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1話 いつもと、少し違う日常

 



 国立関東天童魔法学園


その中等部にある、中等部生徒会・生徒会長【柊朱莉】

彼女が、学年別模擬戦のルール変更を発表して一週間が経った頃

中等部、校長から中等部生徒会長である、柊朱莉は呼び出しを受けた。


 中等部校長室

応接用のテーブルを挟んで座る

中等部校長と、生徒会長の2人

生徒会長の後ろに立つ2人の存在は、生徒会副会長の2人だった。


「柊君、よく来てくれた。」


「いえ、校長先生に呼ばれたのなら

 来ないわけには、いきませんもの

 喜んで参りますわ。」


 後ろに居た副生徒会長【草壁大樹 (くさかべだいき)】は

目の前でソファーに座る、柊朱莉を見下ろすように睨みつける。


 生徒会に校長から、柊朱莉に校長室に来るように連絡が来た時

颯爽と逃げようとした朱莉を捕まえ、ここまで引こずって来たのは

草壁大樹である、それをまるで無かった事の様に

微笑みながら口にする朱莉だった。


 校長も朱莉の性格はよく知っている

だからこそ、知っていても何も言わない。


「それでだ、柊君。」


「何でしょうか?」


「模擬戦でのルール変更だが

 少し困ったことが起きてる。」


 朱莉は無言で考え込む・・・。

 少し間が空くと。


「おかしいですね・・・

 シミュレーションでは、何の問題も御座いませんでしたが?」


「いや・・問題と言うより

 これは、小等部と高等部からの嘆願なんだが・・・。」


「嘆願?」


「あぁ、小等部からは・・まぁ無視してくれて構わんが

 模擬戦の日、高等部では模擬戦を盛り上げるべく

 文化祭が行われるのは知ってるだろう。」


 朱莉は無言で頷く。


「それでだ・・・

 その文化祭を盛り上げたクラスを・・

 アレに・・・連れて行けと・・。」

 

