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21話 悪魔の囁き

 



「ストーンゴーレム・・・・」


それは、リーゼントの持つ、黒いボールから出現した巨大な魔物を見て

蓮がこぼした言葉である


そして蓮と目が合う(ゴーレムに目は無いのだが)

そんな気がした蓮、そしてゴーレムも目の前に居た

禍々しいまでのオーラを纏う存在を敵と認識したのだった


ゴーレムは右腕を上げ、蓮に向け振り下ろす

蓮はその場を蹴り後ろに飛び退く


さすがの蓮であろうと

相手は10メートルある、石のゴーレム

その圧倒的質量による攻撃を受ければただではすまない

先程まで蓮が居た場所には

ゴーレムの攻撃で、コンクリートの床が大きく陥没し

その威力を物語っていた


そして飛び退いた先で

ストーンゴーレムを見上げ


「属性は石、それにゴーレムか

 俺との相性は最悪だな

 それよりも、あのデカさ

 この世界の人間が勝てる相手では無いな

 だが今の俺の相手として、ふさわしくもあるか」


そもそも、土属性の相手に電撃は効きにくい

相手が石、それも全身が石となると、ほぼ雷属性の魔法は効果がないと見ていのだ

それは、雷系魔法を得意とする蓮にとって、相性は最悪となる


だがだ、以前の【魔王・雷帝・レイ】ならば、取るに足りない相手

そして、もとの姿であるなら【ミーティア】や【ミカ】ですら軽く勝てる相手

レイの部下の魔人でも、勝てるだろう相手だが

パワーのみならば、魔人クラスの力を持つだろう【ストーンゴーレム】


蓮は、開放した覇気によるパワーを試す相手に丁度いいと考えた

シオンとの組手では使かった事の無い蓮の覇気

それは人外の力、桜の覇気など比べ物にならない本物の覇気

それを本気で纏い、戦ったことはない

いや、それ程の相手など居なかった

だいたいこの世界に魔物はない

いても隔離され管理された、異世界から召喚された魔物


宮守や、車椅子の女の事も気にはなるが

目の前に現れた、オモチャに蓮は仮面の奥で

いかにも悪者と言えるほどの悪い顔で笑い

一気に覇気を纏い戦闘態勢に移行するのだった


覇気を纏ったと言えど、ゴーレムの攻撃を正面から受けるほど蓮はバカではない

圧倒的質量による、連続攻撃、それをひらりと躱す蓮


10メートルに及ぶ大きさにでは有りない動きであった

その動きは、常人の動きではない

もし【シオン】なら

「物理法則を無視し、この世界の理を無視する

 異世界の魔物って、理不尽すぎんだろ!!!」

とグチを溢す所である


蓮はゴーレムの攻撃をかわしながら

左手をゴーレムに向けると

電撃を撃ち、ゴーレムの頭だろう場所を直撃するが

電撃はゴーレムの体を通り床に拡散していく


中級レベルの電撃では意味は無い、と

蓮への攻撃で、床に突き刺さったゴーレムの拳

それを蔦って、ゴーレムの体を駆け上がる蓮

その頭の頂点に片手を置き、まるで逆立ちするような形で

その左手に魔力を込める

「オラァァァ!! 電羅威 (デンライ)、零距離だ!!」

通常の魔物、あの猿の魔物なら即死レベルの電撃

放電・拡散などはさせない、その為の零距離での魔法

その付いた手で電撃を操作し、帯電させ威力を高めるのだった


ゴーレムに3秒近く電撃を与えた蓮は

ゴーレムから離れ地上に立ち、勝ち誇った顔でゴーレムに目を向ける

そこには動きを止めたゴーレムが・・・と思われたが


薄く青い光が、ゴーレムを包んだと思った瞬間

再びゴーレムは動き出し蓮に向けて攻撃を開始した

大きく飛び退く蓮は歯を噛み締める


あの電撃が効かないだと!

