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14話 1日前・アレ?身体が動かねぇ?

 



ホコリが舞い油臭さが残る部屋に入ってくる男がいる

すこし年を取ってはいるが体格のいいその人物

もともとの体格もあるのだろうが

胸元から背中まである、ハーフプレートの様なデバイスアーマー

そのアーマーから両腕のデバイスに繋がるアームやチューブがあり

男の上半身は、不可思議な逆三角形となっていた


その男は、床に転がった裸の男に視線を送り


「起こせ!」


携帯でゲームをしていた、男が動く

この男以外も数人いるが

床に転がっている男に一番近い、この男が動いたのだ

そして、無造作に

目の前で転がっている裸の男を蹴飛ばした



蹴った男も、それなりの強さをもった男である

軽く蹴られたにも関わらず

裸の男は1メートルは吹き飛びそして1メートルほど滑り転がった


空気が抜けるような、呼吸音が一度止まると

再び小さな呼吸音が復活し

そして、気を失っていた裸の男は目を覚ますのだった








いてえ!!


体に走った衝撃と、声が出なく頭の中に響いた叫びと共に

紫音の意識は覚醒する


腹が痛てぇ・・・

それに、なんだこの、感じた事のない苦しさは・・・

それに身体が動かねぇ

視界は・・・丸い?・・・

これは!知らず知らずの間にプチ整形で!

パッチリ二重に・・・なわけあるかかぁぁぁあぁぁあ!!!

まぁ、ひょっとこ面の目の穴だわな

どうにか意識を失う前に、お面が脱げないように掛けた呪は発動したみたいだな

これぞ!ホントの呪いの仮面ってな


そして仮面の目の穴から見えたのは

【小宮】という男の姿だった


「・・・・・・」


ん?

俺をこの状態になるまで追い詰めたことを褒めてやろうと

声を出そうにも、口が動かない、喉もうごかない

それに体が、指一本動かないのは、どういう事だ?

あ、言うな!言うなよ!


眠りの紫音と呼ばれた俺に解けない謎は無いのだよ

オイコラ!ちびっ子は邪魔だ!子供はあっちいっていろ

オイ!なんで?時計をイジっている

まぁいい俺の素晴らしい推理をそこで聞いてろ!

あれぇぇ~~~~バタ!

zzzzzzzzzz


そんな変な、コントを思い浮かべながら考える

いや、思考も変である

徐々に遅れだす思考に紫音は気づかない


そうだあの時、罠にハマった俺は、ガスで眠らされた

あのガスに毒はない、そして、体に痺れはない

ならば麻痺ではないだろう

魔法の類ではなさそうだが・・・

神経系統をやられたか?

いや、微かながら筋肉は反応している神経は生きてい

なら、意思の力で筋肉は動かせるはずだが・・・動かんな

なら、クスリか?それも直接筋肉に効果がある何か?


倒れたまま、自身の体に起きた違和感を鑑みる紫音に近づいてくる

上半身をデバイスで固めた男は

仰向けの紫音を見下ろし


「起きたみたいだな」


おっさん、うるせえ!

何が起きたみたいだ?転んでんだろ!


「体が動かんだろう

 言葉も喋れんだろう

 そのワケを教えてやろう」


うわ、ちょっとまて言うな!言うなよ、今考えてんだろ!


「至って特別な物ではない

 普通の【筋肉弛緩剤】だ、死なない程度に抑えてあるが

 無理をすると死ぬぞ!」


ニヤリと歪な笑みを溢す男


わ・・わかってたさ、筋肉弛緩剤だろ

直接筋肉に影響のあるクスリだとわかってたさ・・・

って、局部的な弛緩剤なら分かるが

全身に渡る筋肉弛緩剤って毒だろ!

アメリカで犯罪者の死刑執行に使われる奴だろ!

本気で俺を殺す気か!!!


