7話 彼と私は、今1つと成る
蓮達3人は先程まで居た場所を後にし
下の階へと続く階段を降りていく
先程までいた場所には
足で纏だろう敵でもない味方でもない2人の人物が残されていた
「それで奴らは造船ドックに居ると思っていいのか?」
「あぁ間違いないだろうな
手ぐすねを引いて待ってるだろうよ」
「で、こっちの作戦はどうするんだ?」
「ん?作戦?それは先輩が考えるもんだと?
俺達はいちよは後輩だからな、先輩の指示に従うつもりだけど?」
「そう言って、どうせ好き勝手にやるんだろ?
井門が頭を抱えてただろ?」
「いやいや、臨機応変って言ってくれよ」
「まぁ、どっちでもいいけどな
なら指示をだす!お前が作戦を考えろ!」
「はぁ?」
「俺は突っ込む!
それしかする気はない
事実それで事は終わる
もし個の力で俺に勝てる人間が存在する時点で
勝敗 (ゲーム)は関係なく全てが終わる
『リル達の介入によってな』
それに大体めんどくさい事は、いつも変態任せだしな
それに、お前の全体の流れを読む力に興味が沸いてきた
奴らとの知恵比べ的な事だが
その力を見極めるのも悪くないと思ってな」
蓮の鉄雄を褒める様な言葉に
アリスは「うんうん」と無言で頷く
「げ・・・俺も基本変態任せなんだけど・・・・・まぁいいか
俺に言わせれば、奴らが言ってたと言う参謀か?
そいつがどれだけ悪巧みしようが
俺にとったら普通の一般人だな
そして常識の範疇での動きなんだわ
そりゃぁ動きも読めるって
俺がいつ相手してんのは変態だぜ
それに、チート『リル』に、7:3メガネ
あっちの方が、どれだけ厄介かって・・・
あぁ~~考えたくねえぇ~~
まぁいいや、作戦って訳じゃないが
そうだな、先輩ってマシンガンって捌けるか?」
「マシンガン?2・3メートルの至近距離で
数人相手でない限り捌けるが?」
「素手で?」
「あ・・・・そういや木刀が・・・・」
それは作戦開始の時、変態印の木刀を持っていた蓮が
今現在手ぶらである事を見て聞いたのだが
そして蓮もその事を今まで忘れていた
そう、先程木刀を盗まれたいた事をだ
そしてそれは、ただ単に蓮の戦闘力を削るため武器を盗まれたと思っていた
「あぁ、盗まれたんだった・・
仕方ないな・・・・」
蓮は姿を隠し付いて来ているミカに念話で
『ミカ、俺の武器は何を持ってきてる』
『武器?剣っぽいのなら、星と龍と雷 (ライ)かな?』
『なら星だ』
ミカは姿を消したまま何もない空間に手を突っ込む
それは、ミーティアも持っていない
ミカのスキル【固有空間】
リルの持っている【虚数空間】に近いスキルである
許容量は東京ドーム1個分を超え、時間の概念は無い
この建物で倒されたり、逃げようとして捕まった人間達も
ミーティアとミカの手によって、詰め込まれている
また解除した爆弾も詰め込まれている
念話、空間転移ができる2人にとって
ミーティアが捕まえた人間を、一瞬にして転移してきたミカに手渡し
固有空間に閉じ込める事など造作もないことである
それは、異世界で雷帝に仕え
千年以上を共に過ごしてきた2人ならではの連携でもあった
ミカの右手は、ある黒い棒を固有空間から抜き出すと
『ほい、ナナホシ』
そのまま蓮の前の投げると、黒い棒はくるくる回りながら飛び
蓮は無造作に、手を伸ばし黒い棒の持ち手で有ろう部分を握る
そう黒い棒は、その姿を、その存在を蓮達の前に現したのだった
アリスは、いきなりの事で驚くのだったが
それを表に出すことはない
彼女にとって既に目の前の2人はバケモノであり
常識が通じないと判断し、何が起きても私は動じないと
心の中で何回も繰り返していたからに他ならなかった
平常心で驚くアリスの横で
大きく驚いたのは、鉄雄である
「ちょ・・・ちょっと待ってくれ先輩・・・
そ・・・・そ・・・それって?」
そう、テツが聞いてよ
イキナリ鉄の棒が出てきわよ
なんであんな事が出来るのよ!
