11話 1日前・〇✖の匂い
井門は、洋菓子店【ぷちモンブラン】の菓子箱を片手に
あるビルに足を運んでいた
新しい取引先の人間と合う約束をしていたのだが
急用との事でキャンセルとなった為、時間も空き
行き先を失った菓子箱をどうしようか悩んだあげく
ふと思い出したのだ
(そういえば、赤城会長はスィーツが好きだったよな
普段は部下の手前甘いものは食べれないと言っていたが
私からの差し入れと言えば、気兼ねなく食べれるはず
アカギ・コーポレーションは直ぐそこだし
会長に差し入れして帰るかな)
そうして、井門はあるビルに入っていく
強面の人間が、ニラミ、威嚇する中
まったく気にせず、どんどんと進み
偉そうにしている見知った顔を見つけると
「こんにちは、会長さんいます?」
「あぁ!?コロスぞ」
「だれぞコンガキャァ!!」
「シャバ公は、帰ってママのおっぱいでも、しゃぶっとけ!」
「サーーセン!井門さん!」
ガキ達の兄貴分らしき男は、いきなり立ち上がり
深々と頭を下げた
「こいつらには、後でヤキ入れときますので
こん事は、会長に内緒でおねがいやす」
突然現れた、堅苦しい7:3メガネの男に
深々と頭を下げた兄貴分を見た子分達は
一気に青い顔になり、兄貴分とを同じく頭を下げ謝るのだった
「「「すいませんでしたぁぁぁああああ」」」
「元気があって良いですね
それで会長さんは?」
「はい、部屋におります
連絡を入れておきますから、エレベーターで上がってください」
軽い挨拶を済ませると
井門は涼しい顔をして会長室に向かうのだった
井門は、50代半ばを迎える貫禄のある男と机を挟みソファーに座る
この男こそが、アカギ・コーポレーションの会長【赤城雅紀 (あかぎまさき)】その人である
相変わらず、彼の後ろには背広がパンパンになる程の体格の良い子分が2人いる
赤城会長は突然の訪問に関わらず心良く井門を迎え
美味しそうなモンブランにスプーンを突き刺し、口に運んでいく
そして、かれこれ3時間
2人は数十年来の友のように話し込んでいくのだった
関東を二分する、裏組織がある
1つは、赤城コーポレーション
もう1つは【青柳 (あおやなぎ)】率いる【柳組】である
東の赤鬼、西の青鬼と呼ばれ、裏の世界では恐れられている存在である
対立する2つの巨大組織だが
知る者は少ないが、その頂点たる2人は実は仲がよかったりもする
ライバルと書いて親友と読む?みたいなものである
赤城会長の話は青柳の話となる
「柳の奴が、そろそろ引退なんぞ考えとるとか言いやがってな
跡目をどっちに譲るか悩んでいるらしいぞ」
「と言いますと?息子さんか、娘の旦那さんでですか?」
「あぁ、組長補佐の長男は妾の子供で
娘の結婚相手は若頭でな
長男には子供がいなくてな
ゆくゆくは、娘の方の子供に、継がせたいらしい
聞く話によるとまだ、13か14歳らしいが
なかなか頭の切れる孫娘らしいな」
「そうらしいねすね、目に入れても痛くないと言ってましたし
クローンの契約も、孫娘さんで登録いただきましたから」
「親バカというか、ジジバカだの
まぁ結果、組内がギクシャクしとるらしいな」
「それでも、お二人共、かなりのやり手ですし
どちらかに選べないのも解ります
息子さんは、東大出のエリートで
企業を立ち上げて、こういっては何なんですが
かなり汚いことも平気でやるとか
それでも、かなりの利益を上げてるらしいですね
ただ、妾の子供って言うのがネックなんでしょうね
若頭の小早川は、色々と黒い噂がありますね
中国マフィアとの繋がりがあるとか
武闘派で名高い若頭ですし
事実今の柳組の土台を支えてるのが彼でしょう
ですが私的には、青柳組長に後10年は頑張って欲しい所ですね」
「その通りだ、奴でないとワシも張り合いがないわい」
赤城会長は少し寂しそうな瞳で笑うのだった
そんな時
ピーヒャラ、ピーーーヒャラ、パッパラパァァ
ピーヒャラ、ピーーーヒャラ、パッパラパァァ
と、間抜けな音楽が鳴り響く
井門が4個もっている携帯の中でも
鳴るはずのない携帯、鳴るはずのない着信音
それは、紫音からの電話であり
緊急で名前をあかせない裏の仕事の電話であった
一瞬にして井門の顔が真剣になる
「会長すいません、私の主からです」
赤城も、井門の態度とその言葉で事の緊急性を理解した
「なら、ワシ達は少し席を外そう」
「ありがとうございます」
赤城は後ろの2人に視線を送り、3人で部屋を出て行った
一国一城の主が、自身の部屋を、平凡な男に明け渡したのだ
有り得ない話しであるが、赤城は、この井門の主に
返しても返しきれない恩義があるのだった
資金援助もさる事ながら、武力と言う力を幾度となく援助してもらっていた
東京に他の国の組織が少ないのも
麻薬・マリファナ・危険ドラックという、厄介な薬物が少ないのも
井門の主の力が大きいのだった
「よ!」
「ハイなんでしょう」
「おまえ、SSS (スリーエス)の【鷲尾】と
レッドストーンの【小宮】って知ってるか?」
速見は、SSSと聞いてピクっと反応する
それは速見が所属する組織の名前であり
その事は、紫音に話していなかったからだが
自分達が見つけれない鷲尾達の情報を知り得る人間なら
その事を知っていても当たり前かと納得する
「もう襲われましたか?・・・
おかしいですね、貴方が襲われるには時間が早すぎる
それに貴方の居場所が、バレる訳がないんですが・・・
段取りが、いささか違いますね・・・・
早くても今晩のはずだったんですが・・
あ、スイマセン、此方の話でしね
2人の詳しいことは書類にして置いていたはずですが?」
「あ・・・・・もしかして」
この時、紫音は思い出したのは月曜の朝の井門との電話である
ある人間達の殺人計画
ある人間達=小宮・鷲尾、殺される人間=オレ・・・マジか!