神経が断たれても、意思の力で筋肉が動かせる俺にとって

動けなくさせる数少ない方法だぞ、コレって・・・

このバカっぽい奴が、そんな事を知ってるはずはねえし

あぁ、ぜってぇ井戸だ!あの7:3メガネ

どうやっても俺を殺したいようだな

戻ったら、どうやってイヤガラセをシテヤロウカ!!


「分かってないようだな

 俺も専門職ではないからな、詳しくは言えないが

 全身の筋肉の機能が低下しているのだ

 そう、手足が動かないのはその制だ

 そして、内蔵・・肺や心臓も動きを低下している

 この意味が分かるか?」


男は視線を紫音の右手にむけ

嬉しそうに、その指を踏む


体格の良い男の体重は、デバイスも含め100キロは超えている

その男の半分の体重が紫音の小指と薬指にかかる

自ずとして解るだろう

その痛みはシオンですら耐え難い物であった

そう筋肉と神経は別物である

切り傷や肉体に掛かる痛みなら、多少は耐えれるシオンだったが

骨と言う神経に直結する痛み

それも、意識ある状態で、徐々に掛かる力

まるで万力で徐々に骨を潰される痛みは

計り知れない痛みとなって紫音を襲う


そして本来なら叫びを上げ

額に汗をかき、血の気が薄れ、心臓はその速度を最大まで上げただろう!

だが・・・

筋肉弛緩剤で筋肉の動きが低下した紫音にとって

それは出来なかった

発汗作用をする神経は動くが肉体は対応しない

叫びを挙げよにも声はでない


肺は申し訳ない程度に動いている状況であり

体が酸素を欲するが、肺はこれ以上動かない

酸素を取り込めない紫音は、チアノーゼとなる

酸素を取り込めない心臓は速度をあげない

脳は酸素を欲しがるが

送られる血液は生きてるのが不思議なくらい少なく

頭を回転させ脳を稼動させるには酸素は足りなく

脳機能は一気に低下し、紫音の意識は飛びそうになるのであるが

紫音は今まで幾多の痛みを味わってきた為か

肉体的痛みで意識を失うことは無く


ひょっとの仮面の下で青くなる紫音

手足の先の末端部分もうっすらと青くなる

痙攣しようにも、筋肉は動かない

死の一歩手前である


「意味がわかったか?

 ん?聞こえているか?

 今もし意識があるなら、命乞いをしてみろ

 できるわけがないか、わっはっはhっははっは」


男は、うれしそうに笑う

右足にじわりじわりと力をかけ

苦しむ仮面の男を見下ろし

笑いきった男は


「これ以上は、本当に死にかねんからな

 だが、まだまだだ

 お前には、まだまだ苦しみを味わって貰う

 俺の部下達が味わった苦しみの数倍の苦しみをな!!

