表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/166

4話 それぞれの週末、その1 蓮 ・ 仲良し4人組 の2本

 



************

 蓮・その友人達の週末

************

 


 国立関東天童魔法学園


 この学園では、土曜日は午前中のみの授業となる

通常の小・中・高校では、土日休みの学校は有るが

通常授業以外の、科学魔法専門授業も有り

学園では、土曜日4時限の午前中授業の形を取っていた。


 


 そんな土曜、授業終わり

帰り支度を終えた、男がいた

その燃えあがる闘志を表したかの様な赤い髪を携え

攻撃的なまでに髪を立たせた、蓮・ティオーノ。


 まだ、3-Jの教室の中にいる3人の人物を確認すると


「隼人 (はやと)、アヤ(彩七 (あやな))、クロ、準備はできたか?」


蓮と同じ年ではあるが、同年代の男子生徒からすると

少し小柄な【隼人】は、一度全身に力を込めると

「あぁ・・でも、少し緊張はするな。」


 それをみて、カラカラとセミロングの茶髪を揺らし笑う【彩七】

「隼人は、気にしすぎよ、たかが道場破りに行くだけでしょ。」


 そして、肩まで伸びた前髪を揺らし、席を立ち上がる男

蓮や隼人や彩七の、軽装な制服姿とは違い

制服の上から関節部や、肩胸を覆う局部プレートを付け

腰には革で作った鞘にその姿を隠した武器の姿があった【クロ】

「何時もの事だけど、アヤは、レンの話を全く聞いてないね

 道場破りでなくて、出稽古だろ?」


「そう言う割に、クロも、体に力が入ってるじゃない?」


「当たり前えだ

 出稽古だろうが、なんだろうが関係ない

 相手が誰だろうと、オレが強くなる為の糧になってもらう

 まぁ、そのじぃさんが、本当に強ければの話だがな!」


「チョットまて!」


「なんだ、隼人?」


「何回もいうが、今は、年齢を重ねては居るが

 あの人が若かった頃は、(鼓仁)師匠と肩を並べるほど強かったんだぞ!」


「分かった、分かった・・・・って

 それは、昨日から耳にタコが出来るほど聞かされたって。」


「3人とも、その辺のしとけ

 チャイナ(メファン)先生が待ってるだろうから、もう行くぞ!」



 蓮が教室から出て行くと

その後を追うように出て行く3人。


 今は引退したが、蓮の祖父が開いた【鼓道場】

そこに通う【隼人】は自身の憧れた強さを求め

新たなる力を求め、その足を踏み出した。


 同じく、鼓道場に通う【彩七】

強さは求めはするが

それは蓮、隼人、クロは方向性が違う

自身の身体能力で最強を求める蓮達とは違い

魔法と肉体の融合による強さを求める

彩七のデバイスには、兄が作り上げた彩七専用と言える魔法が

数限りなくセットされており

兄達が諦めた最強を目指し

更なる戦いを期待し、跳ねるように飛び出した。


 鼓道場とは関係ない【クロ】

だが、強さを求めるその魂だけは嘘偽りはない

そして、その強さは、隼人や彩七に匹敵する

そして、中学生としても最終目標は

今は遥か壁である、蓮を超える事であり

その為ならどんな相手でも糧にし

更なる力を付けると

冷静な顔のまま、心で期待を膨らまし

期待で地面を踏みしめる。





 それは、先日の事だった

昼休み、中等部3年のクズクラスに入ってきた

場違いな女性の姿があった。


 短めの黒髪に、チャイナドレスを着込み

その上から、黒皮のジャンバーを羽織る

知る人は知る、ちょっとした有名人である

高等部体育教師。


女性は、クズクラスを見渡すと

蓮の姿を見つけると、自分をみる騒がしい生徒を無視し

教室の中を堂々と進み、蓮の前に立つ。


「よう、チャイナ先生?なんか用か?

 それに、あのじぃさんの腰は、もう治ったのか?」


「蓮・ティオーノ君・・・久しぶりと言ってもいいのかしらね・・

 何か知らないけど、師匠はアレから、無駄に元気よ

 何をしたのか聞きたいけど、それは今度でいい

 今日は、師匠の伝言を伝えに来ただけ

 腰の調子がいいから土曜の午後にでも

 あの時の続きをしないかってね。」


「ほう、死ぬ覚悟ができたか。」


「死ぬのは、君だと思うけど・・・

 あと、あの時の2人も連れて来いって、話だけど・・。」


 言葉を詰まらせ、顔を動かさないまま

視線をクラスに向け、人物の確認をする女教師に蓮は


 あの時に居た、宮守と鎧女の正体は、このチャイナ女は知らないのか?

