13話 予選・終了 ニニス・・・・泣く・・・・。
HクラスvsJクラス
その決着が付く少し前
【鳴子】の叫びと【十士族】の言葉で
会場を覗いた1人の女生徒がいた。
彼女は、1年生の為
2年・3年の模擬戦の予選に興味はなかったが
その予選を観戦する【四条優美】は尊敬する先輩であり
そして、その中で暴れる寸前の桜色の髪を揺らす少女や
傍にいる数人の先輩も、尊敬する先輩達でもあった。
急いで先輩の元に走り寄っていく
そんな時、Hクラスの上位魔法が飛び
大爆発が起き会場内外は騒然とするが
元々試合内容も、ニニスが攻撃されていた事を見ていない少女は
気にせず、先輩の元に走り寄ったのだった。
会場では、雰囲気の悪い男が叫びを上げた
そして、桜髪の少女が
嬉しそうに両手を上げ
「なぁ~にぃぃ~~さらぁぁしぃ~てぇ~~んじゃぁぁぁ~~。」
と叫ぶ。
先輩達の緊張が解けた事を理解した少女は
一番話しかけやすい、栗色のポニーテールを揺らす先輩に声を掛ける。
「かんな先輩!」
かんなは、制服では無い姿に、それが誰か一瞬戸惑ったが
かわいい後輩の1人である少女が誰かすぐ気づき
「涼子ちゃん?どうしたの?
それにそれは、野球部のユニホーム?」
「え?ハイ
(通常)女子硬式野球部です。」
2人の会話で、鈴達も気づき
鈴「涼子ちゃん、野球部だったんだ。」
夏「涼子は、小等部から活躍していて
中等部では期待の次期エース投手なんですよ。」
いったいどこで得た情報か
夏目は当たり前の様に、鈴達に伝える。
鈴・か「おぉ~~~!!」
涼「え・・いえ、それよりも・・・」
この時、涼子の目に飛び込んできた光景
ソレは、すでに魔術符結界が壊され
無防備となった
鈴と同じくらいの身長の、きぐるみの少女が
雰囲気の悪い男に踏まれる姿。
涼「ア・・・アレは・・・。」
鈴は、ため息しかでないが・・・。
鈴「アレは気にしなくていいよ
あの2人にとったら
じゃれあって遊んでいる様なものだから。」
頭を踏まれ、地面に倒れ込んでいる少女が
楽しんでる?遊んでる?え?
言っている意味が理解できない涼子
涼「それでも・・あんな小さな子供を踏むなんて、ひどすぎませんか?」
その言葉「小さな子供」は
涼子の知らない所で鈴の心をエグル・・・。
か「あの男、すごいでしょう。」
涼「何か・・不気味だし・・・
ひどすぎます!」
か「アレね、鈴ちゃんの双子のお兄さんで【紫音】君。」
涼「・・・・・・・・・・え?」
涼子は驚き、かんなを見る
そこには、自身の驚いた顔を楽しむ、かんなの顔があり
涼子の視線は、そのまま鈴に向く・・・。
そこには、かんなに知れた事で
その内、まわりの友達に知れ渡る訳で・・・と
内心すでに諦めた鈴がいた。
鈴「まぁ・・・あんなんだけどね
かんなが言った事は事実だと・・・思うよ。」
それは、精一杯の抵抗であった・・・。
涼「え?・・・
あ・・
あの・・・
すいません・・
ごめんなさい・・・。」
尊敬する先輩の兄に対して、悪口を言った自分に気がつき
そして考えもなしに他人を、侮辱した行為に
小さくなり肩をしぼめる涼子だった。
鈴は涼子に近寄ると
申し訳なく小さくなった涼子の頭を撫でると
「気にしなくていいよ
アレ(紫音)は、好きでやってる事だし
まぁ、ほんと、オタク丸出しだね
それに変態だし、バカだしね。
それに踏まれている、ニニスだって、あ!
ニニスは、あのきぐるみの女の子ね
あの子も、変わり者でね
踏まれている事なんて
何時もの事で、たぶん今も笑っていると思うよ。
こんど、ニニスを涼子ちゃん達にも紹介するね。」
もしうしわけなさそうな涼子は
頭を撫でられて少し恥ずかしそうに返事をし
「はい!
