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31話 それからの三千風家・鉄雄争奪戦

 



 鉄雄は、ニヤニヤと笑いながら、紫音に。


「鉄雄お兄様って呼んでもいいぜ!」と言ったのだが


紫音も負けずおとらず、言い放った。


「鉄雄お兄様!肩を抱いている女性は、彼女ですか?

 それとも・・・彼女が目の前に居るのに、浮気ですか?」


 ステーキの皿にダイブしようとした、サラを肩を抱いて止めた鉄雄だが

肩を抱いたまま、右手でステーキを口に運び

紫音達のやり取りを見学していたのだった。


 そして、紫音は数日前、鉄雄の童貞が

ミカによって奪われたことを知る人間でもある。


 ちなみに、この時点で、蓮はその事を知らない。


 そして、紫音も詳しい話をしてなかったので

紫音は、ミカは鉄雄の彼女になったのか?

それとも、セフレ?なのかと・・・・・。


「おい、紫音・・・それは・・・」


「てつの彼女!!!!!」


 それは、ソファーで寝ていた鎧女の叫び!

 上半身を起こし、頭を兜の上から左手で押さえると。


「う・・・頭が、何か変ね・・・・

 恐ろしい夢を見ていたわ・・・・・・・・・

 テツに・・・彼女がいたなんて・・・・。」


 全員の視線が、アリスに集まる

紫音は、ニヤニヤと笑いながら。


「夢じゃないぜ!てつの彼女が2人もいるぞ

 ほら、そこに。」


 その声を追うように、アリスの視線は動いていく。


(アレ?変態?なんで居るの?何か指さしてるけど・・?)


 アリス視線は、紫音の指先の先を見る。


そこには、紫音の言葉の意味を理解し

面白そうと鎧女にピースサインを送るミカの姿と

修道女の女の肩を抱く鉄雄の姿があったのだ。


 アリスは、その兜の下で大きく目を見開いた!


(ちょっと待ちなさいよ、テツ!!

それは、さっき会ったばっかりの女じゃない、それが、彼女?だと・・・いや、仲良さそうに肩なんか組んで、私が気を失ってる間に何があったのよ、その女も女よ、だいたい肩を組んだだけで彼女になれるなんて思わないでよね、私なんか手も握ったし、か・・・・肩に担がれたのよ!!密着度なら私の方が上なんだから!肩を掴まれているだけで、彼女だなんて笑わせるわ!!・・・・ん?あの動かないわね・・女意識がないの?そう、倒れそうになった所を、テツが支えてるだけね・・・まぁテツは誰にでも優しいから仕方ないわよね、でもあの優しさを私以外に向けて欲しくはないけど・・・・まぁ今はいいわ、あの女が彼女では無いなら、本命は、あのミカって女?・・テツのカラスマスク越しだけど、キスをしたわね・・・・あの女が彼女?でも、あの女も知り合ったの最近よね?蓮先輩の仲間?テツから蓮先輩達と友達になったのは中等部に入ってからって聞いたけど・・・こっち向けて、ピースしてるし・・あの泥棒猫・・・・・夜の一人歩きにはきよつけなさいよ、人知れず私が殺してあげる・・・・ん?・・・・・・変態が笑ってる?ってか、この裸 (こいつ)・・変態よね?さっきは気にならなかったけど、何時ものヘタレな雰囲気が無いわね・・・でも、変態だよね、そして、その変態がこっちを向いて笑ってる・・・そうテツに彼女がいるって言うのは嘘なのね、中等部に転入してきてからの付き合いだから、1年ほどだけど、あの変態の性格は良く知ってるわ、だいたい本当の事を言うような奴でないし、どうせ私を、からかう為に嘘をついたわね・・・・私が取り乱す所を見たいだけね、そんな所をテツの前で見せるとでも思って?・・・・・・本当にテツに彼女なんていないわよね・・・・?、今までそんな話聞いたことないし・・・・・・ふぅ・・・・・冷静に考えなさい私・・だいたい此処は何処?目の前には変態と、黒髪の美少女と銀髪の美人、そして、井門とかいうメガネ、向こうの机には、テツと修道女の姿の女、ミカと言うオッパイお化け、と・・・変な格好で動かない、蓮先輩、奥の台所?らしい場所には、メイド姿の美少女と・・・・長い青い髪の片目を隠す独特の髪型もしかして、あの子は、三千風鈴?本当に変態と兄妹なの?あぁ、似てないし同学年なら、両親の再婚で連れ後なのかしら?・・・・」


 アリスは、ソファーの上で体勢を整え、大きく息を吐くと。


「シオン、そんな嘘を私が信じるとでも?」


「信じる信じないは、アリス次第だけどな。」


「・・・・・テツ・・・・そこのトコ、どうなのよ?」


「彼女か?今は、やらないといけない事が多いいからな、作る気は無いな。」


「そら見なさい!」

(よかった・・・・本当に良かった・・・・でも、私も彼女になれない?・・・・・・まぁいいわ、テツも【今は】って言ってるし、私も今のうちに、土台固めをしていくわ、テツの妹って存在も気になる所だし、まずは、妹さんと仲良くなって、お家にお邪魔して、お父様や、お母様とも仲良くなって、テツの周りから攻めていってあげるわよ。)