ならば、連れて来いって事は、正体が知りたい事でもあるか?

まぁ、アノ2人は、友人でも仲間でも無いし連れて行く義理は無い

だが・・・家 (うち)のじじぃに聞けば

あの、ハゲじじぃ本気で、じじぃに匹敵する強さらしい

なら、俺の練習相手に丁度いい

それに、このチャイナ女も、あいつらの相手にいい感じか。


「おぃ、チャイナ先生

 あの2人は無理だが

 連れて行きたい奴達が居る

 そいつらもいいか?」


「そのチャイナ先生は、どうにかならないの?

 もう知ってると思うけど、私の名前はメイファンよ」


「だから?」


 (・・・そりゃ完膚なきまでに負けた私が、言うのもなんだけど・・・。)

「まぁ、構わないけど・・・

 あと、大人数は困るよ

 私の車は5人乗りだから、君を入れて4人までね

 土曜の授業終わり、正面玄関の駐車場で待ってるよ。」


 そうして、3年クズクラスの注目を浴びながら

チャイナ服の体育教師は、帰っっていった。


 その後、クラスメイトに囲まれる蓮の姿がそこにあった。

 蓮は、鼓道場に通う3人に声を掛ける

隼人と彩七は、考えもせず首を立てに振ったが

残った1人は「あ?デートが有るから。」と断わり

ならばと、白羽の矢が立ったのが【クロ】である。


 だが、適当に首を縦に振った3人

行く場所も、その相手も何も聞いてない

聞けば、ジークンドーの道場、道場主は

【李小狼 (り・しょうろう)】

この名前を知って、一番驚いたのが隼人であった。


 蓮と彩七は知りもしなかったが

その名前は武道界では有名な名前であった

その中でも、有名な話がある、本当か嘘かは分からないが

武道を極めた存在と、国に求められた人物に送られる【聖人】

これに、その実力がありながら、李小狼が選ばれなかったのは

彼が、中国人であり、その武術の源流が中国であり

日本では無い為だと言われていた・・・・・が

本当は性格・・・人間性の問題だとも言われてもいた。


 ジークンドーでは、格闘や、武器の鍛錬も行うが

何よりも、功夫 (クンフー)と言われる鍛錬を重要視する

【気功】【経】と言われる【気】の使い方である

鼓道場でも、気の願念は有るが

それを培い育て扱うと言う事に関しては

【拳聖】と讃えられる【鼓仁】より【李小狼】の方が上である

中国数千年を超えて培われてきた武術の1つであるのだ。


 隼人が憧れを抱く、今は亡きスパースターが作り上げたジークンドー

そこの現当主と手合わせが出来るなぞ、夢の又夢であった。


 その嬉しさに、何度も何度も、その凄さを口にし

最後には、蓮にボディーブローを喰らい

床で失神したにも関わらず

今日の朝から、憧れの人に会える緊張を隠すために

又、クロ相手に、その凄さを何度も口にしていたほど

隼人は、興奮していた。


 そして、4人は、己が目的の為

高等部体育教師である【美帆 (メイファン)】の車に乗り込むのだった。


 



************

 仲良し4人組みの週末

************



 鈴が、クッキーを配りまわった次の日の事

鈴達が居る、2-Bに来客が来る。

 

 中等部1年の4人の女子生徒

その中の1人が、ドア近くの生徒に声を掛けた

「すいません、三千風先輩か、小早川先輩いませんか?」


「鈴ちゃん達?ちょっとまってね

 りーーん、なつーー、かわいい後輩がきてるよーー。」


 その声に、四条優美の机の周りで騒いでいた5人が振り向き

4人の姿を確認すると


「おぉ~~~。」と微笑む桜に

「あ!みんな」と鈴

「珍しいお客ですね」と夏目

無言で挨拶をする、優美

そして「やっほーーーー」と、一番に動き出したのは、かんなだった。


 そして、教室の入口から離れ、廊下で騒ぐ9人


鈴「それで、今日はどうしたの?

