11話 予選・開始 人の心を弄ぶ非道なる作戦
模擬戦予選・第4試合が今開始されようとしていた。
模擬戦、その対戦に置いて
幾つか決められた項目がある。
【デバイスと、登録番号】
各クラス毎に、チームカラーが有る
これは、年間を通して使われるので、新学年となった4月に決められる
上位クラス優先で、色が選ばれていき
同系色の色は不可となる。
選手は、1から99の数字の番号を付ける
これは、同じクラスで被らなければ、好きな数字を選べる。
これらは、模擬戦の情報を写すモニター表示するときに分かりやすくするためでもあり
表示されたHPなど見やすくするためでもある
モニターに映った選手に赤色の11のマーカー数字があれば
モニターの全選手のHPが表示されるその中の赤11と直ぐに照らし合わせれる
選手の名前を知らなくても、誰がどれくらいのHPかがすぐ分かる仕組みである。
また、スマホなどのアプリを使い、選手にカメラを向けると
選手の名前や、簡単な情報が見れたり
リアルタイムで配信されている動画サイトへのメッセージの書き込みも出来たりする。
魔法デバイスとは別に
学生証である、デバイスの所持が義務付けられている
これは、上記に使われる、選手情報や、HP管理など
模擬戦のシステム上、必需とされる物である。
【対戦フィールド】
その都度、多少広さは変わるが
基本、横長のフィールドであり
正方形のフィールドを3個並べた形となる
中央のフィールドを中立フィールドとし
隣接するフィールドは自陣・敵陣となる。
また、フィールドには
森林フィールド・市街地フィールド・砂漠フィールドなど
数種そんざいする。
【顔合わせと、戦闘準備】
試合開始前、フィールド中央で、選手同士の顔合わせがある
模擬戦とは、ルールに法った試合であり
礼儀礼節を重んじ相手に敬意を持ち挨拶を行う物である。
だが、近年では対戦相手が誰なのかを確認する意味と同時に
威嚇や挑発といった、対戦前に相手より優位に立つ為の、ガンの付け合いともなってもいた。
顔合わせが終わると
自陣、敵陣を隔てる様に
中央フィールドの真ん中に
不透明な大きな結界魔法が張られ
相手陣営のフィールドが見えなくなる
この間約10分
この間に、自陣シンボルの移動や、戦闘準備や
対戦相手に合わせた作戦変更などを行う事となり
試合開始のカウントダウンがあり
試合開始と同時に結界魔法が取り除かれ
模擬戦試合開始となる。
【戦闘服とプロテクター】
模擬戦とは、戦闘であり
怪我をする事は前提で進められる
学園では、体操服とは別に訓練服と言うものがある
俗に戦闘服と呼ばれる物である
ナノメタルファイバーと呼ばれる繊維で組まれた其れは
自衛隊でも採用される、防御力の高い布で作られている。
また、戦闘訓練用の各所プロテクターや
フルフェイスのヘルメット、ハーフフェイスのヘルメットなどは
学園側から用意されている。
これらを使えば、防御力は大幅に上がり
ダメージは大きく軽減されるが
これらの着用は任意である。
模擬戦での服装は根本的に自由である。
模擬戦とは、自身の個を示す場所でもあるため
制服で無くても良いのだ。
もともと【甲冑組】と呼ばれる生徒は普段から鎧でもあり
それ以外の生徒の中にも、色々な流派や戦い方があり
それに合った服装と言うものがある為
選手の服装に、制限はない。
【武器・防具・道具】
真剣など、あからさまに殺傷能力のある物は禁止である
模擬戦用の代用武器がない場合
簡易凝固剤を使い、刃の部分を覆えば使用可能となる。
武器、防具や、使用する道具に関して
大きさ重さ量に制限は無いが
個人の力で持ち運べる物とする。
(強化魔法で持ち運ぶ事は可能
数人で、持ち上げ運ぶ事は可能
デバイスアーマーなど、ロボットの様な物で運ぶ事は不可
台車や荷台の様な物で、運ぶ事も不可)
*************
フィールドの真ん中で
顔御合わす、2-Hクラスと、2-Jクラス
クズクラスと呼ばれる、Jクラス
その全員が、自身の好きな姿である
そうといっても、普段の制服ですらほぼ、好き勝手あるため
ある意味、普段と変わらない姿である。
それに対し、Hクラス
下位クラスではあるが
ある意味、通常クラスより好戦的な人間が多いい
もともと、Jクラスに落ちなければ
後はどうでもいいと言う、やんちゃな連中の集まりが下位クラスである
実力に自信のある5人は、攻撃的な私服であり
残りの4人は、防御専門か、学園の戦闘服とプロテクターに身を包んでいた。
Hクラスの9人の男達は、Jクラスの選手を見て笑う
クズクラス、宮守や、カレラは予想どうりだが
まずは予想どうりの、栄斗
自分達は全員男、ならば栄斗は瞬殺である。
そして、9対8、まずは数の有利と予想していたが
どう見ても、数に入らない存在が、栄斗以外に2人も居たと笑う。
1人は、タコのキグルミを着る、小学生?
