確認した今

全ての事を投げ出し

主の出迎える事のみである。


 そして、動かない事を理解している、ミカ

通路に出ると、そこに並ぶアロンテックの角を握り

首をモグように捻って遊ぶ。


 蓮は通路に出ると、悪魔達の前に出てその姿を見せつける

そして、自分の姿が代わり

その絶対であった強さが無くなろうとも

自分に忠誠を誓う配下を誇らしく思うが

態度や口に出す事はない。


そして、好き勝手する人間を睨む

人間と言う、不明瞭な存在より

悪魔の方が、どれだけ純粋な存在か・・・。


「おい、宮守、鎧女

 俺は一度、城へ帰る

 ベヒモスの件は昼からだ!」


そして、返事も待たず

蓮・ミカと、6人の悪魔は姿を消した。


 部屋の中からは

通路に並ぶアロンテック達の姿は見えなかったが

そこに蓮の仲間が居ることは理解していた。


 蓮の覇気を感じたのは、アロンテック達だけではない

街全体に広がった覇気だが

すぐさま消えたことで

住人は、リルか、マリアが対処したと思い

日常にもどるが

屋敷の1階では、未だに騒ぎは続いたが

リルの念話で、落ち着きを取り戻していく。


 メガネと言えば、気にせずラーメンを食べている


リルは、気にせず

「鉄雄さん、胡桃さん、茜さん・・と、クズ鎧」


「腐れメイド・・・。」


リルは、気にせず、茜の視線が向いたことで


「この世界が異世界と言われる世界だと理解は出来たと思います

 基本、行動は自由ですが、幾つか注意事項があります

 街には人間以外に、亜人、獣人と言う住民が存在しますが

 特に鎧女は、イキナリ殴りかかってトラブルを起こさないように

 細かい事はその場その場で、お伝えしますが

 1番守ってほしい事は【シオン】様の名前は出さない様にお願いします

 また、ある一定の相手であれば【変態】で通じますので

 あのお方の事は【変態】でお願いします。」


「まぁ、変態は変態だからな。」


「変態殿でござるからな。」


鉄雄、胡桃、茜は気にせず受け入れるが


「腐れメイド!

 私が意味もなく意味もなく、他人に手を出すとでもおもってるのか!」


 リルに兜を向け文句を言うアリスだが

リルは気にした様子もなく

「何か聞きたいことはございますか?」


「リル、ここに闇魔術か、呪い関係に詳しい人間は・・

 人間??なんでもいいや、誰かいるか?」


 リルの顔が少し歪む

だが、次の瞬間には何時ものリルとなる


「いますね、めんどくさいのが・・・

 ですが、鉄雄さんがなぜ?」


「あぁ、シスターを覚えてるか?」


「シスター?・・・ですか?」


 リルは少し視線をおとし目を瞑り

最近の記憶を思い出すが、そこにシスターは存在しなかった。

 鉄雄は、気にもしない

リルが、関係ない人間の事など覚えない

もし、覚えているならそっちのほうが驚くだろう。


「あぁ、造船所で、修道女の姿で【エア・マスター】と呼ばれてた

 【オーガスト】いや【サラ】か

 気になってたんで、井門さんに聞いてみたら

 【サラ】って名前も偽名だったけどな

 まぁ、あの人に掛かっている魔法の事を知りたいって事かな。」


「思い出しました

 ですが、私が見たところそんな魔法は掛かっていなかったかと?」


「あぁ、言うなら

 記憶の中に楔みたいなもんが刺さってる感じか?