誰もあんな物、持ち歩いてなかっわよね
なんでか先輩に聞いてよ
だが、アリスのそんな思いと違い
鉄雄にとってそんな事は日常茶飯事であり
どうでもいい事であった
「ん?これか、これは【七星 (ナナホシ)】っていってな
見かけは、こんなのだがな凄い性能が・・・」
そんな蓮の自慢を遮って
鉄雄は蓮の持った武器を凝視し勝手につぶやきだした
「ブラックニッケル?
いやいや・・ニッケルなら柔らかすぎるだろ?
これって武器だろ?
独特の黒染、積層鍛造の模様・・
黒染積層鋼?ブラックニッケルダマスカス墨流?
現代ダマスカス鋼?・・・イヤ・・・違う
似てるが・・・・存在感がハンパじゃねえな
よく見れば、これカーボンナノチューブ構造?
(あっちの・・世界の)本物のダマスカス・・・か?
それに、カーボンナノチューブを使った
ナノサイズの反流動非可算魔素集合?
魔力増幅器か?おいおい有り得ないだろ?」
蓮の手に収まった板の様な武器
黒染積層鍛造の模様、簡単に説明するなら、黒光りする木目模様である
長さは全長で1m30cm程、幅20cm厚さ2cm程の刀身
刀身といっても刃は無く、多少角は面取りをしてあるが板である
そして一枚板を削り出した様な持ち手を作ってあり
言うならば、羽子板を長くした感じである
持ち手には直に持たないよう黒い布が巻かれ余った布が40cmほど垂れている
そして、最大の特徴は、この武器は剣ではないのだ
これは鉄の板であり、木刀のような打撃武器である
そして、蓮がナナホシと言ったように
その名を象徴するかのように
まるで北斗七星を型どったかの様に7箇所に穴が開いていた
「さすが、素材に関しての知識はすごいな
お前が言ったように (あっちの世界の)本物のダマスカス鋼だ
変態の木刀だけでは、あの侍に勝てそうになかったんでな
先日アレ『ティア』が、あっち(の世界)に戻った時に
取り寄せた俺の武器の1つだ」
「いい武器もってんなぁ
俺も自分専用の武器が欲しいわ!」
「あ?変態に作って貰ってないのか?」
鉄雄は靴の踵で床を小さくけり
「カンカン」といい音を立てると
「コレだけ、硬いだけの靴だ
まぁ一個だけ魔法が付着してあるがな」
魔法を付着?木刀と一緒で粉砕系か?
「硬いだけの武器か?
こないだ妹が変態から貰ったナックルも
硬いだけだったな・・・お前もその口か
それに大体このナナホシは、元から俺の武器だ」
「はぁ?
あのナックルが硬いだけの武器?
いったい何を言ってるんだか
俺に言わされば、使い手が使い手だからな
物理的だけど、アレは現代最強クラスの武器だぞ
アレの攻撃を正面から防御できる【人間】は居ないと思うぞ
たぶん先輩でも、捌く事は出来ても
無傷で正面から防御するのは無理だろう?」
「それなりの盾があれば出来んでもないが?
お前の見立てでは、アレは硬いだけではないと?
チビ (リル)は、硬いだけの壊れない武器と言ってたが?」
「あぁ、たぶん気づいてないんだろうな
いや?作ったのは変態か、なら知ってんのか?
分からんなぁ・・・なら、ネタバラシはしない方がいいよな
今は隠し性能が有るとだけ言っとくよ
それで先輩、その武器があれば、マシンガンを捌けるのか?」
「ん?あぁ武器さえ有れば、どうとでもなる・・・
そうか、あのナックルに隠し性能が・・・」
そして、その事をどうして宮守が知っている?
