5話 それぞれの週末、その2 優美 ・ 夏目 ・ かんな の3本
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優美の週末
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【四条優美】は今【桜】の家で昼食を取ると
【夏目】と共に桜の家を後にしようとしていた。
後輩4人に
「今日は用事があって
最後まで付き合えなくてごめんなさい。」と伝え
鍛錬場へ向かう、かんな、桜、後輩達と別れ玄関に向かい
靴を履いていた時、鈴が現れ。
「ちょっとまって、2人共。」
「鈴?どうしました?」
「また、かんなが何かやらかした?」
夏目も帰るのだから、かんなが野放し状態となっている
夏目の言う通り、また、何かしでかしたのかと思ったけど
クスクスと笑う鈴の
「やらかしてるけど、何時もの事だし。」で
それは、そうかと納得してしまった。
あ、やらかした、かんなが悪いって訳ではなく
感情のまま行動できる、かんなが羨ましいと、いうだけで
それに納得してしまった自分の感情が
かんなに対して、申し訳ないと・・・・。
「まぁ、そうだけどね。」と
夏目は細い目でにっこり笑うのを見て
そう、深く考えないで、笑えばいいのだと思いはするが
四条の家を背負う私は
常に考えて行動をし、常に考えて言葉を発する
そう教えられてきたし、すでにクセとなっているから
ここは笑う所なんだろうと考えて、笑うけど
そんな自分が可笑しくて、普通に笑ってしまう。
そんな私を見て鈴は
「うわ、優美ちゃんが、変な想像してる!」
「し・・してません!」
鈴と夏目は、少しテンパった私を見透かすように笑うと鈴が
「まぁいいけどね~~~
ハイ、コレお土産。」
鈴の手に有ったのは
厚紙で折られた取っ手の付いた箱の様な物だった
よくある、ケーキやドーナツを持ち帰る時に使うあの箱だった。
「鈴?それは?」
「シュークリーム!と、冷たい紅茶。
保冷剤入れてるけど、帰ったら冷蔵庫に入れてね。」
夏目は、まるでお土産が有る事を知っていたのか
「今日はシュークリームですか、ありがたくいただきますね。」と
当たり前かのように、お礼を言って
両手でシュークリームが入った箱を受け取った。
だけど、私はついつい考えてしまう・・・。
ここ数日で、大量のマンゴーゼリーに、数百枚を超えるクッキー
今日は、皆のオムライスに、このシュークリーム・・・
鈴、貴方いつ寝てるの?
「ありがとう鈴
それにしても毎回ながら
これだけ準備するの大変だったでしょう。」
「ん?大変?」
可愛く、首をかしげる鈴。
「え?準備や買い出しとか・・・・
皆の分があるなら、かなりの量だったでしょ?」
「そ・・・・んな事はないよ。」
鈴の視線が・・・泳いだ?なんで?
「そ・・・それじゃぁ、かんな達が待ってるから行くね~~。」
(鈴にしてみれば
このシュークリーム作ったのは、5月の連休はじめである
桜達と合宿があったので、なら何か作って持っていこうと
作ったのが、このシュークリーム
普通のと、クッキーシューと言われる
生地がクッキーのと2種類合わせて100個
そして作ってから気づく
とてつもなく嵩張ったのだ
合宿の荷物も多いいのに
そんなに沢山もって動けないと。
頭を悩ませた挙句、全部をリルの無駄空間にしまい
完全に忘れていた・・・・・・。
そして先日、クッキーを大量に作っていた時に思い出したのだ
そんな事、優美や夏目に言えるわけがなく・・・
その場を逃げ去ったのだ。)
・・・・・・・・
「優美はどう思う逃げたよね?今」
「逃げましたね・・・。」
でも、結局「鈴だし。」「鈴だからねぇ・・。」と
笑いながら、桜の家を後にする。
すでに、じぃが車で迎えに来ているので
夏目に「家まで送りましょうか?」と聞くも
「今日はコレから予定がありますので」と、遠慮された。
じぃの運転する車は、家の正面玄関に付けられる。
ジィと呼ばれた、初老を迎えた老人【轟 (とどろき)】は
車を降り、優美が乗る後部座席のドアを開ける。
優美は、それが当たり前の様に、静かに待ち
開けられた事を確認し、ゆっくりと車を降りると
「ジィ、ありがとう。」と声を掛けるのだった。
普段なら、優美の言葉に無言で頭を下げ
最大の敬意を払う轟だが
今日は、めずらしく口を開く。
「優美お嬢様
屋敷の雰囲気が、少し緊張しているようですが
もしかしたら、旦那様か、奥様が
お帰りになられているかもしれません。」
その言葉に、私の背筋が伸びるのだった。
玄関のドアを開け、玄関ホールに入ると
1人のパンツスーツの女性が立っていた。
私もよく知る女性である、母のSPの女性の1人
彼女が居ると言うことは、母が帰ってきている事を物語っていた。
今日は、週末土曜日である
母が家に居ることは
有り得ないと言ってもいい程、有り得ない事なのだ。
彼女は、私の姿を確認すると
「優美さん、奥様がお呼びです
帰ってきたらすぐに会いに来るようにと。」
トーンを抑えた声で告げられ
静かな威圧感に、おされる
「荷物を置き次第、すぐに向かいます。」
「お待ちください
聞いていませんでしたか?