 【変態】に聞いたら

 呪いに近い魔法か、闇系等の魔法、それか個人特有の (ユニーク)スキルだと。」


「そうですか

 ですがあちらの世界の魔法なら

 ギンなら対処できるかと?」


「あぁそれは変態にもいわれたんだけどな・・・・。」


「?」


「とりあえず、どんな魔法が掛かっているか知りたいんだ

 ギンなら解除ができると思うけど

 10年以上にわたる呪いの可能性がある場合

 記憶と言うか、脳に楔を打たれてて

 それを無造作に外したり解除したりしたら

 その後遺症や記憶障害とか考えると

 解除する前に、どんな魔法か知っておいたほうがイイかと思ってな

 だいたい、ギン相手だと、言葉の壁がな・・・・。」


 【銀】それは紫音の使い魔【北狐亜種 (シルバーフォックス)】である

ただ、ギンの言葉も念話も誰も理解出来ないのだ

理解できるのは、同じく使い魔の

【琥珀】と呼ばれる【西表山猫 (ヤマピカリャー)】なのだが

この琥珀の【言葉】も誰一人理解出来ないのだから

仕方のない事だった。


「分かりましたが・・・」


リルは部屋に近づく気配を感知し

話を早めに切り上げる


「ですが今、あのモブは外出中の様なので

 後ほどと言う事でよろしいでしょうか?」


「あぁ、帰るまででいいよ

 それより、木工職人のほうが大切だろ?」


 そんな時、廊下から

タタタタッタ

 ドッドッドッド

と走ってくる存在は

ドアの前で、武器を構え敵意を中の人間にむける


《リルねぇぇぇぇええ~~~?》


片手剣を持った、犬族の獣人【アドルフィオ】

遅れて部屋を覗いたのが

アドルフィオより体が大きく

両拳に手甲を付けた虎族の獣人【クルィーク】

人族に近いアドルフィオと違い、虎の姿に近い獣人である。


《ぐぅ?あの赤頭だと思ったが?》


 リルも2人の行動には理解できた

念話で大丈夫と伝えた物の

あの覇気は以前ここで暴れたレンの物である

だからこそ、そそっかしい、アドルフィオがプランタの静止も聞かず飛んできた

付き合いの良い、クルィークが付いてきた感じとなった

だが、それはそれである

リルは、2人に異世界の言葉で


《2人共、何なんですか?お客人の前ですよ

 恥ずかしい真似はよしなさい。》


《ごめんなさい。》


《ぐるぐぅ・・・。》


 2人を追って静かに部屋に入ってきた

綺麗な緑髪の女性は、透き通る綺麗な声で


《大丈夫と言ったはずですよ。》


 女性は2人のやんちゃ坊主に釘を刺すと

初めて見る4人に向かい

《はじめまして、みなさま》と

話を続けようとしたところで、リルが口を挟む


「プランタ、この方々はメガネと同じく

 日本と言う国の方々です

 日本語でお願いします。」


そう、鉄雄達にとってここは異世界であり

異世界の言葉など理解できなかったが

この屋敷では、日本語の授業があり

この屋敷で生活する者なら日常会話程度なら可能であり

意思加速が出来る者ならば

すでに日本語を覚え、日本人と遜色なしに話せるほどである。


「そうですか、日本の方でしたか

 改めて、ごあいさつを

 はじめまして、みなさま

 私は【プランタ】

 この屋敷に住むメイドの1人です

 御用があれば、言ってください

 この街は小さな街ですが

 楽しんでくださいね。」


丁寧な日本語で流暢に話すプランタに

アドルフィオは

「おい、こいつら日本人の癖にメガネかけてないぞ!」

クルィークは、そんなアドルフィオの頭を一度殴り

「モウシワケナイ、謝罪スル

 ソシテコノ、バカモ、ユルシテヤッテホシイ。」


クルィークが、アドルフィオの後頭部を鷲掴みにし

無理やり頭を下げさせ、自らも頭を下げた。


 そして、それに答えたのは、アリスだった

2人が部屋に入ってきた瞬間

アリスも腰の剣に手を掛けてしまったからだ

それは、2人が武器を持っていたからではない


2人の姿に驚いてだった

アドルフィオは、言うならば人間に獣の耳と尻尾が生えた人族に近い獣人だったが

クルィークは、虎に近い存在が服を着て後ろ足で立っていたのだ

だからこそ、本能が反応し剣に手を掛けた

いや、鉄雄が腕を掴まなければ、確実に抜いていただろう

そして、流暢に日本語話しだした存在に驚きを隠せなかったが

相手が勘違いであれ非を認めたのだ

そうなれば、この世界で言うなら一般市民?であろう存在に

一瞬とは言え、その騎士の誇りを誓う剣に手をかけたのだ


また、追先ほどリルに「無意味に他人に手を出さない」と口にした


全てに置いて騎士にして有るまじき行為である、騎士の名折れである


そんな非礼を詫びなければと


本物の獣人を見て、震える体を精神で押さえ込むと


「いや、私ももう少しで剣を抜くとこだった

 こちらの非礼も詫びさせてくれ。」


頭を下げる。


「あぁ、ゆるしてやるよ!!」とアドルフィオ


当然ながら、アドルフィオは、クルィークに頭を殴られ

無理やり頭を下げさせられた。


 アリス達の交流が終を告げると