 アリスは立ち上がると、一直線に今一番気になる存在に向けて歩き出す。


 台所の一歩手前まで行くと。


「初めましてで、いいのかしら?三千風鈴さん。」


「こうやって話すのは初めてですね、アリス・イングラムさん、噂は色々聞いてますけど。」


「噂?テツ達から?」


「ちがうちがう、たまに、てっちゃん達と一緒に居るのは見かけるけど、あの2人は学校の事をあまり離さないから、噂は、なっちゃんから・・・あ、小早川夏目ちゃん達から、とても優しくて強い騎士様だって、じっさい、あのゴーレムの攻撃を受け止めた強さはびっくりしました。」


「え?あそこに居たの?三千風さん・・。」


 鈴はニッコリ微笑み、自分の来ている、パーカーのフードを持ってアリスに見せる。


「それに、鈴でいいですよ。」


 アリスは息を呑む

あの回復魔法をかけてくれたのが、目の前にいる三千風鈴なのだから

上位の回復魔法、それは現代の科学魔法では有り得ない魔法なのだ。


 そして、後ろを振り向く

そこには、変態の横に座る、黒髪の美少女

鈴と同じく、色違いのパーカーを着込んでいた

あの場所に現れた、2人のパーカーの人物

それが、三千風鈴と、黒髪の美少女なのだと驚くが・・・。


「見た目じゃ・・・測れないわね・・・・

 もう驚き疲れたわよ」


 アリスは、鈴に向き直り。


「リンと呼ばしてもらうわ

 そして、回復ありがとう、心から感謝するわ

 そして、私の事もアリスと呼んでもらえるかな?」


 にっこり笑う鈴。


「じゃぁアリス、ステーキ食べる?」


 アリスも兜の裏でニッコリわらい、嬉しそうな声で。


「いただくわ

 さっきからいい匂いが、胃を刺激して

 今にもお腹が泣きそうだわ。」


「ふふ、すぐ焼くから、座ってまってて

 リル『てっちゃんの横に』椅子出してあげて。」


 鈴は、先ほどの態度や

今までたまにみる、アリスと鉄雄の雰囲気から

アリスの思いを鑑みる、そして、紫音と同じテーブルよりも

鉄雄の隣に座らせたほうが、面白いものが見えるかも?と

リルに念話で鉄雄の隣に椅子を出すように、念入りに言うのだった。



 その傍ら、小声で・・・。


「っち・・・面白くねぇな・・」


「しーくん?」


「ん?あぁ

 アリスの奴な、てつに惚れててな

 からかったら、あたふたする所がみれると思ったんだが

 思いの他、冷静でな、面白くない

 てつの奴も奴で、嘘でもついて、アリスの奴を驚かせろよ。」


「おにいちゃんは、優しいから、女の人をからかう様な事はしないよ

 女の人は大好きだけどね

 それに、やらないといけない事って言ってるけど・・

 本当は、しーくんと遊んでいたいだけだと思う

 何時まで、遊べるか分からないから。」


 そう言うと胡桃は紫音の手を強く握る。


 それは、鉄雄も胡桃も

あと数年で紫音がこの世界から居なくなる可能性が有る事を知る数少ない存在であり

ならば、全力で紫音と遊ぶ事と決めた

心優しき兄妹の紫音と鈴に対する無言の思いである。


 が!


