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8話 ・・・ば・・晩飯なに?

 



「鷲尾これで、3度目だ

 今度はどうやって、俺を楽しませてくれるんだ?」


「あぁ、これからが本番だ!

 取って置きは最後にだすもんだしな

 死なない程度と言ってやりたいが

 お前に掛けられた懸賞金は「デッド・オア・アライブ」ではない

 デッドのみ、死んで俺を楽しませる事が出来るんだ、光栄に思えよ!」


「殺人依頼か、俺も有名になったもんだが

 あんなザコ傭兵では、何千人居ようが相手ではないけどな!」


「あぁ、大口叩いてた癖に

 ほぼ全員倒されるとは、元米軍と言っても

 所詮は寄せ集めの傭兵どもだ!

 俺の部下の方がよっぽど訓練されているぞ!

 それに今回は億の金が掛かっているんだ

 前回みたいに、お遊びでなく

 本気で始末する、覚悟しやがれ」


鷲尾は両手を広げ左右にいる、自分の部下を自慢する


「さほど変わらんだろうが

 俺を楽しませる事が出来たなら

 生かしといてやる、そして4度5度と俺を楽しませろ!」


「盛り上がっている所悪いが

 鷲尾さんか?少し聞きたいことが有るんだがいいか?」


盛り上がってきた2人を止めた声の主は、鉄雄だった


「ふん、ここまで来れた褒美に教えてやろう

 俺の名前は鷲尾、ある組織の・・・

 いや・・・もう元だな、今はただの鷲尾だが

 近い将来裏の世界で、有名になるだろう

 この俺!ホワイト・イーグルの鷲尾と言う名がな!」


「それは凄いな、覚えておくよ

 ホワイト・イーグルの鷲尾さん」


「なかなか話せる奴ではないか!

 ブラックマスクもその不良を見習え!」


「でさ、聞きたい事は別なんだわ

 俺達を呼び寄せるために拉致した、女2人と男1人は何処だ?」


「女2人?あぁ、あいつ等か、ふふん

 そうか、そうか、あの女達を探してたのか

 お前達の事を聞いても、口を割らなかったんでな

 全員で楽しませてもらったよ!

 あぁ、なかなか良い身体をしていたぞ」


鷲尾とその部下だろう男達が、ニヤニヤと声を出さず笑い出した

そして、その意味する事に気がついたアリス


「本物のゲスね・・・私が成敗してあげる・・・」


蓮と鉄雄の後ろで状況を観察していたアリスだったが

その怒りと共に前に出ようとすると

鉄雄はゆっくりと右手でアリスの行く手を遮り

アリスの行動を止めた


アリスは自分が感情的になって

身体が勝手に前に進んでいることに気づくのだった

だが、目の前の男達の、いやらしく笑う顔がチラツキ

怒り全身に溜まった力を解放できず

拳を固く握り、歯を食いしばり無言で耐えるのだった


暴れるのは簡単、だけど

私は騎士、最優先させるのは、彼女達の確保

それは今の私では出来ない

力不足・・・・いや何もかも足りない・・


そしてアリスは、本当の意味で

ここに来る前に井門という人間に言われた

その言葉の意味を心底理解するのだった



「そうかい、良い身体だったかい、それは良かったな

 でも、いちよう俺達の目的は3人の保護なんだよ

 何処に居るか教えてくれないか?

 それと、参謀って奴か?

 小学生でも考えれる様な、無様な作戦?

 いや、作戦と呼ぶにはお粗末すぎるな

 保育園児の初めてのお使い?みたいな?

 どうでもいいや、そいつの居場所もついでに教えてくれないか?」


「ふん、教えるはずが無いだろう

 それに、お前達はここで死ぬんだ!

 教えても意味がないだろうがぁ!!」


バカはバカなりに、口を滑らさないか・・・

なら、さっさと潰して聞き出すか


だが、そんな鉄雄の考えを無視するかの様な声が響き渡る

それは、造船ドックに設置されていた、スピーカーからである


「待て!ホワイト・イーグル

 そして諸君、初めましてかな

 ワシの名前はそうだな、ホワイト・ヘアと名乗っておこうか

 今回の作戦を指揮する者だ!

 そして、奴等カラーズは、いや傭兵と言った方がいいか

 奴等は良い仕事をしたのだ

 お前達を、そこに連れてくると言うな

 その為に、奴等がどうなろうと知ったことではない」


鉄雄は、挑発にかかった!とにやりと笑う

そして横では、嬉しそうに話し出す蓮の姿があった


「ほう、ここに誘き寄せたと?