「そうですか・・・

 最近、騒がしいのはそのせいですか・・・。」


そう、高等部や、大学院の生徒が

中等部の周りにうろついている事は朱莉の耳にも入っていたが

それが、たかが1泊のナイトクルージングに行きたいだけとは

思いもしなかったのだ。


 朱莉にとって、それは、時間の無駄である

クルージングがしたければ、南の島の私有地で

人が多く存在する、豪華客船ではなく

執事の操作する、クルーザーで

メイドに世話をさせながら

ゆったりと寛いだり、仕事を行う

そう、寛げない豪華客船のクルージングなど

庶民の遊びだと思っていたし

それほど、大げさに騒ぐ事柄でもない。


 そして考える

すでに、チャーターしている客船

確か最大乗客人数は、1000人と少しだったはず

そして、今公約で約束されている人数は

中等部3年の優勝・準優勝のクラスの2クラスだ

1クラス36人、2クラス合わせて72人

そして、招待券はペア券で、数は倍になる、それでも144人

これが、2年に当てはめられる、よって288人

1年の最優秀者のクラス、36人分のペア券を足して360人

また、校長先生を始め

先生方の為に確保しているのが50人分のペア券、合わせて460人

これが、今計算できる、最低人数

これに、今数えなかった人達

模擬戦で活躍した生徒達に送るペア券を50人分だしても、560人

客船の収容人数の56%程度ですか・・・。


「分かりました。

 では、こうしましょう。

 模擬戦の最終の2日間

 この時小等部では、6年生における魔法学科の研究発表がありますわね

 その評価は、デバイス端末での集計され

 後日通知されます、この最優秀クラスを

 招待致しましょう。」


「それは、本当か?」


「はい、嘘は申しませんわ。」


 だが、朱莉は小等部に関しては、ある思いもあった。

それは、小等部6年には、十士族の九重家の【九重静香】がいるのだ

100%の確率で、彼女の居るクラスが最優秀であろう

柊朱莉にとって、四条優美と、九条静香は、妹同然の存在でもある。


 最近では、四条優美は、あのデカリボンのチビと仲良くして

自分の前に現れないので

来年、自身が高等部に進学したら

中等部を優美よりも、静香に仕切ってもらい

自身のいいように動かそうと考えていた。


 そう、普段は朱莉も静香も忙しく

顔を合わせても、ゆっくり話す時間もない

なら、コレを切っ掛けに

静香を優美から引き離し

自分の元へ来させようと考えるのだった。


 そして、言葉を続ける。


「高等部も同じでどうでしょう?

 1年から、3年までの各クラスは

 色々な出し物すると思います

 これを、集計して、一番評価の高かった優秀なクラス

 その1クラスをご招待いたします

 もちろん、小等部も高等部も中等部と同じくペア券です。

  それと・・・・・

 不公平になっては、私、柊朱莉の名が落ちますので

 中等部の模擬戦をサポートされる方々から活躍した・・・

 いえ、模擬戦を裏方で支えてくださる先輩方からも

 私や、先生方から、頑張ってくれたと思われる方を選んで

 功労者として数名選びたいですね。」


「柊君、本当にいいのか?」


「かまいませんわ

 すでに、船は押さえておりますし

 最大乗客人数は、約千人

 先ほどまで予定していた人数が約560人

 今言った、小・高等部の人数を入れても

 約700人と少しですから

 さほど、変わりはありませんわ。」


校長は、テーブルに両手を付き、頭を下げると

そのまま感謝の言葉を口にし・・・


「柊君には、感謝しかない・・・・が

 もう一つ・・・お願いがある。

 小等部と高等部と大学院の校長も招待してもらえないだろうか?」


「構いませんわ、今更数人増えようが、関係ありませんし

 来年には、高等部にお世話になりますもの

 喜んで、校長先生方をご招待いたしますわ

 そうですわね、特別招待枠で

 家族の方々もご一緒にどうでしょうか?

