大熊、
「早く!お姉さんも走って!」
「・・・・・」
「ぐぉぉぉぉ」
大熊は不協和音な叫び声を背中へ小玉させ続ける。
威圧感が全身をなぞる。振り向いたら、お仕舞いだ。
そう思った。林の中は沢山な細長い木が疎らに点在している。直進の進行は避ける!波のように走っていれば追い付かれないと思ったから!でも「ヴぉぉぁ」という不協和音は近づいてきてる気がする。それに、、
お姉さんの体力が限界なのか、、息づかいが荒い。
すると、、ドシンと腕の重さが軽くなる。
お姉さんが倒れたのだ。「早く立って!食べられるよ」。でもお姉さんの体力は限界のようだった。
抱えて走ろうか?脳裏を霞めたが、女性は僕より身長が高い。スラリとした体を見ると、体重は軽そうだが
身長差はそれをカバーできないと思った。、、どうすれば、、。「ぐおおおお」熊はもうすぐそばまで来ているのだろう。、僕は熊を直視しなかった。それ程恐ろしい形相だったからだ。
「うぁぁぁ殺される!」僕は最後の言葉を残した。
誰か助けて!
。
。
。
。
そして僕は吹き飛ばされ3メートル先にあっあ大岩に
体をぶつけた。「ぐはぁ」痛い。大熊は倒れている女性に目もくれず僕を見た。一面の細い木達を含め、大熊は僕に自然が持つ強さを示しているようだった。まるで余所者か?というように。そして僕は命の儚さを感じ、凄く恐ろしい事に気がつく。、多分、毎日何億という生き物がこれから味わう恐怖に触れているのだ。だけど、宇宙から見たら些細な事として処理される。特別な事ならばそこに意味があるだろう。でもそうじゃない!極めて普遍的でなんでもない。だから僕はここで食べられる事は、たまたま起きた事に過ぎないんだ。僕はそれだけで終わる。
天の上の神様を疑い、そして存在などしないのではないのかと思った。ただあるのは生き物が生き物を食べるという事実だけ、、世界は冷徹なんだと感じた。
僕はこれから食べられる。そう覚悟した、その時、僕の腕に一滴のヌメヌメとした液体が癒着している事に気がつく。僕は思わず大岩の頭上を見上げた。、、そこには。
「ぐぐぐ、、わん!わん」
、、犬?。黒い野犬が現れていた大熊との距離は2メートルまでになっている。僕の意識の中に犬が現れたと同時に僕は、、、赤い血を眺めていた。心血は辺り一面にぶちまけられていて、身体中は赤色の絵のペンキが塗りつぶされているようになった。
僕はこれから続く結末を意識する事を否定し、瞼を閉じた。、、体が硬直する。、、事の現状を把握するのには少々時間が必用だった筈だが、その後の雄叫びに
よって僕は眼を見開く。そこには、、、。
大熊とそれを数匹の野犬達が囲うという状況があった。そして一匹の野犬が倒れている。どうやら僕が見た血はその野犬がもたらしたものだと気がつく。
大熊と数匹の野犬達の攻防がそこにはあった。そこから一メートル程手前に女性が助けを求めているのに気がつく。僕はすかさず彼女の下へゆっくりと向かう。
その最中にも大熊と犬達の攻防による鈍い音や飛来する血は凄まじかった。だけど女性を助けなければならないと、思った。今助けられるのは、僕以外にいないから、、。
そして僕は彼女の手を取り、その場を去っていった。
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