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22話 お姫様だっこ

 



「潰す潰す潰す・・・・」



一歩一歩、膝を曲げ腰を落とし

左右の手に持った盾と剣を引こずりながら

上半身を前に投げ出すように歩き

ゴーレムに近づいていくアリス


そこには、普段学園で見せる優等生の姿は無かった

学園の女性の憧れの的でる、騎士アリスの面影は其処には無い


禍々しいオーラを放つ全身鎧の女性

言うならば、理性を失った騎士【バーサーカー】とも

闇に堕ちし騎士【ダークナイト】とも言えただろう


だが、ゴーレムによってボロボロになった

変態の追い打ちで、死に直面した今のアリスにとって

自分の無様な姿を誰がどう感じ、どう思おうと関係なかった

ただ、これ以上、テツの前で負け姿を、弱い自分を見せれないと

テツと共に戦い、テツの盾であり、テツを守れるのは自分1人だけだと

その力を示すために、あの修道女を潰すと・・・・



アリスは、ゴーレムの攻撃範囲内に入ると

鞘から剣を抜く、いや剣から鞘を落としたと言うのが正解かもしれない

そして、現れたのは、鮮やかに輝くエメラルドグリーンの長剣

【ラン♪ラン♪】の魔法を使い、長剣に風を纏わすと

その風は剣先に向かい渦を巻くように吸い込まれていく

半身で左手の盾を構えると、長剣の剣先を盾に2度ぶつける

長剣に纏わせた風が、盾とぶつかり

ガガガ!ゴゴゴ!と大きな音を立てる

同時にアリスは渾身の叫びを上げた


「【ウォークライ】!!」


それは、自身の存在をアピールし

特定の相手の注意を引き、敵対心を一気に上げる技

太古の時代から受け継がれてきた騎士の家系に伝わる、隠しスキルの1つである

そして、これによって、ゴーレムは全身鎧の存在を無視出来なくなり

ゴーレムの意識はアリスに固定され、攻撃目標は当面アリス1人だけとなる


ゴーレムが振り回す右腕がアリスに襲いかかる

それをアリスは、盾を斜めに構え受け流すように弾く

十トンは有ろうかと言う質量のゴーレムの拳を弾くのだが

アリスは多少バランスを崩したに過ぎない

ゴーレムも、ゴーレムで攻撃を弾かれても

そのまま2発目の攻撃に移る


1擊目を弾いたのはいいが押し負けたアリス

それは今までの癖であり

重力級の攻撃を受け流そうと盾を振って力の方向性 (ベクトル)を変えた事で

自身がバランスを崩した事を、本能で理解したアリス

だが魔法【あはん!】で受けた限り質量とパワーは互角である

2擊目の横殴りの攻撃がアリスを襲うが

またも盾を斜めに構え受け流すが、やはりバランスを崩し横に一歩踏み出す


奥歯を噛み締め倒れないように足を踏ん張るアリスに

リルは「使い方が間違ってます」と

使い方?何の?と一瞬頭によぎるが

アリスの目に映るのは両拳を合わせ

高さ15メートル以上まで振り上げられた両拳

アリスから見れば、遥か彼方4階建てのビルに匹敵する場所から

アリスに向けて叩き落とされるだろう、ゴーレムの渾身の一撃

さすがに固く握られた両拳は弾く事も、受け流す事も不可能

そして、逃げようにも、一歩踏み出す事すら必死なアリス


その体は軽く感じられるが、意識に対し体がついて来ない

それどころか、装備した盾や剣、鎧までもが何かに縛られた様に鈍く

何かに引っ張られるような感覚が全身に行き渡る

集中し意識を保たないと、指一つすら動かせない状況であって

ゴーレムの攻撃を避けることは不可能でもある


アリスは盾を頭上に構え、右手でそれを支え

魔力を盾に集中するのだった


慈悲も加減も無い無情の一撃がアリスを襲う

その両拳は、アリスを叩き潰し

その衝撃は地面を割り砕け散った破片を撒き散らすのだった


「ォ・・・・オイ!アレ、イ・・・生キテイルノカ?」


それは、距離を開けていた、シスターが、黒の仮面の男に向けた言葉だったが

無表情を決め込んでいたシスターだったが

動揺の色が隠せないほど、声を詰まらせる


「あの鎧女も、それなりの覚悟があって此処にいる

 お前も、それなりにか覚悟は有るのだろう?