 流石に10人20人と言われても困りますが。」


 冗談交じりに笑いながら答える、朱莉

そんな朱莉に、校長は頭を下げたまま感謝を伝える。


「すまない・・・

 他の校長に、生徒の財力を借りて

 学校行事を盛り上げるとは、言語道断と

 それに、私もクルージングに招待された事をし知ると

 職権乱用と・・・グチグチと・・・言われててね

 結局、自分達も、色々と遊びたいだけなんだよ・・・。」


「まぁ、校長先生方も色々あるのですね。」


 後は、少しの世間話と

朱莉の自慢話によって、校長室を後にする朱莉達3人。


 生徒会室に戻る、朱莉は機嫌が良かった。


 思いの他早く、高等部と大学院の校長先生が動いたと

これは、朱莉の予想内でもあった。

中等部校長だけが、優遇されたとなれば

他の校長が黙っていない事は分かりきっていた。

 それでも、何も言ってこなければ

その内、朱莉の方から、招待券を送るつもりだったのだ。


 そして、校長や、それ以外の人間に疑いを持たれないように

ある人間達を、スムーズに招待できる口実も出来た事にも喜びを感じていた。


 その1人が、九重静香である

また匠に誘導することによって

十士族の分家ではあるが

その性分で、文化祭に参加せず

中等部模擬戦のサポートに回るだろう、高等部風紀の【六道歩】や

現高等部生徒会会長、現風紀委員長を始めとする

高等部で力を持った、人間を招待する口実も作り上げたのだ

これは、朱莉にとって

繋がりの細い権力者とのパイプを作る絶好のチャンスでもあった

その為なら、数千万の出費など安いモノと

人目など気にせず、おおいに笑うのだった。


 だが、朱莉の後ろを歩く

生徒会副会長の1人、草壁大樹は、その考えを見抜いていた

だが、いずれ柊財閥を背負っていく存在なら

それくらいはするだろうと、普段のわがまま振りからすれば

まだ可愛いものだと、無言で歩く。


 だが、もう1人の生徒会副会長の【白梅愛樹 (しらうめあき)】

彼女は、校長先生のむちゃぶりに、いつ会長が暴走するかと

汗をかきながら見守っていたが、思いの他すんなり話が終わり

「ホッ・・・」と、すると同時に、何かを企んでいる会長の背中に

今後訪れるであろう、災難にため息を漏らすのだった。



 この次の日

小等部と、高等部に、今回の話が通達され

盛り上がる、高等部とは別に

小等部では、なぜ6年だけと不満の声も上がるが

これは、小等部の校長が、中等部の校長に頭を下げてお願いし

中等部生徒会・生徒会長の柊朱莉のご好意で許されたのだと

これ以上は、船の乗客定員を超える為、お願いできなかったと

後に学園小等部の掲示板に記され

騒ぎは終着していく。


 そう、この時

生徒会から模擬戦のルール変更が発表されてから約1週間

中等部では、模擬戦へ向けて盛り上がっていく

その熱量は、凄まじかった

まだ1月は有ると言うのにだ・・・。


 その一方、すでに鎮火し

平常運転をするクラスもあった。


 それは、優勝も準優勝も期待できないだろう

2年3年の下位クラスの生徒たちである。

 それでも、対戦順しだいでは

準優勝に入り込む余地があるのではと

虎視眈々と他クラスの情報を集める。


 だが、そんな事すらする気もないクラスがある

クズクラスと名高い中等部、2-Jである。


 すでに、このクラスでは模擬戦の話は出ない

話に上がるのは、クルージングの話だ

模擬戦の後となると、そのクルージングは7月末

なら豪華客船にプールは有るのか?

温水で、夜に入れるのか?

どれくらいの大きさの船なのか?

1泊だから、寝巻きは、ネグリジェ?それともパジャマ?

また、一部のマニアは

ライブを行う【IA】が歌う曲や、その曲順を推理し楽しむ。


 そう、このクズクラス

模擬戦そっちのけで

クルージングに行く事を前提で話を進めていた。


 そして、模擬戦もクルージングにも

興味を示さない存在達がいた。




「起きろ、紫音!」


 マイマクラから顔を上げて

俺を呼ぶ、リーゼントのお化けを睨む


「うるせぇ・・・・。」


「いいのか?昼休みだぞ?」


「あ? もう昼だと?」


 最近昼休みになると

他のクラスの、ある人間達が

わざわざこのクズクラスで来て、弁当を食べるのだ

そして、その中の2人が、やばい

まず1人は、小さな身体ながら

俺の事を、目の敵にして

この世界から消えてしまえと、睨みつける・・・・。


 いや、実害が無い以上、まだこのデカリボンの少女はいい

問題はもう1人の女だ、こいつはヤバい!

鬼だ!まるで、俺の事を殺そうと、いつも目を光らしているのだ

そして、俺の姿を見た瞬間襲って来る

十士族の、一つの士族の娘と言う立場を使って

俺を捕まえようとする

恐ろしいまでの、攻撃本能を宿す女!


 そう、昼休みなれば

小悪魔な奴らが、俺の領域(マイ机とマイマクラ)を脅かす・・・。

 

「逃げるか・・・」


「紫音、俺は食堂行くけど、どうするよ?」


「てつは、弁当無しか

 でも食堂は、人が多くて・・・

 あの(にぎやかで活気のある)雰囲気は嫌いなんだよな・・・。」


「心配するな

 今は模擬戦のお陰で、ギスギスしてる

 紫音の好きそうな、険悪な雰囲気だ!」


「ちょっと待て!

 人の不幸や、争う姿は大好きだけど

 俺は別に人の陰険な感情が好きなわけじゃねぇよ。」


 俺は、上機嫌で言い返す!