 ここでしか出来ない何かが在ると言う事か?

 なかなか楽しませる事を言う奴だな」


「ふん、ブラックマスク、お前の武器は既に此方の手の中にある

 そんな拾ってきた鉄の棒ではマトモに戦えんだろう

 それに、ワシの手駒達は、その鷲尾の数倍強いぞ

 何せ、あの・・・・

 そうだな、先にココまでの褒美に

 オイ!アレを見せてやれ」

  

「写せ!」


誰かの声かスピーカーから流れ

鷲尾の後ろに大きなスクリーンが映し出され

そこに映し出されたのは殺風景の部屋に立つ一人の男

体格の良い男は、その装備から上半身が一層ゴツイ体格に見えるのだった


「誰だ?それにあの装備は?」


「しらねえよ、何でもかんでも知ってると思うなよ

 胸部アーマー?体格に似合わない鎧だな?」


「あれって・・・」


「なんだ?知ってるのか?」


「軍事用義手、治療保護用デバイスアーマー?」


「なんだそれは?」


「たぶん彼は最近、戦闘で腕を無くしてるんだわ

 そしてあれは、その治療と義手を付ける為の補助器具で

 義手デバイスの重さに慣れる為の治療一次アーマーなの

 そして胸部から左右の腕に同じような伸びる様な装備

 あれはつい最近、腕をなくた証拠ね

 義手に慣れれば慣れるほど、コンパクトになるはずなのよ

 でも、おかしいわね、あれは日本の軍事機密のはず?

 科学魔法の回復魔法では、失った肉体の回復は出来ないから

 戦争で四肢を無くした軍人でも

 期間を開けず戦える様に開発されてた、義手デバイスだったず」


「そんな物があるのか」


「あるわね・・・・・

 その研究の一部が、現代の義手治療に流れているの

 でも、一般に公開されてる義手は、そこまで高性能ではないの

 日常生活を送るには支障はないけど

 それ以上の事は限度があるのよ

 だけどアレは、その限度を超えて軍事運用ができる

 超高性能の義手なのよ

 あの男はそれなりに、大きな組織と繋がりがあるのかもね」


「くくく、なかなか博識な人間がいるんだな

 要件は拉致した2人の女性だったか?」


その男は、カメラを操作する人物に

顎である方向にカメラを向けるように指示する

そして、映像は男の左方向に移動していく





殺風景な部屋

片隅に置かれたパイプベット

床には無造作にマットの様な物が敷かれていた


ただ・・そしてソコには、ボロボロになった2人の裸の女性


1人はマットに転がり小さく痙攣していた

情報を聞き出すために拷問を受けた傷だろう

体中に赤い血痕が付いていた

いや、それだけではない体中に青あざもあり

どういう扱いをされていたかが一目で理解できた・・


そして女性の横には、使い捨てられた小さな注射器が転がる

痙攣の原因が、薬物に寄るものなのは間違いが無い事を物語っていた

それでも、彼女はまだ生きていた、人間を辞めていたとしても・・・


そしてもう1人はパイプベットの上に居た・・・

マットに居る女性と同じく、男達の玩具となってボロボロになった姿で

ただ違ったのは、すでに血の気はない

人間を辞めただろう彼女は

二度と動くことは無いだろう


そう2人の女性は文字どうり、使い捨てられたのだ


男は笑いの混じった声で告げる


「お探しの女性とは、この2人の事かな?

 裏切り者に相応しい姿だろう」





アリスは身体を震わせ

「なんで・・・・そんな・・・・」と

フルフェイスの兜の上からその口を覆うように手を当て

膝から崩れ落ちそうに

だが腕を取られ、身体は支えられ、崩れ落ちる事は許されなかった

アリスを支えたのは鉄雄だった

そして、鉄雄は前を見据えたまま

小さな声で、アリスに言葉を届ける

小さな声でありながら、その力強い言葉は

アリスの心に、その魂に届く


「立て!現実から目を背けるな

 いつもの様に胸を張れ、相手が誰だろうと弱みを見せるな

 お前は騎士だ!その精神を思い出せ!」


(キュン♡)