 なら、気にするな・・・・・

 まぁ、あの、リーゼントや、メイド達が動かない所を見ると・・・

 オイ!『リル』俺達が気にするだけ、無駄なんだろ?」


蓮の視線が、メイド服のリルに向く


「そうですね

 あの盾に物理防御の【あはん!】に魔力を注ぎ込み

 ある一定以上に達したため、同デバイスの【コチン!】がオートで発動しました

 アレこそが、あの盾と剣、それにあの御方の魔法の使い方の1つです

 そして、それが正しく作動した今

 あの攻撃でのダメージは、ほぼ無傷だと思います」


「その、魔法名は・・・変態の魔法か・・」


「はい、悲しいかな・・・・あの御方の魔法です」


「そうか・・・・・・

 まぁ、そういう事だ、シスター」


蓮も紫音が作り出したこの世界の科学魔法を幾つか譲り受けたが

その魔法名に、頭を抱えていたのだ

どう言おうが紫音は、あの変人じみた魔法名を変更しないのだ

今は、もう諦めたが、紫音のセンスは蓮には理解できなかった

いや、紫音すら、その類い稀なるセンスを理解できる同類には出逢ったことがない



ゴーレムの拳が、ゆっくりと持ち上がる

ゴーレムの意思ではなく無理やり持ち上げられた拳は

横にずらされるように向きを変えられ

床にその拳を落とす


そこに現れたのは、黒い全身鎧を着る存在

リルの言葉どうりほぼ無傷である

アリスは、そのまま

「【シールド・インパクトォォォォーーーー!!】」と大声を上げ

左手に持つ盾でゴーレムの拳を叩きつける

数トンは有ろうかと思われるゴーレムの拳とアリスの盾がせめぎ合う

常識的に考えるなら、フルプレートに盾を入れても

アリスの重量は100キロ前後

そんな、子猫の爪が、巨大な象にかなう訳がないのだが

押し負けたのは象・・イヤ!ゴーレム

拳を大きく跳ね除けられ、初めてその体勢を崩し

横に崩れるように床に手を付き体を支える


「なにやってるの!さっさと攻撃なさい!」


「お・・おう」


アリスの気迫に押され、つい返事をしてしまった蓮であったが

すぐに、冷静さを取り戻し、笑いながらゴーレムに突っ込んでいく


「ククク!面白い!面白いぞ!鎧女!

 おい、エアマスター!アレを壊す魔法があるんだろ!

 俺様と、鎧女が、時間を稼いでやる

 その力見せてみろ!」


『ミカは、奴を守ってやれ』


蓮は、返事の無いミカに振り向かないが

きっと嫌そうな顔をしている事は理解できた

だが、そんな事は気にもせず、崩れたゴーレムの懐に入り

魔核が有ると思われる胸に攻撃するが

さすが弱点を守る為か他の場所と違って装甲は硬い

それを嫌がってかゴーレムも体勢を戻す


そこからは時間稼ぎである、蓮が遊撃し

アリスが攻撃を惹きつけ耐える形に落ち着く

その間にゴーレムの攻撃対象から除かれたシスターは

距離を取り、フルパワーでスキルを使う

胸の前で両手で何かを抱え込むように構え

集中しそこに何かを集めていく


白い霧状の何かが渦を巻き一点に集まっていく

時間と共、それはゆっくりだが大きくなり時間にして約2分

バレーボール程の大きさの、透き通るほどの液体を作り出す

シスターの吐く息は白く

彼女が居る場所だけが、まるで極寒で有るかのごとく温度を下げる


大きく息を吐くシスター

温かい白い息は白く、そして液体に近づくと氷り

綺麗な結晶となって光輝き落ちていく

5月の夜には有り得ない現象

小さな小さな、ダイヤモンドダストが起こるのだった


「準備、デキタ!」


シスターの声に蓮が反応する


「鎧女!」


「わかってる!