そして、書類とは井門が情報を記した紙の書類である
井門の事務所に保管されたそれは
週明けにリルが転移で取りに行き紫音に渡す段取りなのだが
そのリルは火曜の朝から謹慎中
たぶん静岡の部屋には、有るのだろうが
紫音は書類にまだ目を通していなかった
「悪い、色々あって、アレが謹慎中で読めてない」
「そうでしたね
それで、何が知りたいのですか?」
「あぁ、奴らの今の居場所と
奴らが拐った、2人の女性の居場所だ」
「それなら、直ぐ解りますよ、私が用意した場所ですから」
「・・・・・・・・・うん、流石だな・・・」
俺を殺そうとする相手に、場所の提供をするとか
なかなか、面白い事を考えるじゃないか
これは、アレか、いつもイタズラしてる俺に
仕返しをするために、画策したのか?
ククク、さすが、7:3メガネは伊達じゃないな!
そして、彼等・・・
いや、SSSとレッドストーンの組織の関わるだろう
新しく入った情報を井門は紫音に伝えるのだった
「場所が分かったぞ
え~~~と・・・
千葉県の富津市の○○○だ
なんでも、潰れた車の販売店だった場所らしい」
その言葉に一番反応しなかったのは、コウと呼ばれた男
「地図を開け、衛星映像だ!」
机の周りに集まったのは
紫音・速見・島崎・矢吹・コウ・そして2人の男
初めから机の周りに居た6人に紫音が加わった状態である
衛星映像の倍率を上げていく
紫音の言ったとおり、とあるメーカーの車のディーラーの敷地
だが、看板は外され、荒れ放題の敷地は
長い事、人の手が入ってない様に見受けられたが
建物の前に不信な車が数台
事務所だろう建物からは、微かに光が漏れていた
それを見た島崎
「間違いないな、あれは組織の車だ・・・
どうやって、この情報を知り得た」
「そんな事、言えるわけがないじゃん」
わらって答える紫音だったが、本音は
言えるわけ無いだろ!場所の提供者がウチの眼鏡だなんて!!
島崎は、人知れず興奮する
組織でも調べきれなかった情報をどうやって・・・
だがありがたい、これで救出に迎えれると
だが、島崎の考えとは別の方向に自体は動いていくのだった
「さて、情報は渡したし
俺は俺の好きなようにさせてもらう」
「おい、どういう事だ!」
「さて、速見、島崎、ここで謎かけだ!
小宮達は其々の組織を、本当に裏切ったのか?
とくに、レッドストーンその組織力はかなり大きい
その力を持っても、奴らの居場所が解らなかったと本当に思うのか」
「それは・・・・」
言葉が止まる島崎
「心当たりが有るだろう
でも信じたくないんだろ
だからこそ言ってやろう
小宮達が裏切ったんじゃない
お前達2人が組織から切られたんだよ
理由も簡単だ、俺に組みしたと思われたからだ!