どう見ても、強そうではない
もしかして多少魔法が使えるかもしれないが
数の内には入らないだろう。
そして、既に死に体の男
何をしたいのか分からないが
クズクラスで一番の【クズ】の、あの男と言うことは
見ただけで分かる、クズの上に、既に死んでいる
数えるだけ、無駄というもの
こうなれば、9対6
宮守に正面から勝てるとは思ってないが
数の有利を使って、シンボルを壊すことは
可能な数字だと、これなら勝てると
その笑いを堪えきれずニヤニヤと笑みを溢すのだった。
Jクラスは、Hクラスの勝利を確信した、うすら笑いを無視する
そもそも、Jクラスからしてみれば、まぁ当然の状況でもある。
紫音は初めから数の内に入っていないし
エロトも、他のクラスからしてみれば
選手から女性を省けば、無力化出来る
ある意味、初めから9対7であったし
ニニスも、見た目選手に相応しくない
簡単に勝てると思ってるだろう
そんな、Jクラスの選手を見れば
相手選手が増長する
だが、それもある作戦の内でもあった。
試合前の顔合わせも、ほぼ会話も無く
クズクラスを挑発するHクラスや、ガンの飛ばしあいで終わり
戦闘準備の為、結界魔法でフィールドが分断された。
作戦等の準備にかかる、両クラス・・・。
そんな、10分間の間を埋めるかのように
スピーカーから流れてくるのは・・・・。
「さっさと初めて、さっさと終われよ・・・・。」
「まぁまぁ、鳴子先輩
コレが最後なんで、もう少し我慢してくださいよ。」
「こいつらは(選手)はいいよ
私は、コレが終わっても、報告のレポートが有るんだよ。」
「僕、石間海二だって、有りますよ。」
「あ?
解説のお前と
進行、実況の私とはレポートの量が違うだろ量が!!」
「そう思うなら、少しは仕事してくださいよ
進行、実況、解説、全部僕、石間海二がしてるじゃないですか?」
「ついでに、レポートもやってくれ。」
「鳴子先輩、貴方、(高等部の)放送部の部長でしょ?
それくらい自分でしてくださいよ。」
「チッ!
使えないな、先輩の言うことを聞けよ
それでも体育会系かよ!! 」
「僕、石間海二は鳴子先輩は尊敬してますが
それと、これは、話がべつですよ。」
「お前、さっきから、一々自分の名前を言いやがって
なにか?私をイラつかせて、喧嘩でも売ってるのか?」
「いえいえ・・・そんなつもりは・・・。」
この女性、名を【堂故 鳴子 (どうこ なるこ)】といい
天堂学園高等部3年、放送部の部長である。
もう1人の男性、名を【石間 海二 (いしま かいじ)】といい
天堂学園高等部2年、戦闘魔法研究部の副部長である。
そんな、2人の会話を、眉間にシワを寄せて・・・
お前ら、座って遊んでるだけだろ!!
