秘密基地
キシリ、キシリ。大丈夫だろうか?今にも倒壊しそうなツリーハウスの梯子を登りきり、中へ。血の付いた服が気持ち悪い、ここに替えの服があれば良いのだが、、。
辺りを見回す。外装とは異なり、内部は綺麗にされていて、机や棚が綺麗に置いてあった。タンスもある。
彼女の許可を得て、tシャツに僕は着替えた。
すると「相ちゃん、救急箱!」。と彼女が指示する。
言われたとおり棚にある救急箱を渡した。床の上では苦しそうに子犬が倒れてる。救急箱から赤チンを取り出し、傷口に優しく塗布していく彼女。染みるのか、少しの呻き声をあげる子犬。
「人里に熊が降りてくるなんて不思議だね?」と僕は尋ねたが、無視された。興味がないようで、質問には答えない。淡々と包帯を巻き、ほっとしたように子犬を高く持ち上げる。「完成だよ」二人で手を叩いて子犬を励ました。名前を付けようと言い出した彼女だが、僕は拒否した。「この子が死んだら意味がないよ」だと思ったから。すると子犬を抱き締め、首を横に降る彼女。
「、、死なせない。」さらに強く抱き締めながら「好きだから、ずっと一緒にいたいから」と子犬を胸に染み込ませていった。。最初の印象とは大分違うなと、考えながらいまだ謎の彼女に質問してみた。
「あんな奴らに負けるなんて、悔しくないの」
「、、奴らって誰の事かしら?」
「石を投げてきた餓鬼たちの事だよ」
クスリと笑う。育ちが良いのだろうか?仕草がいちいち洗練されてる。
「餓鬼だなんて、、」
「何がおかしいの?一方的にやられてさ」
「村の掟だから、、仕方ないわよ」
「、、掟?」
「知らなくていいのよ。、、子供は」
ムズムズしたから、言い返す。
「子供?僕が?その子供に助けられたくせに」
笑いを堪えながら「あら、そうね。、ありがとー」と軽く窘められた。下に見られてる!そう感じたから、我を通す事にした
「仕返しだ!餓鬼共に!」
「意味ないわよ、フフ」
「意味あるし!気になる事もあるんだ!熊!熊だよ」
「熊?」
「犬笛少年の仕業だ、、きっと!犬笛で合図したんだ。僕達を襲えってさ、許される行為じゃない!」
地面から音がする。彼女が倒れたのだ。笑い焦がれ、のたうち回っている。
耐えきれず「、、ふ、、ふざけるなー」と彼女の上に、のっかかってしまった。それでも笑い続ける彼女、、。すると、不思議と自分も笑えてきて、もっと笑わせようと脇腹を手で擽った。「馬鹿にしたなー」すると仕返しとばかりに僕の脇腹にもコチョコチョをしてくる彼女。くすぐったくて、こらえきれない。コチョコチョしあいにより、二人で笑い転げた。位置を変え色々なところをくすぐっていると、柔らかい感触により僕は止まった。、、誤って胸に手をおいてしまったのだ、、。彼女の顔色が一瞬にして凍りつく。
気まずい空気が漂いながら、僕らは見つめあった。
青い眼に吸い込まれる僕は、鼓動は早くなっていく。手は震え。後悔しながらそっと手をどける。
「ごめん」と起き上がった。だけど沈黙は続く。場の空気を変えたくて、子犬の食べ物はないかと棚を漁る事にした。わざとらしく「ないかなー」と呟きながら、、。
しばらくすると、口を開く彼女。
「ホントに倒せるの?あの子達を?」声は乞わばっていた。さっきとは違う。僕は、、察した。だから安心させたくて、「もちろんさ。馬鹿にされたまま終われないよ」と腕を高くあげる。
首をかしげる彼女、じっと僕を見ながら聞いてきた。「何のために?」。
戸惑う僕がいた、、。自分でもわからない。だから「だってさ、、あんなやり方、、許せない、、」。
と答えた。彼女はさらに傾げ「、、誰のために?」と聞いてくる。その答えは、、想いのままに口に出た。
「む、、ムジェ姉ちゃんのためだよ」
ペロリと品定めするように、嬉しそうに答える彼女。
「やって欲しい。助けて欲しい、あいつらを倒して欲しい」。僕が頷くと、頷き返してくれる彼女。
胸の鷹なりを、押さえきれない自分がいた。
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