お前達の組織は、お前達が、あの戦いから無事生き残ったことから
俺様の息が掛かったと思われてんだよ
特に速見、お前はかなり恨まれているな
あの時のハゲ親父は組織では重役だったらしい
そして、あの異世界の魔法使いか?あれも虎の子だったらしい
その両方が行方知れず、帰ってきたのは護衛役だった速見、お前達だけだ
誰がどう考えても、おかしいと思うだろう」
新しく井門から得た情報を絡めながら話を進める紫音
だが知り得た情報をそのまま出す訳では無い
今後、速見と、今回気に入った島崎を手中にする為
都合の良い様に言葉を匠に操作して口にする
「俺達が裏切られた?そんなはずはない・・・
今だって、小宮達に対抗できる様に組織に力を借りているのに・・」
「ひょっとこ男、君は何をしっているんだ?」
「そうだな、詳しいことは(紫音は、コウを指差し)
そいつに聞いたらどうだ?」
「高坂に?」
「俺は何も知らんぞ!」
「コウサカ?か、一つ教えてやろうか
俺はな耳がいいんだ」
「だからなんだ!」
「ん?そのまんまの意味だが!
お前達が使っている、歯に仕込んだ骨伝導(無線)デバイス
その会話は俺には筒抜けだ!」
「嘘をつくな!
そんな物は有りもしないし、知りもしない!」
「そうか?
ついでに言うなら、外への通信は遮断してある
って言うか、この建物は俺様の結界で隔離してあるから
出ることも入ることも出来んよ
外で島崎に内緒で待機させている、お仲間さんに連絡は通じないだろ
助けを呼びに外にも出れない
連絡が途絶え様子を見に来た奴らは何かしているみたいだが無駄だ
だいたいこの俺が、何の対策も練らずお前らの前に現れると思ってたのか?
俺が現れた時点で、お前らは鳥かごの中に
クッションがわり敷かれた
川原の橋の下で拾ってきた、カピカピになった
エロ雑誌の袋とじを切り刻んだみたいな物だ!!」
「なら何故お前は電話が切る!」
「ってか
誰か突っ込めよ!
ノリが悪すぎるわ!!
お前は、頭の悪い子か?バカ真面目か!!!
だいたい自分の携帯にまで、電波妨害するアホがどこにいるんだ?
さっき、ソノPCで映像が見れたように
俺の任意で個別に切り替えが出来て当たり前だろうが?」
高坂の仲間達は骨伝導イヤホンマイクを使い
紫音が現れた時から連絡をとりあっていた
そして、それは高坂が建物の近くで待機させている仲間達にも繋がっていたが
ひょっとこ男が現れた時から
携帯の電波は途絶え
無線機での外への連絡が途絶え
PCのネット回線までもが止まっていた
建物を取り囲んだ結界はマリアが作り上げた物だが
その結界に電波系を遮断するため
紫音お手製の、あるアイテムを組み込んだのだった
あるアイテム、それは・・・乾電池それも単三乾電池
それに紫音が電波を遮断する魔法陣を組み込んだの物だ
魔法陣の効果範囲と強さによって、単二、単一と強くなっていくが
効果時間は乾電池タイプなら、それぞれ変わらず3時間ほど
電池残量が無くなれば魔法陣は消滅し、その残滓を残さない
使い捨ての、高性能妨害電波発生器、原価4本で(税抜き)100円である
これを止めるには、魔法の発信源である、電池を見つけ壊す必要がある
だが無造作に落ちている単三電池が
電波を妨害しているとは誰が思うだろう
普段なら、四方に適当に1個ずつバラまけば
かなりの範囲の電波妨害ができるのだが
今回は、マリアの結界に単三電池を捻じ込んだ
これにより、結界自体が電波遮断の性能を持つこととなり
結界の内と外の通信機能を絶ったのだった
目に見えない電波すら自在に操る、シオンと
以前の紫音の無駄知識ならではの合体技である
実はコレには抜け穴がある、これは電波を遮るのであって
電気や光は遮れないのだ、もしも有線電話やPCがLANケーブル等で繋がっていた場合
このスキルでは対応出来ないのだが、この科学が発達した世界
そうそうアナログな回線を使う人間は居ないし
出先で有線的なアイテムを使う人間は居ないのだ
速見と島崎、矢吹達が見つめる中
高坂は、ひょっとこ男にニラミをきかし
「外との連絡が付かないのは
お前の仕業か!
くそ!!
やってくれたな
バレたら仕方がない、お前達!」
高坂は、ひょっとこ男と対峙したまま
後ろのスペースに居る仲間の元へと下がっていく
それは、机の周りに居た後の2人もである
すでに其処では、高坂の仲間が
速見や島崎の仲間達を捕まえ、拳銃を向けていた
その状況を見れば、だれが、どっち側の人間かが一目瞭然であった
机の周りに残ったのは
紫音・マリア・速見・島崎・矢吹の5人
それに対して、高坂達は、広いスペースを確保していた
そこには、簡単な手当を終えた重傷者が2人、死体が1体
手足を縛られ、動けなくされた速見の仲間が3人
同じく今まさに拘束されていく、島崎と矢吹の部下が5人
そして、武装した高坂の仲間が15人
少し離れて、事務的な仕事を任されていた女性が2人
拘束されない事から、女性は高坂の仲間である
「コウ!どういう事だ」
「まだわからないのか!