  何か大事な用事?」


4人の中で、一番活発な【雫 (しずく)】ちゃんは

一番後ろにいる、ひろみの腕を取り前に連れ出すと

「ひろみ、渡すんでしょ。」


 雫ちゃんに連れ出された

4人の中では、一番内気だろう【ひろみ】ちゃん

ゴールデンウィークの合宿で、打ち解けてはいたが

今は、2年の教室の前で、少し緊張気味であった。

「う・・・うん、あの昨日のクッキー頂いたんで

 あ・・あの、ラスクを作ってきたので貰ってください。」


 そう言うと、小さな両手の上に

ラスクが入っているだろう、5つのかわいい包があった。


鈴「かわいいーーーー。」

桜「おぉぉぉ~~~~。」

かんな「あ、私達のもあるの?」


 4人の中で、一番のおしゃべり好きの【千秋】は

もたもたしている、ひろみに変わってしゃべりだした

千秋「はい、私達から先輩達にって言いたんですけど

   お菓子作りできるの、ひろみだけなんで

   私達は買い出しと、この包装だけですけど。」

優美「皆さん、ありがとうございます。」

夏目「え?ひろみは料理できるの?」

ひろみ「は・・はい、ちょびっと・・だけですが・・。」

千「昨日、鈴先輩のクッキーを食べて

  一番驚いたのが、ひろみなんですよ

  どうやったら、こんな美味しいクッキーが焼けるんだろうって。」

鈴「え?普通のクッキーだよ。」

夏「あれを、普通のクッキーと言う

  鈴の感覚は、未だに理解できませんね。」


その言葉に鈴以外の全員が納得したのだった。


 笑い話を繰り広げていると

桜が涼子 (りょうこ)の顔を覗き込み

「ん~~~・・・どうしたのぉぉ~~~?」

涼子「え・・・・あ・・・いえ・・何でも無いです?」


 4人の中で一番冷静で

物事を一度頭で考えて口にするタイプだろう【涼子】ちゃん

そんな涼子ちゃんが、口ごもるって事は

私達に、何か言いたいことがあるんだろう。

 さすが桜、よく気がついた!

鈴「涼子ちゃん、何かある?」


そうすると、後輩4人は顔を見合わせると

何かを決心すると

雫「先輩達に・・・・特に桜先輩にお願いがあるんですが。」

桜「ん~~?なぁに~~?」

雫「忙しいと思うんですが、私達を特訓してもらえませんか?」

か「とっくん?」

雫と千秋の視線が涼子に向くと

涼「はい、雫と千秋と私で、模擬戦に出るつもりなんですが

  どうしても上位に入賞して、4人でクルージングに行きたいんです。

  授業で、チームでの戦いは習っているのですが

  4人とも、本格的に戦うのは初めてで

  どうしても上手くいかないんです。

  だから、桜先輩に指南して貰えたらと思いまして。」


鈴「?指南って言うか、学園のシミュレーションを使えば

  練習できたはずじゃないの?

  確かあれは、戦闘の分析機能があって

  改善点とかも、算出されて教えてくれたと思ったけど?」


 その言葉に、優美も頷き、後輩4人の話が今ひとつ理解出来ない。


夏「あぁ、それは・・・・・

  鈴や優美は知らないみたいだし

  雫達からは、言いにくいだろうから私から言うね

  元々、模擬戦の時期は練習出来る場所は混んでるんです

  今年は、あの生徒会長のせいで、場所の奪い合いとかあって

  練習にもってこいの、シミュレーションや、鍛錬場などは

  3年、又は、力の有る人間が占領していまして

  まず1年は使えないでしょうね。

   だから1年生は、校庭とか中庭の空いてるスペースを使って

  体を動かす位しか、練習のしようがないの

  雫達は、シミュレーションを使わないでも出来る

  連携の仕方や、3人での動きや戦い方を

  桜に教えて貰いたいと思って来たのよね?

  でも・・・それは・・・・。」


頭の上に絶賛【?】を浮かべる後輩4人と

夏目の言いたいことが理解できた、鈴とかんな。


夏「桜は強いけど

  感覚で戦ってるから、教えれないと思うのよね?

  でも、なんで、優美より桜にお願いするの?