きっと、とても嬉しそうな表情だったに違いない

だって、俺の顔を見て、てつが笑ってたし


まぁ、俺は自分の机に昇り、窓を開けると

そこから、外に飛び出すのだった。


 鉄雄も俺を追うように

俺の机に手を掛けると

机と窓を飛び越え、外に飛び出してきた。





 そして数秒

まるで、紫音達と入れ替わるように

クズクラスに現れた、少女達。

 

 一番初めに、教室に入ってきた少女は

「失礼します。」と丁寧にクズクラスに入ると

ある人間を探すように、クラスの中を一度見渡す。

 

「優美ちゃん、分かってんでしょ

 紫音が居ない事なんて。」


「そうそう、鈴の言うとおり

 居る訳がないよね

 でも、あんな風貌の癖して逃げ足だけは早いよね。」


「かんな、あんな風貌は言い過ぎ!」


「いいよ、なっちゃん

 かんなの言うとおり

 紫音はあんな風貌だから。」


 ポニーテールを揺らす少女は

両手で口を抑えながら、申し訳なさそうに

大きなリボンを付ける幼女に無言で頭を下げた。


そして、数人のクズクラスの女生徒が集まると


「四条さん、いらっしゃい。」


「みなさん、こんにちは。」


「約束道り、今日は私達と一緒に食べてもらうわよ!」


 士族の娘は、いつもは、友人達と一緒に食べるのだが

昨日、クズクラスで知り合った友達に

「明日は、自分達と一緒に食べない?」と誘われ

友人に肩を押され、新しい友達との輪を広げるのだった。



 その横で

猿のきぐるみを着る幼女は

桜色の髪を揺らす少女と両手を繋ぎ

楽しそうに踊る。


「やぁ、ニニス

 今日も可愛いね。」


「アリスなのーーー。

 ウキキーーなのーーー。

 ネネネ!サクラ、アレ登るなのーー。」


「ん~~~~~。」


 桜色の髪の少女は

猿のきぐるみを着る、幼女を持ち上げ

無造作に、黒い騎士鎧に載せる。


 サルの幼女は

まるで木を登るように

騎士の首に股がり両手を上げて喜び


「たかいなのーーーー

 うきーーーーなのーーー。」


「アラアラ、ニニス

 今日の乗り物は、とても黒いわね

 それに、乗り心地悪さうだわ。」


「ん?

 目がチカチカすると思ったら

 真っ赤なトンボが居たわ。」


「私が赤トンボなら、貴方はイカスミね!」


「ニニスは、黒い木にのぼったなの~~~!