シマ!お前は俺達を裏切った!
組織をやめて、その仮面の男に付くつもりだったんだろ
今回の小宮達の動きに合わせ、シマお前を呼び出し
SSSを裏切った速見を合流させ
監視していれば、仮面の男が現れると踏んでいたんだ
そして、マヌケが誘き出されたと言う訳だ!
本当はこの場所も、お前らのどちらかが教えたんだろう
知らないふりをしていた様だが、お遊戯の時間は終わりだ
仲間の命が惜しければ、此方の言う事を聞くんだな
俺達が欲しいのは、その男の首だ!
おとなしくしていれば、命までは取らないでいてやる」
「コウ!仲間に手を掛けるのか!」
「裏切り者は、仲間ではない!敵だ!
ひょっとこ男、結界を解除しろ!
それか、死んで結界をするか選ばしてやる!
どちらにせよ殺すがな!」
仲間を抑えられては、動けない速見、島崎、矢吹
だが、この男は違う
「そいつらを殺そうが、俺は至って痛くも痒くもないけどな
いのりちゃん、わかってるな!」
「あいっすよ!」
いのりちゃんのお面を被るマリアは目にも止まらない速さで動く
見えるハズもない、空間転移で移動したのだから
現れた場所は金髪女性の机の上
ノートPCを跨る様に腰を下ろし
身体を横に捻るように、金髪女性の顔を覗き込む
いきなり目の前に返り血で真っ赤に染まった女性が現れて
可愛いく「キャ!」と声を上げる女性
「ひょっとこの兄貴!
こいつ処女っすよ!処女の匂いがするっすよ!」
「なぁぁ~~~にぃぃぃ~~~~やっちまったな!」
「女は黙って」
「貞操を守る」
「女は黙って」
「股を閉じる」
「もぉぉ~~何いってんすか!やってないから処女なんすよ!」
「マジか!」
紫音は、杵で餅をつくような動きを止めると
視線を女性に向けると
白人の金髪の女性は、大きな瞳を点にし
青い顔で口をパクパクと開けたり閉じたりしていた
「わかってるな」と言ったが
それは、とりあえず好きに暴れていいぞって話しで
だが情報を持ってる、高坂は殺すな、話しができる程度なら
手足の4本位は吹き飛ばしてもいいぞ、みたいな・・
だれが処女を捜せと・・
うん!よくやった!!マリア!!!
「「おい!」」
高坂と速見の声がダブり
驚く2人は視線を一瞬交差させ、再びその視線はひょっとこ男に向けられた
そして速見が叫ぶ
「お前は、なにを考えてる!」
ゆっくりと金髪女性とマリアの居場所に足を進める紫音
速見の声に、上半身をひねり背筋をフル活動させ
仮面の向きが真横になるほどの角度で後ろを振り向くと
「・・・・・イタダキマス?」
「こ・・・答えになったないぞ!!!」
「え?ゴチソウサマ?」
「お前!」
「ふ・・・ふざけてんのかあぁぁぁああ!!」
高坂は仲間のマシンガンを奪うと
大声で叫びながら
ひょっとこ男に向かって乱射するのだが
それは男の目の前で弾かれる
そこは新しくマリアの手によって創造された場所【聖域】
紫音・マリア・そして白人女性を囲むように薄く光る壁が出来上がっていた
異世界の固有結界領域魔法の最上位を超えた場所に位置する魔法【聖域】
その魔法の存在を知る存在は、原初の三王くらいしか居ないであろう
だから、この魔法が何なのかさえ解る人間は居ない
それは紫音ですら理解できるはずはなく
普通の結界程度にしか考えていなかった
床から天井まで伸びる壁、直径4メートルもないが、円柱状の壁に
速見や島崎、高坂までもが、敵味方関係なく近寄り壁を叩く
「おい、やめろ、なにをする気だ!!」
「バカな真似はやめろ」
「変態が!!仲間に手をだすな!!」
「何で服を脱いでんだ!!」
「え?着たまましろって?
それともそういう趣味か?
まぁ、そうな事言うなよ
もしもの時の為に勝負パンツ履いてきたんだから」
すでに上半身裸で、ズボンに手を掛けた紫音
そして、躊躇なくズボンを下ろす
そこに現れたのは柄が付いた水色のトランクス
正面から見て左右に大きく描かれて居たのは
白い饅頭と黄色の饅頭、申し訳なさそうに目?らしきものが有った
「かわいいだろ!俺の自慢の子供達の絵やねん
2人とも甘えん坊でな、まだ言葉は話せんが
いい子でな、イケメンに、美人さんなんだよ
コッチの男の子は、無愛想に見えるが力も強くて、まぁ優しい
将来は、天下無双の闘士になるな、うん
そして、コッチの女の子は、まず頭がいい、半端なくな
そのぶん多少わがままで、物欲がすごいな
アレは将来、国でも欲しがりそうな、わがまま娘だな
いいだろう、ほしいだろう!