そんな疑問に、鉄雄は
「人より少し目がいいだけだと」わらって答えるのだった
その後も、変態の悪口を挟みながら男二人の会話は続いていく
後を付いて行く、アリスにとってみれば
常識離れした話しが、飛び交うのだった
テツの「マシンガン相手の至近距離の銃弾は機動予測が大きくぶれて
銃弾を弾くのは厳しい、1人相手ならどうにかなるが
サポートが1人増えたらもう無理だなぁ」と弱気な事を言うが
マシンガンを捌ける人間なんて居たら【バケモノ】であるけど
だが、蓮先輩の口から出てきた言葉は
「マシンガンの相手が10人居ようと
本気を出せば数秒有れば終わるな!」と雲の上の話を持ち出す
普段なら「嘘?冗談言わないでよ」と笑う所なのだろうけど
現実にライフルや拳銃の弾丸を、テツが弾きまくったのだから信じるしかない
それに、ソレを当たり前の様に話す2人に嘘は無いのだろう
そう、【バケモノ】のテツの上を行く【バケモノ】がここにいた
常識外れも有ったものではなわね
私の師で在っても、1発の銃弾を剣で弾く事が精一杯ででしょう
いや、わざわざ集中してまで、1発の銃弾を剣で弾かなくてもいい
身体全体で受ければいいだけだし
その為の鎧であり盾であり鉄壁の防御である
私や師匠は【騎士】なのだから
そして雑談と共に、テツから作戦らしき話しが出るのだが
意味不明な作戦、それ以前の問題でもあった
3階の渡り廊下と、1階の廊下から、造船ドックに入れるらしいのだが
3階の渡り廊下だと通じている場所は
造船ドック内の壁に這うように作られた通路に出るらしく
待ち伏せがしにくく、一度に襲ってくる人間が少なく安全だと
だが1階から行けば、そのまま開けた場所に出るので
相手も待ち伏せしやすく、一度に襲ってくる人間も多いいと
こちらはとても危険であり、敵の火力も先ほどとは違い増大してるだろうと
そして、蓮先輩と私の力を知りたいから
2人で先に行って1階の罠に掛かってくれと言いだしたのだ
アリスにしてみれば意味不明であり
わざわざ危険を冒す意味など解らない・・・いや解る
この2人は【バケモノ】だ、こんなバケモノの考えなど
私が解かる訳が無い事は、解る・・・
テツ・・・それは作戦って言わないの
当たって砕けろと言うのよ・・・
まったくもって逃げ出したいわ・・・・
でも、逃げれないのよ
すでに右手に持った黒い棒で素振りをしながら
やる気を隠そうともしない、敵よりも恐ろしい【バケモノ】が居る
それにもしも断ったら、その時点で私は
空間転移ってヤツで何処かに飛ばされる
それだけは絶対避けたいのよ
最後までこの場所に居たい
今は、何も出来なくても、役に立たなくても
これは私の一生を決める・・
そう、私の人生の行き先を、私の未来を決めるかもしれない事だから
そんな話を終わらせ、1階に到着すると
鉄雄は1階エントランスではなく
裏に有る、造船ドックに続く長い渡り廊下を指差し
「じゃぁ、2人で行ってらー」と軽く送り出すのだった
「おう、鎧女いくぞ」
「はい先輩、それで私はどうすればいいの?・・・ですか」
先輩と2人きりになると、さすがに緊張するわね
それにいつの間に私は鎧女になったのかしら・・
たしか、名前バレをしないように
コードネームで【パーカー】だったはずよね??
そういえば、テツも私を【ナイト様】って言ってたっけ?
まぁ私も先輩を先輩って言ってるから
みんなもう、コードネームなんて物は忘れてるのね
「あぁ、そういえば奴は何も言ってなかったな」
「防御力には自信があるけど
囲まれれば動けないし
魔法攻撃には期待しないでね・・・・です」
「そこまで緊張しなくていいぞ
言葉使いで、一々怒りはしない
そうだな、防御力か騎士志望だったな・・それなら
ちょっと盾を構えてみろ」
「は?構える?」
「あぁ盾を構えろ」
「・・・・?」
構えろと言われれば構えるけど?