黒く光るリーゼントを携え

全てを見透かしたような瞳で

いつも小さく可愛く笑う

【世界一、かっこいい男】

そして私が最も尊敬し憧れの存在・・・・

彼にこれ以上無様な姿を晒すわけにはいかない


力の抜けた両足に力を入れ、うなだれる身体をささえる


そうよね・・・まだよね・・・

まだ、やれることは在るはず・・・・


身体に一本の信念を通す様に

背筋を伸ばし無い胸を張ると

身体を支える手を、軽く触り

無言で「もう大丈夫」と伝える


気持ちを入れ替えないと

彼と1つに成れた事で浮かれてわね

そうココは生死を掛けた戦いの場

人が死ぬことも有り得る・・・・

それでも、あんな悲しい殺され方は辛すぎる

もう少し・・・少しでも早く助けに来られたら


そんなアリスに

鉄雄は先程までアリスを支えていた手で

アリスを安心させるかのように肩を軽く2回ほど、トントンと叩き

最後にアリスの後頭部をポカリと叩く


「は?」


「だいたいさ

 お前は正義の味方にでも成ったつもりか?

 B級映画じゃあるまいし

 彼女達を危機一髪で助けれると思っていたのかよ?

 どれだけ夢を見てんだ、夢見る少女かよ、まったく

 それに拉致されて3日か?女が拉致されてそれだけ時間がたったなら

 まず無事な訳無いだろうが!」


「え?」


「俺達は初めから分かってたんだよ

 今現在彼女達が、ある程度どういう状況か何て事はな

 だから、最低でも死体の回収だと、あのメガネが言ったんだ 

 一人死んでるから報酬はかなり減ったと思っていいいな

 あぁ、でも、男の方は使い道が無いだろうから

 さっさと殺したのか?

 そこん所どうなんだ?

 男も女達と同じく裏切り者だった訳だろ?

 死んでたら俺達の報酬が減るんだわ」


彼女達を・・・・まるで物の様に言わないで!

そんなに、お金が大切なのテツ?

本気でそんな事を言ってるなら・・・

嫌いになるわよ・・・・

・・・・・・・・・なれないけど


鉄雄の疑問を答えるかの様に

映像の中の男は答えた


「男?

 あぁ速見の事か

 こいつはワシ達を裏切ってお前達の側に付いたからな

 それなりの報復をさせてもらった

 我等 (われら)血で染まる赤き意思【レッド・ストーン】は

 裏切り者を決して許さない!

 と言っても、まだ息はしてるみたいだがな」


そしてカメラが操作されたのか

映像は大きく横に動き

天井から吊るされているだろうロープで両手を縛り上げられ

床に下半身をあずけ、力なく壁に寄りかかる

ボロボロの男の姿が映し出された


鉄雄にとったら、目の前に居るバカである鷲尾

バカはバカだが、こっちの質問に口を割らない位の小学生くらいの知能はあるが

声だけの、ホワイト・ヘアやカメラの前の男は保育園児並みのバカだ!

何を自慢したいか分からないが

少し挑発したり、持ち上げたり、奴らが好きそうな金や

言いたそうな話をつつけば、すぐに話し出す

まったく扱いが楽でいいと、心で笑う


「さて、とりあえず回収目標の3人は確認出来た

 服はボロボロだったが有ったな

 荷物も、同じ場所に在ると思っていいな

 裏切り者とか、こっち側に付いたって言葉が気になるが

 先輩、あの3人に面識ないんだろ?」


「あぁ、あの(映像の)男もだが、見覚えないな

 とりあえず、あの鷲尾を捕まえて

 映像の場所を吐かすか」


本当は、蓮はこの3人を知っていたハズである

だが、さほど興味の無い人間の顔を覚えるほど

蓮は人間が出来てはいない


ミーティアも男の顔は覚えていたが

蓮と鉄雄の意図的な言葉のやり取りの邪魔にならない様

口を挟むのを止めたのだった


「貴方達、失礼よ

 回収ってなによ!物じゃ無いのよ!

 まだ生きてる人もいるし

 あの・・・女性も早く救ってあげて

 あんな状態では、救われる魂も、救われないわ」


「ん?さっきも言っただろ

 俺達は、ヒーローでも正義の味方でもないんだ

 仕事だ仕事だ!金を稼ぐために動いてんだ

 だいたい、もう遅い

 死人にシャブ中、そして・・・男はどうでもいいや

 この状態でどうしろって?

 一発逆転?、どんでん返し?

 そんな事が現実的にあり得ると思ってるのか?

