35話 その後、ステーキを夢見る少女たち
「ふぁぁぁぁあ~~~~ぁ!」と
俺は、大きくアクビする
ここ数日いつも以上に睡眠時間はとってるハズなのに?
これは、アレか!寝すぎか!!
捕まってる間、ずぅ~~~~~と寝てたからな。
「しーくんのお口おっきいぃ、お手手入りそう。」
「胡桃、そりゃマジか!俺が入れてみるか!」
「腐れリーゼント、てめぇ拳噛み切るぞ!」
「噛み切りたいなら
まず、この拳口に入れさせろ!
ウリウリ!!」
「なんばしょっとぉぉ!!」
俺は迫ってくる、テツの両手を塞ぎ、にらみ合う!
これは、ほぼ毎日繰り返される
俺とテツの準備運動のようなものだ。
「おまたせーー」と近づいてきたのは、鈴と黒ずくめの甲冑だった。
俺と組み合いながら、その存在に気づいたテツ
「あれ?アリス帰ったんじゃないのかよ?」
「いや、ついでだから一緒に登校しようかと思って
リンに付いてこっちに来たのよ。」
「へぇ~~」
「それにしても、元気な変態って
気持ちわるいわよね・・・・・・」
「なに!元気な変態は気持ちわるいだと!!
今日からこのスタイルで行くか!」
テツの視線が俺の目を見る!
いつになく真剣な表情で
「言っとくが元気なお前は、変人だ!
変態じゃねぇ!!」
「よし、何時も通りでいこう!」
テツもくるみも、鈴までも
良かったと言わんばかりに何度も頷きがる。
まぁよくある光景だ。
「未だに信じられないわ、あの変態が
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
こんなのだなんて。」
「その間はなんやねん!」と
鎧に突っ込もうとした、俺を後ろから羽交い締めしたテツが
「心配するな、すぐに何時もの紫音になるから」と笑いやがる。
ならばと、俺は徐々に背骨を曲げ猫背にしながら
足の開き方も変え、ダルそうに足をなげだす
最後のシメに、誰も聞こえないほどの、超高周波を放ち
学園での嫌われ者の紫音君を作り上げた。
「その・・・変わりよう、驚くわね・・・
それに、その耳障りな音って、やっぱり魔法?」
「ん?アリスこの音聞こえるのか?
そういえば、アリスには効き目薄いよな?」
「そうね、聞こえないんだけど
ソレって、私の鎧の極一部に共鳴するのよ
初めて逢った時、気持ち悪かったから
それ以降は、共鳴しないように手をうっているわ。」
「やっぱ、全身を包む鎧系には、効果は薄いか・・・・。」
今は俺自体が、高周波を発しているけど
アリスの鎧を、高周波に発生源にして、共鳴させたら?
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・エイ!
アリスは、ビクッと体を震わせて
両手でその鎧を押さえ込むようにしながら、叫んだ
「わ!キモ!ちょっと止めて
この変態!何かしたでしょ?
本当にやめて・・気持ち悪い。」
くく
ざまぁみろ!
俺のスキルをなめるなよ!
俺様最強!
苦しめ!アリス!
「紫音!!」
魚!いや、ギョ!ギョギョ!
そんな事、言ってる暇わ無い!
すぐスキルを切った・・・・。
マジ顔の鈴は怖い!
「ちょっとした冗談だって!」
「この、変態が!今度やったら、即その首飛ばして・・・・・」
アリスの言葉が止まり、苦しそうな声がではじめた
宮守建設の敷地内から、ゆっくりと近づいてきたのは
メイド姿のリル、まるで、アリスが苦しんでいるのを楽しむかのように
時間をかけて、近づいてきて
「それでは、先に私が貴方を殺しますね。」
「リル・・・やめとけ」
「はい、シオン様」
アリスの体を支配していた何らかの力が開放され
アリスは、片膝を付いた状態で、地面に手を付き
ハァーハァーと音を立てて、息を繰り返す。
アリスの横に腰を落とす鉄雄は
「アリス、これだけは言っとくぞ。」
「ハァーハァー・・・なによ?テツ」
「ティオーノ先輩は、別に怒らしても怖くないけどな
あの【鈴】と【リル】と妹の【胡桃】それと・・
逢ったんなら分かるだろうけど
【蘭】さん達だけは絶対怒らすなよ。」
「わかったわ・・・・・。」
「アリス・イングラムさん、お伝えしたいことが。」
「な・・・何よ?」
「今日から当分の間ですが休みの日と放課後に
こちらに来てもらいます。」
「なんで!」
「まだ、あのスキルを使いこなせていない様なので
私が特訓をさせていただきます。」
「なんで、私がそんな事をしなくではいけないのよ。」
「うるさいですね、私だって
シオン様とラブラブして楽しみたい所を
貴方の様なモブに時間を割かなければいけない
この私の悲しみが貴方にわかりますか!