  たぶん優美の方が、適任だと思うんだけど?」


「「「「!!!!」」」」


 雫達4人の顔が、一瞬固まった。


か「いや、むりっしょ

  涼子ちゃん達からすれば、十士族様だし

  さすがに、そこは気が引けるっしょ。」


・・・・・・・・・・・・。


かんなは、素で優美のトラウマに塩を塗る。


静まり返る少女達だったが

空気を読まない少女が1人。


桜「わたしがぁぁ~~~おしえるのぉぉぉぉ~~~。」


 会話が早くて、間に入りきれなかった桜は

ここぞとばかりに、右手を上げて答えた。


 普段は兄や鈴に頼りっぱなしの桜

桜自身は、誰かに頼られる事はまずなかった

影で鈴に頼られているが桜自身は知る由もないし

桜や鈴達、大親友の3人には、それが当たり前であった

だが、きちんと口に出して頼ってきてくれた後輩に

心躍り、嬉しく、やる気満々の桜の姿がそこにあった。


 だが、問題も山積みだった。


 桜が他人に物を教えれるわけがない

練習と言って、永遠に戦い続ける事は出来るが

連携の仕組み戦い方を、言葉で説明出来るとは

鈴達は誰一人として出来ないと思っていたし

桜も出来ないと、でかい胸を張って自負していた。

 

 よって、全員の視線は優美に映るも

優美は、家の家庭教師から、ソロでの戦い方や

指揮者としての、1個師団を動かす勉強はしているが

3人での連携などは、学園で教えてもらう程度しか知らなかった。


 自ずとして、視線は鈴に向く。


 そして「はいはい・・・私が教えますよ。」と笑う鈴の姿があった。

 

 次は場所だった

校内で人目につかず練習出来る場所は無い

鈴の考えでは、雫ちゃん達3人には

桜相手に、模擬戦をしてもらうつもりであり

もし人目につけば、色々面倒でもあった。

そしたら、桜は自分の家を使っていいよと言う

一瞬まよったが、蓮さんは土曜日は用事があって家に居ないらしい

ならば、桜の家の鍛錬場を貸してもらう事になった。


 そうなれば、話はどんどん進んでいく

とりあえず、模擬戦に出る【雫】【千秋】【涼子】3人は当然参加である

そして【桜】と私だ

ひろみちゃんが、寂しそうだったので

空いた時間で私と魔法の勉強をするという事で参加させる

ひろみちゃんに笑顔が戻った、仲間はずれは寂しいもんね!


 かんなは、絶賛考え中だ。


 なっちゃんは夕方から用事があるらしく今回はパス。


 優美ちゃんも、まぁ何時もの如く忙しいので、パス。


 なら、土曜日の授業終わったら

私と桜が後輩ちゃん達を1年の教室まで迎えに行くと言うと

4人に止められた!

先輩に足を運んでもらうなんて勿体無い!

自分達が、2年の教室まで来ます!と

ち・・・雫ちゃん達と仲の良い所を

他の1年に見せつけたかったのに!


 そのうち

【2年生の四条優美ちゃんのお気に入りの4人の後輩ちゃん達

 手をだしたら、なっちゃんが目を開くぞ!!!】作戦を

水面下で発動させようと、目論んでいたのに!!


 そして、ある事に気づいた、ひろみちゃんが

「お昼は、どうします?買っていきますか?」


鈴「そうだった!

  そういや、ひろみちゃんはお菓子作りもだけど

  普通の料理もできる?」


ひ「あ、はい、簡単な料理なら。」


鈴「なら、桜ん家の台所借りて、一緒に皆のお昼ご飯作る?」


その言葉に「本当ですか?」と驚く、ひろみちゃんと

「鈴先輩の手料理ですか!!」と後輩ちゃん3人

そして、かんなが勢い良く右手を上げると


か「なら、私も行く!!絶対行く!!ご飯たべに!!」


夏「しかたないですね、私も3時までなら参加しますね。」


優「時間を・・調整すれば、私も・・・・2時まで・・・

  いや、あれを断れば、3時までは・・・。」


鈴「・・・・その心は!」


か・夏・優「「「鈴の料理が食べたい!!!!」」」


 驚く程の、シンクロ率!!


 そして、かんなの料理自慢がはしまった!