アリスは意味も分からず
半身に構え前面に盾を構える
「これでいいの?」
「まぁそれでいいか『ミカ』突っ込め!!」
「え?」『ほほーーーーい』
その瞬間、アリスは体が浮いた気がして小さく驚く
それは姿を消した、ミカがアリスの体を持ち上げたのだ
そして、ソレだけでは終わらない
ミカは持ち上げた、アリスを抱えたまま
『キィーーーーーーーーーーーン』と
古きアニメのキャラクターの様な念話と共に
造船ドックに向けて走り出したのだ
アリスは顔を引きつらせる
それはそのはずだ彼女は今体が浮き
体は何かに縛られたように動かない
その意思に反して勝手に進んでいく
「まって、どうして・・・なんでなのよーーーーー」
そんな叫びを無視し、アリスの体はミカに抱えられ
渡り廊下を走り抜け、今まさに、造船ドックの扉をぶち破る
そんな彼女を出迎えてくれたのは
完全武装の傭兵約40人
彼等は、その手に持つ武器で
目の前に飛び込んできた人物を祝うかの様に祝砲を上げる
盾から伝わってくる衝撃
それが何によって引き起こされたかすら判断出来ないほどであり
左右に広がった傭兵達の攻撃は、アリスの正面からではなく
横からアリス本人をも攻撃してくる
ただ、彼等は知らないのだ
アリスが、ジャージの下にフルプレートの鎧を着ていることに
彼等は手応えが有るものの防御姿勢のまま動かない人物に驚くが
それでも、攻撃の手を休める事は無い
「死ぬ・・・・・絶対死ぬ・・・・
横からも撃たれてる、この鎧、防御力が高いけど
完全密閉型じゃいのよ
関節とか隙間に弾丸を受ければ普通に負傷するわよ
それに、鎧着てたって撃たれれば痛いわよぉぉぉぉ」
小さく縮こまって正面の攻撃を防御し
横からの攻撃から頭部だけは守っていたアリスは死を覚悟するのだが
そんな時、耳に入ってきたのは
「はっはっは!楽しいだろう!鎧女」
そんな言葉を残し
誰かがアリスの横を通り抜けた
「た・・・楽しいわけないでしょ!!!」
ここ数年出したことのない大声であり
心からの叫びだったのだろう
だが、その叫びは傭兵達の銃撃や魔法での攻撃の音でかき消された
どうすることも出来ない
攻撃手段は無い、いや有っても防御姿勢を崩した瞬間に全てが終わる
あの先輩だって、武器はあの黒い板の様な剣だけだ
数十人相手の銃撃をどうにかできる・・・?
蓮に怒りを覚えながら
必死で生き残る方法を考えていたアリスだったが
蓮が横を通り抜けた時から、徐々に敵からの攻撃は減り
激しい攻撃の音も少なくなり
聞こえ出したのは、悲鳴と断末魔
それもたった数秒で静かになり
新しく聞こえてきたのは、何故か腹の立つ声であった
「おう鎧女、もういいぞ」
先程と同じく腰が抜け立てないアリスは
腰を下ろした状態で、ゆっくりと盾をどけると
そこには、意識を失い床に倒れている完全武装状態の傭兵の姿が有った
それも、あちらこちらに数十人の姿が
思考が追いつかないアリス
どうにか絞り出した言葉は・・・・・
「何が・・・起こったの・・・・」
「ん?あぁ、ザコに興味は無いからな
手っ取り早く終わらせた、囮役ごくろうさん」
「お・・・・・・・・おと・・・・・・」
囮?そうじゃ無いでしょ、数秒でこれだけの人数を倒したの?
いや、囮にされたのはイヤだし、腹が立つけど
私が居なくても、よかったんじゃないの??????
そんな時、2人が通ってきた通路から銃撃の音が鳴り響く
誰かが銃撃戦を始めたかのように
そして、この場で傭兵達が攻撃する人物は3人しかおらず
2人がこの場所に居ると言うことは、襲われている人物は1人だけでる
「え?彼が襲われた?助けに・・・いっ・・・」
立ち上がろうとしたアリス
足に力が入らず前のめりに倒れそうになったが
どうにか盾で体を支え踏ん張るのだった
「大丈夫だろ?たかだか十数人だ
アイツは制限付きだが、俺と勝負して勝った男だぞ
こんなザコどもに負けるはずがない
それ見ろ、音も止 (や)んだし終わったみたいだ」
「え?・・・・・・・・」
「その様子だと、なんで、俺達2人を先に行かせたのか
気づいてなかったのか?」
「ど・・どういうことよ?」
蓮はアリスの態度を見て、一度クスクスと笑い話し出す
下の階に降りてきてから、ずっと此方を監視していた人物がいた事
1階から、造船ドックに向かうのを確認して
傭兵達は総力戦の準備をしだした事だろう事
そして、常套手段として挟み撃ちは当たり前であり
だからこそ、蓮は時間をかけず、一気に渡り廊下を進み
造船ドックに突っ込み、囮にアリスを使い敵を一掃した事
いきなり造船ドックで戦いが始まった事に驚いただろう
蓮達の背後を襲うはずだった敵は、急いで動き出したが
奴らが動いた時には、すでに造船ドック内の敵は全滅
そして、背後から来た敵を宮守が倒しただろう事を口にした
そして通路から近寄ってくる男は軽く手を振り
「っよ!粗方片付いたみたいだな」
「あぁ、歯ごたえもないザコばっかりだ」
「こっちもだ、まぁ楽でいいけどな
それにまぁ・・・・・ボロボロになたもんだな」
そこには、銃撃を受けて
着ていたジャージが穴だらけになったアリスの姿があった
「そ・・そうよ悪い?