こっちは、肉体労働だんだぞ!!と、睨むのが
フィールドで結界魔法を遣う、審判長の【ケルマン・ロドロネス】
天堂学園高等部3年、オールフリー(魔法戦闘)部の部員である。
中等部の模擬戦
それを裏方で支えるのが、高等部である
進行、実況は、放送部が行い
戦闘の解説は、魔法に詳しい部活が持ち回り(くじ引き)で行い
審判は、体育会系の部活に所属する、ランカーが指名される。
中等部模擬戦、決勝の進行、実況は放送部の晴れ舞台である
代々放送部部長が行うのが、放送部の伝統であるが
その代わり、部員の誰もがしたくない
予選の進行、実況を行うのも部長という伝統でもあるのだ
鳴子は、いやいやながら進行する・・・
いや、予選第一試合・・・
その時はまだ、開始数分は、進行していたが・・・
守りを固め、動きのない試合状況に
匙を投げた鳴子・・・・
それ以降、第2試合では
圧倒的な3-Jの強さに一瞬マイクを握ったが
第3試合からは、面白くない試合にやる気を削がれ
全てを石間に押し付け、ほぼ愚痴っていた。
石間も無理やり押し付けられた解説だが
もしかしたら、クルージングに行ける可能性も有るかと
それなりに、解説をしていたが
第2試合で、3-Jを応援する
奇特な存在に目を向け
その少女達の中に試合を観戦している
四条優美の姿を見つけたのだ。
驚く石間、瞬間的に鳴子先輩に視線を送るが
鳴子先輩は、気が付いてない様子
その事を告げるかどうか悩んだが・・・
ふと脳裏によぎる
これは、自分の事を十支族・四条家に売り込むチャンスではないか?と
そして自分が、出来る男と言う事を
ちょくちょく放送の中にいれ
自分の名前を連呼することで
その名前を四条優美に刷り込もうとしていたのだ。
姑息である
だが、それが石間海二と言う男でもあった。
***********
フェールドを結界魔法で遮られると
ニニスを中心に集まる、クズクラス。
栄斗はやる気の無い顔で呟いた・・・
栄「おかしくないか?」
愁「なにガ?」
そしてまるで、魂からその言葉を吐き出すように・・・
栄「女の子が1人もいないよ?
なんで?
かえっていい?」
愁「とりアエズ居ろ!」
栄「えぇぇ~~~~・・・・・。」
うなだれる、栄斗を無視して
愁はニニスに話しかける。
愁「ソれで、ニニス。」
ニ「ナニなの?」
愁「本当ニ・・・・・いいノか?」
ニニスは、赤い6本の腕を空高く掲げ答える
ニ「いいなのよ!
ニニスは無敵なのなの!!
シオにデバイス強化してもらって
魔力流動率を1、5倍まで上げてもらったなのよ
操作術符も、2倍まで数を増やせたのなのよ!!
無敵なの、今ならなの
レンでも、サクラでも、四条優美、3人相手でも
絶対まけないなの~~~~~~!」
ニニスは6本の腕を唸らせながら叫ぶ。
それは、少し前、紫音に強化してもらった、魔術符結界を
四条優美と、桜に、ボロボロにされたのだ
そして、またもや、紫音に泣きついたニニス
魔法自体には、もう強化する場所は、ほぼ無かった為
紫音が目を付けたのが、ニニスのデバイスだった
そうといっても、1国の姫が使うデバイスだ
世界でも有名な、超一流のメーカーであり
天才ニニスが、それを自分用にカスタマイズしているのだ
ニニスも、デバイスはこれ以上能力上昇出来ないと思っていたが
メーカーがデバイスに設置している
各種上限リミッターがあるのだが
紫音は、それを限界までオーバークロックし
そのうえ、ある【ブラックボックス】システムを
ニニスに無断で組み込み