でも上げない、が、脱ぐけどな」
紫音はトランクスに描かれた【コハク】と【ギン】の自慢をして
それを脱ぎ、反り返った、チンチンを披露する
聖域の外にいた、人間達は
(この男、妻子持ちか!
言葉の話せない、赤ちゃんが2人も居て
子供達の書いた絵をパンツに喜ぶ、親バカか?
それに、こいつ、おっさんなのか?!)
だが、ひょっとこ男の正体を知る速見だけは
今更ながら、森で出逢った変態の男と
学園の根暗なで、気持ち悪い男と
目の前の裸の仮面の男が
やっぱり、同一人物だと理解した
その下半身を見た時に・・・・
そして、紫音が口にした言葉は、何かの冗談だと判断し
諦めに似た感情でため息を付き
ぼそっと「たのむから殺すなよ」と呟いたのだった
紫音は震える女性に全裸にひょっとこ面という
素晴らしくカッコイイ変態な姿を見せつける
「や・・・やめて・・・・
ゆるして・・・・・
そんなのムリ
大きすぎる・・・ヤメて・・・・・」
椅子から落ち、床に座る白人女性
足を折りそれを両手で抱えるような体制で
紫音のチンチンを凝視し、震えながら声に出した
その目は、こっちに来ないで、近寄らないでと訴えるように
怯え震えるのだった
聖域の外では、騒がしく
聖域の壁を壊そうと攻撃し出す人間達
そんな連中に紫音は振り返り
後ろの彼女を指差し告げる
「ほんと、五月蝿いな、彼女が怯えてるじゃないかよ
それに、彼女を見ろ、こっち見ないでって震えてるじゃないか!
お前らも、後ろを向いて耳をふさぐ位はしろよ
一端の大人なんだからさぁ
ほんと・・・これだから躾のなってない大人は・・・・
まぁいいや、こっからは18歳以上観覧禁止で
いのりちゃん、これ、視界遮断と音声遮断できるか?」
「ほほいっす!完全隔離するっすよ」
マリアが左手を軽く振るうと
薄く光る壁は、白い壁となり、外の音も完全に遮断された
「ありがとうマリア、静かになったわ
それと井門が裏で俺を殺すために動いてるらしくてな
最低でも1時間は、ここを動かないでくれって話だったし
イイおもちゃも手に入ったから
時間いっぱい楽しめそうだ!」
「シオンさんを、殺そうと?
恨まれてるっすね
だいたいシオンさんはメガネをからかいすぎっすよ!
それに、暇つぶしもできたし
あたいも参加するっすよ!」
「あれは、俺の愛情表現だ!
それと、マリアは当分手出し無用だ
俺も、この世界の女は初めてなんだ
色々試したいスキルもあるからな
この女には、俺の練習台になってもらう」
「なら、後でその女下さいっすね」
「ダメだ、速見に殺すなって言われたからな
とりあえず後でどうするか考えるが、お前の眷属にはするな」
「ダメっすか?
あたいも、この世界の人間を使って、試したいことがあるっすけど」
「男なら沢山いただろ
たぶんまだ、リルが空間に閉じ込めてるのが居るはずだ
使うならあれ使え!」
「男は嫌っす、それもブサイクしか居ないんすよ
この世界の女が欲しいっす、美形なのが
この女化粧をあまりしてないすけど
なかなかの美形っすから、下さいっすよ」
「やらん、そんなに欲しければ
どっかから攫ってこい・・・・
あ、俺も連れてけよ、俺にも好みがあるんだからな」
「わかったっす、後で世界各国温泉拉致デートするっすね」
「わかった、わかった、でも今はこの女だ」
たわいもない会話をしながら、紫音は女性の前に立った
だが、当の本人は、2人の会話に、顔を真っ青にして
世界の終わりに直面したかのような顔で涙をながしていた
さて・・・・どうすっかな
多少なり好意を向けてくる相手なら簡単なんだけど
完全に恐怖と畏怖、敵意を纏った相手なんて何時以来だ?
こう頭たたいて意識を困惑させて思考を低下させて・・・
てか、それだとマグロを相手にするようなものか、面白くないな
それよりも、嫌がる相手を籠絡するのも面白いし
初物の初々しさも楽しみたい
だいたいこの世界の人間相手は初めてだし
それも見た目は純粋な白人だしな、色々楽しまないと
もったないお化けが出てきそうだ
それに、今日は【リル】が居ねぇ、じゃまされることはない!
以前の紫音の無駄知識
蘭さんの最先端脳科学知識
それを実現できる俺のスキル
ふふん、無敵だな
100%ヤレる!