 頂上とったなのぉぉ~~!」


「ニニスちゃん、そんなのに登ったら危ないわ。」


「キィは、うるさいなのよ!!」


「ちょっと、キイ、そんなのって何?!」


「ごめんなさい、アリスさん・・・

 でも、鎧が・・・痛そうで・・。」


 その言葉は、黒い鎧を着込む存在の心を穿った。


 そう、この鎧のせいで、どれだけ泣いてきたことか

今まで大好きな、可愛いものや幼女を抱きしめられない事は

ある意味、トラウマに近い物だったが

今は、崩れ落ちそうな膝を、踏ん張り我慢できる。


 やっと、この鎧でも抱きしめられる幼女が居るのだから

そう、肩に乗る、きぐるみの幼女は

その、きぐるみに護られている為

鎧を着た状態でも、抱きしめれるのだ

そして、その幼女も騎士鎧が面白いのか

ちょくちょく、抱きついてくる。


 鎧の少女の存在にとって

クズクラスは天国に2番目に近い場所だった。


 最近、1人増えたが

クズクラスの昼休みの

いつもの光景であった。



 その一方、紫音と、鉄雄は

中等部の食堂に向かう。



 学園では

小等部は給食である

なので、学園で必要と思われる物や

文房具を売る、簡単な購買がある

そこには、軽い食事になる、パンなども売っている。


 中等部・高等部は、基本弁当である

そして、中等部・高等部の食堂は、場所が別でもある


 食堂の一角では、コンビニの様に

弁当やパンなど食品や飲み物を売っている


 そして、食券を買えば

食堂で、作りたての食事が食べれるのだ。


 そうやって、食堂にある、机で食べる

何時もなら、仲の良い友人達が一緒に食べたり

同じ部活の人間が固まって、食べている。


 一種のコミニティーの交流の場でもあるが。


 運動部の強い生徒達が、幅を効かせ

机を占領りていたり。


 とある女子グループが

窓際の一番いい席を占領し

机の上に、化粧品を広げ

食堂に、甘ったるい匂いだったり

強い香水の匂いだったりと

誰も文句を言えない雰囲気をだす

たぶん食堂で、一番強い存在だろう

それ以外にも、色んな生徒が居る。


 そう、普段なら

そんな、生徒達が常に騒いでいる場所

それが、学園中等部の食堂だったはずであった。



 俺は、てつの後をついて行き

たぶん1年ぶりだろう、食堂に足を踏み入れる

古い記憶を呼び起こすが

記憶とは違い

そこは、さほど話し声も聞こえない場所だった。


 てつの言った通り

普段では有り得ない雰囲気に、俺はニヤける。


 学年別クラス対抗模擬戦

毎年この時期は、多少なりギスギスすらしい

仲の良い人間達には、あまり関係ない事だったが

今年は、副賞として

あの生徒会長が開催する、豪華客船でのクルージングがあるのだ

仲の良かった部活仲間は

違うクラスの人間を敵対視する

また、弱いクラスの人間は

入賞するクラスの部活仲間の、ペア権の権利を自分にと

取り入ろうとする。


そんな事が、普通に行われ

人間関係が破綻していく光景が、目の前で行われているのだ

面白く無いわけがない!


 俺は、スキルを使い

食堂で行われている

破綻寸前の人間が会話する話の内容を

全て盗み聞きする

その面白さと言ったらもう・・・・

指を指して、笑い転げたいほどだ!!


 笑いを堪え、食券を買う列に並ぶ

普段なら、並ぶくらいなら食べないと言いたいが

今日は、食堂でのギスギス光景や

スキルを使い、盗み聞きする会話で

列に並ぶ苦痛は無い

それより、この光景だけで

ご飯が3杯はいけそうだ。


 何を食べるか悩む・・・

そして買った食券は

以前、クラスメイトのデブから聞いた

一度は食べてみろ!的な、オススメな

【部カツカレー】のボタンを押す

それにしても、ナイスなネーミング!!

これ以外にも【ロン、焼くは蕎麦ノミ】・・・焼きそば具なしとか

卓越した、料理名が並ぶ

それを見てるだけでも楽しいが

まぁ、普通に【味噌ラーメン】とか、普通な名前のもあるけどね。


 出てきた食券を

熱気飛び交う戦場と思われるキッチンで働く

笑顔のステキな、カッケーおばさん(推定50歳)に渡すと

「お!いいねぇ

 やっぱり、男の子はいっぱい食べなきゃだねぇ~~~!