すぐに来るようにと伝えたはずです。
奥様の時間もありませんし
今すぐに、来てもらいます。」
「ですが・・・・。」
彼女は私の腕を掴み、力強く引っ張っていく
ロビーの階段を上がり、母の部屋ではなく
母のクローゼットルームに連れて行かれる。
そこには数百着はあるだろう
ドレスの中から、数着を選び鏡の前で、そのドレスを体に当てる母親の姿があった。
「奥様、優美さんが帰ってこられました。」
鏡の中の自分の姿を見ていた母は、動きを止め
私を一度見ると、再びドレス選びを始めると
私の姿を見ることなく口を開く。
「急な食事会が入りましたので
ドレスを取りに帰ってみれば
何処かの誰かさんは
習い事を休んで
こんな時間まで遊んでいると言うではありませんか。
それは、私の教育論が間違っていたと
言葉ではなく、行動で示していると私は
受け取ればよろしいのでしょか?
優美さんには四条の名に恥じないように
最高の教育をして差し上げていると言うのに
それを休むだなんて
そういえば、最近何度か休んだと聞きましたが
変な知り合いと、付き合っているのではないのでしょうね?
そもそも、私はあんな一般人が通う学園になど
通わせるつもりはなかったんですよ
それでもと・・・・・・
グチグチグチグチグチグチ
グチグチ・・・と、母の言葉は終を見せない。
ドレス選びを終え
身に付ける貴金属を選び
身を纏うドレスと宝石にに合う
バックや小物類を選んでいく
その全てが終わったのは
娘への小言を口に出し始めてから
もう少しで30分ほど経とうかと言う時間が過ぎた時だった。
私は、ほぼ無言で母の機嫌が収まるまで待つ事となる
普段から、先を見据えて行動する母が
ドレスを取りに帰る事など無いのだ
それが、帰ってきてまでドレスを選ぶと言うことは
母が予定していた事柄は、全てキャンセルされ
無理やり何かの、パーティーに呼び出されたのだろう事はすぐに想像出来た。
そう、予定を変更された几帳面な母は
かなり機嫌が悪かった
外では絶対見せない顔で、身内には厳しく当たるのだった。
士族として私を導いてくれる母には感謝はしている・・・
けど、たまに見せる、感情的になった母の顔は
父ですら手を焼くほど・・・。
私では、太刀打ちできるはずもなく
母の小言を聞くのみだった。
全ての準備を終えた母は
私の前に立ち、その強く厳しい瞳を輝かせ
「それでは、私は予定が有るから行きますが
優美さん・・・。」
「はい!」
「今日休んだ講義の分は
明日きっちりと行ってもらいます。」
「はい。」
「最近、士族としての心構えを忘れているようですね
これ以上度を外しすぎる様でしたら
あの学園を止めて、士族である四条家に相応しい
上流階級の学び舎に行ってもらいます
よく、よく心に刻んでおきなさい!」
その言葉に、私は小さく「はい・・・・。」と答えた。
ある意味、四条家に置いて母親の言葉は絶対であった
父親は、話せば言葉が通じる相手ではあるが
母は、よほどの事がない限りその考えを曲げることはない。
私は今は只、感情的になった母が
今言った言葉を明日には忘れている事を願うばかりだった。
あの夢にまで見た楽しい学園生活を知ってしまった私は
楽しくも優しい大切な友人と、離れる事は
地獄へ突き落とされる事と同じようなものなのだから・・・。
視線を下に落とした私の横を抜けて
部屋のドアに向かう母が、私の手元に気づいた
「あら?優美さん
その箱は?」
「あ・・はい
友人から頂いた、シュークリームです。」
「シュークリーム?