そして信じられない性能のデバイスを作り上げたのだった。
1年前、ニニスの魔術符結界に紫音は手をいれ
それ以前より消費魔力も抑えられ
その結界能力も強力となったが
今回、紫音のデバイス改造によって
紫音が考える、この世界の常識範囲内で限界まで
ニニスのデバイスと魔法を強化した。
実際やろうと思えば、ニニス1人なら
核爆発の威力すら防ぐ結界を組むことは可能であるが・・・
それはすでに、魔術符結界の原型を止めないだろうし
変な所で、マジメ(手抜き)な紫音がそこにいた・・・。
そして今の仕様は、限界値まで魔力、魔術符を使った場合
その結界維持ですら、多大の魔力を消費することとなるが
天才と言われる、ニニスの魔力保有量は、学園でもトップクラス
その為、紫音の想像通り、上級魔法を越える仕上がりになっていた。
ニニスは、そんな自慢の魔術符結界に絶対の自信を持っていた。
【ブラックボックス】システム
それは紫音と蘭が作り上げた、新世代の魔法デバイスシステム
数世代飛び越えた、その新技術は、まだこの世界には早い代物でもあった
その為、そのシステムを【ブラックボックス】化し
それにアクセスしようとすれば、システムゴト消滅するようにしてある
鈴を通して、鈴の後輩4人に手渡されたデバイスも
このシステムを取り入れてある。
このシステムを搭載する、デバイスを所持するのは
鈴の後輩4人と、ニニスと優美を含めた6人だけである。
だが、紫音・鈴・蘭は、このデバイスを所持しない
必要が無いと言ったほうが早いのかもしれない・・・・。
そんな魔法を手に入れたニニス
絶対の自信を持って、とある作戦を引き受けた。
その作戦とは
アカネが以前、愁に溢したことのある作戦だった。
上位クラスに勝つ為
クズクラスが、上位クラスより優れている物がある。
その1つが、ニニスの防御魔法である。
紫音の強化した後
その強度を図るため
昼休みの時間を使って、狭い教室の中で
桜と優美を相手に攻撃させたのだ
鈴から貰った新しい上級魔法を試し打ちする優美
桜は、その力で、ニニスの結界をぶん殴る
だが、びくともしない、ニニスの防御結界
手も足も出なかった、2人の姿を見て
おおいに喜ぶ、ニニス。
そんな姿を見ていた、クズクラスの面々
力自慢が何人か挑戦するも、ニニスの結界は揺るがなかった。
そう、本気になったニニスの結界を破れる物は居ない
あの常識はずれの蓮先輩ですら無理だろうと思わせる程に・・・。
だからこそ、アカネは思いついたのだ
血も情けもない、非情なる作戦を・・・
今後対戦するだろう、上位クラスに向けて
ニニスの防御魔法を見せつける、そんな作戦をだ・・・。
至ってシンプルな事だが
絶対防御とも思わせる、ニニスの結界でシンボルを守れば
シンボルの破壊は不可能となる。
上位クラスが、それを知れば
クズクラスに勝つ方法は限られる
敵陣シンボルを壊せない以上
自陣のシンボル防御は最優先となるだろう。
シンボル破壊が成されなければ
タイムアップによる、判定勝ちを狙う事となる
そうなれば、選手同士の削り合いが必需となる
そうなれば、自陣の防御を考えず
攻撃に専念できるクズクラスと
自陣のシンボル防御が優先される
上位クラスでは、攻撃に避ける人数は少なくなる
そううなれば、数の有利と言う物が発揮される。
もともと、鉄雄と愁に関しては
ランカー上位10人に匹敵する強さなのだ
その2人や、太志・キジが連携して、相手選手を撃破していけば