 腹いっぱい食べて、昼からも頑張りな!」と

意味不明な応援を頂いて

半券を手に、自動販売機で、缶コーヒーを買い

何処に座ろうかと、見渡すと

険悪なムードの食堂の中

バカ騒ぎをしている連中が、俺を見つけ手招きしていた。


 近づいていくと

クラスメイトの【D・D】が声を掛けてきた


「ヘイ!シオン、食堂に来るなんて珍しいな。」


「まぁな、(ここが)面白いことになってるって聞いてな・・

 それより・・・【太志 (ふとし)】・・・

 それ全部1人で食べるのか?」


 軽くD・Dに言葉を返すが

俺の視界に入ってきたのは、クラスメイトの太志だった

芸能人を父に持つ、この男、それなりに金持ちだ

だからって、そんなに食べるか?と

言わんばかりに机の上には・・・・・


牛丼・親子丼に・・・

すでに食べ終えた、ラーメンらしき丼に

手に持つのは、焼きうどんだった。


・・・彼の父親は・・俗に言う、デブタレント

バラエティーなどで、よく食レポしたり

料理番組でよく見る、体重130kgを超える芸能人・・・

母親も100kgを超える

そう、言わなくても分かるだろうが

太志も、最近100kgの大台に乗ったと、喜んでいた

うん、ボケだ!ちがった、デブだ!

そして漫才で言うなら、陽気なデブだ!ちがった、ボケだ!

クラスの、ムードメーカー的な存在でもある


そしてこのデブ、接近戦専門だが、結構強いとくるのだから

痩せていたなら、きっとモテただろう。


そして、同じテーブルでご飯を食べてるのが

【太志】【D・D】【ショウ】【キジ】

昼は食堂で食べる、仲のいい4人グループだ。


 俺とてつは

そのまま、奴らと一緒の机に座る。


 やいのやいのと、騒ぐてつ達5人

俺はいつものように、友人の姿を見て笑うだけだ

場所が変わろうとも

俺は変わらない

てか、魂は推定1000歳?だ

もう良い歳だ、変わりたくても変われない!

だらしない姿で、笑うだけだ!


そうしている内に、食券の番号を呼ばれ

注文した、部カツカレーなるものを・・・・





 俺に言葉を飲み込ませた、カレーを持ち

再び席に着く。


そして、俺の持ってきた

【部カツカレー】を、見て

同じ机の5人は、笑い転げた。


「しおん、それ買ったのかよ。」


「ちょっと待て

 太志!お前がそれを言うか?

 前に、これがオススメだって言ってなかったか?」


「いったけどさ

 本当にソレを買うとは・・・・ぷぷ。」


そう・・・【部カツカレー】

俺の千円札を飲み込んだ自販機の釣りは無かった。

あまり深く考えなかったが・・・・。

とんかつ・ひれかつ・ロースかつ、3種と

ソーセージと、鳥の唐揚げが乗った

大盛りの、カレーだ

運動系の部活の生徒が好んで食べる

総重量3キロ(実際は約2.3キロ)は有るだろう代物だ!


 俺は、友人に笑われながら

目の前の昼食に箸を伸ばすのだった。


 だが、普段の食堂なら

そんな、俺達クズクラス丸出しの集団だろうと

周りの騒がしさに、埋もれただろうが

模擬戦の事で、緊張感が走る今の食堂では

色んな意味で、注目を浴びていた。


そんな、俺達を睨む人間達の中

1人の男子生徒が動き出した

体格だけなら、高校生だろう長身と肉体を持つ中等部の制服を着る男

そして、彫りの深い顔立ちから、どう見ても年相応には見えなかった。


 そのおっさん顔の生徒は

俺が必死こいて、カレーを食べてる机に近づき

いきなりテーブルの足を蹴り上げた。


 その振動で、俺の買った缶コーヒーが

カタンと・・・・浮き

着地した反動で、倒れそうに・・・・・なるが

倒れるか倒れないかギリギリの所で

俺の目の前で、絶妙なバランスのまま、くるくると回転しだした。


 驚く俺とは違い、てつやD・Dは

テーブルを蹴り上げられた瞬間

自分の飲み物を持ち上げたり

丼の淵を指で押さえ、こぼれないようにしたりと

まるで、よくある事の様に対処する。


「オイ、宮守!いい気なもんだな

 いや、アレか?クズクラスは、模擬戦で勝てないから

 もう諦めてるってか?」


 てつは、笑うと

その生徒をおちょくるように・・・。


「いや、俺達は、優勝するからな

 すでにクルージングの準備に忙しくてな

 模擬戦の事なんて、忘れてたよ。

  なんだ?【新庄】お前達Dはまだ、模擬戦の事を考えてるのか?