 だが、先にお前の持つ情報を吐いてもらう

 後2・3時間ほどしたら、今の状態も落ち着いて

 どうにか話せる位に回復するらしいからな

 地獄の拷問はソノあとだ

 それまで、恐怖に怯えてろ」


言葉を残し、部屋から出て行った


・・・・・・意識を・・・・戻せ・・・・

冷静に・・・・息を整えろ・・・

脳を動かすな・・・意識を・・・

低レベルで・・覚醒させろ・・・・

酸素をゆっくりと・・・回せ・・・・


潰れた右手の指から足が外された事で

痛みは和らぎ、紫音は意思の力で痛みを押さえ込み

回復に努めるのだったが、意識をすればするだけ

脳は動き、負担になり脳が壊死しかねなかった


シオンの思い通りに成らない身体

危険信号はレッドゾーンを振り切る勢いで上がっていく

意思加速で身体を置き去りにシオン意識は突っ走る

そんな中、シオンの意識の中で

別の意識が動き出す

それは紫音、この身体の元々の主である


シオンはその体から、シオンの意識を魂を切り離す

いや、紫音によって切り離された


 【幽体離脱】ではない、シオンは紫音のまま身体を離れる

 そして体には、紫音がシオンのまま身体に残る

 シオンは紫音であって

 紫音はシオンでもある

 それが今【2重同一人格】として動き出す

 これは今に始まった事ではない

 普段はシオンであるが

 紫音がシオンに対しどうしても譲れない趣味や、幾つかの事柄がある

 その時だけは紫音が無理やり顔を出す

 これを知っている、いやそれに気づいたのは鉄雄1人

 双子の兄妹でも母親でも

 妻と自称するメイドですら

 知らない事実でもあるし

 鉄雄以外それに気づく人間も居ないし

 紫音がそれを口にする事は、今までも今後も無い


シオンは紫音と1つになる前の魂に近い形になる

シオンは死んだ程の苦痛に耐える事は出来る

だが耐えれるだけだ、意思の力で苦痛を押さえつける

それには、脳の動きが必要である

今、脳の動きは期待できない

痛みで意識を失えないシオンにとって

このままでは脳は酸素不足で脳が壊死し死んでしまう

死ぬのは構わない、そのうち【リル】に蘇生してもらえばいい

だが、これから起こるだろう面白そうな事を見逃すのは

それに自分が参加出来ない事は

シオンにとって、死ぬより悔しい事である

だからこそ、紫音は自身の身体からシオンを一時離脱させる


身体に残った紫音

その意識の主導権はこの世界で育った紫音である

その紫音が体の苦痛に耐えれるのかと言うと

どちらかと言えば耐えれないだろうが

根本が違う、それがどんな苦痛だろうと

肉体的苦痛など、紫音は気にしないのだ

紫音は紫音の大切な事以外は、気にもしない

それが自分の命であっても、気にはしないのだ


シオンは意思の力で耐える

これは何度も転生を続けて来ても変わらずであるが


紫音は、有るがままを受け入れ、そして気にしない

苦痛を受け入れるが、それに対して何もしない

それは、脳の機能は無駄な情報の処理を行わなく

最低限の生きるだけの働きを行い

肉体も神経もその細胞すら

紫音と同じく全てを受け入れるが何もしない

それは紫音の全てが、その機能を低下させ

仮死状態に近い状態となっていくのだった


常人なら受け入れがたい痛みと苦痛

そして【筋肉弛緩剤】で引き起こされたチアノーゼを完全無視し

力なく瞳を閉じ、睡眠につく

まるで、拷問を受けながら熟睡するという離れ業を披露したのだった


仮面の下で、だらしなく開いた口から

規則正しい呼吸音がするまで、2時間近い時間が経っていた

その頃には、体の機能が正常に戻り出し

シオンの意識が、紫音の身体にに戻ってきていた

紫音はシオンの意識下で熟睡中である

そのうち同一化するのでシオンは気にしない


そんなシオンは考える


さて・・・どうしてこうなった!!!

たしか、速見と島崎を襲撃して

白人の女性を頂いて・・・・

美味しかったです、ゴチソウサマでした


んで・・・


2人の女性を拉致した奴らを潰すために

奴らの隠れてる建物の前に俺と速見が転移して

待ち受けていた外人の戦闘部隊が

いきなり現れた俺に驚く中

速見を縛ったロープを引っ張って建物に逃げ込んだと


ここに来た目的は

これぞ本場の交渉術ってのを井門に教えるために

ウキウキで、手土産もって来てみたんだ

交渉材料は俺が土産で持ってきた速見や

あの場所に確保した連中達

それと交換するのは

小宮が拉致った女性2人

その交換の交渉を・・ん?

してないな・・・

たしか・・・


奴らの姿が、サバゲーの格好に見えて


「サバイバルゲームしてんのか?

 俺も得意だから混ぜてくれ」って


だいたい、その部屋に居た奴等

さっきの小宮と、その部下が部屋の両端に6人ずつ12人か

その12人が同じ部隊だろう戦闘服に

ゴーグルとマスクをしていたのが悪い・・・・ん?