「なら、嘘でもついて、俺を楽しませろよ!」


「だね」


「だが、それをしないのが、てつか」


「うん」


「鉄雄争奪戦、鉄雄が相手を選ばなかったから、引き分けか?」


「ん~ん、えらんでるよ、勝者しーくん!」


「辞退します!」


 とてもイヤそうな顔で答える紫音だった。


 紫音のスキルを使い交わした言葉は

2人以外には聞こえない会話であり

楽しそうに言葉を交わす2人を横で見る、マリアは悔しそうに紫音の肩を揺らすが

完全無視で、会話を続ける2人だった。


 鈴は、ステーキを焼き上げる

胡桃が座っている為か、リルが給仕を行う

ステーキを運んだ場所は、アリスの前であり

鈴は次のステーキを焼きながら

アリスがどうやって、ステーキを食べるのか興味津津で、その目を光らす。


 アリスは、そんな視線を気にすることなく

そのフルフェイスの兜に手を掛ける。


 右手をマスク部分に当てると

「カチャ」っと、マスク部分の接続部を外す

それによって、マスクが少し浮く、そうすると

フルフェイスのマスクの下に、小さな空間が出来上がった

アリスは、小さく「いただきます」と告げると

ステーキを一口大より、少し小さく切り分けると

器用にマスクの下から、肉を口に運ぶ。


(そんな・・食べ方ができるなんて・・・・)と鈴。


(何時もの事ながら、器用だな)と鉄雄。


それ以外の人間も、きっと思っただろう。


「そこまでして、素顔をみせたくないのか??」と。




「お・・・・おいしい・・・この赤みのお肉

 どうやって下処理を行ったかわからないけど

 噛んだ瞬間、血に近い甘くワインに似た

 芳醇な香りの付いた肉汁が口の中に広がる・・・・

 それに、何種類もの、ハーブが、鼻に抜ける香りを後押しして

 より幸福感を感じさせる・・・

 信じられない

 こんな美味しいお肉、食べたことがない・・・」


 ため息のような、幸福な吐息が漏れる。


「お口にあうようで、良かった

 少し待ってもらえば、おかわりあるけど?」


「今更、、、遠慮してもだから、いただきます。」


「はい。」


 嬉しそうに答える鈴は

次のステーキを焼き上げる

次に運ばれた場所は、7:3メガネ

「やっぱり、鈴さんの料理は世界一ですね

 これが食べれるだけで

 紫音さんの下に付いて良かったと思いますね」と

何時もの様にベタ褒めで、食べていく。


 次に運ばれた場所は、マリア

「本当に、こんな美味しい料理が、これからずっと食べれると思うと

 紫音さんの愛人になって、良かったっす!」と

紫音は、その言葉に違和感を感じるが気にもしない。


 次に運ばれた場所は、紫音、一口食べて

「あのフライパンじゃ、これ以上は無理か

 改良の余地が有るな・・・」

ブツブツと言いながら、新しい器具の構想を巡らしていく。


 次に焼かれたステーキは

リルが自分で持ち、そのまま紫音の座るテーブルに付く

「くるみさん、申し訳ありませんが、変わってもらえますか?」

胡桃は小さく頷くと、立ち上がり鈴のいる台所に向かい

リルは、嬉しそうに、ステーキにナイフとフォークを入れていく。


「アリス、待たせしました、おかわりの・・・・」


「ありがとう、それにしても、本当に美味しいわ」


「アリス・・・」


「なに?」


「人参とブロッコリーが残ってるようだけど?」


 張り詰める空気。


「私、嫌いなのよ」


「それは何?アレルギー?それとも、何かのトラウマで口に入らないとか?」


「ん?いや、ただ嫌いなだけだけど?」


「そう・・なら、それを食べたら、おかわりを出しますね。」


「え?」


 キョトンとする、アリスに助け舟を出したのは鉄雄。


「アリス、よほどの理由がない限り

 この家では、嫌いだから食べないと言う選択肢はないぞ

 ついでに言うと、個人の皿でだされた物を残すようなら

 二度と鈴の料理が食べれないぞ」


「好き嫌いで、そこまでする?」


「するだろ?

 アリスの常識なんて、ここで通じると思うおなよ

 紫音の家で、鈴の家だぞ

 実際、鈴を怒らした、ティオーノ先輩はこのざまだ!」


「できれば、無視し続けたいんだど・・・

 どうしたの、蓮先輩は・・。」


「簡単に言うとだな

 料理を出される順番が気に食わないっって、鈴に文句を言ったら

 鈴を怒らして、食事抜きにされて

 無理やり、そこのサンドイッチを取ろうとしたら

 鈴の逆鱗に触れて

 身動き一つ、言葉も発せれない状況になったわけだ

 アリスも、あぁ成たけ無ければ

 好き嫌い言わず、全部食べることだな

 我慢してでも食べば、次のステーキが食べれるぞ。」 


 アリスの視線は、蓮から

ステーキ皿の上に残る人参とブロッコリーに向き

エイヤ!と人参にフォークを突き立て、口に運ぶ

「ニガ・・・くない?」

人参の独特の味は残るものの

ほのかに甘味がにじみ出て、食べやすくなった人参

ブロッコリーにフォークを突き刺し、口に運ぶ

こっちは、軽く塩ゆでしてあるのか

ブロッコリーの独特の味はあるものの

塩のさっぱりとした味が口に広がっていく

「2つとも食べれる・・・

 今まで、あの味が嫌で、食べれなかったのに・・・・。」


「あぁ昔、胡桃が食べれなくてな

 鈴が試行錯誤して料理したのが、その人参やブロッコリーだ

 売ってあるような、人参嫌いな人でも食べれるって言う代物は

 元々の匂いや味を殺した、品種改良の意味の分からない食べ物で

 人参じゃないからって

 元の味は残したまま、おいしく食べれるようにって

 結構苦労して、作ったんだと

 まぁ、未だに胡桃は

 鈴の料理以外の人参は食べれんけどな。」


 話に自分が出てきたことで、鈴の後ろで真っ赤な顔で照れる胡桃


 そして、皿の上を完食したアリス

その光景に鈴は満足し、アリスの前には2枚目のステーキが並ぶ。


 それでも、鈴の手は止まる事はない

ミカに3枚目のステーキを焼き

リルの2枚めのステーキを焼き

マリアの2枚目のステーキを焼き

リルの3枚めのステーキを焼く・・・・・。


 そこには、美味しそうな食事風景が繰り広げられた。




 ただ、動けない蓮を取り除いてである。



 

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