 あるんなら俺が教えて欲しいわ」


「そ・・それは・・・

 無いのかもしれないけど

 それでも、私はあの人達を救ってあげたいのよ

 私だって、世の中が理不尽な事くらい知ってるわ

 私に出来る事は少ないかもしれないけど

 でもね、私は人間として彼女達を救いたいのよ

 その為に・・・・・

 ・・・・・

 ・・・・・

 ・・・・・

 その為に、貴方達の力を貸しなさい!」


「俺様をこき使おうって言うのか?」


「ええ!バケモノでも、魔王でも

 使える物は全部使ってあげるわよ!」


その言葉は、アリスの覚悟であった


「ハッハッハ!

 俺様に対して「使ってあげる」とは言うじゃないか!

 気に入ったぞ、鎧女!

 やっぱり、お前もコッチ側の人間だ!

 いや、ある意味、俺達より危うい存在かもしれんが

 どう転ぼうが、いつかはコッチの世界に来る存在だろう

 そして、お前(宮守)の負けだ、観念しろ

 どうせなら、近場で見守る方がいいだろう!!」


バチィーーーーーン


蓮は鉄雄の背中を気持ちよく叩く 

その音は気持ちよく、造船ドック内に響いていく


「いってぇぇぇーーーーーーー

 はぁ・・・

 せっかく、これ以上、コッチノ世界に興味を持たないようにしてたのに

 これなら、嫌気をさして、帰ってくれていた方がどれだけ楽だったか

 台無しだ!

 あぁ台無しだ!

 先輩のおかげで

 全て台無しだ!」


うなだれる鉄雄

だがそのリーゼントは鉄雄の暴言とは逆に黒光りを増していく



「茶番だな!

 まだ自分達が生きて帰れるとでも思っているのか!

 あらゆる意味で、お前達は詰んでいるんだ!」


「ほう、俺達が積んでいると?」


まぁ宮守は積んでいるがな

アレは女に尻に敷かれるタイプだな!


「これを見ても、強気でいられるかな」


カメラの向こうに居る男は、殺風景な部屋を動いて行く

そして映し出された男

速水と言われた男と同じく

床に座っては居るが、天井から吊るされたロープに両手を縛られ

背を壁に預け死んでいるか生きているか不明な男


速水と同じく拷問を受けボロボロであるが

どう見ても、速水よりその傷は深く酷いものであった

だが、あからさまに違うのは

裸に赤いフンドシを履いた変態であった

そして、その顔には顔全体を覆い隠すような

【ひょっとこのお面】が被されていたのだった


「あ!」

「お!」

「ひどい・・・彼も助けないと・・・」


アリスの怒りが膨らむと同時に

アリスの視界の端から鉄雄が消えた

その消えた鉄雄を追うかのように

アリスの視線は、膝から崩れ床に塞ぎ込む鉄雄の存在を確認した


「テ・・・だ、大丈夫?」


テツが膝を付く?

どうしたって言うの?

あれは?誰なの?何が?


「ク・・・・・ククク

 ハッハッハッハッハハッハ!!!!」


いきなり腹を抱え、リーゼントを揺らしながら笑いだす鉄雄


「え?」


「あの・・・変態

 ククク・・・流石だ・・・・

 その予想は無かった、有ってもそっちに寝返る位は考えたが

 ククク・・・・ボロボロじゃぁねえか!!」


「へ?変態?」


鉄雄が心配になって

鉄雄の横で膝を付き手を差し伸べていたアリスは変態の言葉に反応する

そんなアリスに、小声で伝える


「クク・・あぁ、アノ変態は紫音だ」


アリスの視線は再び、映像に釘付けになり

鉄雄の言葉を信じてはいるが

目の前の真実を受け入れられなく


「せ・・・先輩

 あれって本当に・・・アノ変態なの?」


「あぁ、間違いなく、アノ変態だ

 俺を置いといて、なかなか楽しそうな事をしていたみたいだな」


腹を抱えて笑うテツ

あの状態を楽しそうと笑う蓮先輩

友達が、あんな姿になっているのに・・・

なんなの貴方達は?


そんな中念話で


『おい宮守、リルはどうした?』


『ハハハハハ、リル?静岡で謹慎中

 ここに居たら、すでに暴れてるよ』


『ティア、あの変態の居場所は?』


『念話が通じません

 意図的に遮断しているのか

 意識が無いものと思われます

 その為、位置の特定は出来ていません』


『クククク、ほっとけば?』


『・・・・・・ほっとくか

 あっちは、あの変態がどうにかするだろう

 ここに何か有るらしいからな

 こっちは、こっちで暴れるぞ!』




映像の中の男が動き出す


「お前達の仲間の、ひょっとこ男だ!