あぁ、そうか

多分あのマスクは俺が意識を失った【ガス】に対する

中和剤か解毒剤が仕込まれてたんだな

あの時気が付くべきだったな


あの、おっさん顔を真っ赤にして捲し立てて来るから

面白くて、からかいすぎた

内容は忘れたけど、どうでもいい事を話した気がする

まぁあの男も、意味不明な事を言ってたが

会話を引き伸ばして時間稼ぎして

【ガス】が充満するのを待ってたんだな


これもアレか?7:3メガネの企み?・・か?

このさい、全部7:3メガネのせいにして

帰ったらイジメてやる!!

ぜってぇイジメてやる!!


じゃなかった

今は現状の確認だったな


えっと俺が建物に入った瞬間、マリアが建物一帯に結界を張った

その瞬間から、建物奥に隠れていた2人が

ガスを充満させた?

基本結界は外部との繋がりをある程度遮断する

これは気体にも当てはまるから

内の気体は結界の外には出ない

だからこそガスを充満させることも可能か

俺の居た室内でガスを発生させたのなら、俺が気づかないはずはない

室外でも、ボンベや、スプレーのようなもので一気に放出したなら

なんにせよ音がするはずだ、それを俺が聞き逃すはずはない

なら何だ?風魔法で気体?ガスの操作か?

それか、揮発性有機化合物?常温で気化する薬物か?

考えれば、まだまだあるが・・・


まぁ、何らかのガスで眠らされたのか意識を絶たれたか

その後に、筋肉弛緩剤を注射されたと

睡眠薬と違って、あれは注射での投与しか方法は無かったはず

この世界のこの体では耐性は無いわな・・・


まぁ、完全に落ちる前に

【ひょっとこのお面】に外れない呪いをかけれたのと

マリアに井門に現状の報告と

今後の指揮を任せたのが間に合ったから良しとするかな

それにしても、俺が意識を失う寸前

マリアは大丈夫なのか聞いたら


「ほぼ全耐性MAXのあたいが気を失う?

 ありえないっすよ

 あたいをどうにかしたかったら

 あの世界の妖精女王でも呼んで来いって話っすね

 だいたい貧弱なこの世界の人間の体で

 あたいに身体的ダメージを与えれるシオンさんの存在の方が

 あたいにしてみれば、ありえない事っすよ

 だいたい、シオンさんは無防備すぎるんすよ

 まずは、相手の攻撃を喰らってみるのはいいんすけどね

 それがどんな物か、シオンさんなら気が付くはずっすよ

 それなのに・・・・・・・」


そんなグチを聞きながら意識を失ったと

まぁ、あのまま小姑の小言を聞くと思うと

気を失って良かったなと思えるから笑えもする


まぁマリアの、親戚のオバサンくさい話しはいいや


さて状況を確認しようか、リル

俺の格好は、ひょっとこ面に、裸に赤いフンドシと・・・・

クスリの効果も徐々に抜けてきてるが

多分、立ち上がる事はまだムリか

だが、それこそが、奴らの【スキ】だというもの

さぁ、反撃開始だ、奴らの驚く顔を見に行くぞ

リル回復しろ!!



・・・・・・・・・・



あれ? リルさんや?



リルさーーーーーーーーん?



・・・・・・・・・・



そういや、まだ静岡のマンションで、ギンと謹慎中か・・



マリア!・・・・・・は



井門の所に使いに行かせたまま戻ってきてないと



コハクさーーーーーーーーーん



・・・・コハクの念話距離は短いし

空間転移できないし

回復魔法も使えない・・・いみねぇぇえええええーーー


ってか、リル、マリア、コハクにギン・・・・


誰かいませんかぁぁぁーーーーーー?


・・・・・・・・


マジか!誰もいねぇぞ・・・・・

誰も居ないのはお前の仕業か!!

井門さんよ俺をどうさせたいんだ?


・・・・・・・・・くそ


あれだ!


