放課後は付け回せ
「一緒に帰るぞ」
「………………」
「無言は肯定だよな。帰りどっか寄るか?」
「………………」
「隣町にうまい何かあるらしいぞ。連れてけ」
「あ~~~うるさい! ついてくるな!!」
放課後になり、そそくさと帰ろうとした田宮の後を追って誘ってみたが、どうもキレられているらしい。マニュアル通りにしてるってのに一体何が悪いってんだ?
「待てって。駅前にうまい立ち食いそば屋があってな」
「一人で行けよ! 私に構うな!!」
「まぁそうなんだが」
一人で食いに行った方が良い。
「でもま、仕方ないから付き合えよ」
「絶対行かないから!」
田宮は早歩きで俺を振り切ろうとしたが、俺も早歩きで追跡。
その歩みは次第に小走りとなっていったが、俺も小走りで更に追跡。
「な、なんでついてくるんだよ!」
「お前と放課後を楽しむ為らしい」
「わ、私は楽しくなんか無い! ハァ、ハァ」
「俺も楽しくは無い」
「じ、じゃあ、どっか、い、行けぇ~!」
「それは駄目だ。予定が狂う」
マニュアルには今日中に放課後何処かに誘えとあるからな。
「なん、の、ハァ、予定だよ! ばかぁ!!」
田宮は泣きそうな声でそう怒鳴った。
そしてその声で、田宮が本気で嫌がっている事に気付く。
「……わりぃ」
俺は足を止め、田宮に頭を下げる。
「…………?」
そんな俺から少し距離を取った田宮は、様子を伺うように振り返った。
「悪かったよ。俺はコミュニケーションとか分からなくてな。お前が嫌がってるのに今、やっと分かった」
「………………」
「全くアホだな。これじゃダチなんか出来る筈ねぇな」
親父やお袋が良く言っていた。俺には人の気持ちを思いやる心がない欠陥品だと。
「欠陥品……か」
「ひっ!?」
欠陥品。その単語を聞いて、田宮の顔色は真っ青になった。
「……どうした?」
「わ、私は……私は欠陥品じゃない!」
強い怒りを感じる視線と声。だが、小刻みに震える身体と怯えを含む瞳の色が、それは強がりだと言う事を示している。
お前も言われた事があるのか? 近い人間から、その言葉を。
「……お前は欠陥品なんかじゃないだろうよ。少なくとも俺よりは遥かにマシな人間だ」
「…………何も知らないくせに」
「知ってるぜ。お前はきちんと学校へ出て授業を受ける真面目な奴だし、話掛けられて戸惑う気の弱い奴だし、相手を無視してしまった事を悪いと思っている優しい奴だ」
「なっ!? ば、馬鹿かテメェ!!」
…………似てんのかな、やっぱ。
「ま、ゆっくりと行こうぜ」
「は?」
「お前を改造してやるから」
「はぁ!?」
「目指すぞ、友達百人」
「かってに話進めるな、馬鹿~!!」