いや、ソレ全部私が作った料理だから・・・。

 

 食い入るように聞く後輩ちゃん達

一番熱心に聴いていたのは、ひろみちゃんだった。


 休み時間も終わりに近づき、そろそろ後輩ちゃん達は戻る時間だ

だけど、私はどうしても4人に聞きたいことがあった。


鈴「4人共なんで、そんなに、クルージングに行きたいの?

  やっぱり、一流のコックの作った料理が食べたいの?」


か「それは・・・・鈴ちゃんだけだよ。」


聞こえない!!!絶対に聞こえない!!


千「もう一回・・・。」


鈴「もう一回?」


千「先輩達と、一緒に遊びたいです!」

雫「先輩達と、楽しい時間を送りたいです!」

涼「先輩達と、もっと仲良くなりたいです!」

ひ「先輩達と、と・・友達に・・・・。」





鈴「絶対に優勝させてあげる!!!!」





かんな「り・・・鈴が!!!燃えた!!!」



 次の授業中、真っ赤になった顔を机に埋め

1人悶えていたのは、そっとしておいて欲しい・・。





 土曜日、授業終わり

約束通り、後輩ちゃん達と合流し

9人仲良くバスで桜の家に向かうのだった。


 桜の家は、小さい時から何度も遊びに来た家でもあり

気兼ねのない場所でもあるけど

私以外は、桜の家に来るのが初めてな人ばかり

そして、桜の両親は仕事で家に居ないと来れば

ティオーノ家の台所は私の天下だ!!!!

ワッハッハッハッハ!!

 嘘です、昨日の時点で

桜のお母さんには電話を入れて了解を得ているし

昨日晩に、今日のお昼の食材を持ってきてるのだった!

準備は万端です!!


 桜の家なのに、私の案内で、皆をリビングに招き入れる?なぜ!!

そして時間は有限だ!

後輩ちゃん達を優勝させる為、時間は無駄に出来ない!


 まずは座学!

優美ちゃんに戦闘の基本をレクチャーして貰う

なっちゃんには、ここ数年の1年生が行う模擬戦で出てきた

仮想モンスターについて、説明がはじまる。


 その間に、私は!!ひろみちゃんと、台所という戦場に立つ!

聞けば、ひろみちゃん家は洋食屋らしい

なので、小さい時から興味があり、多少は料理をしているらしい。


 お手並み拝見と、タマネギのみじん切りをお願いする。

 おお!けっこうなお手並み!って・・・事はなかった・・・

まず、台所に有った、ミキサーに手を伸ばすとは・・・残念!


はぁ・・タマネギの微塵切りに、ミキサーを使うとは・・・・。


 いや、この科学魔法の発達した時代

それも日本の中心と言われる東京で

タマネギの微塵切りを、包丁で行っている人間の数は・・・まず居ない?


 ここで私は葛藤した・・・。


 このまま、ひろみちゃんに手伝ってもらうか・・・

それか、全部自分1人でやるか・・・

でも、1人でやってしまったら

やっとできた、料理の話が出来る存在を失う・・・

気分を害してしまうかも・・・

嫌われたら・・・。


 だけど!!

答えは決まってる、私は信念を曲げない。


「ひろみちゃん・・・ごめんね

 たぶん私と料理の仕方が違うから

 一緒には無理だから

 私1人で作るよ

 本当にごめんね。」


「え?でも・・・。」


「もし、よかったら、私の料理の仕方を見えてて

 絶対に勉強になるから。」


 私は、カバンの中から、布に巻かれた包丁のセットを取り出す

普段なら、タマネギの微塵切りなど、数秒で終わるけど

ひろみちゃんが見て勉強になるよに、ゆっくり行いながら

その工程の意味を口にしていく。


 ひろみちゃん・・・・・包丁をほぼ使わないらしい

微塵切りは、ミキサーを使うらしい

鶏肉の微塵切りは、ハサミを使い切り分けるらしい

事実、普通の家庭では、そんなものであるし

料理するだけいい方だ

全自動料理機に専用の冷凍食品を入れれば

ある程度の料理は出来る時代なのだから・・・。


 タマネギ・鶏肉を微塵切りにしながら

包丁で切る大切さを、ひろみちゃんに教えていく。


 ひろみちゃんが真剣に聞いてくれいた事にすこし安心するも・・・。




 き・・・・嫌われてないよね?・・・私。




 フライパンにバターを溶かし

鶏肉を投入、火が通ったらタマネギを入れ

持って来ていた塩コショウで味を調え

自家製のケチャップを投入。


 そして、ご飯を取り出す!