あきらめよう


動ける様になれば、どうにか成るだろうし・・・

それまで、ゆっくり寝るかな・・・

それにしても床が冷たい

ふかふかの布団が恋しい

こんな床じゃ寝れねぇ・・・よ


と文句言う紫音だが

次の瞬間には再び熟睡するのだった



***********



それから、どれだけ時間が経ったのだろう

紫音は誰かに髪を掴まれ頭を揺され

大きく叫ぶ


「許してくれ!

 もうやめてくれ!

 死にたくない!

 もう限界なんだ!

 お前ら、ビッチ2人相手に何時間相手したと思ってんだ

 身体が限界を超えているんだ、許してくれ

 オイ待て魔法で、精力を回復させるな!もう無理だ!

 え?「下半身はまだまだヤる気だって?」

 そりゃぁ、お前

 目の前に女神と天女が現れたら・・・?」



頭を揺らされ【ハッ!!】っと

目を覚ます紫音

そして、目の前の男に視線を移すと



「男じゃねぇか!

 それもジジィだし、ブサイクじゃねぇか!

 俺の女神と天女を返しやがれ!!!」


ボコ!!


紫音の髪を掴んでいた男は

無言で紫音の顔を殴りつけた

それを見た小宮は口を開く


「そう急くな、もう少しすれば俺の手で永眠をさせてやる

 それからなら死神だろうと地獄の鬼とだろうと

 好きなだけ相手をしてもらって遊べばいい!

 だが今はお前のもつ情報を全て吐いてもらう!」


紫音の目の前には小宮が椅子に座っていた

紫音も自身が椅子に座らせられていた

どうにか首が座るくらいには回復をしているみたいである

指先の感覚は戻ってきてはいるが

物を持ったり、腕を上げたり

自身の足で立ち上がるほどの筋力は回復していなかった

いや今殴られた事によって、左頬が痛い・・・


そんな紫音は小さく悪態を付きながら

周囲の状況と確認するのだった

体は動かなくてもスキルは発動する

かるく超音波を飛ばしその反響で

部屋をスキャンして、その立体映像を

頭の中に描がいていく


そして気づく

小宮と1度目に会ったのは小さな元車のディーラーの事務所

奥の部屋に拉致された女性らしき存在を確認できた

2度目は、はっきりしないが1度目と同じ場所であるが違う部屋だった

スキャンの結果もさる事ながら

建物全体に漂う、油とオイルそして

微かに匂う工場や機械工に通じる独特の匂い

これは機械いじりを趣味とする紫音の好きな匂いである

だが、それだけではない

隣の部屋で行われている事も紫音の耳には届いていた

だからこそ、あんな淫らな夢を見ていたに違いない

そう、俺は悪くないと聞こえたのが悪い!

そうして、引き続きウキウキの紫音の耳は隣の部屋を盗聴するのだった


そうしてる間にも

【ひょっとこ仮面】を尋問する小宮

その話は噛み合わない

どこまで行っても噛み合わない

これほど相性が合いそうで合わない相手もそうは居ないだろう


普段の小宮なら多少は、紫音の相手をするのだろうが

目の前の男に小宮は右腕をもがれ可愛い部下の命も奪われていたのだ

今の今まで殺さなく生かしていた事の方が奇跡に近い事でもあった


小宮の質問に冗談で返す紫音

その度に小宮は、ひょっとこ男を殴りつける

デバイスで強化された右手の義手の攻撃力はハンパなかった

殴られ蹴られボロボロになっていく紫音


小宮は床に転がる、ひょっとこ男の右腕を掴み体ごと持ち上げ

右手で仮面を殴る殴る殴る殴る!!