 動きを止めるわ!」


アリスは、剣を握る右手に力を込め、その拳を頭上に突き上げる


「【Arcana Circle (アルカナ・サークル)】」


アリスの足元から大きな五芒星古式魔法陣が広がっていく


【ウォークライ】と同じく、騎士の家系、イングラム家に伝わるスキルの1つ

【Arcana Circle (アルカナ・サークル)】

魔物と呼ばれる存在の中で、魔法生命体と呼ばれる生き物達が居る

この、ゴーレムや、ウィルーオーウィプス・ガーゴイル等である

その魔法生命体の動きを阻害し

その全ての能力を低下させるエリアを作り出すスキルである


その範囲内に居るゴーレムは、動きが鈍くなる

それは、誰が見ても分かるほどの効果があった


アリスすら、初めて使うスキル

いや、アリスの知る限り過去において

その対象となる魔法生命体相手に

1000年以上使われた事の無いスキルであり

その効果は言い伝えでしか分からず

どれほどの力が有るかすら、本当に何らかの力が有るのかすら

使った本人すら解らなかったが

その効果は十分すぎるほどであった


それもそのはず

ゴーレムを、虫螻のように潰せる力を持つチートと呼ばれる存在がいる

その、チートと呼ばれる、リルと言う存在すら

アリスの【Arcana Circle (アルカナ・サークル)】のスキルの力を受け

微量なり、その行動を阻害され、能力が低下したのだ


それには、リルも驚く、自分の能力を低下された事に

そんな事ができるスキルが存在したことも

自身が、そのスキルをレジスト出来ず

その効果を受けてしまうなど、頭になかったのだ


そして、もう一人、ミカも、多少なりその能力を低下させる

ミカは、リルと、視線を合わせると

その事実を誰にもバレないように隠蔽する


*****


その現象は後に紫音により解明されるのだが、簡単に言えば

リルとミカ、その体は【クローン】である

これは、言い換えれば【ホムンクルス】・【人造人間】である

異世界での位置づけは【魔法生命体】

これは【Arcana Circle (アルカナ・サークル)】の対象となるのだ

分かってしまえば、誰しもが納得できる事なのだが

ただ、その性能が桁違いであったのだ


誰が作り上げたスキルかは定かではないが

数千年と言う時間の中、代々騎士の家系で受け継がれ

その性能を試す事も出来ないまま

伝承としてだけ伝わってきたのだが

代替わりする当主の中でも、変わり者は居る者で

伝授される騎士のスキルを

より高度で、より高みに作り上げた人間が居た事も確かであり

時代とともに、練磨琢磨され研ぎ澄まされて来たスキルは

あの【リル】すら、レジストできないほどの力を持つまでとなっていたのだ


そして、この【Arcana Circle (アルカナ・サークル)】の用に

その効果を試す事が出来なかったようなスキルや

使えない(使い勝手が解らない、用途が無い)スキルや

使える(使い勝手の良い)スキルを

アリスは多く伝授されている


*****


目に見えて動きが鈍くなったゴーレム