開けてみなさい。」
言われるがまま
カバンを一度床に置き
手に持っていた箱を両手で開ける
そこには、個別に透明な袋で包装された4個のシュークリーム
2個は至って普通のシュークリームで
残り2個は、表面がクッキー生地だろう、シュークリーム
それと、飲み物が入っているだろう小さなボトルが入っていた。
母は、それを上から覗き込み
すこし眉を寄せた・・・・。
「一般庶民が食べそうな
貧素なシューですこと
優美さん、貴方は一流の人間なのですよ
そんな物ばかり食べているから
品位が落ちるのです
そんな物、捨ててしまいなさい
シューが食べたければ
料理長に言ってパテシエに作ってもらいなさい!」
ため息とも落胆とも取れる息を溢し
母は、部屋をから出ていく
それに続くように、母のドレスや荷物を抱える3人のメイドと
SPの女性2人が後に続いた。
部屋に残された私は
母が遠ざかるまで、静かに待ち
そして1人部屋をでる
その足で、厨房に向かい
料理長とパテシエを呼んで
鈴からお土産に頂いた、シュークリームを
何時もの様に動画・写真を取り
小分けにして、本気で食べる
私には料理や味の細かい事は分からないけど
料理長達は、その美味しさと味の深さに頭を悩ませるのだった。
次の日は朝早くから起き出し
決められたカリキュラムを前倒ししこなして行く優美
午後からは、桜の家で後輩4人と楽しい時間を過ごすために
今出来ることを全力で行う姿がそこにあった。
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夏目の週末
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夏目は、優美が車で送ってくるとの誘いを断り
優美が迎えに来た車に乗り込み帰るのを見送ると
大通りに向けて歩き出した。
スマホを取り出し電話を掛ける
「おねがい。」
たった1言で電話をきる。
2分ほど経った頃
私の傍に高級車が横付けされると
その、後部座席に乗り込んだ。
運転手の「お待たせいたしました。」の言葉に
返事をする事もなく夏目は、タブレットを取り出し
何かを打ち込んでいくのだった。
それを見た運転手は、車を静かに発進させ
目的地である【横浜】に向かうのだった。
彼は、夏目の専属の運転手ではなく
今日の目的地である
横浜に住む夏目の祖父に仕える運転手である。
祖父の家である豪邸に着く
四条家と比べると半分以下だが
それは比べる相手が悪いだけである。
そして、祖父の待つリビングに足を向け
その大きく解放された入口にたどり着く
ソファーに座っているのは
70歳を超えた老人だが
藍染の和服の下は、日々鍛え続けた肉体であり
体脂肪10%ほどの完成された筋肉である。
天然がかった、黒々とした黒髪は後ろに流され
眉間にシワ顔は鬼の形相であり
誰しもがたじろいてしまうオーラを醸し出す
そんな人物に夏目は声を掛ける。
「おじぃ様、こんにちは。」
ソファーに座る鬼の様な形相の男は
来客に気が付くと顔の筋肉が緩み、やらかい表情へと変わっていき
「お~~なつか!
よう来た、よう来た。
お~~~いぃ、お前、なつがきたぞ~~」
リビング横のキッチンから顔を出したのは
とても優しい顔の、和服すがたの祖母
そうとは言っても、祖父より20歳以上若く
夏目の母親と言っても通じる若さを持つ人物
「なっちゃん
よくきたわね
ゆっくりしていってよ!」
そこのリビングには、鬼の様な男はおらず
孫が大好きな、ただの年寄り夫婦と
祖父と祖母の事が大好きな、一人の少女だけであった。
簡単な挨拶をすまし
ソファーに座る3人
夏目が机の上に取り出したのは
着物生地で作られた巾着袋
そして、その中から、かわいいクッキーを取り出した
祖母は、クッキーより可愛らしい巾着袋が気になるようす
「今日は、クッキーか!