紫音の被る【ひょっとこのお面】が無ければ顔の形も頭蓋骨の形すらも

原型を留めていなかっただろう、だがそのダメージは確実に蓄積していく

それは、仮面の端や、ひょっとこのタコの様な口から噴き出す血が物語っていた

小宮の部下でさえ確実に死んだと思われる攻撃だったが

ひょっとこ男は、小宮に釣り上げられたまま

血反吐を吐きながら小宮に答えた


「となりの・・・・へやに・・・

 俺の・・・・女神と・・・・天女がいるな

 レイプしてんだろ・・・・

 俺も・・・

 仲間にいれろや・・

 アレは俺のもんだぞ

 俺にも・・

 抱かせろや・・・・」


それは、仮面の男を捕まえた事から

この男から情報を得ればいいと考え

拉致した女2人は用済みだと

小宮はストレスを溜めた男達に与えたのだ

隣の部屋では彼女達は代わる代わる来る男達のオモチャとなり

一時も休まる時間など与えられる事無く

欲望のまま身体を求められ続けられ

それはこれからも終焉を迎えることなく続いていく


紫音の言葉を聞いた小宮は

右手の義手に力を込め仮面の男の腹部を殴る

紫音の体は吹き飛び床に落ちても

自身の血で床を滑り壁際まで滑っていく


怒りが収まらない小宮は

部下達に大きな声で鬱憤を振りまく


「おい、本当にこの男に自白剤を投与したのか?」


「間違いなく、ですが催眠も精神系の魔法も

 ほぼ効き目が見られません」


「なんなんだこの、ひょっとこは!