 遅れてるな、それに、Dクラスのペア券を高等部売る契約で

 高等部のランカーに、中等部の選手潰させてるらしが

 いや、アレか?

 Dクラスは、模擬戦で勝つことを諦めて

 俺達の優勝を手助けしてくれてんのか?」


「あぁ!!!」


 【新庄】?ってだれよ?

まぁ俺の知る由もない

てつの小等部からの知り合いだろう、おっさん顔は

厳つい声を出して

再び、テーブルの足を蹴りやがった


 テーブルの上で、永遠に回り続けると思われた

クルクル回る缶コーヒーは

優しく抱きしめるように手を伸ばしていた俺の手を拒絶し

テーブルの上で、倒れ

その内蔵とも言える、内容物である黒い液体を

テーブルの上に、ぶちまけた。


「あぁ・・・俺の泣けなしの金でかった、コーヒーが・・・。」


愕然とする、紫音の姿がそこにあった。


「汚ねぇ・・・何するんだ、このバカが!」


「俺の・・・コーヒーを・・・汚いだと?

 てめぇ・・・俺を (バカと)褒めても、ゆるさねぇ・・・。」


 小声で、ブツブツと呟きながら

俺は揺らぐように立ち上がる。

 だらりと下げたその右手をゆっくり持ち上げ

目の前の男に向けようとした瞬間

鉄雄に膝を蹴られ

さっきまで座っていた椅子に

「ポテ」っとかわいく??・・・ケツを落とした。


真横から、膝カックンだと!

腕を上げたな!!

ちがった、膝を上げたな!いや、膝をぶつけたな!

ふ・・意味不明だ!

1人でノリツッコミをしていると


俺の一連の恥ずかしい場面見た、新庄


「なんだ?この変な奴は?」


 くそ、2度も褒めやがって・・・

それくらいで、許されると思うな

俺の60円分のコーヒーの敵!!


 120円の缶コーヒー

約半分を飲んでたと換算して

こぼれた60円分に、心で涙を流し

その尊いコーヒーを汚いと言い捨てた男に

心の底から敵意を向ける。


 そんな俺の膝を蹴って椅子に座らせた鉄雄は

新庄に、静かに怒り狂う俺を紹介するのだった。


「こいつか?

 ただの変態だ

 だが、覚えとけよ

 模擬戦で、俺達と当たったら

 新庄、お前は、この変態にボコられるぜ!」


 新庄の視線が俺に注がれ

つい、みつめあってしまった。


 新庄も、ランカーらしい

中等部2学年の順位で20から30位の間をキープする強さを持つとの事

その自信からだろう


「ようく言うぜ、こんなひ弱で、気持ち悪く

 見るだけで、吐き気がする

 腐ったヘドロの様な奴に俺が負けるだと?」


 や・・・やばいぞ!

この男!!!!!

なかなか見所がある!

俺の事を、そんなに褒めちぎるとは!!

まぁ・・、しょうがないな、俺も(狂)人(蘭さん)の子だ

そこまで、ヨイショするなら許してやらん事もないぞ!


 俺の雰囲気が一気に変わる

今まさに、人目を気にせず

新庄に攻撃を仕掛け用とした

激怒していた俺の感情が

新庄の発した言葉で、一瞬にして

頬を赤く染め(たような気分?で)

新庄への好感度がうなぎのぼりに!!!

それを読み取れるのは、鉄雄だけだった。


「あ・・・・・・・・!」


「なんだ宮守!」


「・・・・・・・すげぇな・・・新庄。」


「なんだよ!何が、凄いんだよ?」


 てつは、真面目な顔をすると

一度重く息を吐き

慎重かつ真剣に口をひらいた。


「教えても・・・・

 いいが・・・

 本当に・・・・

 本当に! 