あれ以上の威力、それも零距離ので電撃は

覇気を纏った俺でも耐えれないぞ

七星であれ以上の電撃を撃つか

だがその場合被害はデカイな

ミカに結界を貼らせても限度がある・・

まったく厄介な相手だ

なら、とりあえず手足でも切り飛ばすか


「『ミカ』来い!」

「ほい」


蓮の呼びかけに応え

姿を現したのは

黒と白で縦半分に色分けされた仮面を被る

胸元をパックリと開けたタイトな黒皮のライダースーツ

スタイルの良い体付きと胸の大きさは

峰不●子を彷彿させる姿である


「龍喰 (りゅうばみ)を出せ」

「ほほい」


ミカは何もない空間に右手を突っ込み

一振りの巨大な刀を取り出した

そして無造作に、蓮に放り投げる

受け取った蓮は、それを鞘のまま肩に担ぎ

右手に持つ七星を、ミカに投げると

ミカはそれを受け取る


「お前は、七星を使え、だが星2つまでだ

 俺は、龍喰を使う

 とりあえず、巨大魔法は無しだ

 死なない程度に、全力で負けろ!」

「ほほほほほほいいいいい???」(なんで負けろ?)


両手で七星を、お手玉して遊んでいたミカ

蓮の言葉で、一瞬七星を落としそうになりながら

首を傾げて驚きながら返事する


「あぁ今の、お前では勝てないだろうが

 それでも肉体の限界を測るのには丁度いい相手だ

 自身の魔力で限界を超えて死なない程度に暴れる許可をやる

 ワレと共戦え!」


ニヤっと笑う、ミカ


「それは、勝ってもイイって事だね

 ボクがアレを倒しても、怒らないでよ!」


シオンが喜びそうな、カッコイイ言葉を口ずさみながら

七星の柄に結ばれた布を右手で握り

七星を、ブンブンと振り回しながら喜び

その闘気を開放するミカ

やる気は充分すぎる程である


そして、蓮も肩に担いだ龍喰をその鞘から抜くのだ

龍を喰らい、その血肉を取り入れ強さを増すと言われる刀

龍相手なら、その力を限界以上に吐き出すだろう刀だが

神龍ですら喰らうその能力から

忌み嫌われゴッズアイテム(神級)と認識されず

レジェンド(伝説級)と伝わっていた

【巨刀・龍喰 (りゅうばみ)】

刀身180cm、柄もいれれば230cmはある巨大刀

刀身自体は日本刀のソレだが、その装飾は

魔王に相応しく、贅沢な装飾が施されている

そして、眠ったままの龍喰であろうと

本来の1割ほどしか力が出せなくても

蓮にとって、自身の覇気に耐えれる武器であるなら

十分な武器となり得るのだ


この世界では、あの世界で伝説級に認識される

最低限の金属【ミスリル】や【オリハルコン】すら存在しないのだ

本気の蓮の覇気に耐えれる武器など有りはしなかった


そんな重量級の巨刀だろうと、覇気を纏った蓮にとっては

さほどの重さを感じない、それよりも

久々に覇気を解放する高揚感に興奮していた




造船ドックの一角に、恐怖のエリアが出来上がっていた




10メートルはある巨大な魔物【ストーンゴーレム】

覇気を纏い、禍々しいオーラを纏う【雷帝・レイ】

嬉々迫るオーラを垂れ流し、闘気を纏う【ミカ】


3人が入り乱れる壮絶な戦いを繰り返すが

蓮達の劣勢である

巨大魔法が使えず、押され気味である

それは蓮の考えとは違った状況である


ゴーレムが持つ共通能力である【自動修復能力】

多少のキズなら即回復する、それはまだ予想内であったが

驚いたことに

蓮が魔力と覇気で強化した龍喰で

無理やり切り落とした、ゴーレムの腕だったが

切り落とされた腕は石になり崩れたのだが

ゴーレムは、それを拾い身体に押し付けると

体内に吸収し、腕を回復させた

それは超回復と言っても言い程の、スキルであった


そう、異世界の石で作られたゴーレム

それ事態に魔力が通っている、キズ1つ付けるのも大変である

腕を落とした蓮ですら、腕1つ落とすのにかなり魔力を消費したのだ


至近距離では、ゴーレムが繰り出す連続攻撃

距離を開けると、ゴーレムの魔法が飛んでくるのだ

【ストーン・パレット】に似た魔法だが

根本的なサイズが違う

1メートル近い石の塊が連続で飛んでくるのだ

そんな物に当たる2人ではないが、厄介なのは確かである

そうやって時間は過ぎていくのだが


蓮もミカも、消耗戦となれば、不利なのは自分だ分かっていた

覇気や闘気を使った長時間戦闘で

どこまで、この世界の体が持つか分からないのだ

そして蓮はこの魔物をだした張本人に向かって叫ぶ


「リーゼント!お前も戦え!