アリスは、青い修道女の技が、確実に当たる為に

ゴーレムの動きを止める為に、次なるスキルを使う

盾を構えたまま、右手を引き構え

ゴーレムに剣を突き出すように叫ぶ


「【Restrain Seal (リストレイン・シール)】」


束縛刻印とも呼ばれる、騎士剣技用の科学魔法

相手を束縛し動きを止める魔法である


その魔法の発動と共に

ゴーレムの腹部に、大きな赤い刻印が浮き上がる

それも束の間、ガラスが割れるかのように

パリパリと崩れ落ちていく


対人間用に作り出された現代科学魔法

能力の下がったゴーレム相手であったが

その効果は無く、完全にレジストされたのだった



それでも、蓮にしてみれば

期待していなかった鎧女が

ゴーレムの敵対心を引き受け

その動きを鈍らせ、能力まで削ったのだ

その予想以上の働きは、拍手喝采するほどである


そして、今度は自分の番だと

動きの鈍ったゴーレムの体を駆け上って行き

その勢いのまま頭上まで飛び上がり

ゴーレムの脳天の部分に立つと

【龍喰】を大きく持ち上げ、その刀身にイカズチを纏わせると

脳天部分に突き刺し、更なる電撃を送り込む


伝達中枢神経と思われる頭部分に電撃を喰らい

動きを止めたゴーレムに止めを刺すべく

蓮は命令する


「今だ!シスター」


「ワカッタ!ミンナ、離レル」


その瞬間、シスターの前にあった、液体が

一直線にゴーレムの胸へ飛んでいく

胸に辺り、弾けるように飛び散る液体は

ゴーレムの体、前面の約5割を凍りつかせ

造船ドック内の温度を一気に一桁台まで落とすのだった


「完全ニ、凍ラナイ・・・・・デモ・・・」


シスターは、残った力を使い、圧縮した空気を打ち出す

ゴーレムの胸部に当たったのか

凍りついたゴーレムの胸部が砕け

赤黒くゆっくりと点滅するように大きなコアがむき出しとなるのだった


「力、モウ無イ・・・・アト、マカス」


「あぁ、よくやったぞ!

 後は任せろ!」


蓮は返事をしてみたものの

ゴーレムの体を凍りつかすほどの冷気であっても

魔核と魔核の周りには、その影響は見て取れない

それは、ゴーレムの体以上の硬さを持つ、魔力の塊である

普通の攻撃ではキズ1つ付けれないだろう代物


そして、今日一日、全く良い所がない蓮

目の前のゴーレムですら、鎧女が注意を引き時間を稼ぎ

シスターが、魔核を攻撃できるまでの道を切り開いてくれた

周りの弱者(人間)によって、お膳立てされた、勝利へのシチュエーション

誠に持って不本意であるが


これで倒せないとなると

後で変態や、そこで笑いながら、こっちを見ているリーゼントに

何を言われるか貯まったものではない


それに、あの変態なら倒せるだろう相手に

これ以上時間を掛けて戦うのは

まるで俺があの変態より弱いみたいではないか

この辺で、本当の絶対的強者が誰であるかを

此処にいる全員に見せつける必要性がある



蓮は龍喰の刃に左手の親指を当て、その親指を切り血を流す

そして、その血を刀身の鍔に近い場所から、剣先に向け

刀身を赤く染めるように親指を動かしていく


「起きろ龍喰!