でも・・・鈴先輩・・。」
「ん?なに?」
「お兄さん・・・が・・・。」
この時、愁とカレラによって
紫音は地に倒れていた。
「あぁ、アレ
気にしなくていいよ
どうせまだ、これから・・・・・・。」
そして、タコきぐるみのだった
4本の腕が爆発し、その直撃を受けた紫音は
まさに、ボロボロ、屍と化す寸前となのだった。
爆風が収まり・・・
ボロボロとなり、戦闘不能と成った紫音を見て鈴は
(ボロボロになってる・・
いつも張っている物理防御スキルを使ってれば
そこまで、ならなかったハズなんだけど
模擬戦だからって、スキル全部切るって
あの変態、無駄に真面目か!!!
まぁ、自業自得!だからいっか。)
「うん、あぁなるから。」
流石に、コレには涼子も驚き
「え?・・・大丈夫なんですか?」
鈴「気にしない気にしない。」
笑って答える鈴。
ニニスの置かれている状況をずっと見入っていた優美は
爆発で無事な、ニニスを確認し
逆に、爆発でボロボロになった紫音に驚く
アノ、紫音君が・・・ボロボロに?
優美の頭の中では、GWの紫音の姿が強く残っており
紫音は桜を越える強さを持った存在?かもしれなかったが
それが、為すすべもなくボロボロになった事に驚くも
流石に、愁とカレラに、ボコボコにされていたのに関わらず
爆発を直撃したのだ
さすがに模擬戦でも、過剰な物理攻撃では?
火薬の使用は禁止されてはいないが
あれは・・・さすがに・・・・と
優「まって、鈴、流石にあの爆発は大きすぎない?
紫音君は・・本当に大丈夫なの?
それにアレは魔法ではないですよね
完全に爆薬を使用した爆弾、誰があんな事を・・・。」
鈴「誰って?」
(何言ってるんだろ
致死量ではないけど
あれほどの爆弾を平気で使う
人でなしな事をするのは
私の知る限り2人しかしらない。)
「決まってるじゃん
アレ全部、紫音の仕業だから。」
優美・かんな・夏目は思い出す
それは、ニニスが時々昼休みに自慢していた事だ
ニニスの【きぐるみ】それは、自国でのオーダーメイドでもあるが
学園に着て来る、きぐるみの半分以上が
紫音の手作りの、きぐるみなのだ
そして、ニニスに言わせると
自国の高級ブランドでオーダーメイドする、きぐるみより
紫音の作る、きぐるみの方が着心地がいいらしい
そんな自慢をよく聞いていたし
先ほど、他クラスの観戦途中にニニスから聞いたのが
今着ている【クラーケンのきぐるみ】は
今日の模擬戦に合わせて紫音から貰ったきぐるみだと
6本の腕を動かしながら
嬉しそうに自慢していた事を思い出したのだ。
そう、アレは紫音が作った、きぐるみであり
その、きぐるみの腕が爆発した
そう、きぐるみに爆弾を仕込んだのは、紫音だった・・・。
タコの足の爆弾を仕込み
タコが膨れて、たこ焼きに成るなんて
非常識にも限度があるだろう・・・と・・
いったい何を考えているのか・・・
何を目指しているのか・・・
頭を悩ませる、優美や、鈴、夏目だったが。
クズクラスの人間には
何時もの事でもあり、これくらいの爆発や
紫音の暴走など今までに何度かあったし
さほど騒ぐことはなかった。
カレラは、ニニスさえ楽しめれば良く
アリスは、そこまで考えが至らなかったタコの足(爆弾)に驚き
それに、反応していた、カレラの判断に驚き
悔しさがこみ上げてくるのだった。
桜も深く考えておらず、きぐるみの変化を楽しんでいた。
かんなは、きぐるみと言う条件の中で
アレ程のギミックを詰め込んだ、紫音の技術に驚くのだった。
************
2年Hクラスのシンボルが破壊された事で
2年Jクラスの勝ちが決まり
試合の解説役である【海二】は
暴れる試合実況及び試合進行の今にも飛びだしそうな
【鳴子】の腰をがっちり押さえたまま
インカムマイクで
Jクラスの勝利を校内放送で告げるのだった。
会場では、悔しがるHクラスを尻目に
クズクラスの選手が集まるニニスの元に
シンボルを破壊した立役者である【鉄雄】が
戻っていくのだった。
勝ったクズクラスだが
元々、どう転んでも勝つことは分かっていたので
それほど騒ぐほどの事でもなく
鉄雄は【キジ】や【冠】と軽くハイタッチをしたくらいであった。