紫音は、マリアに髪ゴムを要求すると
ひょっとこのお面をに手を掛け無造作に外す
ボサボサに伸びた髪を掻き上げ頭の後ろでゴムで止めた
留めきれなかった髪は、爽やかに横になびき
髪の隙間から現れたのは切れ長の瞳
まだ幼さが少し残る、イケメンの顔が現れる
普段の紫音は、鼻先まである長い前髪をボサボサ状態で放置する
そして、下を向いて歩き、顔を上げる事は少ない
その為紫音の素顔をマトモに見た事のある人間は少く
クラスメイトすら、紫音の顔をまともに知らない
顔云々よりも、その雰囲気で、ブサイクと判断されている紫音である
紫音は彼女の前で膝を折り腰を下ろす
左手を彼女の頭に伸ばそうとすると
彼女は、その手を怯えるように見つめ震える
紫音は右手で、震える彼女のアゴを軽く摘むと
顔を正面に向き直させ固定すると、自分の顔を近づけ
彼女の瞳を直視する
左手を静かに彼女の頭に乗せると
やさしく髪を触ると上から下へと撫でるのだった
だが彼女は、恐怖で怯え体は縮こまり固まり冷え切っていた
呼吸は不規則で心拍は多少早いが
緊張した心臓は正常に動かず不整脈となっていた
視線は正面を見れず、左右へ流れ視点は定まらず眼球は震える
紫音は、そんな彼女を観察する
目が泳いでいるな、それに視線すら震えてる、精神が安定してない
いくつもの感情が混ざり合ってるな
ここまで来ると、思考は低下してるし、落ち着かすのは無理か
急がなくてもいいし、時間あるなら逆に煽ってみるか・・・
紫音は彼女を見つめたまま
左手で髪を撫でながら一定間隔で脳に高周波を当てていく
それは、10秒が経ち、30秒が経ち・・・・・
脳にストレスを与えていくのだった
それは彼女の意識とは関係なく、脳にストレスを蓄えていく
徐々にだが、悪性物質のアドレナリン等が放出し始めるのだった
それは、安定してなかった精神が圧迫され、別の意味で安定していく
アドレナリンによって、血圧が高くなり、心拍数も呼吸も早くなるが
心臓はその機能を取り戻し、冷たかった体は徐々に体温を取り戻そうとしていた
視線は未だに左右に泳ぐが、その視線の震えが治まってくるだった
硬くなった彼女の体は、徐々にほぐれていく
現在の状況が理解が出来ないながらも
目の前の男が、自分を犯そうとしている事は理解できただろうまでに思考は回復してるだろう
それは処女の彼女にとって、それは最大級の恐怖だろう
その証拠に視線は男を見ることもできず、右へ左へと流れる
アゴを触られ、顔を動かせなくした為
どうやっても視界の中に自分の瞳が入るように仕掛けた
そして長い長い時間、彼女の瞳を見つめ
静かに頭をやさしく撫でる
そんな男に興味が湧いた訳ではないだろうが
彼女の視線は、不意に男の瞳を見つめ返してしまった
その瞬間、紫音の戦いが始まった
やっと良くも悪くも脳の機能が安定した思考が動いたと
それは彼女が戦える状態になったと、心でニヤリと笑い
やっと同じリングに上がったと、紫音は戦いのゴングを鳴らす
紫音は目を細めニコリと優しそうに笑うと
すこし低めの声で一言
「かわいいね」
ただの言葉ではない
言葉に乗せて、4kHzの音波を
彼女の頭蓋骨と背骨の付け根に響かす
延髄で共鳴するそれは、神経に直結し
彼女の意思とは別に、彼女の神経を震わす
それは、感情が高ぶって心が震えたような感覚だけを
彼女の感情に上書きさせた【1ヒット】
あの世界の、皇族貴族の娘や、婦人相手なら
このまま歯の浮くような甘い言葉でも掛ける所だが
意識が混濁する彼女だと、巧みな甘い言葉は逆効果だと
ここは【かわいい】だけで押していくことにする
「とても、かわいいね」
「かわいい」
「すごく、かわいい」
【1ヒット、2ヒット、3ヒット・・・・・・・】
そうやって、何度も何度も声を掛け
それと同時に
4kHz前後の音波で、一番反応の良い場所を探していく
『あん・・
響く・・・・イイ・・・
なんすか!それ!
そんな事してもらった事ないっすよ!
あたいにもしてくださいっすよ!
