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探偵に憧れる奴は、その仕事内容を知らない事が多い

授業をサボって出た屋上は誰もおらず、強い秋の日差しが、フェンス以外何も無い屋上を焼いていた。


「……居ねーか」


田宮を追って来た訳じゃないが、何と無く目で探してしまう。居たとしても、話す事なんざねーのによ。


屋上を一通り眺めた後、俺はフェンス際に行って腰を下ろす。空は雲一つ無く、太陽は高い。


「あちー」


季節は確かに秋。だが、まだ秋らしさは無く、何もしていなくても長袖を着ていると汗が垂れてくる。ま、気分は悪くないけどな。


手をかざし、空を見上げているとチャイムが鳴った。俺はそのまま目を閉じ、田宮の事を思う。


「イジメ……か」


イジメかどうかは知らないが、俺は昔、良く絡まれていた。別に自分からケンカを売ったとかは無かったと思う。ただ毎日何かにイラつき、学校や親を憎んだ。


今になって思うと、そのイラつきが他の奴にも伝染したのだろう。色んな奴に絡まれ、ケンカして憎まれて。それを毎日繰り返し、ふと気付いたらそんな奴らすら俺に近寄らなくなっていた。


なんだろうな、そん時はそれで良いと思っていたんだけど、何で今になって後悔してんだろうな。


「……くだらね」


とにかく、今は田宮の事だ。誰だか知らないが、あいつにちょっかい出してる奴が居る。それを止めねーと、友達100人とかいける訳ねー。


「おっし」


犯人探しといくか。


俺は立ち上がり、取り敢えず今教室でやっているだろう一時間目の授業に出る事にした。




「遅れました。すみません」


二十分遅れで教室へ入ると、一瞬だけ注目を浴びた。教師は特に何も言わず、俺を視界から外す様に教科書を開いた。


俺は田宮が居ないのを確認しながら、落書きだらけの席へ座った。読んでみると、全て似た字で書かれている事に気付く。もしか、これをやったのは一人なのか?


「……なあ」


前の席の奴……山口だったか? そいつに声を掛ける。


「え? な、なに?」


山口は引き攣った顔で振り返り、戸惑いの声を上げた


「今日、最初に教室へ入った奴って分かるか?」


「き、今日? えっと……分からないけど」


「お前何番目?」


「五、六番目ぐらいだったと思うけど……」


「この机はそんときからこんな感じだったか?」


「あ、ああ。宮川達がひでーとか話してて……」


「宮川か。……他に誰が居た?」


「さ、さぁ。覚えてないから」


「そうか」


椅子に座り直し、腕を組む。後で宮川に話しを聞く必要があるか。


「…………」


「あ? ああ、もう良いぞ。悪かったな」


「あ、ああ」


びくつきながら前を向く山口を教師はチラ見し、コホンと咳を一つ漏らして黒板に向き直る。


教師は決して俺を見ようとしない。諦めと嫌悪、それだけが俺への感情だろう。


だから俺は机に顔を伏せる。拗ねている訳でも、怒っている訳でもない。それが教師やクラスの奴らが望んでいる事だと知っているからだ。


伏せていると、毎日の習性なのか眠気は直ぐにやって来る。俺はそれに逆らわず、意識を闇へ吸い込ませていった。



夢。夢の中で夢だと気付く。それは同じ夢をもう何度も見ているからだ。


親父に殴られる夢。お袋に産むんじゃ無かったと言われる夢。綾先輩に救われた時の夢。そして


『お〜、君が蒼ちゃん? ちーっす、オラ三年の赤田 龍一。よろちくびーむ』


あの化け物と出会った日の夢。


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