【たこ焼きぐるみ】状態の【ニニス】
それを揺らすのは、たこ焼きぐるみと同じような体格の【太志】
たこ焼きぐるみの中から微かに聞こえて来るのは
ニニスの笑い声であった。
【カレラ】は、それを微笑ましく見守りながら
アグラをかいて座る【愁】に手を伸ばす
爆風で吹き飛ばされた愁、それなりにダメージを喰らうが
鍛えた肉体には、それほどダメージは無く
受身もきちっと取っていた
その視線は、紫音を睨みつけていた。
だが、愁も、さっき用具室で紫音を殴り
数十秒前には、武器で薙ぎ払ったのだ
コレには説明できる正当な理由があったが
多少過剰な攻撃だったと、多少は反省しているし
今の仕返しをしても、相手は戦闘能力の無い紫音
それに、仕返しとは自身の復讐だ
爆弾を察知できず、喰らってしまったのは
自身の鍛錬不足、それを紫音にぶつけるのは
イジメでしかないだろうと・・・
爆弾に関してどうこう言うつもりはなかったが
腹が立つのは仕方がなかったが
カレラに「怖い顔ね。」と言われ
両手で自身の顔を軽く叩き
小さく顔を振ると気合を入れ直しカレラの手を取って立ち上がるのだった。
そして、もう、やる気が無く
自分で動く気も無い【紫音】は
ボロボロの状態で地面と抱き合う。
【たこ焼きぐるみ】
その中は、ニニス1人なら、どうにか身動きできる空間が確保されていた
そして、着ていた、タコきぐるみが
たこ焼きぐるみに成った事で
きぐるみを脱がされたニニス
今のニニスは、かわいい白色のカボチャパンツに
かわいい猫の顔のイラストの入った、子供用のキャミソールとなっていた
ちなみに、どちらも高級ブランド物だ。
だが、この、きぐるみを作ったのは紫音である
そこは抜かりがない
空間の内側の壁に、貼り付けてあった
薄っぺらい白い服らきしものが・・・。
ニニスは、嬉しそうに新しい服らしきものに手を掛ける
たこ焼きぐるみを、太志に揺らされながら
小さな空間で、転がりながら服を着る。
初めて味わう、アトラクション的な状況に、ニニスは大満足である。
着替え終わると
たこ焼きぐるみの外部を映し出しているデバイスに視線を送ると
映像を映写していたデバイスの頭に
赤いボタンがあり、ご丁寧に【脱出ボタン】と書いてあった
そう、着替え終わったニニスは
この中から出るために、何の疑いもなしにボタンを押した。
ニニスの・・・いや、たこ焼きぐるみの周りには
愁達が集まっており
高等部、放送部が放送していた校内放送も
海二、1人の力で無事終をつげた。
同時に、本日開催した、予選、全4戦が終り
ネットの動画サイトに放送されていた
映像も、終了したのだった。
放送と、動画サイトでの放映が終わり
もういいやと、海二は、今まで捕まえていた存在から手を離した。
そうこれで、晴れて好き勝手動ける様になったのは
【ぬいぐるみ大好き】堂故鳴子だ!
机の上から飛び上がり
そのままフィールドの中心に向けて走り出した
向かう先は、屍の様に転がる男
ある程度の距離まで詰めると
左手を屍に向けて魔法を発動させた
鳴子の傍に風の槍が3つ出現し
そのまま紫音目掛けて発射された!
風系の中級魔法【エアランス】
高回転する風の渦のランスであり
貫通力よりも、衝撃時に風の力で周りを切り裂く効果が高い。
鳴子は、後衛より魔法使い的存在であり
高等部放送部部長である、それなりの実力者なのだ
それは、中級魔法を3つ同時発動出来ることからも分かる。
そして、見事に屍に当たった・・・かに見えた。
紫音の人道を外れた、最悪な行動を目にしてきた観客は
その鳴子の仕打ちに、おおいに沸いたが・・・。
当たった場所に浮かぶ、魔法防御結界が3つ
それによって、ほぼ紫音は、エアランスのダメージを受けない
それに対して、会場ではブーイングが起こるのだった。
そして、その結界魔法は【優美】の魔法である。
試合が終わり、本日の予選工程が終わったことで
フィールドに入る事が自由となり
鈴達はニニス達を祝うため、フィールドに足を踏み入れていた。
鳴子は、魔法を止められ
「だれ?」
それに返答した、綺麗な声
「先輩、なにがしたいのですか?