選手が減る⇒判定負けを避けるために、攻撃に選手を裂く⇒防御が手薄になる⇒シンボルが攻撃され減る⇒相手シンボリに攻撃を仕掛ける⇒相手と対戦して選手が減る⇒・・・と
悪循環にはまる
そう、絶対防御の、ニニスと
クズクラス最強と言われる、鉄雄
対戦フィールドの大半が、その攻撃範囲となる
長距離攻撃や、長距離攻撃支援ができる、カレラ
この3人は、模擬戦の要となっている。
本校舎に居る生徒は
鈴達を除けば、ニニスの存在すら知らないのだ。
そんな存在に、ニニスの絶対防御を見せつけるのは
上位クラスと試合する前に行わければならなかった。
本選第1試合で上位クラスと合う可能性があるため
予選で、ソレを行う事となるのだが
その方法とは、アカネが、愁に伝えた
心の問題だと言った、その作戦である・・・。
試合開始、数分間
シンボルを守るニニスの防御魔法に
対戦相手に、好きなだけ攻撃させる。
そうやって、今後対戦するだろう中等部2年3年の全生徒に
ニニスの防御魔法が、絶対破壊不可能と言う事を見せつける
これは、非情な作戦とも言える
中等部2年と言え、まだ10歳の少女、ニニスを
1人放置して、攻撃の的に晒すのだ
心が傷まないわけがない
そんな作戦を考え、平然と口にする
アカネの頭の中が気になる所ではあるが・・・。
作戦を行う方も
少なからず心に傷を負うのだが
攻撃の的にされた、ニニスを攻撃する方も
勝つ為とは言え、10歳の可愛らしい少女を攻撃するのは気が引けるだろう
だが鉄壁の防御結界、本気で攻撃しなければ勝てない
本気で攻撃しても崩れないだろう結界魔法
最終的に数人での攻撃
小さな女の子を集団リンチするような行動は
心有る者なら出来ないかもしれない。
もしも、相手に女生徒がいたなら諦めるかもしれないが
そこは、栄斗が居る事で
相手選手に女生徒が居ない事が
クズクラスの有利に動く。
だが本気で攻撃をしなければ成らない状況に追い込む方法がある
ニニスを助けず、距離を空けて、クズクラスの選手が見守れば
シンボルを破壊するため、防御結界を攻撃するしかない。
最低最悪のクラス、クズクラス
そんな連中が、ニヤニヤと笑って見学していれば
他クラスの生徒にも、プライドと言うものがあるだろう
男だらけで、プライドの高い選手を
止められる心優しい女生徒は
対戦相手に、栄斗と言うスケベのが居る為1人も居ない。
そして観客及び、偵察に来た生徒に
自分達が腰抜けと思われたくないと言う「プライド」と
か弱い女の子を攻撃する恥知らずな行動「良心」の葛藤・・・。
だが、すでに誰かがニニスを攻撃しているだろう状況に置いて
そこに良心の呵責は薄れているだろう。
一度攻撃したのならば
後戻りできない、事実が存在し
引くに引けない状況と
攻撃したからには、その行為を正当化するため
勝たなければ成らない、脅迫概念に襲われる。
これらを回避する為の方法は2つ
白旗を上げ負けを認める
これは今年のルール改正で出来なくなった
ならば
最初の段階で、ニニスとシンボルを無視して
愁達を攻撃する事だが
視線の先に無造作に存在する、敵シンボルを前にして
攻撃を仕掛けない人間など居ないだろう・・・。
**********
結界魔法で相手側が見えなくなると
愁は中央フィールドど真ん中
Hクラスと顔合わせした場所に
周りから目立つようにシンボルを立てた
それに寄り添う様に、立つタコニニス。
そんなニニスを心配そうに見つめる愁や冠
そんな作戦は、絶対反対だと騒ぎ出した栄斗は
太志に腕を掴まれ動けずにいた。
愁「本当に、任セテ大丈夫ナノか?」
ニ「任せるなの!