(昨日炊き上げた、15合のご飯

 この昼ご飯為に、お米も選び、硬さも調節した物を

 リルに保存してもらって、桜の家についた頃に

 台所に出してもらっていた。

 卑怯とは誰にも言わさない!!)

2口コンロで、フライパン2枚使い

両方にご飯を投入し炒めていく

出来上がったのは、チキンライスだ。


 もうわかっただろう、作るのはオムライス!

ひろみちゃんと作ると思って

至って、シンプルなオムライスである。


 とりあえず、出来上がった、チキンライス8人分を皿に盛る。


 先ほど、チキンライスを炒めながら

ひろみちゃんと料理の話をしながら

片手で卵を割り、ボウルに入れていき

隠し味に、牛乳や、自家製マヨネーズ等を入れながら

軽くかき混ぜた、卵の液体を、熱したフライパンに投入。


 2口コンロなので同時に2つ焼いていく

少し熱が入ったら、形を整えながら半熟で

チキンライスに載せて、出来上がり

素早くもう6枚焼き、8つのオムライスの出来上がりだ!


 ひろみちゃんと、かんなが配膳してくれて

私以外の全員に行き渡る。

 え?私、どうせ皆おかわりするので

次のチキンライスを炒めてるけど?


「みんなたべちゃってね~~~。」

「「「「いただきます!!!」」」」

まぁ、桜達は、いつも道りだ

桜は嬉しそうに無言で、かぶりついているし

優美ちゃんと、なっちゃんは

「おいしい!!」と言いながら食べているし

かんなは「結婚して!!」って言うから

「ごめんなさい!」と返しておく。


 後輩ちゃん達4人はと言うと・・・。


 一番活発な雫ちゃんは無言のまま

勢い良く口に運んでいる。


 話好きな、千秋ちゃんは

一口食べるたびに「すごい!」とか「おいしい」と呟きながら噛み締める様に食べてる。


 ふだん冷静だろう涼子ちゃんは

目を輝かせながら無言で、オムライスを口に運んでいる。


 ひろみちゃんは・・・ほぼ動きが止まっている・・?


「ひろみちゃん?」


「鈴先輩!どうやったら

 こんなおいしいオムライスが作れるんですか!!」


「え?普通に?って

 ひろみちゃん、ずっと見てたでしょ?」


「そうですけど・・・・

 そうなんですけど・・・

 お父さんの・・・

 お店のオムライスより・・おいしいって・・。」


「気のせいだって、いたって普通のオムライスだから。」


 かんなは、笑いながら言う

「言ったでしょ、私の嫁のメシは美味いって。

 それに、鈴ちゃんの、LOVEがいっぱい詰まってるから

 世界で一番オイシイにきまってる!」


「嫁じゃないから!」


「えぇぇ~~~。」


 


 キャッキャと騒ぎながら

15合も炊いてきたご飯が底を付き

楽しい食事は終を告げた。


 そして、なっちゃんと、優美ちゃんは帰っていった・・・・。


か「ホンマに、ご飯食べに来ただけかい!!」


 微妙な関西弁で、後輩ちゃん達の笑いを取る、かんなだったが

私は、つっこまない!!断じて、つっこまない!!