 この脱げない仮面に対抗魔法でもかかってんのか!!」


「わかりませんが

 魔法の形跡は見て取れませんが

 これ以上の薬剤の投与は脳を破壊しかねないと」


「くそう・・・

 速見を連れてこい」


紫音は倒れた状態で話を聞きながら考える

意思加速で意識を脳の性能を普段より上の次元で活動させれる俺にとって

脳機能の低下で意識を困惑させる

麻薬やドラッグ、それに近い自白剤の効力は薄いというか

それに対抗しうる、脳内麻薬をスキルで脳に直接刺激を与え

作り出せる俺にとってほぼ無意味

催眠も脳に関する精神系の魔法も

スキルや意思加速の恩恵で対処は簡単だ

まぁ【ギン】の【魅了】とかなら話は別だが

この世界の魔法程度ならどうとでも対処は可能だなと

内蔵が潰れて死にかけの紫音は

自分を実験台にして

仮面の下で血反吐を吐きながら笑う


そして、連れてこられた速見だったが

すでに一度尋問と言う拷問を受けていた速見も

紫音と同様すでにボロボロとなっていた


だが今度は自白剤を投与され

その効果が現れだした速見は

手足は力なくダラけ

その眼球の焦点は一定せず

グルグルと、あちらこちらに動いていた


そんな速見に、小宮の尋問が始まるが

元々紫音の仲間ではない速見に

仮面達の仲間である黒い仮面の居場所を聞こうにも

答えれるはずはない


情報屋から、速見は仮面の仲間ではないと聞いていた小宮だが

その話も全部は信じていなかったが

速見から情報が取れず焦っていたのだった


ただ、簡潔に「ひょっとこ男の正体は誰だ?」とでも聞けば

その時点で速見がその正体を口にしたかもしれないのだが

はじめの尋問が「お前は、ひょっとこ男の仲間なのか?」だったのだ

速見の答えは「仲間ではない」と答えたから

小宮は頭を抱えることとなったのだ


じっさい小宮がどんな質問をしようと

速見が、ひょっとこ男の正体を口にする事はない


それは、床に転がって動けない紫音だったがスキルは使えるのだ

やろうと思えばこの状態であっても

小宮1人殺すのは朝飯まえであり

速見の耳に入る、小宮の声の相互位置の音波をぶつけ音を消し

速見の耳に入らないようにし小宮の質問を掻き消す事もできる


それと同様に速見の声を消し小宮に聞かせなくする事も

速見の脳を機能低下させ、会話すら出来なくさせる事もできる

それ程までに、シオンの持つスキル【波】は

シオンが思っていた以上に優秀であった

この世界の紫音が持っていた【音】に関する知識と

紫音が知り得た母親【蘭】の【脳科学】の知識を取り入れ

常人が理解できないレベルまで達していた


何の情報も得られない小宮は苦悩する

そして、そんな小宮を見ていたかのように

小宮の携帯が鳴るのだが

その画面を見て小宮の顔が引きつり


携帯を持った左腕を大きく振り上げその手に力を込め


・・・・・・・


振り上げた携帯は、小宮の心情など気にもせず鳴り続ける


「くそがぁぁあああ!!」


怒りを口にすることで

どうにか頭を落ち着かせ、携帯に出ると

電話の主は、先日から何度も聞いた男からであった


「こんばんわ、情報屋です」


「なんの用だ!!」


「これは、おかしな事を言われますね

 すでに【ひょっとこ男】を倒しているはずですが

 まだお金の入金が御座いませんので

 その確認まで電話をかけたのですが」


「・・・・・・・・・」


歯を食いしばり、いらだちを抑える小宮

ひょっとこ男が小宮達を襲撃してくる様に仕組んだのは情報屋である

それから数時間、小宮が電話に出ると言う事は

ひょっとこ男を倒した事の表れであり

その事を報告せず、約束であった2億の振込もしていなかった小宮

それもこれも、ひょっとこ男を尋問すれば

仮面の男達の情報は得られると思っていたからに他ならなかったのだ

もし情報を得られていれば、情報屋など無視し

事を勧めていたはずなのだ

それが出来ない今

仮面の男達の情報を得る為、電話に出るしか残された道は無かった


そして、そんな小宮達の考えを見抜いたかのように

話し出す情報屋の言葉で小宮はその目を見開き

情報屋が情報屋で足り得る存在である事に徐々に驚いていくのだ


「さて・・・

 ひょっとこ男の尋問も終わり

 SSSの速見の尋問も終わったでしょうが

 得られた情報は無かったと思われますが

 私的には約束のお金が振り込まれない限り

 これ以上の情報の提供、場所の提供は断らせていただきます

 また、今回の事は、そちらの組織

 箕輪さん以外の派閥の人間に、全て報告させていただきます」


「まて!!

 なんでその事を知っている!」


「その事?ですか?

 それは、何の魔法、スキルを持っているか分からない為

 仮面の男は、確実に殺して方が身の為ですと言ったのに

 情報を得ようと生きたまま捕まえ尋問していた事ですか?

 それとも、仮面の男が拉致した女性2人を助ける為

 速見と言う男を人質の代表として連れて来たのに関わらず

 その速見をも、自白剤を投与してまで情報を聞き出そうとしていた事ですか?