めっちゃして欲しいっす!!!!!!!』
彼女に他の情報を与えないため、姿を消させたマリア
姿を消すも、たぶん至近距離で、ガン見してるだろう
その為か、俺のスキルの余波をくらって感じてやがる
そんな、ビッチからの念話であるが
当たり前のように、無視である
彼女の視線が横に流れる
これは、恐怖や困惑ではない
視線を外すも、直ぐ視線をもどし、また外す
これは高ぶってはいるが
何かを求める困惑の感情による仕草
これ以上の、アドレナリンは不要と
紫音の言葉攻めは継続したまま
左手を彼女の背中に回していく
今度は左手を超振動させながら、背中のラインをなぞっていく
完全に触るのではなく、服だけをなぞる様に
超振動が服の上から彼女の肌に伝わり交感神経を刺激していく
彼女は上半身を、ビクビクっと反応させた
【5ヒットコンボ】
そんな事を、2度3度と繰り返し
紫音の左手は彼女の腰へ脇腹へと移動していく
ググっと彼女の腹筋に力が入る
【ミス・カス・スカ・ビヨォ~~~ン】連続ミス
あ・・・脇腹にがてなのね・・・
紫音の左手が
彼女の右太ももに移動していく
その瞬間彼女の腰が反応し体勢が崩れた
【8ヒット】
体勢が崩れたが、右手で彼女のアゴを動かし
顔を正面に戻すと、彼女の視線も紫音の瞳を直視した
紫音はアゴを持ったまま彼女の顔に自分の顔を近づけていく
彼女の瞳孔が一度大きく開き、視線を横にずらす
アゴを持った手には力が入っていない
その気になれば、顔を背ける事もできるのだが
紫音は優しくキスをする【?ヒット】
彼女の精一杯の抵抗だろうか?
その唇は固く閉ざされたいた
紫音右手は、彼女を撫でるように頭の後ろに回されていく
左手は彼女の背中に戻り
彼女を両手で支え、キスしたまま
床に敷かれた、紫音のロングコートの上に
ゆっくりと押し倒していく
頑 (かたく)なに、キスを拒む彼女だが
いつの間にか、パンティーとブラジャーだけとなっていた
紫音の指示で、マリアが得意技の衣服転移を使ったわけだが
そんな事は彼女が知るわけがないし
すでに下着姿になった自分に、気づいた素振りもない
それでも、力の入る唇に
まだ何かが足りない?と考える
いままでの経験から、かなりの自尊心を削ったはずだ
キスくらいなら求めて来そうなんだが
思いの他、ガードが硬いし、精神力の耐久力も高い・・
仕方がないな、感情が高ぶる系の技でも
右手で髪をやさしく撫でながら
頭を上げながら彼女の唇から唇を離していくと
彼女はそれを拒むかのように、紫音の唇を追いかけ
再び唇を重ねようと唇を突き出すのだった【カウンターヒット!】
ん?
こいつもしかして、キスが下手?
それとも、キスもしたことがないのか?
力がはいって強ばった唇は・・・・
初めてのキスに、緊張してたのか?
綺麗なブルーアイに美しい金髪
白人系の整った顔、化粧栄えをするだろう顔立ちである
年の功は・・・20歳?
全体的に体の線が細く、痩せすぎ感がある胸もBかC
それなりの格好をすれば、モデル並みにはなる女性である
これで
【処女?】だと?
【キス】さえしたことがない??
まったくどこの天然記念物だ!
日本男児!お前ら何してんだ!
草食男子とか言ってないで、ガンガンいけよ!
だが、おかげで俺は楽しめるけどな!!
カッカッカ!
思った以上に初々しい・・・・好みだ!