 知りたいか?」


 その、てつの真剣な重みに、新庄は耐え切れず

顔を歪に歪めると一歩後ずさり


「くそ、覚えておけ

 どうせ、お前達クズクラスは

 本選出場権を掛けた、予選すら勝てないだろうがな!

 もしも、本選で会えたなら、全員俺が潰してやる!!」


 そう言って、元居た席に戻っていく。


あぁ・・・

俺様の信者が・・・・去っていく・・・

捨て台詞もなかなか、お手本通りだ!

あれをマジな顔で言えるとは

なかなか見所が有る奴・・・だったのに・・・。


うん、念話で叫んでる、ビッチの2匹は無視だな!


 そう、俺の居たテーブルが蹴り上げられた瞬間から

うるさいほどの念話が左右の脳に送られていたが

完全無視だ、お前達より、新庄だ!。


 新庄が戻った席で

その男を待っていたのは、同じクラスだろう友人

スゴスゴと戻ってきた、新庄を捕まえ・・・


「おまえ、デュエル申し込みに行ったんじゃないのかよ?」

「迫力負けしてんるんでないぞ」

「そんなんだから、あいつにアリスを取られるんだぞ!」

「クズクラス相手にビビってんじゃねぇぞ!」

「お前のせいで、俺達Dが、白い目で見られるだろうが!!」

「また、2ーDは、アリス以外は怖く無いとか言われんだぞ!」

と、仲間内で、グチグチと言いたい放題に言われ

一層、食堂の雰囲気を悪くしていく。


 その会話は、てつ達まで届かなかったが

俺は、心で笑いながら聞き

(あの男、アリスに惚れてんのかよ!)と

1人ツッコミをしながら

表情は、溢れたコーヒーを悲しそうに見つめていた。


 鉄雄は、紫音の怒りの感情から

喜びに変化し、こんどは悲しそうな雰囲気を醸し出す紫音に


「紫音、悲しそうな顔すんじゃねえよ。」


「そうだぜ、紫音!

 コーヒーが溢れたくらいで泣くなよ!

 俺が、奢ってやるから元気出せよ。」


 一緒に昼飯を食べていた、シュウ

気さくで、良い奴だ・・・・・がだ

唯一の欠点があった


 シュウは、太志と同じく、親が芸能人

そのお陰か、学園に居ることを許されていたが

先生が匙を投げるほど、頭が悪かった

そう、九九が覚えられないほどに。


「シュウ・・・・アリガドウゥゥゥ・・・

 飲み物を奢ってくれるなんて・・・・

 ううう・・・

 てつに、シュウの爪の垢を煎じて飲ませたい。」


「何言ってやがる

 紫音のサイフは、俺のサイフだ!

 だから、俺の昼飯も紫音のサイフから出てる!」


「なぁ・・・どう思うよ

 てつに、たかられて俺のサイフの中

 もう100円もない・・・・。」


「そりゃ、たかられる、シオンが悪いだろ。」


「金なんて、使ってなんぼ

 食い物買ってなんぼ

 たかられてなんぼ!」


「あんな可愛いシスターがいるんだ

 シオンはもっと不幸になれ!

 Go To Hell!!」


「てつ、僕の紫音兄さんにを虐めるな!

 紫音兄さん、今度てつに苛められたら

 僕がたすけてあげるよ。」


「誰が、兄さんやねん!!」


 友人にツッコム俺を加えた

俺達クズクラスの、コントが再び始まる

陰気な雰囲気を漂わす食堂に、陽気な一角が出来上がっていくのだった。


ちなみに、【部カツカレー】

全部食ってやったさ!!


 俺の胃袋の大きさに驚く

D・D達の顔は見ものだったぜ!!

くくく・・・鈴の料理で鍛えた俺の胃袋をなめんなよ!


うわっはっはっはっはっは!!!



 

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