表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/32

青年町長の言葉

猫、また人になりました、ご注意



役所に着くと、次々と団員の移送が始まる。

この役所の地下には牢屋があって、罪人はそこで罪状が決まるまで収容される。

私達はそれを横目に役所三階にある控え室にいた。


「…….ハルト!カノンは?」


控え室前に居たハルトを見付けて駆け寄ると「さっき医務官に彼女を預けて来た所だよ」と笑う。


「彼女も君を呼んでいたよ、あんず、あんずって。

目が覚めたらお見舞いに行ってあげようね」


「うん」


じわりと涙が出て来て、私はそれを服の裾で拭った。


しばらくは三人で控え室でお話をしていた。

ハルトが謝ったり、私が謝ったり、ユースヴィルが謝ったりで最後は笑えて来てしまって、三人で笑った。


私は怪我が無い事、怖かったけれどカノンも居たから大丈夫だった事。

二人が来てくれて嬉しかった、安心したと伝えた。


あの部屋のはめ殺しの窓から外を見た時、街灯も無い場所まで連れて来られたからもう戻れないのではと考えていた。

しかし実際にはそれほど町から離れておらず、そんな場所で私達があの場所に居たのは少し不思議だった。


東から降りて来た盗賊団だろうとハルトとユースヴィルは言っていた。

私達はてっきりあの馬車がオークションが開催される場所なのだと思っていたからだ。


その辺りを話しているとちょうど呼ばれて、私は部屋へと向かう。

その後ろにユースヴィルも居てちらりと職員さんを見ると、にこにこ笑顔で「皆さんどうぞ」と席を勧めてくれた。



「改めて、初めまして。

私はこの町の町長をしております。

今回の事、町の長としてお詫び致します」


「えっ、そんな……」


ぶんぶんと首を縦に振ると、怖い顔をして「いいえ」と真剣な表情を浮かべた。


「本来なら許されない事です、この町を預かる者として私自身も愚かとしか言いようがありません。

町の外の情報を集められなかった事。

貴女や劇団の一人が拐われた事。

全ては私の責任です、心よりお詫び致します」


その言葉は私だけでなく、ハルトやユースヴィルにも向けられていた。


「今後はもちろん、一切油断する事無くこの町の平和を守る所存です。

そんな事で許されるとは思っておりませんが……」


「……あー……その、あのな町長……」


「はっ」


顔を上げた青年町長に、ユースヴィルは頬をかきながら苦笑する。


「今回の事……いや、だけじゃない。

俺も、ちゃんとしてなかったから……町長だけのせいとは全然思っていない。

俺は領主として最低限の事しかして来なかった。

他所は分からないが、今回の事も他の国からの情報とかそう言うのを俺のところへ集めて、そちらへ共有するべきだと思った。

今回の事は俺の責任でもある」


「………は、」


「だから次に生かすのは良いが、自分を責めないでくれ。

次に活かせば良い、そうだろう?」


ユースヴィルの言葉に青年町長はきょとんと目を丸くしていたが、やがて深く深く頷いて「かしこまりました」と首を垂れた。

そして私達は屋敷へ戻り、ホッと息を吐き出したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