髪を撫でていた右手で、彼女の頭を引き寄せ
やさしくキスをする【クリティカルヒット】
左手は彼女の背中に伸びていき、ブラのホックを外し
すでに半分落ちただろう彼女の身体を愛撫していく・・・・
*******
彼女の名前は【Mary・Steinbitchith (メアリー・シュタインビーチス) 】
幼少期の彼女は、とても幸せだった
父は1代で富を得た起業家であり
美しく優しい母親
かわいい弟
裕福な家庭で、家族に囲まれ幸せの日々を送っていた
だが、それも長くは続かない
彼女が16歳になった頃だった
父が経営する企業の、ある特許技術があった
それに目をつけた、ある企業が汚い手を使って買収した
その後ろには、十支族の影があった
そこからは転落人生の始まりである
会社を追われ年収数億を超えた収入は0となる
そんな夫に愛想を尽かした母は、早々と離婚し
家にあった宝石や貴金属類をかき集め、ニューヨークの実家に帰っていった
愛する実の娘も息子も捨ててだ
家に有った金目のものは無くなり
税金は払えず、豪邸の固定資産税も払えず豪邸は売り払われた
残ったのは子供2人と、友人に頭を下げて借りた2DKの部屋のみである
父親は働いた、だがつい先日まで社長だった男には世間の風はキツかった
何不自由なく育ったメアリーの生活も変わっていく
お金はない、贅沢はできない家事をしなくてはならない
幼い弟の面倒は見なくてはならない、精神を削るような忙しい日々
化粧など出来るわけがない、日に日に痩せていくメアリー
女子中、女子高と通って今までは社長の娘と言うことで好き勝手してきたが
学校では、事情を知った学友からのイジメがはじまる
内向的になり人間恐怖症になっていくメアリー
保健室登校と、どうにか高校は卒業したが
引きこもるように家から出ることがなくなった
そして1年と少し彼女が20歳となる頃
父親は、自分達を地獄に落とした十支族に復讐する為に
十支族に敵対する組織【レッドストーン】に組みすることとなる
それと同時に、メアリーも自分達に起こった地獄の日々は
十士族のせいだったと知らされ
全ては、十士族が存在するから悪いのだと思い込むようになった
その後、レッドストーンに入るには時間は掛からなかった
十士族に復讐するために、黙々と働いた
男など興味はない、彼氏なんて欲しいとも思わない
女子中学校、高校と通ってきたメアリー周りには、家族以外の男は居ない
その為、もともと奥手だった彼女は、それに拍車がかかり、男嫌い
いや、そもそも人間不信は未だに続いていた
ただ、復讐すために自分は生きているんだと・・
寡黙に自身の仕事をするのみであった
そして2年の月日が流れるも、メアリーの心は変らなかった
組織の何人かの男は、彼女にアプローチを掛けるも全て惨敗に終わる
そんな物は、視界に入らない
復讐の為、組織に行き働き
家に帰って、食事を食べ寝る
起きたら組織に行き働く
思考を停止し、機械のように繰り返すメアリー・・
今日も、組織に出向いたら
メガネの男が、組織を抜けるとか辞めるとか騒いでいた
だが、メアリーにとっては関係ないことだ
そして、組織では何かの動きがあるらしく
その情報収集と、情報伝達役に、メアリーは呼び出された
千葉県のある場所で、PCを前に連絡役をこなす
そこに感情はない、いつもの様に黙々と仕事をするだけだと
何があったか、覚えていない
意識がはっきりとしてきた時には
心は震え、身体は何かを求めていた
床に敷いた布の上に裸で転がされ
私の身体をやさしく愛撫する男がそこにいた
彼の手が私に触れた場所から、快感が背骨を通って脳に刺激をおくる
私の意思とは関係なく、体は心は反応していく
息をするのを忘れるくらい、優しくキスをしてくる彼に
脳が刺激され、目の前に火花が咲き誇ったかの様な感覚さえ生まれてくる
そんな彼がキスをやめ、少し体勢を起こすと
とても優しい顔で微笑んでくれた
そしてとても優しい声で
「かわいいね」
その声は私の身体を支配した
足の先から、頭の先まで電撃が走っていく
その快感に息は荒くなってくる
彼は私の両足を持って少し持ち上げた
私の視線は彼の身体を降りていく
「や・・・やめて・・・・
ゆるして・・・・・
そんなのムリ
大きすぎる・・・ヤメて・・・・・」
どこかで聞いた言葉を口にする
きっと身体に力を入れて拒めば、その場から逃げれただろう
だけど・・・
私の身体が、彼を、彼の下半身に有る物を求めている
子宮が疼き、彼が私の中に入ってくることを望んでいるかのように
口とは裏腹に、自分で足を開いていく
そして・・・・・
「よく頑張った、もう大丈夫だ、すべては俺がひきうける。」
心に響いていく、何かの感情が沸いてきたのか
長年封印していた体と、心に穴が開き
涙が溢れてきた
ただ、わかって欲しかった
そして私の全部を見て欲しかった
私は辛かった
人生のどん底まで落ちても
頑張ったの・・・
自分の事を捨てて
弟を支え母親代わりなって
暴力を振るいだした父に我慢して暮らしてきた
何度、2人を殺そうかと思った事か
何度、家に火をつけて死のうと思った事か
何度、全てを投げ捨てて死のうとした事か・・・
その苦しみを、ぶつける様に士族を恨んだの
でも、そこには私の求めている物はなかった
私が求めていたのは、きっと彼
汚い私の全てを見てくれて
その全てを受け入れ
全てを受け止め
全てを受け止めてくれる
そんな彼を求めていたの・・・
ゆっくりと動きだす彼に
私は反応して声をだす
自分でも信じきれないほどの
ツヤのある可愛くもイヤラシイ声が
子宮の奥を突かれる度に
凍りついた心の氷が砕かれていく
彼に力の限り抱きつき
いつしか自分から腰をふり
「イヤ・・・・ムリ・・・・・もうヤメテ・・・・・」と
心にも無い事を口にする
解放された心
解放された身体
それを包み込んでくれる男
本能の赴くまま乱れ
メアリーは全てを忘れ
その全てを男に捧げるのだった。