いつもながら、美味しそうだな。」
「お祖父様、今日はそれと、もう一つ・・・
夏目は、ある箱を取り出し
中のシュークリームを取り出しながら
後輩達と楽しんだ今日の出来事を話し
帰りに、このシュークリームを貰った事を話す。
それを聞いた祖父
真剣にシュークリームをのどき込むと
「普通の、シュークリームに見えるが
鈴と言う、なつの友人が作った物なら
これも極上の美味しさなのだろうな。」
「はい、鈴の料理は全て美味しいですから。」
その祖父は美食家でもあった
特に甘いものには目がかったが
徹底管理した食事制限の為
普段は、食べ物自体を控える生活だったが
1年ほど前、孫の持ってきたクッキーがあった
かわいい孫がどうしてもと言うので
1つだけ食べたのだが
それはかなり美味しいクッキーだった。
それからは、鈴と言う少女の隠れファンとなる老夫婦
夏目も祖父達の喜ぶ姿は嬉しく
先日持ち帰った【マンゴーゼリー】も
その日の内に祖父の元へ持ってきて2人にあげると
1つしかないゼリーを交互に仲良く食べる祖父達の姿は
今までに見たことなの無いほど、可愛らしい姿だった。
嬉しそうに、シュークリームを食べる祖父
「先日のマンゴーのゼリーも格別だったが
このシューのクリームも格別だな。」
祖母はクッキーが入っていた巾着袋を手に取り
可愛らしくつついて遊ぶ。
「なっちゃん、この巾袋は?」
「鈴から頂いた、お菓子を入れる物なんですが
鈴の祖母が呉服屋を営んでいるらしいので
その関係で作られた小物だと思います。」
「呉服屋?
それは、どこなの?」
和服好きの祖母の興味をひいたみたいであり
「確か、静岡の【呉服問屋・三千風】ですね。」
そう伝えると、祖母の驚く
「まぁ・・・三千風ですって!!」
「ん?お前、そこは有名な店なのか?」
「何を言ってるんですか、この人は
東日本では1,2位を争うお店ですよ
私のこの着物も、三千風で買ったものですし
棗 (なつめ)さんには、昔から贔屓にさせてもらってますのよ。」
「え?」
「ごめんなさいね、なっちゃんでなくて
草木の棗ね、食べ物に棗の実とかあるでしょ?
あの棗ね
あそこの主人が、三千風棗さんて方なのですよ
お孫さんが、2人いると聞いてましたが
それが、鈴さんと言う方だったのね
なっちゃんと友達だったなんて
世間はせまいですね
新しい着物も欲しいですし
それにこの、可愛らしい巾着もほしいですから
近々、棗さんに会いに行ってみようかしら。」
嬉しそうに語る祖母の姿があった・・・・が・・・。
夏目は、鈴の祖母の家が、そんなに有名だとは知らなかったし
祖母が着る和服は、超一流の着物だ
一着数百万とも言われるほどの高級和服
そんな高級な和服が売られている店だとは知りもしなかったと
息を呑む・・・・。
この日は、母親も合流し祖父の家に泊まるこっとなる夏目
母親も久しぶりの実家だと、羽を伸ばす
父親は、一度顔をだし一緒に夕飯を食べると
「お義父さん、お義母さん
私は、コレから仕事がありますので失礼いたします。」と
祖父の家を後にした。
次の日は、祖父から何処か行きたい所はないかと聞かれるも
「昼から後輩が模擬戦に向けて訓練をしますので
その手伝いをしに行きますから」と断るも
「また、鈴から、お菓子を頂いたら来ますね。」とも伝えるのだった。
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かんなの週末
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私は、後輩達が虐められていたのを
陰ながら見守り、趣味に没頭している振りをしていた。
(あ・・・悪魔がいる・・・2人も・・・
皆・・・なんで、がんばれるの?
わ・・若いからか?
うわ・・・鈴と目が合いそうになった
見てはダメ、アレに巻き込まれる・・・。)
そう、鈴と遊びたいが
今近づくと自分もアノ地獄に巻き込まれると
鈴ちゃんloveを封印し、静かにしていた。
鈴と桜のシゴキが終わった頃・・・。
「そろそろ、終わりにしよっか?」
「はぁ・・・・・・ぃぃ・・・。」
「・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・・」
鈴の言葉に返事をしたのは雫ちゃんだけであった。
残りの3人は、言葉も発せず、その場に崩れ落ちた。
桜と言えば、体を動かしたりないのか
大きく体を動かし体をほぐすと
先ほどまで、後輩ちゃん達と相手した時の倍のスピードで
何かの武道の型らしい、動きを始めるのだった。
まぁ、それを見た、後輩達の顔は・・・
アレだった・・・うんアレだった・・・・。
「皆汗拭いて、リビングに行こっか
紅茶とシュークリーム用意してあるから。」
シュークリームですと!!
「皆!早く行くよ!」
「かんな!
もしかして、その為に今まで居たの?」
鈴ちゃん、何を当たり前の事を!!!
「当たり前っしょ!
鈴がシゴキの後のスィーツを用意してない訳がない!」
「練習に参加してない、かんなの分は用意してないんだけど?」
「なんですと!!!」
嘘だ!!鈴にかぎって、そんな事は有り得ない!!