静かに動き出したのが鉄雄と胡桃だった。


 2人はプランタの前に出ると

一度小さく頭を下げると


「はじめまして、プランタさん

 私は【宮守鉄雄】こちらが」


「妹の【宮守胡桃】です。」


「「今後共よろしくおねがいします。」」


 言葉短めだが、兄妹そろって丁寧に頭を下げた

プランタは気にもせず、笑顔で答えるのだった


「はい、おねがいします。

 今朝食の準備をしているので

 みなさんもご一緒にどうですか?」


 鉄雄にとって本来なら断る理由はなかった

逆に言えば、プランタと話してみたいが

胡桃が自分達の前以外で食事を取ることが苦手なのを考えると

ここは断るしかなかった。


「お誘いありがたいのですが

 これから用事がありますので

 またの機会に頂きたいと思います。」


「それは、ざんねんですね

 ですが、いつでも遊びにきてくださいね

 それでは、しつれいします。」


「はい、後で寄らせていただきます。」


プランタは嬉しそうに微笑むと

また静かに部屋を後にし

アドルフィオが、全身鎧のアリスに

「お前、強そうだな俺と」

そこまで言うと、クルィークに後ろから首を絞められ

「モウシワケナイ。」と

引きずられるように部屋からでていった。



 ただ、一連の鉄雄の姿に、リルもアリスも茜も驚く

そう、あの鉄雄が、他人に対し丁寧に頭を下げる姿など見たことがないし

丁寧な対応に驚いていたのだ、ただし、メガネを除いてだが。


代表するようにリルが


「鉄雄さん、プランタは人間で無いので惚れても無駄ですよ?」


そう、プランタはトリアード(植物精霊)である

長く美しい緑色の髪、その容姿はエルフと同じくとても美しく

人間でいうなら、25歳前後の落ち着いた大人の雰囲気を漂わす女性

リルや、マリアなどとは、方向性の違う美女である


そんなリルの言葉に、アリスがその眼光を光らせ嫉妬心に火を灯したが

鉄雄は、アリスを無視して、アリスにとって意味不明な言葉を口にする


「何をいってんだ?

 まぁ、あの人の美しささは認めるけどな

 その実・・・千年を越す樹木・・・いや

 数万年の時を重ね刻んできた御神木の神々しさだぞ

 それでいて、若木の様な生命力と朝露を浴び朝日に輝く美しさ

 そんな御神木の精霊、神だろう人物に対して

 失礼の無いように接するのが当たり前だろ?」


となりで胡桃も何度も頷く。


 事、木材・・いや、その仕事に関する事に対して

異常なまでに反応し、それを先入観無しに理解する2人に

「これが、シオン様のおっしゃていた宮守家の血ですか・・・。」

と、リルは納得をするが・・・・

胡桃が初対面のプランタに対し

鉄雄の後ろに隠さず丁寧に挨拶を交わした事に

多少なり嫉妬に近い感情を抱いたことは確かだった


 それは、リルが肉体を得て胡桃と逢ってから

会話が出来るまで長い時間を要していたからだった。


「神木・・・

 そうですね、木々を纏める存在と言うならば

 それに近い存在ですね。」


「あぁ

 彼女と比べると日本の神木なんて赤ちゃんみたいな物かもな・・・

 神に近いあれほどの存在は、俺達の世界には無いな

 さすが異世界、神とか本当にいるんだな

 信じてなかったが、ティオーノ先輩が【魔王】とか自称していたけど

 本当に、魔王とか、悪魔が居るのかもな・・・。」


 リルにとって

神とはシオンであり

魔王、それは、蓮であり

悪魔はミカである

そう、あの世界にも、神や魔王、悪魔は存在するが

あえて口にすることはなかった。


「アリス、茜、俺達はドンガって人に会いに行くけど

 2人はどうする?ここで待ってるか?」


「拙者も行くでござるよ

 ついでに、この異世界と言う物を見学したいでござる。」


「あ、テツ・・・私だけ置いていかれても、こ・・困る。」


「茜はいいけど、アリスは驚いたからって

 さっきみたいに剣を抜くなよ。」


「し・・・仕方ないでしょ

 虎よ虎!体が・・・・」


 虎という言葉に、リルの視線がアリスに突き刺さる


「さすがに、私のかわいい子供を【虎】呼ばわりは

 少し腹がたちますね。」


「いや、すまない・・・

 未だに自分の見ている物が、夢か幻ではないかと・・・

 そんな風に頭の理解が追いつかないんだ。」


「・・・・・・

 ここに居る子供達は、人間以外にも

 獣人、亜人と言った存在が沢山おりますが

 意味もなく他人を襲うような存在はおりませんし

 そんな躾はしておりません

 もし、私の大切な子供達を

 侮辱する行為や、傷付ける行為をしたなら

 その報いは受けてもらいますよ。」


「すまない

 騎士に有るまじき行為だった

 深く謝罪する。」


アリスは、頭を下げるのだった。


 そして、リルの案内で屋敷を出て街に繰り出そうと動き出すのだが

そんな、一部始終を携帯のビデオ録画機能で移していたのはメガネ。


 植物精霊のプランタと、大工の鉄雄の初対面である

鉄雄がプランタの本来の存在を認識できるのか?