シオン様の命令でなければ
こんなモブに・・・
あぁ、ここでこの女を殺せば・・・」
「おぉぉ~~い、そろそろ、時間だぞぉ~~~い」
それは、宮守剛樹の父、鉄雄の祖父の声である。
「はーーい、おじぃちゃん、おはよーーーー」と鈴
「いってくるわーーー」と鉄雄
胡桃は、アリスがいる為か、小さく手を振る
紫音も右手を軽く振り、バス停に歩き出す。
そして、それを見送るメイドが1人。
何時も行われる光景。
そこに取り残されたのは、漆黒の騎士鎧を着る1人の少女だけだった。
いや、数秒呆気にとられながらも
置いていかれると、バスに乗れななると
早歩きで鉄雄達に追いつくアリスだった。
その日のお昼休み
当たり前かの用に、お弁当を持ってクズクラスに集まる少女達がいた。
鈴と桜・優美・かんな・夏目の5人だ
クズクラスの男子達や、女子達と
簡単な挨拶と、どうでもいい話を交わしながら
ニニスと、カレラの待つ席に付く
お弁当を広げる前に、鈴が口を開いた。
「少し待って、友達を1人招待したの。」
「友達なの?ここに来るなのなの?
ブヒーなのよ、とってもブヒーなのなの!」と
椅子の上に立ち上がって、喜ぶ【黒ブタニニス】
「だぁ~~~れぇ~~~」と桜
なっちゃんと、かんなは、2人して、誰が来るか言い合っていた。
そんな時、開けっ放しのドアから姿を見せたのは
全身を覆う黒い騎士甲冑。
「本当に、鈴達がいるわね・・・」
極希にクズクラス(鉄雄に会いに来る)に出没する鎧女である。
そして、クラスの大半が、この鎧女が鉄雄に惚れていることを知っていた。
そんな事は、当事者のアリスは知る由もないし
鉄雄にしてみれば、アリスが自分に恋心が有るなど頭の片隅にもないのだ。
そして、ニニスは、この鎧女を初めて見る
幾度かクズクラスで遭遇したことはあったが
ニニスはいつも寝ていた。
飛び上がるニニス
「リン!あれがなの?友達なのなの?」
「友達のアリスですよ。」
「ダークナイトなのなのーーーぶひーーなのーー」
ニニスはドアまで走りより、漆黒の甲冑を
その前足の黒い蹄で、ぽふぽふと叩く。
「え?・・・だれこの子?
り・・・りん・・・・助けて。」
「最近よく合うわね、それに友達って貴方だったのね」と
鎧女に近づくのはカレラだった。
「そうね・・・・・・・カレラ・・・・
この子をどうにかしてもらえないかしら?」
アリスは子供相手の対処が苦手だった
子供自体は大好きだ、抱っこして
その可愛さを堪能したいとまで思っている
ただ、鎧は脱げない
抱きしめたら怪我を負わすかもしれない
頭を撫ぜたら、指先の隙間に髪の毛が絡まって痛がるかも知れないと
こんな時だけは、自分の鎧が恨めしいアリスだった。
「ニニス、この鎧バカと遊ぶのは
お弁当のあとにしましょう。」
「わかったなの~~~。
ダークナイトも来るなの
一緒にリンの弁当たべるなのよ!」
全員が席に着く、机の上に並べられたのは
アリスが、朝リンから渡されたお弁当と、よく似たものだった。
この日の朝、リンは全員分の弁当を作っていたのだ
アリスに渡したのは
もしも友人と食べる約束をしていた場合
一緒に食べれないので、その時のためである。
軽く紹介を終える
アリスは、十士族の四条優美は知っているものの
先ほどの、子供が1国の姫だと知って
その場に膝を付き頭を下げようとすると
「ここでは、ニース様も、アリスさんも、普通の学生ですので」と
アリスの行動を止めたのは、優美だった。
「四条さんは、ニース様と・・・」
「私は長年、そう呼んでましたので、クセです治りません。」
アリスに、微笑むように言う優美だったが
リン達は知っている
優美が頑なに、ニニスの呼び方を変えなかった事を。
そんな優美とアリスを笑うように、かんなが
「そうそう、ニニスはニニス、私達の友達でかわいい妹だよねーー」
と、ニニスに言うと。
「ぶひーなのー、ニニスはなのーーみんなと友達なのなのーーー」
ニニスとカンナは、アリスの兜を覗き込むように笑うのだった。
本人と四条に言われれば、仕方ないと
騎士として、最低の礼儀を保ちつつ
一風変わった輪に入るアリスだった。
そして話は、アリスとリンがどうやって仲良くなったかになって行く。
鈴が、アリスは鉄雄が連れてきたと言うと・・・・
人知れずカレラが反応した。
三千風家で遊んで、夕飯にステーキを食べたと
アリスが言うと、かんなが騒ぎ出す。
そして、無駄にアリスが
ステーキの味を事細かに表現するものだがら
桜はヨダレをこぼし
かんなは泣き崩れ
優美は悔しそうにし
夏目は冷静に・・・・・携帯を取り出し、メモをとる
カレラは、絶対食べてやると、瞳の奥に炎を燃やす。
だが、ニニスは
「今日行くから作るなの!」
「「「「「それだ!」」」」」
「あ・・・お肉無いから、無理だよ。」
崩れ落ちる、少女達の姿がそこにあった。
食い下がるニニス、だが・・・
あの肉は、普段手に入らない特別な肉なのだと
(特価品の閉店間際の割引品)
そして、最低でも3日以上の熟成期間(放置)がいるので
すぐには用意ができないと伝える
一番驚いたのは、アリスだった。
やはり、高級なお肉だったのだと
そして、手間暇かけて作り上げた
高級なステーキなのだったと・・・・・
そんなステーキを、2枚も食べた
それより、あの時何枚のステーキを焼いて皆に振舞ったの?