 龍の血でなくて悪いが

 それでも痩せても枯れても元魔王の血だ

 力を貸せ」


龍喰に語りかけるように言葉を掛けると

右手に持つ巨刀・龍喰を右肩に担ぎ

左足を一歩前に踏み出し、半身で腰を落とすように構えを取ると


「【龍喰一刀・地落とし (りゅうばみいっとう・じおとし)】」


右手で龍喰を握り締め、右肩で龍喰を軽く跳ね上げる

そのまま大きく振りかぶり龍喰の力を、ゴーレムに向けて振り抜く

そのまま、龍喰をくるっと回し、その巨刀を再び肩に担ぐ



一瞬の静寂なのか


ピキン・・・・・・・・・・・・・と


ゴーレムの魔核が縦に真っ二つに割れる


「終わりだ」


それはゴーレムの終わりを告げた、蓮の声


そして、ゴーレム体も魔核と同じように

体の中心で左右に割れ、左右の体が縦にずれだした


蓮の放った【龍喰一刀・地落とし】

空を飛ぶ翼竜すら、地上に打ち落とす斬撃

それは、ゴーレムの魔核を切り

ゴーレムを切り

なおかつ、ゴーレムの後ろの造船ドックの壁までもを切り裂いた


圧倒的な斬撃、圧倒的な力

そして圧倒的な強さを見せつけた蓮

これには、鷲尾や、シスター、アリスまでもが驚いた


「ナゼ・・・使ワナカッタ、ソノ力・・・・」


シスターの本心が漏れた言葉に


「まぁ・・なんだ、これは、この龍喰の力に頼った攻撃だからな

 出来れば使わずに倒したかっただけだ

 使うと後々色々文句言う奴がいるんでな」


視線を、先程まで紫音が写っていた、映像があった場所に写すが

そこには何も無く、映像はすでに切られていた

軽く笑い、その視線を鉄雄に写すと、まるで自慢するように


「だが、この力を引き出せるのも俺の実力でもあるがな

 まぁ、試合や組手などと言う、相手を殺してはならない

 人間相手の手合わせでは無いのなら

 これくらいは楽勝だ」


それは、殺してもいい死闘なら

宮守なぞ相手では無いと、言わんばかりの発言でもあった


鉄雄にしてみれば、そんな事は、百も承知であり

もともと鉄雄が目指すは大工であり

普通に考えれば、大工が世界最強を目指す脳筋に勝てる訳がない


そう、鉄雄は蓮に勝つつもりなど、少ししかない

少しでも有る事が驚きではあるが

紫音に言わせれば

負けず嫌いと言う事において

鉄雄以上の人間を知らない

いや、宮守家の血筋がそうさせるのか

宮守家の血統は、全員が全員極度の負けず嫌いである

宮守の爺さんから、あの髭の怪物、鉄雄に、胡桃までもが

蓮を超える、負けず嫌いなのだ



そんな鉄雄は、見栄か強気か


「俺なら、そんな奴!

 蹴りで木っ端微塵って所だけどな

 だいたい、剣で真っ二つーーーーーーみたいな事をするから

 完全に倒せ切れないんだ、そら見ろ動き出すぞ」


蓮の視線が、ゴーレムに戻ると

体の中心で、左右の体が縦に、1メートルほどズレた、ゴーレムがいた

それは、左手で右半身を支える事によって

体の崩壊を食い止めていたのだ


魔核を失ったゴーレムであったが

その司令塔である頭は、まだ生きていた

そして、その巨体に残る魔力で左手を動かし

左右に分裂した体を支えたのだ


その体勢のまま、最後の魔力を振り絞り

自身を砕いた黒い仮面の男に向けて

その右腕を高々と持ち上げた


ほっとけば、魔力切れで止まるゴーレムだが

逃げる訳にもいかない

そして、龍喰も、元魔王といえど人間の血で

連続で2回も力を貸すほど、優しい存在でもない

だが、蓮は龍喰を持つ右手に力を込める


そして、ゴーレムが再び動き出した事によって

アリスも動き出そうと一歩踏み出す


「・・・も、いいよね?」


そんな声が蓮の真上から聞こえてくる

そこには、蓮の言いつけを破った存在


空中に浮き、右手に持つ七星は、すでに4つ目の星を輝かせたた



*****


ミカは、それなりに楽しんでいた

普段はしない地上戦

魔法を温存し、地を駆け回り、ゴーレムを攻撃する

だけど、超回復によりダメージは通らない

そんな戦いも、しばらくすれば飽きる


コスプレシスターが、空を飛び回る


あいつ、飛んでる、なんでボクが飛んじゃダメなの?とか思い出す


黒鎧の参戦、レン様に暴言を吐く・・・・けど

面白そうなんで、放置する事にした


だけど、今度は、コスシスちゃんの護衛を任される

ゴーレムの攻撃は黒鎧が受け持ったんで

こっち攻撃は来ないから、暇だったりする


コスシスシスの魔法の発動

あの硬いゴーレムの装甲を凍らせ砕く

球体結界?の中に何かを発生させた?