 分かるか、この男を上回る力が俺達に有る事を

 そして、教えてやる!」


男は右手の義手デバイスを、カメラの前に持ってくると

フツフツと怒り、言葉を荒げて叫ぶ


「ワシは、この男にこの右腕を切られ!

 そして、ワシの目の前で、部下の命を、この男に奪われた!

 今まさに、その復讐を遂げる!

 お前らに、俺が味わった苦渋を舐めさしてやる!」


そして、映像の外から一本の木刀を取り出した

それは、蓮も鉄雄も見覚えが有る木刀である


義手デバイスアーマーを装着する男は

後ろを振り向き、紫音に近づくと


「おい!起きろ仲間が助けに来たぞ!」


言葉と同時に紫音の右足を力強く踏みつける


「グァ・・・・

 ハァ・・ハァハァ・・・」


「仲間が見てるぞ、何か言ったらどうだ?」


ひょっとこのお面が微かに動き、蓮や鉄雄の姿を確認したのか


「・・・ば・・晩飯なに? グハ!」


その言葉に腹を立てたのか

男の蹴りが、ひょっとこ男の腹部に突き刺さったのだった


「この期に及んで、まだ余裕があるもんだな!」



「ハハハハハハ晩飯?

 あぁ、とりあえず、チビ達が夜食の準備はしているらしいぞ」


「おい!お前ら、先日すき焼き食ってたな

 俺は肉が食いたいぞ!焼肉にしろ!」

 

「ヒヒヒヒ、肉?もうないぞ、余ってた牛肉は

 女子会で全部食べたってさ!」


「何を言ってる?焼き肉といえば【ヘビーモス】の肉に決まってるだろ!」


「ククククク、一回は食べてみたい、ファンタジー肉だな!」


「あぁ、なら後で取りに行くぞ」


「うるさい!」


映像の中には、再度右足の、ふくろはぎを踏まれ

膝以外の関節を新しく増やし、変な方向に足を曲げた変態の姿があった



映像の中の男は、会話の止まった

不動の姿勢で映像を見るブラックマスクや

表情は読めないが、固まったジャージの鎧

うずくまり、何故か笑い続けるリーゼント

そんな3人を確認し


「そうだ、静かに見ていろ

 ワシの復讐は、始まったばかりだからな!

 まずは、ワシの右手を吹き飛ばしたお礼だ!」


右手に持った木刀を、大きく振り上げ

ひょっとこ男の右腕に向けて振り下ろす

そこに、残ったものは・・・・


「そんな・・・・・右腕が・・なんてことを・・・」


少女は兜の裏で人知れず涙が溢れ出した

それは、自分に近し友人の不幸を初めて目の当たりにした為か

その友人を救えなかった自身の不甲斐なさだったのか

その感情は、アリスすら解らない



「この世界には肉体を蘇生できる魔法はないんだぞ!!!

 お前は!俺の手で殺す!

 いや、自分から殺してくれと願い出る程の地獄を見してやる

 俺の友人を手にかけたことを・・・・・」


男は吠えた!

シオンの何かの意思があっての現状だと思っていた

そしてこの瞬間まで

あの世界で魔王である自分に匹敵する強さを持つシオン

そのシオンが負けるはずがないと思っていた

だが違う、意思加速と多少のスキルを使えるだけで

シオンは普通の人間なのだ

あの世界の魔法が使えるわけでは無い

この世界の科学魔法が使えるわけでは無い

多少使えるのかもしれないが

人間であるシオンの魔力も魔力量も、カスみたいな物だった

覇気に耐えれる身体でもなく

シオンの功績の裏には、小さな存在がいた

全ては、いつも傍にいる、リルが居てこそだった

そうなのだ今シオンの傍にリルは居ない


そして今、蓮の数少ない友人が、その利き手を失った

まるでガソリンに火が付いたかのように

蓮の怒りは爆発しそうになるのだが


「わっはっはっはっはっははははは

 右腕ふきとんだぁぁぁぁ!!!

 ひっひっひっひ、あの変態どこまで、予想外なんだよ!

 だめだ、ツボにハマった、笑いが止まらん

 クククク、あ!・・・ククク

 写真を・・・写メを・・

 ぷぷぷ・・やばい置いてきたんだった

 その映像のろ・・・・ぷぷ、ろ・録画をくれ

 ハハハハハハハハ」




1人の男の笑い声が


造船ドックの広い空間に響き渡った


その笑い声は、緊迫した空気の吹き飛ばし


そこにいる全員の視線を受け


男は笑う


そのリーゼントをコミカルに踊らせながら



 

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