そこの悪魔の様な先輩に囮にされたのよ
もうズダボロに撃たれたわよ
防御って言うか鎧の硬さに自信があったけれど
本気で死ぬかと思ったわ
ほんとうに・・・あれほどの実弾に耐えれるとわ・・・
マイスター(鎧製作者)に感謝しかないわ
そして、先輩には敵意しか湧いてこないわ
それに貴方たち、本当に人間?バケモノじゃないの?」
なんなアリスの言葉に、笑いながら蓮は答える
「人間?そんな物は、数千年前に止めたわ!
それに悪魔の様な先輩と言ったか?
悪魔は2人ほどソコに居るが
俺は悪魔じゃない、言うならば、ソレを統べる者だ」
「そうそう、人間を止めたような【魔王】と一緒にするなよ
俺はまだ人間だぞ」
「そう・・・・・・まだなのね・・・・・
それに、【魔王】って・・・」
諦めに似た声で、ボソっとつぶやき
大きくため息を吐くアリス
「お前ら!まだ終わりじゃないぞ
あそこを見ろ、ご丁寧にこっちを待っててくれてるじゃないか」
蓮の示した先
そこは造船ドックの最奥に当たる場所である
100メートル級の造船場であるココは
奥行だけでも130メートルはあり
蓮達のいる場所から
蓮が示した人物の場所まで100メートル近い距離があった
そしてそこには蓮の見知った顔
そう、鷲尾の姿がそこにあり
傭兵ではない、鷲尾の直属の部下であろう
統一された服装の集団が居た
「さて、これで3度か
なかなか俺様を楽しませてくれる
お前ら行くぞ」
「ちょ・・・ちょっと待ちなさい!」
そこには地面に座り込んだまま動けない鎧の女性が1人
「動けるか?ナイト様」
鉄雄は、そっと右手を差し出す
それに一瞬ためらうアリス
え・・・あ?
あの、そういう意味で言った訳ではないの・・
でもでもでもでもでもでもでもでもでも・・・
「ア・・・アリカトウ!」
アリスは、その手を握り返し立ち上がる
に・・・・握ったわぁぁぁぁあ!!!!
初めて、手をにぎったわよぉぉぉ!!!
緊張して手汗が!心拍数が!
心臓が!破裂しそう、どどどどど・・・どうしよう
小手の掌の部分は薄い皮なのよ・・・・
テツに伝わったら・・・どどどどど・・・どうしよう
「ナイト様?いつまで握ってるつもりだ?」
「え?」
アリスは何故か鉄雄の右手を両手で包み込む様に握って居たのだ
そして立ち上がったにも関わらず、無言で握り締めていた
「ア!ウン、ソウネ、アリガトウ」
「変な物でも食ったか?」
アリスの行動が、いつもと微妙に違うことに首を傾げる鉄雄だった
アリスは意味不明な高揚感と共に
そのテンションは止めど無く上がっていくのだった
ふふふ、許すわ先輩
おかげで、テツの手を握れたわ!
私とテツは繋がったのよ
私達2人は、一つになったのよ
体の底から何かが沸き上がってくるわ!
今なら、さっきの傭兵どころじゃない
彼の為なら悪魔だろうと、バケモノだろうと
魔王や竜にですら勝てる気がするわ
力が湧いてくる、彼の背中を見つめるだけで・・・
アリスは、背中にピンク色の花を咲かせ
意味不明なパワーを撒き散らせている間に
蓮達は、鷲尾の前に進んで行くのだった