 それに、この魔物をどうやって手に入れた!!」


蓮は鉄雄の姿を目で追い

何をしているのかと思うと

車椅子のシスターの傍で、何やら会話をしているのだった

そして帰ってきた言葉は


「さっき拾ったんだよ

 だいたい今ナンパ中なんだ話かけんなよ

 デートの約束獲得できたら、そっちに参加するから待ってろ

 ってか、そんな相手も倒せないのかよ

 本当に魔王だったのか?

 やっぱり変態の言っていた通り駄魔王かよ」


キレそうな蓮だが、今はゴーレムで手が離せない

怒りだけを鉄雄にむける


「覚えておけ、こいつの次は、お前だ!!」


「倒せてから言えよ、駄魔王さんよ!」


少し振り向いて、リーゼントをおったてて蓮を挑発する

童貞を卒業し、ひと皮むけた鉄雄は、言うことが一味違うのだった


本来なら、ミカは主に反抗的な態度を取る相手を許しはしないのだが

鉄雄の性格を知り、尚且つ、主が認めた男である【鉄雄】に

ミカは、アレは私が喰ったと、楽しそうに笑う


鈴はあの蓮さんを相手に挑発するなんて信じられない行為だが

さすがは、てっちゃん怖いもの知らずだと肝を冷やす


リルにしてみたら、どうでも良い事だし


胡桃にとっては何時もの事、気にするほどの事ではない




だが、そんな一瞬のスキに動いていたのは

蓮にとって戦力外の存在でもあり、ひ弱な人間であったアリス


アリスは今まで

2人のフードの人物、鈴と胡桃を守るように位置していた

目の前で繰り広げられる戦いには

まるで【手を出したらお前も潰す】みたいな威圧感を感じ

おとなしく、2人を守っていたのだが

蓮が鉄雄に戦いに参加しろと言ったのだ

アリスは、今まで気付きもしなかった事に気づく


見た目では攻撃を一切受けていない、蓮先輩とミカさん

状況は有利だと思っていたが

実は戦況は圧迫し不利であった事に

そして、それをそのまま見過ごすことは

騎士を目指すアリスには無理であった


戦いに参加するだろう鉄雄

戦っている蓮先輩に、善戦を繰り広げるミカさん

戦いを少しでも有利に運び

全員を守ると言う騎士を目指すアリスにとって

その場で立ち止まると言う選択肢はない

両手に騎士剣を構え、全身に強化魔法を施すと

気合と共にゴーレムに駆け出して行く



アリスは、その騎士剣に、先日シオンから貰った魔法を掛ける

3つ貰った新しい科学魔法の1つ

風系の魔法【ランラン】(最後に♪つけてねは、無視した)

名前のセンスも、変態じみてもいるが

この魔法、風を剣に纏わせ剣に風を食わせると言う意味不明な魔法だが

これ以外に貰った2つの魔法よりマシであり

纏わせた風には攻撃特性があり

攻撃系の魔法が少ないアリスは、この魔法を使かうのだった


この魔法以外に

盾に魔力を込め瞬間的に体を硬直をする魔法とか

自身の体の速度を落とす魔法とか

とりあえず、あの変態の事だ何かの意図が有るのだろうと

無駄だと思いながら、いちよ魔法を練習したアリス(無駄にマジメである)