 桜の家の裏手にある小さな武道場に移動し

本格的に、連携の訓練に入るけど

かんなは、やる事が無いので

武道場の端でノートPCを出して趣味に没頭するらしい。


 まず後輩ちゃん達4人の強さは学年ランキングで

雫ちゃんが30位前後

千秋ちゃんと涼子ちゃんは50位前後

ひろみちゃんは80位と、いっちゃあなんだけど、パッ!としない。

まぁ、ランキング100位以下で

名前すら出ない私が言うのも何だけど。


 模擬戦に出てくる仮想モンスターは1匹なので

モンスター役を桜がする

それを3人で囲み戦うのだが

その実力を図るため

参加しない、ひろみちゃんも入れて4人に指導していく。


 まず一番大切な事は、冷静である事を教える

実際に、それが一番難しい事でもあるのだけど。


 そして、まず相手の見る事を教える

人型か、動物型とか、その数、又は大きさ

それによって、戦い方は変わるからだ。


 ゴールデンウィークの時の合宿で

4人の強さは、だいたい把握していたが

とりあえず、桜に防御のみで、4人に攻撃させる

浮き彫りになる、4人の弱さ

いや、桜が強すぎるのも有るが

一般的な、中等部1年生と考えるなら・・・こんなもんであるのだろう。


 本腰を入れて取り組まないと優勝は無理っぽい・・・。


 ただ、話を聞けば、今年の1年には飛び抜けて強い生徒は少ないらしい。

そうだとも、紫音や蓮さんは、別と考えても

てっちゃんクラスの強さの人間が居てたまるか!

もし居ても、1年の時の優美ちゃん?

あとは、中等部2年、ランキング1位の岡山君?

彼の本気が何処まで強いかによるけど・・・。

1年の模擬戦は、チーム戦だ

個人での強さより、チームワークだから

勝てる可能性はまだある。


とりあえず、へっぴり腰の4人のケツを叩くように

桜と戦わせる、そうまずは、戦うと言う事に慣れてもらわないと

バーチャルシュミレーターの仮想敵としか戦った事のない4人

本物の人間相手に、戸惑いを隠せず、動きも鈍く

恐る恐る戦っていては、勝てるものも勝てない・・。



ってか、そこからかよ!!!



 夕方には、疲れきった後輩ちゃん達の4人の姿があった

バレないように、自然治癒を強化する魔法を使っていたのは内緒だ。


 明日、日曜日も、練習するなら付き合うよと、桜の申し出に

後輩ちゃん達4人は、大きく返事をした。

みんなやる気だ!!


 あ、でも、私は午前中、鈴蘭に修行に行くから居ないけどね。




*****

 おまけ

*****


 オムライスの配膳が終わり

私が次の準備に取り掛かろうとした時の事だった。


「鈴ちゃん、ちょっといい?」

そんな、かんなの呼ぶ声に反応し振り向く

「ちょっとこっち来て。」

言われるままに、かんなの側に行くと

「オムライスの上に、ケチャップで、ハート書いて!!」


「え?なんで?自分で書いたらいいじゃない。

 好みの量が有ると思って、掛けてないんだけど?」


「チッチッチ!

 鈴ちゃんに書いてもらうから価値が有るんだよ。」


グイグイ、迫ってくる、かんなに言いくるめられ

まぁ、いいやと、ケチャップで、ハートを書く。


「ヤッターーー!

 それじゃ、最後の仕上げもお願い。」


「最後の仕上げ?」


「こうやって、両手でハートを作って。」


えっと・・・ハートを作って?


「おいしくな~~れ、おいしくな~~れ。」


「おいしくな~~・・・・・・なにこれ?」


「最後に、こう手を伸ばして、LOVEビーーーーーーーム!!ってやって。」


「やだ!!」


「え~~~~~~お願い!!!!」


そんな恥ずかしい真似したくもない!が・・・

ダダをこねる、かんな・・・・

おかげで皆、食べ始めれない

あったかい内に食べて欲しいし

恥ずかしいけど、此処は私が折れるしかないのか・・・。


「もう、わかったって、やるから、抱きつくのは止めて!」


うわ、かんな、悪い顔で喜んでる・・・計算ずくか!!


「おいしくな~~れ、おいしくな~~~れ

 ラブビーーーーーーーーーム!!

 これでいい?」


「やったーーーーーこれで美味しさ100倍!!」


「はいはい・・・じゃぁ次作るから、おかわり要るなら遠慮しないで言ってね。」


「あ・・・あの鈴・・・。」


「ん?優美ちゃんなに?」


「私のにも・・・ハートと、美味しくな~~レ・・・お願いできますか?」




「・・・・・・え?優美ちゃんも?」


 あまりの驚きに、一瞬思考がとまった・・・・

恐ろしい事もあるもんだ・・・


って、優美ちゃん!!!!!!!!!!


 ハ!!!

全員の視線が、何かを求めてる・・・。


この後、全員に、ハートマークをケチャップで書き

かんなを道連れにして

「おいしくな~~れ」と「ラブビーーム」を連発した。




二度と、オムライスは作らない!!!




そう誓う鈴の後ろ姿は、もの悲しかったと言う・・・。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