そんな疑問は、鉄雄の口から語られた事で答えは出るが

メガネにしてみれば、予想の中の1つでは有ったが

それは、ほぼ有り得ないと考えていた予想の1つ

だからと言って驚く事はなかった

それこそ、その可能性を口にしたのが、紫音であったからであり

目の前の現実に、それこそメガネは

「まぁ、鉄雄さんに胡桃さんですし

 それを、予測した紫音さんも、紫音さんですが・・・。

 まぁ、面白い映像も取れた事ですし、よしとしますか

 ついでに、子供達の様子でも写していきますか。」

と納得するのだった。


 メガネも、シオンも、鉄雄のスキルの事は多少は知ってはいるが

その全部を知っているわけではないのだった。


 屋敷の廊下に出て、玄関まで移動する最中


リ「鉄雄さん、胡桃さん、茜さん

 3人共あまり驚かないのですね?」


鉄「まぁな、俺と胡桃は

 こっちの世界に行き来するリルを知ってたからな

 多少は驚いても、それほどまでじゃないな。」


 胡桃は小さく頷いて同意する。


茜「拙者は、変態殿の事でござる

 どんな事があっても驚きはせぬツモリだったが

 さすがに・・・・・

 これ程の秘密を隠し持っていたとは

 驚きより、悔しさが先に立つでござる・・・。」


鉄「は?くやしい?」


茜「そうで、ござるよ

 これ程の資料に、ネタの山・・・・

 今までなぜ、拙者に教えてくれなんだと!!」


鉄「あ、それはわかる

 俺もあれほどの細工師が居る事を知ってたなら

 もっと早くこの世界にきたかったぜ。」


ア「3人とも、恐くないの?異世界よ?

 本物のモンスターがいる世界なのよ?

 それを考えるだけで・・・・

 私は震えを抑えるので精一杯なのに。」


鉄「たかが異世界だろ?」


茜「新しいネタの前には些細な事でござる。」


 アリスは絶句であった、鉄雄の異常性は知ってたがここまでとはと・・

そして茜も小等部の時、1度同じクラスになった事はあった

だが、会話や交流と言う記憶は無かったが

現状の異世界と言う有り得ない状況すら些細な事と・・・


アカネは、もう何を言っても無駄と判断するのだった。


鉄「なぁ、リル?」


リ「なんでしょう?」


鉄「あの変態が居ないから聞くんだけど

 なんで今更、俺達が異世界に来ることを、あの変態が許可したんだ?」


 それは2年ほど前、鉄雄が木刀に使われた木が気になって

異世界に行きたいと言ったとき、紫音は断ったのだ

深くは追求しなかった、何かの理由があるのだと判断したが

今回は、自分以外にも、胡桃や、アリス、茜まで異世界に来たのだ

鉄雄にしてみれば、不思議でならなかったのだ。


り「そうですね、一番は計画の狂いでしょうか?」


鉄「計画?」


リ「本来なら、あちらの世界の人間

 鉄雄さんや、胡桃さん、蘭さんがこの世界に来るのは、3年ほど先の予定でした

 受け入れ態勢として、この屋敷の子供達は

 日本語の読み書きが出来るようになってます

 (子供達にすれば、ゲームやマンガと言った媒体を楽しむ為で

  その快楽意欲が、予想を超える速さで、日本語を覚えていた

  その分、ゲームやマンガに興味を示さなかった

  青年、成人以上の存在の方が覚えが悪かった。)

 そこに、イレギュラーが発生しました

 それがこの世界の出身者である蓮さんです

 彼の存在で計画が前倒しになって行き

 そして、先日、そこのクズ鎧が異世界の存在を認知したことで

 あのお方は思ったそうです

 【ま・・・どうでもいっか(笑)】と。」


そう、計画をまる投げしたとリルは言ったのだ。


 その言葉に、鉄雄も胡桃も茜も、呆れながら納得したのだった。



 

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