ゴーレムに突撃し騎士剣で、その足に切り込む

剣撃でのダメージは無いが

騎士剣に纏わせたのは、紫音が作り上げた、科学魔法

ただの風ではない、意味不明な力が、ゴーレムの足を切り刻む

瞬時に再生していくが、この攻撃でゴーレムは

ボロボロの布切れを着る

全身鎧のアリスを敵と認め攻撃を仕掛ける

横殴りに飛んでくるゴーレムの腕

アリスは横に転げる様に躱す

騎士剣を地面に突き立て、すかさず起きようとするのだが


ゴーレムはアリスを殴るために捻った体を戻すことなく

そのまま捻りきり腰から上、上半身を一回転させ

逆の手で、アリスを襲うのだ

人間では有り得ない動きは、アリスの常識を超える


その攻撃は、一度攻撃を避け切ったから

ゴーレムは体制を整えるまで攻撃は来ないだろうと

油断していたアリスを襲う


「にげろ!」


ついアリスは声の主である蓮に振り向く

だが、そこにあったのは、ゴーレムの石の拳

とっさにクセで左手を体の前に持ってくるが

そこには有るはずの盾は今は無く

数十トンと思える威力の攻撃が直撃する

フルプレートと言う防御特化の装備と自前の防御魔法

そして、事前に鈴がアリスに施していた魔法障壁があったため

一命は取り留めるが

鎧の為、外見からは見えないが

鎧の中では、左腕は肉は潰れ骨は折れ

体のあちこちも骨折し、見た目以上のダメージを受け

ボロボロとなった、アリス


意識はハッキリとしていた

全身に脈打つ痛みが、意識を失う事を許さない

痛みに耐えながら、浮かんでくる記憶


土誇りが舞う闘技場

師匠との練習で動けなくなり

倒れる自分に、説教する師匠の姿

グチグチと・・・・

騎士道を口にする

ネチネチと・・・・

戦いに関して口にする


何度も繰り返した現実


聖なる騎士、そう有りたいと、そう成りたいと願った自分

強くありたいと願った自分

聖騎士になる姿を妄想し佇む自分が其処にいた


そう、そこにいたのは過去の自分


だが、どれひとつ役に立たなかった

あの井門と言うメガネの言った通り

本当の戦い・・・命をかけた戦いにおいて騎士道など役に立たなかった

自分の命さえ守れない自分が他人を守れる訳がなかった

いや、あの魔王を名乗った男

本当の魔王だと思ったアノ蓮先輩ですら勝てない相手

ソレに私が勝てる訳がなかった


私は何をして来たのだろう

あれほど努力して修行をしても、力は手に入れられなかった


こんな魔物のたった


1擊で・・・


一瞬で・・・


全てが・・・


終わった・・・


これが生死をかけた本当の戦い・・・


あれと戦える、蓮先輩や、ミカさんは異常なんだ


ワイバーンを踏みつぶせる、テツも異常なんだ


だが、変態は変態だ・・・


あぁ、あのメガネも言っていた


常識ハズレ・・


ソレを心の何処かで笑っていた


そんな無知を晒して


私は死んでいくのか


テツは泣いてくれるだろうか


私の死体を抱きしめてくれるのだろうか


もしテツの胸で死ねるなら・・・


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


アレ・・・・?


もしかして死んだら鎧脱がされる?


やばい・・・目の下のクマが・・・


こんな事なら姉さんに化粧を教えてもらえばよかった


それに、鎧脱がされたら胸が・・・


し・・・・死ねない


絶対死ねない!!


意地でも死ねない!!!





苦しみの中、アリスの耳に届く綺麗な声があった


それは天使の声の悪魔の囁きだった


「力を手に入れたいですか?

 アレと戦える力を

 アレから仲間を守る力を

 そしてリーゼントのカレと肩を並べ、共に歩める力を

 ですがそれは

 同時に騎士の夢を捨てると同意語だと理解してください

 目的の為なら世界を敵に回す事も有るでしょう

 人を殺し利益を得る、そんな世界かもしれません

 貴方が望む世界とは真逆な世界

 そして人ならざる道を進む事となるでしょう

 それでも、力を欲っしますか?」


力は欲しい

だけど私の夢は聖騎士に成る事

騎士の家庭に生まれ、騎士に成るべく育てられた

そんな事が理由ではない

ただ、そんな家庭だからこそ

世界各国にある虐げられた子供の事は自ずと耳に入る

未だに無くならないテロや、戦争を継続する国や地域

そこにいる人達を助けたい

それを行うの方法として、一番の近道が聖騎士だった

騎士となり聖騎士と認められれば

世界各国で、その名と地位の元に人が助けれると信じていた

そう、聖騎士に成りたい訳ではない

苦しむ人々を助けたい

だが、今の私では聖騎士になれた所で

人々を助ける、自分の命すら守れる力すら無い

その事が初めて解った理解した

そして

それが出来る力をくれるなら

聖騎士でなくてもいい

悪魔との契約だろうと

闇騎士、暗黒騎士に落ちようと

世界の人々を救えなくても

目の前の人間

手の届く範囲の人間だけでも救え

テツを守れ、共に歩けるならば

手に入れてやる【力】を

そして・・・・

テツにスッピンの素顔を見られず

発育途上前の胸を見られずに済むならば

悪魔にだって魂を売り渡してやる


アリスは、激痛で呼吸をするのが精一杯のなか

声を振り絞り


「ちから・・・を・・・・・わたしに・・・・・

 ここで死ぬのだけは・・・・イヤ

 生きたい・・・・そして・・・・共に・・・・」


その本心を口にするのだった




************



そして、アリスとは別に


【力】と引き換えに

その【魂】まで売り飛ばした人物がた


いや、そうではない

【体】と引き換えに【心】を奪われた人物も居たのだった



 

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