少なく見積もっても10枚以上?
安くても1皿5000で・・・・5万円以上?
値段を予想した所で我に帰る、アリス。
そういえば・・・・
テツやシオン達・・・
数千万とか億の話してたっけ・・・と。
昨夜のステーキの話から
何時しか模擬戦で上位入賞者に送られるクルージングの話になる
と、言ったものの、そこで出される料理の話だ。
優美は、たぶんビュッヘや、バイキングに近いスタイルで
料理が振舞われると予想した
カレラや、ニニスも、同意した。
鈴は料理が食べたいから「Bクラスが勝つから」と言うと
クズクラスも黙ってはいられない
鈴達の話が、たまたま耳に入った、クズクラスは
「IAのライブが見たいから、俺たちが勝つ」と言い出しすのだった。
一瞬にして険悪ムードになった
Bクラスの鈴達と
クズクラスの面々
間に立たされたのは、Dクラスのアリス。
普通に考えるなら
上位クラスであるBに
学年最下位クラスのJの、クズクラスが勝てるわけがない。
だが、アリスは知っていた
クズクラスには、ある一点のみに特化した最強部隊だと。
カレラは、銃に関してだけだが長距離でのライフル狙撃もできるだろう
これは、遠距離魔法の範囲を超えて攻撃ができる
遮蔽物のない平地がフィールドの場合、近寄る事はかなり厳しい。
あっちにいる、鈴の弁当を物欲しそうに見ている
まるまる太った贅肉の塊
あいつの強化魔法は独特で、接近戦が強い。
それに、接近戦と言えば愁がいる。
他にも、ランク戦には、興味示さない奴らが何人も・・・。
・・・・でも、テツ1人でも・・・・・。
流石に本気になった、クズクラスや
優勝候補のA、それにBとなれば、自ずとわかる。
私のDクラスはむりっぽいわね。
諦めモードとなる、アリスだったが
それよりも・・・。
私達がお弁当を食べてる
この机の周りが凄いことに。
険悪ムードから、一気に喧嘩にと思ったが
信じられないことに
他のクラスの情報交換をしだしたのだ。
学年別のクラス対抗なのだ
自分達の持ってる情報を交換するなど
アリスは思いもしなかった。
他のクラスは
デゥエルで他のクラスの有力選手を
潰そうとしていて、ギスギスしているのに
この場は、信じられないほど、明るかった。
それも、私でも緊張する相手の
十士族の四条優美や
他国の姫でる、ニニスを加えてだ。
さすが、クズクラス、相手の地位や立場など関係なしか。
そんな思いが頭に浮かぶアリスだった。
その日の放課後。
アリスの携帯に鉄雄から電話がかかる。
「一緒に帰ろう」と
一気にテンションが上がる、アリスだったが
実は、意思加速の練習からアリスが逃げないように
鉄雄が連れてくるように、リルから言われていた。
そしてその練習場所は、宮守建設の敷地であり
朝、敷地を借りることを、リルが鉄雄の祖父にお願いし了解を得ていたのだ。
その為、紫音達が、朝の待ち合わせしていた時
リルが、宮守建設から来たのだった。
そして、その練習に鉄雄が付き合ってくれると言うのなら
アリスが、練習を断るわけがなかった。
そう「テツの家族に挨拶して、テツの周りから私を売り込んでいくぞ」と
その瞳を輝かせるのだった。
そこに、再び、あの倉庫で体験した地獄が待っていようとは知らずに。