まぁ、からかわれてたんだけど・・・。
リビングに行けば
当たり前の様に人数分のオヤツが用意されていた。
そして、当たり前のように、美味しい!
「鈴ちゃん、前のシュークリームより美味しくなった?」
「うん、少しホイップクリームの材料を変えてみたんだけど
よくわかったね?」
「嫁の料理は全部おぼえてるからね!」
「嫁じゃないから!」
鈴ちゃんてばぁぁ、また照れちゃって!
そんな鈴ちゃんも可愛い!!
体力が回復してきた、後輩ちゃん達にも笑いが溢れる
そうそう、疲れても笑顔は絶やしちゃいけない!
「何事も楽しくなくっちゃぁね!」
「そうだけどね
でも、かんなはやりすぎ!」
笑いが・・・起きたが・・・。
「じゃぁ、皆の反省点ね!」
ちょっと、鈴ちゃん
後輩達から笑が消えたですよ!!
鈴から、4人に対しダメだしと
今後の課題を、大まかに口にしていく。
そして、帰る時間になっていく
すでに意気消沈した後輩達
鈴は、お土産として、箱に入った
シュークリームを4個と
100均のボトルに入った、紅茶を渡していく鈴
笑顔が戻る、後輩達!
もちろん、私の分や、桜の分もあった!
やったぁぁーーーーーー!!
鈴ちゃん、飴と鞭の使い方が絶妙すぐる!!
暫しバスに揺られ我が家のマンションに帰ってきた。
ドアに近づきながら、口ずさむ
「ひらけ白ゴマ」カチャっとドアのロックが外れる。
ドアを開け、廊下の天井にあるダウンライトを指差し
「赤・ピンク・・・・今日は黒!」
廊下の照明が3箇所付き
廊下の奥から「グルルルルゥゥ」獣の鳴き声が聞こえ近づいてくる
全長2メートルある黒い物が、廊下の照明を鈍く反射させ
かんなに迫って来るように姿を現した
ソレは、豹の形に近い何かだった。
「ただいま~~~。
カバンお願い。」
小さく「グルゥ。」と鳴り、その口でカバンの持ち手を咥える
その生き物・・・ではない
かんなが作り上げた、動物型のロボット
もちろん唸り声は、登録した音声であり
動くたびに小さな起動音がなる
普通ではない番犬代わりの豹型ロボットである。
もちろん名前は
【かんな印・番豹 (ばんひょう)君・タイプB (ブラック)】武装オフ状態である
カバンを渡すと靴を脱ぎながら
フンフンフンと、鼻歌混じりに
「洗面所、台所、私の部屋照明オン
メインPC、スリープオフ
サブPC起動、モニターオン。」
靴を脱ぎ捨て、洗面所で手を洗い
台所で食べ物をあさり、自室に引きこもる。
勢い良く椅子に座ると。
机の下に置いてある数個の機材の電源を入れていく。
机の上には、昨日晩に作業したままの機械の塊や
何かの部品がごちゃまぜに散乱してはいたが
当の本人、私に言わせれば
「全員違う顔なのに、間違えるわけがないし
みんなキチンと並んでるでしょ?
なんで、わかんないかなぁぁぁ~~~?」である。
そして、1つの部品を持ち上げると。
「さ~~て、模擬戦に向けて
この子達を仕上げないとねぇぇ~。
まっててねぇぇぇ~~~。」
机の上に視線を落とすと
「君達もまっててね~~~。」と。
我が子達は、今か今かとまっている
はっはっは、お前達、待ってなさい
天才かんな様が
今すぐにでも命を吹き込んであげるよん!
そして、・・時間が経ち・・・・・・。
「出来たぁぁぁぁ!!!!」
かんなの両手に抱え上げられたのは、小さなボール。
「よし、さっき(桜の家で)書いていたプロブラムをっと。」
ボールにコードを繋ぎ、データを書き込んでいく。
「ふふん!
さぁ目覚めて子供達
そして、おはよう!その産声を聞かせて!」
・・・・・・・・・・・・・
「ま・・・・また!!!
バグッタァァァァァ!!!!!」
そこには、両手で頭を抱え
半泣き状態で
叫びをあげる1人の少女の姿が
有ったとか
無かったとか
・・・・・・・。
時刻は日曜午前8時
全てを諦めた、かんなは日曜の朝に放送される
子供向けのアニメ【撲殺少女いのりちゃん】や
特撮の戦隊物を見たあと、風呂に入り
午後から向かう桜の家に向けて準備をはじめたのだった。