 まぁ、どの自白剤を投与したのかは知りませんが

 適正量を超えた自白剤は脳神経を破壊しかねませんし

 少量でさえ後遺症を残します薬もありますから使用は慎重に

 お願いしたいものですね

 この事も報告させていただきますが

 今後【レッドストーン】と【SSS】の関係性がどうなろうが

 私は干渉しませんので」


「そ・・・・それは、脅しか!!」


そんな事が組織に知れ渡れば

今回の仮面の男達を殺して名を挙げても

変な疑いをかけられ組織に追われるだろう

それに、SSSの身内である速見に、自白剤を投与して

死人同然までした自分・・・・

いや、自白剤を使ってまで、SSSの秘密を探ろうとし

何らかの情報を得たと思われた自分が

SSSに狙われ殺されるのは、バカでも解る道理であった

情報屋は小宮の命の灯火もそう長くは続かないと

言っているようなもので

小宮は初めて情報と言う凶器を喉元に突きつけられ

見えない狂気に顔を青くしていく


「いえ

 事実を報告させていただくまでです

 ひょっとこ男を捕まえ

 すでに1000万ドルを手に入れたも同然の貴方達が

 2億のお金をケチって、全てを失うのはどうかと思われます

 それに、私も危ない橋を渡っていますので

 それに見合う報酬が頂けないのなら

 貴方達の情報を仮面の男達に売る事も有り得るとだけ」


「わかった・・・

 これから上と連絡を取って即座に報酬を振り込ませる」


「ありがとうございます

 話の解る方で良かったです

 振り込まれ次第、黒い仮面の男を誘き寄せる準備を開始します

 それにあたり傭兵のリーダーの方から要望のあった

 室内でできるだけ外部から目立たない、戦闘の出来る場所と

 大きな倉庫の様な何もない広い密閉された空間の場所

 言うならば学校の校舎と大きめの体育館の様な場所が無いかとのご要望でしたが

 そこから近い場所に、ご要望に近い場所がありましたので

 簡単な見取り図を送らせていただきます

 詳しい詳細は、振込を確認次第送らせていただきます」


そして、井門は電話を切り

苦悩する小宮は床に転がる、ひょっとこ男を睨み

この男が口を割れば、全てが上手く行くはずだったと

2度3度と、ひょっとこ男を蹴り飛ばし

箕輪に電話を掛ける為に、その部屋から出ていくのだった


そして、全ての会話を聞いていた

血まみれの紫音

その感情は怒りと期待で混ざり合っていた


怒りとは【マリア】に対してである

さすがに井門であろうと

まるで見ていたかのように事細かに詳細が解る訳ではない

そう、今まさに紫音の置かれていた状況を見ていた人物が居たのだ

そして、その人物が井門に状況を教えたのだ

その人物こそが【マリア】

姿を消し、一部始終を観察していただろうマリア

紫音にとってそれは大した問題ではない

問題なのは、紫音の念話にも応えず

たぶん面白がって見ていたマリアに腹を立てていた

まったくもって、逆の立場なら

自分もマリアと同じことをしていただろう事も関わらずである

そして戻ったら、メガネとビッチにどんな仕返しをしてやろうかと

理不尽に腹を立て怒りに燃える


その一方期待とは

ゴソゴソと、面白そうな計画を話していた井門と

次に誘い出されるのは

黒の仮面の男、蓮で有る事に、おおいに期待を膨らます

そして、学校の様な場所を希望する傭兵団

それ以上に、大きめの体育館のような場所を希望していた事に

紫音の脳裏では、色々な憶測が駆け巡るが


今はその時まで、隣の部屋で行われている行為を

子守唄がわりに聞きながら寝て待つ事にする紫音だった


そして、井門もまた

電話の向こうで、紫音がこの会話を聞いている事を理解していた


そして、そのうち暇を持て余した紫音が

好き勝手に暴れ、全てを有耶無耶にし

勝手に紫音が介入した事で

練っていた計画を潰され

一から練り直した全ての計画が、再びひっくり返され

後始末に奮闘する自分の姿も理解していたらこそ


後で、レンを迎えに行かすから

おとなしく待ってて下さい

そうすれば、大きな建物を使ってまで何かをしようとする

傭兵達の面白い見世物が見れるかもしれませんよと


面白そうな話を伝え

下手に動いて、これ以上引っ掻き回して

私の計画を邪魔しないでください・・・・・と

イヤ!そうではない


「今は動くな、じっとしていろ」と


釘を刺すのだった





この後

振込を確認した井門は

新しくとある場所を提供するのだった

そして小宮達は場所を移動する

傭兵部隊や、紫音、拉致された2人の女性もである

そして小宮達に合流した鷲尾

詳しい詳細を知らされず、鷲尾と共合流した

鷲尾の武術の師匠と姉弟子の2人もである



そして又も無理やり起こされ目覚めた紫音

その目の前に置かれたモニター

画像は荒く、何らかの妨害を得ているようだが


そこには黒の仮面を被る見慣れた赤頭の男と

笑い転げる、リーゼントとサングラスの幼馴染の男と

派手なジャージがボロボロになって

よりパンクな姿になった、フルプレートの女性


その姿を確認した紫音は

丸一日以上何も食べていない事もあってか

口からこぼれた言葉は


「・・・ば・・晩飯なに?」


であった



 

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