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食恋族   作者: たかし
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始まりの前の始まり、

果実が熟すのを奴らは、待つ。

際どく、決して語らず、まるで、

赤く染まる桃のように、お前の食欲を刺激する。

夜も眠れず、白い肌に続く禁断の果実を

食べたくて踞る。まるで、琵琶のように、

青い海に鳴り響く歌唱のように、

泣く姿を眺めたい。


青く輝く宝石はお前を見て欲しくなる。

けれど、偽りのようで神秘的で、

掴まえたくても捕まらず。

お前を虜にする。

決して果実を育てるな。

偽りの成熟に身を委ねるな。

なぜなら奴らは、お前の成熟をまるで、

奈落の底に落とすサラセニアのように、

または、粘着姓の分泌物で

罠にはめるモウセンゴケのように、

お前を向かい入れる。

己の欲望を奴らに求めるな。

奴らは裏切り、お前の手も足も五感さえも食す。

殺さず、生かし、一時の迷いの後悔を人生を捧げ、

償う事になる。だから、、


一族とは関わるな。関われば、相太、お前のすべては食べられる。この村には食恋族と呼ばれる一族が存在する。村八分の対象として何万年の間、この村に巣食っている。災いの元凶であり、恋を実らせ、体だけじゃなく心まで奪い、食す。奴らにとって恋とは、美味しい実りの時期なのだ。



五体不満足の祖母は僕に、すっぱく言った。奴らに関わるな、私になりたいか?、と。その話を聞くたびに僕はうなづきながら、祖母を寝かしつけた。子守唄を歌いながら、、。子守唄はせがまれて歌っていた夜は眠れない祖母で、睡眠薬も効かない祖母が可愛そうと思った。




エピソード1 始まりの前の始まり、、、




僕は東京から引っ越し実家であるこの村にやってきた。祖母の容態が悪くなり、寝室で一人になると僕の名前を呼ぶらしい。軽い認知症になっているらしく、丁度中学に上がるタイミングの僕を見越して、僕を田舎に呼び出した。


田舎での1日のスケジュールは、実家の畜産業をお昼に手伝い、午後になると、する事がない。なので、村を一人で探索する事にした。田んぼを間に挟んだ歩道で、僕は都会にはない風を浴びながら、春の風を一心に浴びながら、歩く。


「田舎も悪くない」そんな独り言が出るぐらいに、心が裸になった。目的もなく歩いていると、田舎特有の光景が目に写る。虫取りをする少年達がいて、田んぼで麦わら帽子と肌着で桑を下ろし、肩にかけたタオルで汗を吹きながら、仕事に勤しんでいる大人達がいる。目が合うとお辞儀をしてきたので、僕も返した。


歩道はどこまで続くのかわからず、景色も全く変わらなかった。時間も時間だしそろそろ家に戻るかと踏んだと同時に、目の前で数人の少年達が田んぼから歩道に沿いながら、逃げていく。年は5歳ほどで、僕も仲間に入ってやろうと、声をかける。


「どうしたの?野良犬?」


すると少年達は、自慢げに言う。


「野良犬なんかより、もっとおっかないのだよ!」


野良犬でないのなら、なんだというのだ。鬼ごっこが形を変えてゴジラごっこなんてしてしてるのだろうか?、、面白そうと思った。


だから僕もいっしょに参加したいと思った。都会では有り得ないだろうノリである。




「よーし、お兄ちゃんも参戦するぞー」




すると一人の子供が田んぼの先に見える、農屋を指先した。僕はその裏っかわに、ゴジラ扱いされた子供が踞って泣いてるのだろうと考えた。家に帰ってもする事がない。事を思い出した僕は少年達と遊びぶ事にした。足裏は熱くなり、都会にはない風が吹いていた。その農屋に向かって走り出す準備を整えた。熊ではない事を祈りながら、走る。


振り向き、子供達も一緒に走り出している事を確認。旗から見れば不格好かもしれない。子供同士とはいえ6歳も離れているのだ。だけど、心地良いと思った。平和で咽か、、ここには何もないから、都会にはない何かがあると感じた。東京暮らしの日々から持ってきた抱え込んでいた何かが吹っ切れていくような。


そんな感覚だ。


楽しい、、、赤の他人なんかいない、顔を合わせれば友達なんだ。僕はここで思い出を作るんだ!と地に足を何度も着けながら、思い、幸せな気分になった。



しかし、その時の僕はまだ、知らなかった。

農屋裏にいる存在は、惨劇を生み出す元凶である事に。




僕は汚されていく、、

儚く脆い少年期の初恋を赤く染めるように、、。

ここまで読んで下さった皆様、有り難うございます。今後も宜しくお願いします。

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