水風船?

冷気・・・・お?

球体結界?

集めて固める?

魔力の水?

!!!!!!!!!!!!!!


レン様の攻撃

ゴーレム、真っ二つ!!

レン様!かっこいい!


でも、ゴーレム動き止まらない


トドメ・・・もらっちゃう?

うん、面白いの思いついたし


ミカは、ゆっくりと浮上していく

ゴーレムの振り上げた腕よりも高く


左手を大きく上げ

手の平を天井に向けると

右手に持つ七星に魔力を込めていく


1つ【結】球体結界を作り出す

2つ【封】結界を耐熱結界で封じ込める

3つ【熱】結界の中に高熱を発生させる

4つ【魔】そこに、魔力を注ぎ込む


ゴーレムの動きに、レンとアリスが反応する


そんな蓮に


「(レン様も龍喰使ったんだから、ボクも力つかって)も、いいよね?」


すでに使っているが関係ない

その報告だけをし、返事も聞かず、七星に魔力を更に溜め込みながら


「だ・・・・大地よ

 海よ、そして

 生きている

 全ての、みんな

 ・・・・・・・

 このオラに

 ほんのちょっとずつだけ

 元気をわけてくれ!!」


感情などこもっていない、棒読みのセリフ

言ってみたかっただけである


5つ【圧】圧縮させ

6つ【融】それを融合させた

七星に刻まれたのは、6つの光


ミカの頭上に生まれたのは、

途方もない熱量をもった赤黒い球体

耐熱結界で熱を封じ込めてはいるが、5桁に届く温度であある


「元気玉!とおおぉぉぉぉぉぉーーーー」と


ミカはそれを解き放ち、ゴーレムに向けて飛ばす



最初に当たった場所は、ゴーレムの振り上げた右腕

その石なる拳を、そして腕、体と溶かしながら進み

魔核をその球体に取り込むように、その場所で勢いを止めると

ゴーレムの巨体は、溶けるように液状化し

ソノ何かに吸い込まれるように小さくなり消えていった

そして残ったのは、ミカの作り上げた、エセ元気玉


ミカは全魔力を七星に注ぎ込み

七星の最後の星を発動させた

7つ【滅】それは消滅した


白い歯を見せて、ドヤ顔をキメると

全魔力を使い果たし、空中に浮くことすら出来なくなったミカは

全身から力が抜け、満面の笑で、空中から落ちてくる


真下に居るのは蓮

無造作に数歩移動し

落ちてくるミカから距離を取る

地上に落ちるかと思われたが

空中でミカの体を優しく包み込み

硬いコンクリートから、彼女を奪ったのは黒いリーゼント


鉄雄はミカを、お姫様だっこをし、軽やかに着地を決め

ゆっくりと立ち上がると


「やっぱ、ミカさんすげーーーーー

 どこかの駄魔王と違い、きっちり倒しきるし

 ここぞって言うタイミングを理解してるねーーー」


ワザと大きな声で、背後いる

どこぞの駄魔王に背中越しに聞こえるように言い切るのだった

ミカは鉄雄の腕の中で「ニヒヒ」と笑う


巨大なゴーレムを真っ二つにした蓮の斬撃

それは、圧倒的な力であったが


巨大なゴーレムを消滅させた、ミカの魔法は

蓮の斬撃すら霞むような、より圧倒的な魔力であった

そう、蓮の見せ場は、ミカの活躍で上書きされ

記憶の片隅に追い込まれる事となるだろう


そんな圧倒的な力、魔力、そんな物よりも

アリスとシスターにとって

鉄雄に抱っこされる、ミカの方が衝撃的事件であり

アリスの標的はミカとなり

シスターは、初めて感じる、その感情に声もでない


そして、片隅では

鉄雄によって、行儀よく並んで正座させられている

鷲尾とその部下達の姿があるのだった



 

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