クラーケンの強さを見せつけるなのよ!!」
カ「心配性ね、あのオカシナな兄妹相手でなければ
ニニスの結界を抜ける事なんて不可能よ。」
この作戦に絶対反対するだろうと思っていたカレラが首を縦に振ったのだ
愁は、心を痛めながら、小さなニニスに頭を下げる
愁「すまないニニス
カレラは、アア言うけど・・・もしもの事が有ッタらと思うと。」
ニ「そんな事、あるわけが無いなのよ。」
カ「そうニニスの言う通り
そんな事は、有りはしないし
その時は、その時よ。」
楽しそうに言うカレラに、愁は「それでも・・・」と思うが
次にカレラの口から出てきた言葉・・・
カ「まぁ、もしもの時は、そいつを殺すだけよ。」
その何気ない言葉に、愁は背中にイヤナ汗をかく。
カレラの言った【殺す】・・・
それは、命を落とす死ではないだろう・・・
世間からの死、ニニスの国【フランク王国】その力を使って
生きたまま、世間からその存在を消す。
そんな意味合いを含んだ【殺す】なのだと
その言葉に乗かっる、栄斗は
「かわいい、女の子を襲う男なんて、死んでも文句は言えないだろ!」
あるいみ、お前がそれを言うのか?と・・・。
だが、そのカレラの言葉で愁達の心は決まり
フィールドの真ん中に、ニニスとシンボルを残し
愁達は自陣まで引いていくのだった。
予選第4戦・その試合が開始され
2チームを隔てる壁がなくなる。
その直後、Hクラスは驚く
フィールドに1人居る、タコのキグルミと、シンボル
それを見て何かの作戦かと
Hクラスの前線を任された5人は
互いに距離を開けながらニニスに近づき
ある一定の距離をあけ止まる。
その視線の先には、タコキグルミを、1人放置して
自陣で、こちらの動きを眺める・・・・7人と屍。
作戦に最後まで反対な栄斗は暴れるが、太志に抑えられている
クズクラスの、クズは愁の足元で屍となっていた。
カレラも宮守も、動く気配はない
トラップの気配もない
Hクラスは、迷う
クズクラスの意図が読めない・・・と。
4人の視線が1人に集まる
チームリーダーの男【幹久 (みきひさ)】は
視線を感じると、仕方ないと動き出した。
周囲を警戒しながら
タコのキグルミの前に立つと
「何がしたいか知らないけど
シンボルを攻撃するぞ・・・。」
「無理なのね
クラーケンは最強なのよ
誰にも、シンボルは触らせ無いなのよ。」
ニニスを睨み脅す、幹久だが
気にもしないニニスは、タコの腕をウネウネト動かすだけだった。
・・・・・
何が・・・最強なのか知らんけど
このまま攻撃するのは・・・・ちょっとな
まずシンボルを奪い取って・・・・。
幹久は軽い気持ちで
シンボルに手を伸ばすが
その手は弾かれる。
驚き1メートルほど後ろに飛ぶ。
今は見えないが、手を弾かれたとき
一瞬見えた、魔術符・・・。
「結界か?」
「ニニスの魔術符結界は
誰にも破れないなの~~~~!!」
幹久達、Hクラスの前線の5人は理解する
自分達は、バカにされている事に
目の前に居る、小さな少女の結界すら破れないと
かたをくくられているのだ
それは侮辱であったが
ためらいもあった。
幹久は、一度落ち着き
腰に下げた、長剣(模擬刀)を抜く
結界の範囲は、先ほどので大体把握した
ニニスから、少し距離をあけ
ニニスに当たらないように、シンボルに向けて剣を振るうが
結界に弾かれ、その衝撃と共に一瞬姿を現す魔術符結界
今度は、魔法をぶつける、アクアショット。
弾ける魔力に、ニニスの魔術符結界がその姿の全貌を現した。
ニニスとシンボルをおおう、球体型の魔術符結界
その姿を見て理解する
魔術符での結界は初めて見るが
このテの結界魔法は、込める魔力でその強固さが決まる
そして、結界を攻撃すれば
その力に応じただけ魔力が消費される
ならば、手立ては2つ
結界の強度を越える、攻撃で結界を壊すか
攻撃を繰り返して、術者であるこの子供の魔力切れをねらうか・・・。
結界を破壊する程の魔法
現状では上位魔法だが、結界破壊は術者に対して
その魔法被害がでるという事だ
ならばそれは、最終手段か?
まずは、攻撃して魔力切れを狙いながら
クズクラスの出方を伺う・・・。
幹久は、インカムで指示をだし
幹久を加えた4人で、結界を攻撃する
最初は躊躇してはいたが
術者のキグルミ少女に攻撃が及ばないように
細心の注意をはらい、シンボルに攻撃していく。
残った1人は魔力の温存と、クズクラスの選手の警戒である
そして、防御の為自陣居た、1人を前線に呼ぶ
この2人は、チーム内で上位の攻撃魔法が打てる人間であり
最終手段の為呼びつけた。
ニニスを攻撃し出して、数分
物理攻撃と魔法攻撃を交互に繰り返すが
魔術符の防御結界が弱まる気配はない。
なによりも、小さな女の子を攻撃する
自分達の行為に、徐々に削られていく自分達の精神力
そして、積もっていく罪悪感・・・・・。
放送から聞こえてくる
自分達に向けられた、先輩の罵倒の声が後押しし
罪悪感が重しの様に積み重なり
襲いかかる重圧に負けそうになっていく。
そんな、Hクラスの選手をクズクラスの生徒は
笑いながら見ている・・・。
幹久は、3人に引くように言う
これ以上、リンチ紛いの攻撃は
仲間の心を壊すかもしれない
ならば、イチかバチかだ!