選手でもなく、彼に全く関係ない貴方が
この生徒を攻撃する事は
私が許しません。」
鳴子の視線の先には
凛と立つ四条優美の姿があった。
観客も、四条が鳴子の行動を止めたことで
これ以上は、やばいかと・・・
騒ぐのをやめ、静かになっていく。
さすがに鳴子も【四条】相手に強くは出れない
「かれは・・・あんな少女を
私のきぐるみちゃんを足蹴にしたんだ
敵ならいざ知らず、仲間である少女を
それは、罰に値するものだと!!」
優美もそれを言われると、心の中で
「そうです、ニース様を踏みつけるなんて
有っては成らない由々しき問題です。」と
先輩の言葉に同意したいが・・・・
もうそれに関して、カレラから事情は聞いており諦めていた。
「それは、踏まれた本人が許可していますので
なんら問題はありません!」
「本人が許可?
意味が・・・分からないんですが?」
2人の会話に入ってきた人物がいた。
「うるさいなのね
【クラーケン】は踏まれてないなの
足で頭を撫でられてただけなの~~~~~。」
8本の白い腕を操り、楽しそうに笑う【大王イカ】ニニスがそこにいた。
脱出ボタンを押したニニス
それにより、たこ焼きぐるみは
中の空気が抜け、しぼんだ風船の様に縮んでいく
その中から出来きたのが、大王イカのきぐるみを着たニニス
白い服、それは、薄っぺらいイカのきぐるみだった。
そして、ニニスの言う【クラーケン】
ファンタジー物の本に海の魔物として出てくるのだが
書物によって【タコ】の魔物であったり
【イカ】の魔物であったりと詳細は不明であるが
海の魔物と言う意味では、タコもイカも【クラーケン】なのだ
そんな、大王イカニニスを見て鳴子の目が血走る。
「私のきぐるみちゃん!!
可愛すぎる!!」
そして鳴子は
ニニスに抱きつき抱擁す・・・・・る・・。
強く抱きしめ、その両腕は
ぬいぐるみを堪能するかのように
ニニスのきぐるみを撫で回し
ニニスの顔に、頬を寄せ頬ずりする
その瞬間・・・・。
✖✖✖✖✖!!!
言葉では言い表せない音・・
そして、いつまでも耳に残り記憶から消せない音がした・・。
そして、そこには、紫音より無残な
高等部放送部部長の姿が横たわる。
きっと、モザイク処理が必要なほどに・・・・。
騒然とする・・・会場・・・。
カレラは、ニニスに近寄ると
「ねぇニニス、耳にタコが出来るほど言いましたよね。」
その言葉に、ニニスの白い肌が青く染まっていき
「違うのなの、エルノ!!
あれは、奴が悪いなのよ
かってになの、ニニスを触ったなのよ。」
「ええ、みてましたよ
ですが、もうしないと約束しましたよね?」
カレラの冷静な静かな声が響き渡る
そして大王イカの耳が、前に垂れ下がり
どんどん小さくなっていき
ちいさく・・・・
震える様な・・・
かぼそい声で・・・
「だって・・・
なの・・・
かってに・・・
さわった・・・
なの・・・・。」
そして・・・・
「だって
だってぇぇぇぇっぇぇえええ
ううう・・・・
うわぁぁぁぁ~~~~~ん」
そこには、泣きじゃくる9歳のいたいけな少女が存在した。
ニニスは天才だが
その心は知能と違い
未だに9歳の年相応には程遠く
精神的な年齢は9歳に満たない幼い女の子だ
その心が、精神が、未だに不安定なニニスが
両親よりも、何よりも怖い【カレラ】に怒られたのだ
そして、世界で最も信頼する【カレラ】に怒られた
その恐怖は、計り知れないものであり
ニニスは、パニックを起こし何も考えられなくなり
頭の中も心も、ぐちゃぐちゃとなって泣き叫ぶ。
だが、カレラはその手を緩めない
それは、カレラなりの教育方針でもある。
そんな、カレラと、ニニスの間に割って入れる人間など・・・居た。
ボロボロになった男は立ち上がると
ゾンビの様に、だらけた体を左右に揺らし
地面に縮こまり丸くなって泣きじゃくる
ニニスに近づく。
そして、何のためらいもなく
その頭に右足を乗せ
大空を仰ぐほど両腕を大きく開き叫ぶ。
「ハッハッハハ!!
泣け!
わめけ!
そして叫べ!!
俺こそ、最強だぁぁぁあ!!!」
泣き叫ぶ幼気 (いたいけ)な少女
その頭を踏み潰し、狂ったように叫ぶ姿は
常軌を逸し、尋常では考えられない
異質であり、精神が錯乱し、狂気に満ちた姿の姿がそこに存在した!