それに、ここまでの攻撃に耐えれる結界なら
上位魔法で攻撃して結界破壊を行っても
その術者には、ダメージは少ないだろう
それに、小さいながらも、アレ程の術者だ
あの装備、全身を覆うキグルミは
防御力も高そうだし、何かしら防御魔法がかかっているだろうと・・・。
2人の仲間に号令を下す
「あれを、小さな女の子と思うな!
高位の魔術師だと思って
2人で最大魔法だ!」
「だけど・・・。」
「うるせえ、もう遅せえ
偵察やら、映像・・・それに(四条さんが見てんだ)・・・
こうなったら、アレをどうにかしないと
勝っても負けても、俺達は白い目で見られ続ける事になるんだ・・・
なら、勝って堂々と本選にいってやる!!
お前らも、覚悟を決めろ
これの評価は、クラス全員に向けられるんだ!」
幹久は叫んだ!!
そして、固く・・・固く奥歯を噛み締める!!
誰が考えた・・・
こんなイヤラシイ作戦を・・・
どこをどう転ぼうが、泥を被るのは俺達だ!
俺達を貶める作戦・・・
奴らがこの作戦を続ける限り
俺達、対戦相手は、悪役にされる・・・
すでに、放送で俺達の行動
あのタコ少女を集団で虐めるような行為は
校内に知れ渡ってる
終わった後で何を言われるか・・・
こうなったら・・勝って俺達の正当性を主張し
こんな汚い作戦を考えた存在を浮き彫りにして
全校生徒の前に突き出してやる
負ければ、俺達が主張する権利も無くなってしまう
絶対に勝たないと!!
そんな幹久の覚悟に背中を押されたのか
Hクラスの2人は
自身の持つ最大魔法の炎の上位魔法を展開させ
タイミングを合わすかのように
2人同時に魔法を放つのだった!!
炎の上位攻撃魔法がニニスを襲う
だが、クズクラスは
暴れ疲れた栄斗と、屍と化した紫音以外
表情1つ変えはしない
ニニス1人を人身御供に出した事には、心を痛める愁達だが
その反面、ニニスの魔術符結界が破れるなど頭の片隅にもない
もしもとは、ティオーノ兄妹の様な
規格外、常識外の強さを持つ者がいた場合だが
そんな存在が、あの兄妹以外に居るはずはない
もし居ても、それは2-Hではない事もわかっている
なら、ニニスを信じて
相手の心が折れるのを待つだけである。
冷静な態度なクズクラスとは正反対に
試合を観戦していた生徒達の中に
今にも暴れそうな存在がいた。
その両拳を強く握り頭の上に湯気をあげる【桜・ティオーノ】
右腕に、かんなが抱きつき
左腕は優美と夏目がおさえる
体の正面から鈴が抱きつき
背中からアリスが羽交い締めする
それ以外にも、クズクラスの女性陣が
桜の四肢を抑え、今にも飛び出しそうな桜をおさえるのだが
それでも、きっと桜がキレれば意味を成さないだろう。
鈴達は事前に大まかな作戦を聞いてはいたが
ニニスが1人、攻撃を受けるその姿に
激しく怒りを燃やした桜
今はまだ、試合中であり
ニニスは、攻撃の1つも受けていないので
押しとどまっているが
実際、ニニスの結界が破壊され
ニニスに危害が加わろうものなら
だれ1人、桜を止めれないだろう・・・・。
そんな中、Hクラスの選手2人の上級攻撃魔法が
ニニスの結界を襲い
大きな爆音を立てて炎を巻き上げた!!
幹久はそれでも、気を抜かない!
吹き上がった煙が徐々に晴れていくと
そこに姿を現したニニスは
6本も赤い足をくねらせ笑う
「クラーケンは無敵なのぉぉ~~~。」
それは、Hクラスからすれば、とっておきの攻撃魔法
炎上位攻撃魔法の同時攻撃
その威力は上位魔法を越えるはずだった・・・。
それを受けても
目の前の結界は変わらず
術者のキグルミも、魔力の枯渇が見て取れなかった。
そのニニスの元気な姿だけで
攻撃したHクラスの選手の心を折るのに充分でもあった
だが、幹久は折れない
折れる訳にはいかなかった。
そう、もう後には引けない
大の大人が、集団で子供をいたぶる様な事をした
それは抗いようのない事実
2-Hは、勝つためなら非道にも子供を攻撃する・・
そんな汚名を、クラスの皆に着せる訳にはいかない
今ならまだ俺が・・・
その全ての汚名は、俺が背負う
そう、全ては攻撃を命令した俺が引き受ける
元々最初に小さな少女を攻撃したのは俺だ
全ての責任は俺にある。
そんな覚悟で
彼は無言で長剣を握り
もう勝ち負けではない
汚名をただ1人で浴びる為
非道と言われようが最後まで抗うと
キグルミの少女に向けて、足を進めようと・・・。
そんな時、キグルミの奥
クズクラスの陣地から
1人の男の姿が近づいてくる
体を重く引こずるように
体をゆっくりと左右に振り
巻き上がった煙が晴れた今
その姿は明確だった
いや、あんな歩き方をする人物は1人だけだ
クズクラス、その中で1番クズの男・・・。
ニニスの横まで、進み出たその男は、叫んだ
会場である、運動場その全てに響くほどの大声
感情のまま、その怒りをぶつける様に
その本性をむき出しに叫んだ。
「てめえらぁ!!!
俺のニニスに、なにさらしとんじゃぁぁぁっぁぁぁ!!」
その場に居た人間は驚いただろう
その男の叫びに・・・・・。
悪い意味で有名な紫音
その普段の風体から
どんなに貶されようが悪口を言われようが
石や物をぶつけられても、怒った事も
その感情を表に現した事は無い・・・。
そんな男が、模擬戦に出てる事も驚きだったが
その男が、怒りで叫んだのだ
クズクラス以外人間は驚くは無理がなかった。
模擬戦を見物に来ていた
クズクラスのクラスメイトは
紫音の叫んだ言葉に、驚くと同時に盛り上がる
「今、俺のニニスって言ったよね?」
「言った言った!もしかて・・・ありえる?」
「ありえるでしょ?
あの男、ああ見えてシスコンよ
ぜったい、ロリだよ
ニニスに興味がないわけがないじゃん!」
「うちのクラス、ロリ率多くない?」
「でも、ニニスって、あの変態が大好きでしょ
もしかして、すでに付き合ってるかも?」
「「「ありえる!!!」」」
「「「キャァァーーーー」」」」
この瞬間、クズクラスの一部の女子の間で
ニニスとシオンは、陰で付き合っていると・・・噂が・・。
そして、紫音が叫んだ事で
ニニスが苛められていたのを怒り興奮していた桜が
先程までの事がまるで嘘だったかのように
おとなしくなり、いや、興奮はしていた
紫音の真似なのか・・・
「なぁ~にぃぃ~~さらぁぁしぃ~てぇ~~んじゃぁぁぁ~~」
笑いながら、叫んでいた。
そんな桜を必死で止めていた
優美や、クズクラスの面々は
止まった桜から離れると
額の汗を拭う
桜の暴走・・・考えるだけで逃げたくなる・・・と。
だが、アリスは、別の意味で汗をかいていた
全力だった、桜を後ろから羽交い締めして
後ろに引こずろうと・・・
肉体強化し本気で力を入れていたのだ
それなのに、動く気配の無い桜に
絶対的な力の差を感じるのだった。
鈴も、とりあえず一息付く
とりあえず、紫音が動き出したなら
ニニスが攻撃を受ける事はないか
桜も、それが分かっているから
怒りを収めた訳で・・・・
ん?
あれ?
あの結界の中に居れば
怪我をする事は有り得ないんだけど・・・
その事は
紫音が
一番知ってるよね?
あのバカ!
何をする気なの?




